レポート
Placemaking Week JAPAN 2021から「プレイスメイカーの心得」誕生! PWJ2021 #17
3月12日~3月17日にかけて行われた『Placemaking Week JAPAN 2021』。
最後のセッションでは、本ウィークの主催を務めるPlacemaking Japanとソトノバから泉山塁さん、田村康一郎さん、石田祐也さん、矢野拓洋さん、山崎嵩拓さん、西田司さん、千代田彩華さん、田辺優里子さんの8名がスピーカーとして集まり、これまでのセッションをグラフィックレコーディングを元に一気に振返っていきました。
プレイスメイキングの広がりと深まりを俯瞰し、今回のウィークでの学びを「プレイスメイカーの心得」として考えていく総まとめの会!
全コンテンツを見られなかった方も、ウィークで紹介されたポイントを知ることができるチャンスです。
本イベントレポートでは、本ウィークの最終セッション『Placemaking Week JAPAN 2021総まとめ!「プレイスメイカーの心得」を考える』をご紹介します。当日の様子は、Twitterテキスト中継からもご確認いただけます。
Contents
専門分野、主体、テーマ、視点、規模など様々な面で“幅”のあるウィーク
まずは、登壇者全員でウィーク全体の感想を共有しました。
田村康一郎さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/クオルチーフディレクター/Placemaking Japan)
多様な角度、事例があり、視野が広がったし、深堀できた。振り返るのが楽しみです。
矢野拓洋さん(ソトノバ・パートナー/東京都立大学大学院博士課程/一般社団法人IFAS共同代表/Placemaking Japan)
今まで日本で活動されていた方をプレイスメイキングの文脈に載せて世界の方と議論する場をつくれたことが嬉しかったです。
石田祐也さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/合同会社ishau代表)
プレイスメイキングの切り口の幅を感じましたね。専門分野はもちろん、グローバルの議論、ローカルの事例とスケールの幅を感じました。
山崎嵩拓さん(東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 特任助教)
めちゃくちゃエキサイティングな一週間。石田さんのに加え行政・NPO・企業という主体の幅、デザインから設計、マネジメント、リデザインとフェーズの幅もありました。
田辺優里子(オンデザイン/Placemaking Japan)さん
SNSでの発信に力を入れました。このイベント後も、日本の方たちがオンラインで繋がっていってほしいです。
千代田彩華さん(オンデザイン/Placemaking Japan)
駆け巡るように知識と学びあり、プレイスメイキングの仲間に出会えた一週間。今後もその輪が広がっていくのが楽しみです。
泉山塁威さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/日本大学理工学部建築学科助教/Placemaking Japan)
国内と海外の議論を次から次へと重ねていくことで、日本の現状が総体化されたり気づきの多い一週間でした。
国内外問わずさまざまな分野で活躍されている方がつながり、議論を深めた一週間。今回のPlacemaking Week JAPAN 2021がどれほど濃密でどれほど有意義であったか、画面越しでもビシビシ伝わってくる登壇者の皆さんからの熱い感想でした。
グラフィックレコーディングで振り返るPlacemaking Week JAPAN 2021
今回、このウィークで特徴的だったのは、各セッションでなされた議論やコメントをイラストと文字で可視化するグラフィックレコーディングにまとめられた点です。
このグラフィックレコーディングをみながら、各セッションで出た議論・名言・気づきなどを振り返っていきます。
#1 オープニングプログラム
セッション1は、今回のウィークを主催したソトノバ・Placemaking Japanから4名が登壇し、一週間の全プログラムのプレビューを行いました。
日本と海外の国境をこえて議論をしていきたいという思いを発信し、世界中の人と繋がりながら日本のプレイスメイキングを考え、アップデートしていくきっかけになったのではないでしょうか。
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グラフィックレコーディングでセッションの全体像が一目で分かります
#2 アイレベルの都市に向けての政策と実践
セッション2では、Jia-Ping Lee氏(Tempatico、マレーシア)とHans Karssenberg氏(The City at Eye level,STIPO,オランダ)の2人の専門家を招き、アイレベルの都市のための政策と実務について議論が行われました。ハードウェア、ソフトウェアだけでなく、組織の仕組みとしての『オーガウェア(Orgaware)』、気持ちや感情を重視した『ハートウェア(heartware)』というアイディアは会場を驚かせました。
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このセッションは英語で行われました。
#3 マイパブリックスペースDiversity
セッション3は、園田聡さん(有限会社ハートビートプラン取締役/認定NPO法人日本都市計画家協会理事/他)と津川理恵さん(ALTEMY代表/東京藝術大学教育研究助手)の2人をコーディネーターに、それぞれの登壇者が関わっているマイベストパブリックスペースについてプレゼンしました。
パブリックスペースに関わる人には、哲学、スポーツ、フード、医療など様々な分野のプレイヤ―たちがいます。だからこそ、パブリックスペースが、人だけでなく動植物、非生物も含めた多様さを求めるプレイスであることが重要なのかもしれません。
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こんなにも多様な切り口でみれるパブリックスペースの可能性にテンションが上がります。
#4 アメリカと日本の実践者向け日本のプレイスメイキング入門
セッション4では、アメリカのPlacemaking USよりRyan SmolarさんとTina Govanさんを招き、日本の様々なプレイスメイキングの事例を日本人のプレイスメイカーが英語で紹介しました。中でも、東日本大震災の被災地である南三陸でのプロジェクトを紹介した神田駿さんの「地震や津波で街の姿が失われても、実際のプレイスはそこにに残り続ける」という言葉は視聴者の胸を打ちました。
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#5-1 プレイスメイキングとワークショップ
セッション5では、東京都立大学都市政策学科教授の饗庭伸さん、株式会社ミミクリデザインCEOの安斎勇樹さん、合同会社橘の橘たかさんをゲストスピーカーにプレゼンと議論、Q&Aが融合したシークエンシャルトークを行いました。
ワークショップとはどうあるべきか?
ファシリテーターの役割とは?
ワークショップが目的化して、日常と切り離されてしまってはいないか?
いかにワークショップやプレイスメイキングを日常に溶け込ませるか?
知らず知らずの内に思考停止してしまっている根本的な問題を問い直すはっとさせられる会でした。
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シークエンシャルトークという新しいトークスタイルに胸が躍ります。
#5-2 グローカル・プレイスターゲティング
本イベントでは、全国の参加者をオンラインで繋いだプレイスゲームのリモートワークショップを行いました。
自分の住んでいない地域の課題をプレイスゲームを通して一緒に考えたことで「地元が増えた気がした」という声もありました。オンラインだからこそ、違う地域のワークショップに参加することができる、そういった意味でオンラインの新たな可能性が見えた会だったのではないでしょうか。
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プロセスを通じてその場所をもっと好きになる。ワークショップはプレイスへの愛と理解を深めます。
#6 マイベストパブリックスペース New Local 公募プレゼンターと一緒に語ろう!
セッション6では、公募によって集まった14名のプレゼンターより日本全国のパブリックスペースの紹介がなされました。
北は北海道から、南は沖縄まで多種多様なローカルを知ることができるセッションでした。
「一人ひとりの個性を持ち込む、それを周りが肯定・応援してしていく。」というキーワードがあがりました。
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コーディネーターの西田さんと千代田さんの「いいですね!」「それめっちゃおもしろいですね!」が、プレイヤーをやる気にさせます。
#7 事例で解説!プレイスメイキングへの関わり方と進め方
セッション7は、プレイスメイキング専門組織Project for Public SpacesからにPriti Patelさんをお呼びし、プレイスメイキングの実践のプロセスを学びました。Pritiさんは、
プレイスに対してのStewardship=「責任ある管理」が重要であるいいます。それは、形として管理体制を整えるというのではなく、そこにはプレイスへの気持ち=ハートウェアをそえて考えることがポイントになってきます。
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プレイスメイキングの生みの親、PPSのゲストスピーカーからお話を聞ける非常に貴重な機会でした。
#8 コロナ時代のプレイスメイキングの可能性
セッション8では、サンフランシスコのRobin Abad Ocubilloさんは行政の立場で、オーストラリアのLncinda Hartleyさんは実務の立場で、それぞれの地域の現状を紹介し、ローカルな課題をグローバルに議論していきました。
コロナで大きなイベントなどができない中で、ローカルへの愛着をいかに育むか。徒歩15~20分圏都市をいかに楽しむか、豊かにするか。その手がかりとしてデジタルやデータは非常に有効です。Lncinda Hartleyさんの「実験しよう!という気持ちでパンデミックを乗り越えていこう!」というメッセージには非常に勇気づけられました。
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プレイスメイキングを考える上でのデータの重要性を再認識するセッションでした。
#9 パーク×プレイスメイキング 公園の指定管理やPark-PFIを支えるプレイスメイキングの可能性
セッション9では、行政、NPO、企業と異なる3者、大学教員のコーディネーターを交えて、産学官民の4つの視点から公園を舞台としたPlacemaking の考え方・取り組み方の展開の可能性について議論しました。
行政が管理するイメージが強い公園。しかしながらその状況は変わりつつあります。
公園の管理や運営のバトンを「渡す」というより「増やしていく」。行政から民間やNPO、地域住民へと公園に関わる主体を広げていくことでより良い公園をつくっていこうという流れが起きており、それぞれの立場からお互いに関わろうとしているのが印象的でした。
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長いプロセスの中で人を巻き込んでいく、バトンは渡すのではなく、増やしていく
#10 Park(ing) Dayサミット
セッション10では、全国6都市で行ったPark(ing) Dayの紹介がされました。
Park(ing) Dayを行う中で、自然と「ここでこんなことができるんじゃないか?」とまちを見る目が変わったという実践者の声があったり、竹原市の取り組みは実際にまちの政策につながったりとアクションがプレイスのビジョンやまちの見方の変化に繋がっていくことが分かりました。
社会実験というものが日本で重くなっている現状の中で、Park(ing) Dayは、ライトにアクションできる役割を持っているのかもしれません。
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プレイヤーが楽しむことを大事にしているのがPark(ing) Dayです
#11 プレイスメイキングの本質とフロンティア
セッション11は、世界をリードする団体「Placemaking X」の創設者Ethan Kent氏を招いたキーノートトーク。
Place-led governance=その場に根差した関わりの中でプレイスを育てていくこと。
Place makeではなく、Placemak”ing”は終わりのないプロセスを示しておいる。
Ethan Kent氏の発言は、プレイスメイキングを「場づくり」と捉えがちな日本を、終わりのないプレイスをつくり育み続けるプレイスメイキングの本質に目覚めさせるものでした。
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Ethan氏の言葉にはたくさんの気づきがあります
#12 プレイスメイキングと気候・風土の関係性
セッション12では、UR都市機構の中山靖史さんをコーディネーターに、シンガポールで都市デザインに関わられているMei Chouさん、日本の伝統的な境界空間に注目している筑波大学准教授の渡和由さん、広場ニストの山下裕子さんをゲストに気候と風土の関係性からプレイスメイキングにおける取り組みについて議論がなされました。熱い地域は夜のプレイスメイキングが盛んなことがわかり、たくさんのアイディアも出たセッションでした。温度、湿度、日照時間のデータを丁寧に読みとってプレイスメイキングをしていくというのは、今後シンガポールと日本共通して取り組むべきものになっていくのではないでしょうか。
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パブリックスペースをリビングルームのように使うというMei氏の発言は印象的でした。
#13「PLACE GAMEガイド」公開!
セッション13では、URと共同研究、実践会を経て作成されたPlace Gameガイドのお披露目会が行われました。
Place Gameを行っていく中で重要な事は、「なぜ」を共有する事。
声が大きい人の意見が通るのではなく、評価シートをもった誰もが等価にまちを診断し、議論や対話ができていく、そのツールとなるのがPlace Gameかもしれないという話も印象的でした。
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多くの方の手にPlace Gameが渡ることを期待します。
#14 ウォーカブルな年に生まれる居心地の良い場所
セッション14は、著書”Walkable city”シリーズで世界をリードする第一人者Jeff Speckさんが語るこれからの都市とプレイス。バラエティーをもった歩きたくなる道をつくっていく中で、地域の文化や歴史を見ていく重要性、スペシャリストだけでなくジェネラリストも入ってこれるような場に開いていくという話が印象的でした。
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人が歩くようになるには➀歩く理由②安全③快適④おもしろいの4つが必要なのだそうです。
#15 ウォーカブル×プレイスメイキング
セッション15では、ソトノバの泉山塁さん、東京大学特任准教授の吉村有司さん、千葉大学予防医学センター准教授の花里真道さん、国土交通省都市局まちづくり推進課の塚田友美さんの4名でウォーカブルとプレイスメイキング手法の可能性を議論しました。
ウォーカブルの真髄は、「住んでいるだけで幸せと健康になるまち」という話は、ウォーカブルの目的を問いただすきっかけになったのではないでしょうか。
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予防医学の観点からもウォーカブルは効果的なことが分かってきているそうです。
#16 ストリート×プレイスメイキング歩行者利便増進道路とストリートプレイスの可能性
セッション16では、歩行者利便増進道路とストリートプレイスの可能性を考えました。
「道路をどう使いこなすか、どう使い倒すか。」について制度をつくっている側がアイディアを出しているのが非常に面白いセッションでした。今後のストリートとプレイスメイキングとの組み合わせをどのように進めていくかが期待されます。
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ファジーの感覚が許されるような制度設計を行うという話が印象的でした。
Placemaking Japanのサイトが公開!
今回のウィークを経て、プレイスメイキングに関わる人のプラットフォームになる事を期待しています!Placemaking Japanのサイトはこちらから。
誕生!Placemaking Goals(PMGs)—Placemakingにおける20の目標—
このPlacemaking Week JAPAN 2021を経ての学びが、一枚の紙に収まりました。
世界中の人が国境や分野を越えて共通のゴールに向かって協力・連携し合うSDGsのように、プレイスメイキングに関わる人の共通言語、コミュニケーションツールとして使われていくと素敵ですね。
テキスト by 三宅ひふみ(Placemaking Japanインターン)