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「PLACE GAMEガイド」とは!?パブリックスペース診断ツールの使い方解説 PWJ2021 #13

プレイスメイキングを始めるためには、場の特徴を読み取ってビジョンを描き、積極的にアクションに関わるチームづくりを行うことが不可欠です。それに役立つツールが今回のキーワードである「PLACE GAME」。

本セッションでは、日本でのPlace Gameの研究や取り組みの紹介、日本版のPLACE GAMEガイドの解説がなされました。

本記事では、「Place Gameガイド」公開!パブリックスペース診断ツールの使い方解説を紹介します。当日の様子は、Twitterテキスト中継からもご確認いただけます。


Place Gameとは

パブリックスペース活用にあたって、社会実験やエリアマネジメントといった取り組みは日本国内でも多くなされていました。しかし、その前段となる場の評価やステークホルダーとの関係づくりといった部分はあまり語られていなかったように思います。

泉山塁威(一般社団法人ソトノバ共同代表理事)さんは、

Place Gameのポイントは、

場所の評価と課題をリサーチすること

ステークホルダーとコミュニケーションをとるツールになること

にあるのではないかと語ります。

20210316_PlaceMakingWeek2021-093Place Gameとの出会いから今に至るまでの全体像を紹介する泉山さん Photo by Takahisa Yamashita

Place Gameの日本での事例を紹介

続いて、矢野拓洋(ソトノバ・パートナー)さんからPlace Gameの実践例の紹介です。

UR都市機構と一般社団法人ソトノバは、2020年度よりPlace Gameの共同研究を行っています。今回はそのいくつかの実践事例の中で、永山の事例を元にPlace Gameの紹介されました。

Place Gameには大きく4つのステップがあります。

①基本情報の理解

Place Gameを行う場所を特定し、特に力を入れたいエリア、ポイントなどを確認します。

このステップでもう一つ重要なのが「仲間への理解」です。

他の参加者がどのような人なのか、どんな想いできていてこれからどんな事をしていきたいのか、お互いのことを知る事が大事です。

#13 愛と理解を深める航空地図などをつかって対象地の基本情報を捉えます

②評価シートを使ったまちあるき

評価項目には、大きく4つの要素があります。

➀印象と快適さ、②アクセスと接続、③利用と活動、④社会性

これらの要素からつくられた16の項目が盛り込まれた評価シートにチェックを入れていきます。

#13 評価シートを使ったまちあるき一人一枚評価シートをもって自分の目で対象地を評価していきます

③議論し評価と考察の作成

課題とポテンシャルを洗い出し、それを元に短期的には何ができるだろう。長期的には何ができるだろうと次なるアクションを考えていきます。

#13 議論し評価と考察の作成複数の人で議論をすることで、自分の頭では思いつかないようなアイディアや視点が生まれてきます Photo by ナムフォト

④議論の内容の共有

前のステップで出てきた場の課題とポテンシャルを元にどのくらいのスパンで何ができるかアイディアをまとめ全体の場で共有します。

#13 議論の共有違うグループの議論を聞くのは有意義な時間です Photo by ナムフォト

Place Gameで、プレイスへの愛と理解を深める

締めくくりにPlace Gameにおいて大事なポイントを矢野さんが語りました。

なにより重要なのは、プレイスに関わる当事者たちが、プレイスに対する「愛」と「理解」の両方を深めていくことです。そして、なぜ自分たちがPlace Gameをやっているのかという目的の部分を共有し、実践する中で、そこに集まった仲間とこれからも一緒にやっていこうというチームワークを高めていく。そういったツールがPlace Gameなのです。

20210316_PlaceMakingWeek2021-094Place Gameの日本での事例を紹介するソトノバの矢野さん Photo by Takahisa Yamashita

「愛」だけでもなく、「理解」だけでもない。その両方を深めていって初めてプレイスというものが育まれていく。矢野さんの発言にはっとさせられました。

Place Gameは、共通の指標でプレイスの客観的に評価をする一方で、そのプレイスに自分はどのような印象を受けるか、将来自分たちはどのようなプレイスにしていきたいのかといった主観的な想いやアイディアも共有します。

その両方があることで、客観的な「理解」と主観的な「愛」が育まれていくのかもしれないとプレイスメイキングにおけるPlace Gameの重要性を感じました。

UR都市機構とソトノバの共同研究を実施

ソトノバは、UR都市機構と共に1年間かけてプレイスメイキングの共同研究を実施してきました。

共同研究を実施することになったきっかけは、

Placemaking Week ASEAN 2019でPlace Gameを体験してきた泉山さんが

海外のものをそのまま適用可能かわからない。日本に合わせたPlace Gameのガイドを一緒につくりませんか

とUR都市機構さんに声を掛けたことでした。

UR都市機構の藤田曜士(UR都市機構)さんは、実際にPlace Gameを体験してみた感想を次のように語ります。

ゲームという名前がミソ。「楽しむ」という要素を組み込むことによって参加のハードルが下がります。また、まちあるきの際の評価シートで、複数の人が共通の物差しでまちを見ることができます。居場所やまちという曖昧なものをより解像度高く共有・議論できる事がこのPlace Gameのポイントですね。

20210316_PlaceMakingWeek2021-110UR都市機構の藤田さんがPlace Gameの感想を語ります Photo by Takahisa Yamashita

Place Gameガイドまもなく公開!

Place Gameガイドの制作に関わったオンデザインの田辺優里子(オンデザイン)さんから本の解説がありました。

ガイドの中には、Place Gameの概要、世界や日本での実践例、実際に実施する際のポイント、Place Gameで使用する資料などが掲載されています。

また、Place Gameガイドと同時並行でパーキングデー(Park(ing)Day)のガイドも作成されています。

Place Gameでの結果をパーキングデーにつなげていくというところで、2冊合わせて使っていただくとより効果的に利用できるかと思います。

Place Gameがプレイスメイキングのプロセスであることを意識させる田辺さんからの紹介でした。

20210316_PlaceMakingWeek2021-102田辺さんよりPlace Gameガイドの解説 Photo by Takahisa Yamashita

どうやってPlace Gameを日本で使っていくか?

最後は、Place GameについてのQ&Aコーナーです。

Place Gameの位置づけ、意義、活用する際のポイントなど様々な質問が上がりました。

オンラインで質問を受けつけネット上に上がってきたものを元にUR都市機構の藤田さんが質問し、ソトノバの泉山さんと田村康一郎(一般社団法人ソトノバ共同理事)さんが丁寧に答えていきます。

まず始めの質問は、ワークショップとPlace Gameの違いについてです。

藤田さん

ワークショップとPlace Gameにはどのような違いがあるのでしょうか

泉山さん

プレイスメイキングは、専門家だけで行うものではなく、その地域の人を巻き込んで行います。従来のワークショップのように、ポストイットを貼って意見を多く出す人や声の大きい人に依存してしまうのではなく、共通の評価シートをもった人が同じ基準・物差しで議論できるというのが一番の違いなのではないでしょうか。また、その基準も日本国内だけでなく、シンガポールやアメリカなど国を越えて共通の物差しで議論ができる事も注目すべき点です。

筆者も初めてPlace Gameを体験したときは、模造紙にアイディアをまとめたり、ポストイットを使用することからゲームというよりはワークショップに近い印象を受けていました。しかし、Place Gameでは、共通の指標を共有していることから知識や年齢などの差が関係なく、参加している全員の声がフラットな形で拾われるという点で、従来のワークショップと違うということに納得しました。

つづいて、Place Gameをする際のポイントについて質問が投げられました。

藤田さん

プレイスゲームの始め方、対象地選びのポイントなどはありますか?

田村さん

その点に関しては自分たちも色々と議論をしました。対象地については、あまり大きすぎない100m以内くらいの見通しがつくスケールがよいかと思われます。そして、何よりPlace Gameでは参加者自身に場のポテンシャル、課題を見つけてもらうというのが重要です。事前情報は与えすぎず、参加者がブランクな状態で始めると自由な発想や視点が生まれて面白かったりします。

事前に情報を与えすぎない事で、議論の余地やアイディアの幅を持たせるというのは非常に面白い指摘ですね。

藤田さん

まちあるきから帰ってきて議論をする際、参加者の小さな声をどうやって拾っていくか工夫していることなどはありますか?

泉山さん

ここでも評価シートが重要な役割を果たしてくれます。従来のワークショップでは声の大きい人の意見が目立ち、それ以外の人の意見が埋もれてしまうのが課題でした。しかし、すべての参加者が評価をしていることで、ファシリテーターは参加者に話題が振るりやすくなります。また、評価シートが引き金となって議論が生まれ一人ひとりの意見が埋もれず、顕在化することができます。

藤田さん

なるほど。では、その議論の時に出てきた意見をまとめていくポイントなどはあるのでしょうか?

田村さん

日本でPlace Gameを実施するにあたり、まとめ用のワークシートを作成しました。場の評価(課題とポテンシャル)を各部分が一番上にきて、その下に短期的提案、長期的提案とつながる縦長のワークシートになっています。これは、プレイスメイキングのつながりを意識した設計になっています。

田村さんの発言からワークシート一つをとっても今後Place Gameを実践する人が使いやすいように日本版のPLACE GAMEガイドが細やかにつくり込まれている事が分かります。

藤田さん

ところで、泉山さんたちは、マレーシアで初めてPlace Gameを体験されたと思うのですが、日本とマレーシアでPlace Gameに違いなどはありましたか?

泉山さん

日本でのPlace Gameの事例を重ねていく中で、参加者や作り手が理解しづらい点、難しい点を自分たちの使いやすいように改善・修正していきました。特にワークショップスキルの差や日本人の真面目さから来るマニュアルやフォーマットがないとやりにくいのが日本の一つの特徴かも知れません.したがって、日本での実践事例を踏まえて,マレーシアで行った時のものが日本独自のポイントでかなり補強されたという感じでしょうかね。

次第に質問は本質的な部分に踏み込んでいきます。

藤田さん

プレイスに対する「愛」と「理解」という話があったと思いますが、その2つにはどのような関係性があるのでしょうか?

田村さん

『愛』というと重たい印象を受ける人もいるかもしれませんが、『愛着』と考えるとどうでしょうか。プレイスゲームによって、いつもとは違った目線でまちを見ていくと今まで気づかなかったまちの特徴や成り立ちなどにも意識が向きはじめます。それが、まちへの理解につながりますし、「もっとこうしたらよくなるんじゃないか」とまちを自分ゴト化されていく過程で『愛着』が育まれていきます。

20210316_PlaceMakingWeek2021-111プレイスに対する「愛」と「理解」についての見解を語る田村さん Photo by Takahisa Yamashita

Place Gameはそれ自体で完結するものではありません。そこでの評価がその後のプレイスメイキングにつながっていきます。プレイスメイキングという大きな流れの中でPlace Gameを行うからこそ、まちへの視点もより自分たちのアクションできるレベルまで落とし込まれ、自分ゴトに変わっていくのかもしれません。

そして、藤田さんから一番コアな部分についての問いがなされました。

藤田さん

プレイスゲームの最大の目的とは何なのでしょうか?

泉山さん

地元の住民、商店街の人などステークホルダーをつなげ、対話の場をもつためのツールとしてPlace Gameを使ってみるというやり方がまずあると思います。プレイスメイキングのステップを踏まえて答えるとすると、ステークホルダーでつながって共通のプレイスビジョンを描いていくという所に最大の目的があると思います。他にも社会実験の効果測定の一つとして使えるなど,様々な場面で場の評価・市民との場についての対話に使えそうです。

Place Gameはただ場の評価をするだけのものではなく、ステークホルダーの対話のツールになっていく。さらには、そこから共通のプレイスビジョンを描いていくチームやコミュニティが形成されていく。Place Gameの意義がまさに分かるお話でした。

最後に、ではどうやってPlace Gameひいてはプレイスメイキングにコミットする人を見つけ巻き込んでいくか。という質問です。

藤田さん

今後どうやって、またどのように人を巻き込むかが重要になってくると思のですが、人を集める際の工夫などはありますか?

泉山さん

プレイスメイキングは、空間デザインなどハードに関わる人に偏りがちです。しかし、実際にエリアマネジメントや広場を運営するといったフェーズになってくると多様なイベントやアート、医療など様々な分野が重要になってきます。プレイスゲームや、プレイスビジョンをつくる段階からマネジメントや運営に関わっていく人を多様な分野から巻き込んでおくことがポイントです。それが後々社会実験や場をつくるという最終的な部分に効いてくると思いますね。

今回のイベントで、日本でのPlace Game実施、普及に向けてさまざまな実験や研究、議論がなされていたことを知りました。丁寧につくり込まれてきたその過程を思うとガイドを手にする日がより一層たのしみになりますね!PLACE GAMEガイドを通して、今後日本の様々な地域で「愛」と「理解」で育まれるプレイスが生まれていくことを願っています。

 グラフィックレコーディング:古谷栞

テキスト by 三宅ひふみ(Placemaking Japanインターン)

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