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実はあなたの周りにもプレイスメイキング!?世界のプロジェクト3選
都市計画とは異なる手法で、ひとりひとりの豊かな暮らしをサポートすることを目指すプレイスメイキング。近頃プレイスメイキングの議論は日本でも活発になってきていますが、いまいちどんな活動なのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、海外で実践されたプロジェクトをいくつか紹介しながら、日本においてどのようにプレイスメイキングを応用できるかを考えていきたいと思います。
Cover Photo by Projects for Public Spaces
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3/12-17|Placemaking Week JAPAN 2021|プレイスメイキング国際カンファレンス日本初・オンライン開催
(Image by Project For Public Spaces)
このプレイスダイアグラムはプレイスメイキングの「居場所づくり」をコミュニティで評価するために開発されました。使用用途だけではなく、快適さや社会性、そしてアクセスなども要素に含まれています。(ソトノバ記事:成功するパブリックスペースをつくるには?プレイスメイキングの評価ポイントを公開!)
Contents
そもそもプレイスメイキングとは?
2016年の「パブリックスペースを「人の居場所」に変えていく! J・ジェイコブズから脈々と続く「プレイスメイキング」」の記事(前編・後編)でも紹介されている通り、プレイスメイキングはアメリカで誕生した「コミュニティを中心にパブリックスペースを再考し、改革するために人々が一緒に集まって描く共通の理念」のことを示します。普段私たちが生活する街にある建物、道路、そしてパブリックスペース。
何気なく利用していつつも、実際に何がどこに設置されてどのように利用するのか、はたまた誰がそれを決めたのか知らないケースは少なくないと思います。しかし、このプレイスメイキングの手法では誰もが一緒に参加して公園や街路などのパブリックスペースをコミュニティの中心として創り上げることを目標としています。
パブリックスペースをみんなで創出することにはさまざまな効果が期待されます。まず第一に、人々が暮らし働くその場所への愛着が強まり、そのコミュニティの強化と発展を継続的に支えます。加えて、そのパブリックスペースの利用を通して、心身の健康状態や暮らしの満足度を高めることもわかっています。生き生きとした社会活動を実現するためには、プレイスメイキングは高い実効性のある手段なのです。
1:デトロイトを変えた都市型農業|FoodLab Detroitによる都市型農業プロジェクト
それでは実際に世界各国ではどのようなプロジェクトが行われているのかを1つずつ覗いてみましょう。
まず1つ目にご紹介するのは、アメリカのデトロイトで盛んになっている都市型農業プロジェクトです。2017年のTEDでデヴィータ・デイヴィスンが「都市型農業がデトロイトを変える」というタイトルでプレゼンテーションもしています。
もともとデトロイトは自動車の生産地として世界的な大都市の1つでしたが、次第にコミュニティ全体が衰退していきました。雇用や教育の機会をはじめ、新鮮な食品へのアクセスも低下し、住民たちの健康状態も悪化していきました。そこに解決の手を差し伸べたのが「FoodLab Detroit」です。彼らは荒廃した空き地を利用してデトロイトで理想の農業エリアを作り上げることを目指します。
実際に彼らの活動はデトロイト各地で実施され、そのエリアは緑が溢れた人々の交流の場へと変わりました。食材をただ育てていく場としてではなく、美しいデザインを追求していくことで日常的に幅広い世代が集まる場としても機能し、コミュニティ全体の結びつきの強化に寄与しています。そして、この農業プロジェクトは長年問題になっていた住民の健康問題へもアプローチし、改善するサポートをしています。
デトロイトのPlum Street Market Gardenで農作業をする少年。年齢や人種の壁を超えてコミュニティのメンバーで野菜をつくっています。(Posted by FoodLab)
さて、日本はどうでしょうか?
日本の都市の多くにも使われなくなった土地や空き家が多く存在し、用途に関してはまだまだ決定しないまま放置されているケースが少なくありません。また、新鮮な食へのアクセスという点においてもデトロイトに重なる点はあります。だからこそ、この都市型農業プロジェクトは実際に日本でも応用できる可能性があります。デトロイトと同じように、コミュニティの交流の機会をもたらすという意味でもとても有効な手段の1つではないでしょうか。
夕食会などのイベントも開催され人々の交流を促進しています。(Posted by FoodLab)
(参考資料:Devita Davison: How urban agriculture is transforming Detroit
2:ニューヨークにおける公園の有効的な利用|Bryant Park
続いて紹介するのは、ニューヨークの公園のプレイスメイキング事例です。ニューヨークと聞くと世界中から集まった多くの人が暮らし働くビルが立ち並ぶイメージがあります。しかし、ニューヨークのパブリックスペースの利用方法についても、ソトノバレポート「ニューヨークで行くべき水辺空間5選」で取り上げらたように実は多くの公共区間が人々の暮らしを豊かにしているのです。
Bloomberg Associates代表のアマンダ・バーデンは、
「公園などのパブリックスペースこそがニューヨークを特徴づけている」
と話します。と同時に、
「公園をただ建てるのではなくそれを人々が集う憩いの場へと変身させるためには、工夫が必要だった」
といいます。どのような工夫がニューヨークのプレイスメイキングを成功へ導いているか少しみてみましょう。
ニューヨークのBryant Parkで撮影された写真。人々がそれぞれ違う方法で座っている様子がわかります。(Posted by Project For Public Spaces)
その1つにあげられるのは、可動椅子です。
ソトノバレポート「ニューヨークで行くべき水辺空間5選」をみてもわかるように、ニューヨークのパブリックスペースは用途や場所も多様ですが、それと同時に椅子の種類も多様なのです。
アマンダ・バーデンのプレゼンテーションでは、座り心地のよい可動式の椅子の例を取り上げています。彼女は、
「どう見えるかというデザインも重要であると同時に人々がどう感じるかが大切である」
といっています。確かにパブリックスペースにおいて遊んだり、人と話したり、食べ飲みをしたりするアクティビティには「座る」という行為と切っても切り離せない関係にあります。どうすれば利用する人が安らげるのか、そしてそれがエリアにフィットしているのかということはもしかしたら、どんな公園を建てるのかというデザインの問題と同じくらい大切かもしれません。
最近になり日本でも、公園の芝の上で寝転ぶ人やハンモックを広げて休む人などその座り方にもバラエティが増えてきました。公園において、どのように人が「座る」のかという点に注目することで、ただ休んだり風景を楽しんだり、お茶を飲みながら誰かと話したり、はたまたボードゲームをしてみたりと人々の活動の幅もぐん広がります。日本の公園においても、椅子に注目してみることで日本スタイルの新しい公園の利用法が誕生するかもしれませんね。
(参考資料:Amanda Burden: How public spaces make cities work
manda_burden_how_public_spaces_make_cities_work?utm_campaign=tedspread&utm_mediu
3:アメリカ発 ウォーカブルな環境づくりへの取り組み
座るということに注目してパブリックスペースの利用例を紹介しましたが、座っているだけではいけません。歩いたり自転車を漕いだり少しの運動アクティビティも健康的な生活には欠かせません。また、その場所へ到着するまでどの交通手段を利用するのかも重要なポイントです。また、都市の安全面について考えれば車よりも人々に優しい道路設計はとても重要になってきます。
アメリカの都市計画家のジェフ・スペックは、そんな人々が「歩きやすい」「歩きたくなる」ような都市の創造を目指しています。多くの都市では自動車を中心とした道路や街が設計され、それが原因となって前述の安全性や健康、さらには環境問題を引き起こしていると彼は考えます。(ソトノバレポート「ロードダイエットの解説」でもジェフ・スペックの考え方が紹介されています。)
そしてその解決策として、よりウォーカブルな環境づくりを示しています。驚くことに歩きやすい場所に住むことで生活の質も高まるという事実も紹介しています。
それはなぜでしょう?理由は至って簡単です。1日の歩く距離が多ければ多いほど、人々の健康へも良い影響があります。加えて車が減ることで環境への影響の軽減や安全性の向上も期待されます。それだけではありません。もし車道の代わりに歩道スペースが大きくなれば、今まで室内の飲食スペースだけだった飲食店のテラス席ができたり、花壇の鉢植えでデザイン性を高めたりと街の使われ方にも変化が訪れます。
(キャプション)インディアナポリスの歩行者と自転車に優しい空間の例(Posted by Project For Public Spaces)
日本においてはどうでしょう?幸いにも日本の大都市には公共交通が整備されているため、車での移動とともに起きる弊害は世界の都市と比べても少ないかもしれません。しかし、忙しく暮らす都会での生活に「歩く」という行為が加わることで、生活がより豊かになるのではないでしょうか。
「いつもは気になっていなかったあのお店に立ち寄ってみようかな。」
「あんなところに友人がいる、ちょっと話しかけてみよう。」
「今日はお祭りやっているのか、寄り道してみよう。」
そんな偶然が生まれる可能性は、道路という空間のプレイスメイキングから生まれます。道路自体を変えることは難しいかもしれませんが、その使い方という点は議論してる価値がありそうですね。
(キャプション)2019年丸の内で実験されたMARUNOUCHI PARK STREETの様子(Posted by Placemaking Japan)
(参考資料:Jeff Speck: The walkable city
ジェフ・スペックさん登壇のイベントはこちら>>
#14 Special Keynote 「ウォーカブルな都市に生まれる居心地のよい場所」by Jeff Speck
おわりに
いかがだったでしょうか。
3つの取り組みについて紹介しながら、日本ではどのようにプレイスメイキングが使えるかどうかを考察してみました。
「プレイスメイキング」という手法はなんだか一見難しそうですが、実は簡単に誰でもそのきっかけになるアイディアを頭の中に持っています。
ぜひ今週末は散歩がてら、自分の生活するエリアを歩いてみて、どんな場づくりができるのかを考えてみてはいかがでしょうか。
Placemaking Week JAPAN 2021をチェック!
3/12-17|Placemaking Week JAPAN 2021|プレイスメイキング国際カンファレンス日本初・オンライン開催
テキスト:土橋美燈里(The University of Sheffield MSc Urban and Regional Planning/Placemaking Japanインターン)