レポート
『シークエンシャルトーク』で考える参加とプレイスを育てるワークショップとは PWJ2021 #5-1
「『プレイスメイキングとワークショップ』参加とプレイスを育てるワークショップのつくりかた」では、饗庭伸さん(東京都立大学 都市政策科学科 教授)、安斎勇樹さん(株式会社ミミクリデザイン CEO / Founder)、橘たかさん(合同会社橘 代表)をお招きし、プレイスメイキングのプロセスの中で重要なツールとなるワークショップについて議論しました。このセッションは、ゲストスピーカーによるプレゼンテーション、ゲスト同士が議論するクロストーク、オーディエンスとも議論するQ&Aが混ざり合う『シークエンシャルトーク』という方法で実施しました。
ゲストが持つ様々な経験やアイデア、課題意識などが互いに関係し合いながら議論がつなが っていきました。その躍動感あるトークイベントの様子をレポートいたします!
*Placemaking Week JAPAN 2021の情報は、こちらからご覧ください。
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Contents
矢野拓洋から『シークエンシャルトーク』と今回のテーマについて
トークイベントやプレゼンでうまく伝えることができているのか?そんな疑問から今回の『シークエンシャルトーク』が考えられたと矢野拓洋さん(ソトノバ・パートナー/東京都立大学大学院博士課程/IFAS代表/Placemaking Japan)は言います。ワークショップの参加をどのように見分けるか?そしてワークショップのゴールとはどこにあるのか?
来ることに意味があるのか、発言することに意味があるのか、またその意味は、その人にとって意味ががあったのか、それともまちにとって意味があったのかなど、多くの疑問を抱いていました。饗庭伸さんが
少しでも関わっていれば意味を持たないことはない、その人にとっての意味はそれぞれである
と話し、安斎勇樹さんが
わかりやすい行動量だけではなく、『なにもしない』という参加の仕方もある
と意見を述べました。ここで橘たかさんが、クライアントがいるかいないかの問題は重要なのではないかと切り出し、クライアントの着眼点次第で、「参加」の定義は変わってくると次の議題へと移りました。
『シークエンシャルトーク』序盤から各自の事例や経験が飛び交い新しいトーク形態に期待が高まりました。
「参加」と「企画」の違いがポイント?そもそものワークショップのゴールとはどこなの?
饗庭伸さんが「参加」という言葉に疑問を抱きこう述べました。
参加という言葉が正しすぎるのではないか
この「参加」という言葉にとらわれるのは危険でり、そもそものワークショップのゴールとはどこなのかという議題に移りました。
饗庭伸さんの意見としては「ディブリーフィング」、「読み人知らずの動き」というものが大事になり、誰かがつくったものが、いつの間にか当たり前になる状況を目指していきたいとお話頂きました。当たり前になるために、作ったものを面白がってのっかる、2番手、3番手も大事になるのではないかと言います。ここから「面白さを出すにはどうするべきか」という議論に展開されました。
面白いワークショップをつくるには?ゲストが行うワークショップ事例
たくさんの入り口を用意してバリエーションを作ることや、わかりやすさ、仕掛け方など、ゲストによる事例をあげていただきながら面白さとは何かを話しました。
実際に大田区のロゴを作り変えるわけではないが、手を動かしながら大田区のことを再認識するきっかけ作りをおこなった安斎勇樹さんの事例。スポーツメーカーや企業のロゴにはどんな意味があってつくられているのかなどを説明したうえで住民にロゴを考えてもらうと、大田区にはどんな良いところがあるのかや、特徴は何なのかなど興味を持ち始めると言います。
大田区の特徴を捉え直し、まちの人々がロゴを考えました。橘たかさんは、わかりやすさも重要であるといい、小さなまちづくりと短歌を組み合わせておこなった事例を紹介しました。会議室などでのワークショップではなく実際にまちを使い行うワークショップはわかりやすくもありますが同時に反感をかうこともあるそうで、そうならないためにもスタートの時点で多くの住民を巻き込みながら行うことも重要だと言います。
まちの道と店舗などを短歌で連動させまちの活性化をはかる。 復興を考えながらまちを知るために、さらには、子供たちがこれからの未来を楽しく生きていけるようにボードゲームを用いておこなったワークショップの事例。誰に必要な場をつくる?
次に、橘たかさんからの議題「誰に必要な場をつくるか」でした。
ワークショップを通して、どんな問いを投げかけるか
が大事ではないかと話が進みました。ゲームで終わらせてはいけない、終わらせないためにどうするのかといった「問い」を投げ掛けることが重要だとあり、さらには、その場にいない、来れない人をどう意識するのか、人のみではなく、動物だったり、環境などのキモチも考えていくことが多様性の社会で必要なことだと話しました。
ワークショップの構造的な危うさとどう向き合うか
「ワークショップの構造的な危うさとどう向き合うか」でした。橘たかさんから
ファシリテーターとしての役割は、まとめることではなく、話せない人、声の小さい人とのバランスをとること
と話があり、饗庭伸さんからも、
最前列で張り切る人の後ろで作り笑いしている人など、2列目の定点観測をどう考えるのかなど、ファシリテーターとしての進行の仕方や言葉選びも重要だ
と話していました。さらには、地域によって、「地域」という言葉の意味も変わるなど、普段まちづくりのファシリテーターとして使っている言葉にクセや方言があることなども確認していました。
『シークエンシャルトーク』で行われたトークイベントでしたが、各々が持ち寄った議題に対してそれぞれの知見や事例を議題に合わせて話していく様子が、次々と話が展開されていき最初から最後まで目の離せない内容となっていました。
イベントへご参加された皆様、ありがとうございました!
グラフィックレコーディング:真下藍
テキストby 比嘉祐哉、矢野拓洋(ソトノバ・パートナー/東京都立大学大学院博士課程/IFAS代表/Placemaking Japan)