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世界へ届け!日本国内の事例からから考える日本流プレイスメイキングとは PWJ2021 #4

住居やオフィスではなく、効果的なパブリックスペースによって豊かな暮らしを支えようと考える「プレイスメイキング」。以前ソトノバでも「実はあなたの周りにもプレイスメイキング!?」で、プレイスメイキングの海外の事例を紹介しながら、日本での実践方法について考えてきました。しかし、国内で実際にどのようなプロジェクトがあるのかあまりよくわからないという人は少なくないのではないでしょうか?

Placemaking Week JAPAN 2021では、セッション4「アメリカと世界の実践者向け、日本のプレイスメイキング入門」において、アメリカのPlacemaking USよりRyan Smolar氏とTina Govan氏の2人の専門家をモデレーターとして招き、日本国内の事例を学びながら日本のプレイスメイキングについて学びを深めました。当日の様子は、Twitterテキスト中継からご確認いただけます。

本記事では、「アメリカと世界の実践者向け、日本のプレイスメイキング入門」のイベントレポートを紹介します。

*Placemaking Week JAPAN 2021の情報は、こちらからご覧ください。


Ryan氏とTina氏からみた日本のプレイスメイキング

以前にも日本を訪れたり、国内のプロジェクトに関わったことのあるRyan氏とTina氏は、今回のPlacemaking Week JAPAN 2021の開催をとても楽しみにしていたようです。日本には特徴的なプロジェクトがたくさんあり、アメリカのプレイスメイキングへ応用できるポイントやそれぞれの共通点を探したいと意気込んでおられました。

日本国内でのプレイスメイキングの事例紹介

プログラムでは、実際に国内でプレイスメイキングのプロジェクトに関わる5名に登壇していただきました。これから1人ずつ紹介しながら、その事例を振り返っていきたいと思います。

千葉発!人々を徐々に巻き込んでいくプレイスメイキング事例|出川菜穂さん

1人目は、Wardrobe Placeの出川菜穂氏は、2020年に千葉県で実施されたプロジェクトのなかのRadio Transmitting StationとChiba Parkの2つの取り組みについて紹介されました。これらのプロジェクトは、コミュニティを巻き込んだワークショップが開催され、共に場所をつくりあげる様子がとても印象的でした。また、プロジェクトで新しくなった公園では、イベントを定期的に開催することで継続して人々が外出するきっかけを効果的に提供している様子が伝わってきました。

4-1Ryan氏が以前来日した際にも交流のあった2人。思い出話に花が咲きました。

アートからはじめるプレイスメイキング|野村パターソン和孝さん

2人目は、北海道旭川で活躍されている野村パターソン和孝氏の登場です。野村氏は、過去にシアトルやニューヨークでミュージシャンとして活動していた経験があります。帰国後に旭川で空き家を見た際に、アメリカでのハウスパーティーとの共通点を見出します。そこから、空き家をアップサイクル(Upcycle:ただ活用するのではなく付加価値を生み出すこと)するプロジェクトを手がけます。その事例は、床屋とシェアハウス、カフェとシェアハウス、そしてアーティストインレジデンスあさひかわ(芸術活動を行う人を一定期間招聘し、その土地で作品制作を行ってもらうこと)など多岐にわたります。野村氏の取り組みでは、日本ではまだあまり馴染みのない芸術の視点からプレイスメイキングを実践している点がとても印象的でした。

4-2「考えているより行動することは難しくない(Easier Done Than Thought)」というタイトルの野村氏のプレゼンテーション。プレイスメイキングを始める人への強いメッセージですね!
アーティストレジデンスあさひかわのアーティストの方の写真展の様子。

自然とともにつくりあげるプレイスメイキング! | Matt Bibeauさん

3人目は、アメリカ・ポートランドからThe City Repair Project(シティリペア)よりMatt Bibeau氏が登壇しました。道路の交差点にペイントをするなど、あらゆる年代の人が交流できるように工夫したパブリックスペースの活用が数多く紹介されました。その中でもMatt氏のプロジェクトThe City Repair Projectは、そのエリアの自然や環境を体感する姿勢が印象的でした。

4-3子供たち向けに開催された日本でのプログラムの様子。初めは自然に触れることが少し怖かった子供たちも、次第にその土地の素晴らしさを五感を通じて知り、愛着が強くなりました。

このような、その土地の自然を通してコミュニティと土地のつながりを強化していく視点は日本ではあまり馴染みがありません。しかし、花や植物をはじめ、虫や動物、そして野菜や果物など様々な自然を体感することでわたしたちは本当の意味でエリアとの繋がりを感じることができるとMatt氏は考えます。(The City Repair Projectは以前にこちらの記事でも紹介しています)

パークコーディネーターがリードするプレイスメイキング|最首希咲さん

4人目は、NPO birthより最首希咲氏が登壇し、パークコーディネーターの役割を実際のプロジェクトとともに紹介されました。パークコーディネーターという職業は、まだまだ日本では馴染みがありません。しかし、最首氏をはじめパークコーディネーターは、ただパブリックスペースの緑地化を推進するのではなく、コミュニティのニーズやエリアとの関わりを理解した上で、公民など多くのアクターと協力しながら、空間の創造をしています。

4-4最首氏が所属するNPO birthは、既存の小さな公園をより効果的に利用してもらうために日々活動を続けています。
プロジェクトの実施によって、それまで多くの人がただ通り過ぎるだけだった空間が、交流の場へと変わっていく様子が印象的でした。

3.11から復興の過程で進んでいく、プレイスメイキング|神田駿さん

5人目は、神田駿氏が登壇し、東日本大地震の被災地でもある南三陸でのプロジェクトについて紹介されました。神田氏は、3.11とプレイスメイキングの関わりについて、震災直後に仮設住宅でうまれた「お茶っこの場」や「りんりんポポロ」などの例とともに紹介しました。地震や津波の被害を受けて、家や学校がなくなったディストピア(暗黒郷)からはじまりましたが、地震前から変わらない土地やコミュニティのアイデンティティをもう一度創り上げるというプレイスメイキングの可能性がとても印象に残りました。

4-5地震や津波の被害後に瓦礫で覆われ以前の街の姿が失われても、実際のプレイスの心髄は残り続けるという点、そしてそれを活かしてプレイスメイキングを進めていくという点がとても印象的でした。

多様な事例にみる日本のプレイスメイキング

5名が紹介されたプロジェクトから伝わる、日本のプレイスメイキングの多様性は可能性に溢れています。日本という土地や文化だからこそ生まれる新たな視点やプロジェクトは、Ryan氏やTina氏も感激していた様に世界へ発信していく誇るべき実例です。

同様に、世界の国から学べることもまだまだあります。プレイスメイキングは、計画を実行した後でも継続してコミュニティの巻き込みや評価や改善を行う必要があります。同じ様に、今後も日本国内でのプレイスメイカーの交流はもちろん、国外の実例から新たな視点を知ることで、プレイスメイキングの学びを深めていくことが重要であると感じました。

グラフィックレコーディング by 古谷栞

テキスト by 土橋美燈里(The University of Sheffield MSc Urban and Regional Planning)

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