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ストリート|道路空間

ウィズコロナの「御堂筋」のスガタをつくる 「御堂筋チャレンジ2021」

近年、「道路空間を街の活性化に活用したい」、「歩道にカフェやベンチを置いてゆっくり滞在できる空間にしたい」など、道路への新しいニーズが高まっており、車中心から人中心の空間へしようという動きが広がっています。

このような道路空間を活用しやすくするため、国会において道路法が改正され、2020年11月新たに「歩行者利便増進道路制度(通称:ほこみち)」が創設されました。

【速報考察】道路法改正により歩行者中心の道路空間:「歩行者利便増進道路制度」創設へ

そんな中、大阪市では、御堂筋が歩行者利便増進道路(ほこみち)に指定され、2021年11月3日から12月2日に歩道空間の利活用状況等を検証する「御堂筋チャレンジ」が行われました。また、この社会実験に合わせて、「御堂筋イルミネーション」、「道頓堀リバーフェスティバル」、「中央区にぎわいスクエア2021」といったイベントも開催されました。さらに、御堂筋の終点エリア周辺では「なんば広場改造計画」の社会実験も開催されました。

2021年11月下旬に道路協力団体・ミナミ御堂筋の会事務局のアルパックの中塚一さん、日本大学理工学部建築学科都市計画研究室(根上・泉山ゼミ)で社会実験を視察しました。

今回は、「御堂筋チャレンジ2021」の社会実験の目的と行われた具体的な内容について、筆者が視察した当日の写真を用いながら紹介していきたいと思います。


御堂筋チャレンジ2021

大阪市では、2019年に策定された「御堂筋将来ビジョン」に基づき、御堂筋を車中心から人中心へと空間再編を進めています。広がった歩道空間の利活用状況やエリア周辺の回遊状況などの検証を行うため、一般社団法人ミナミ御堂筋の会(大阪市指定・道路協力団体)と大阪市建設局主体で、「御堂筋チャレンジ2021」が実施されました。

実施場所は御堂筋・中央区道頓堀1丁目(道頓堀川)〜中央区難波5丁目(難波西口交差点)の沿道約450mです。

この沿道は、ベンチの設置による滞在空間化を目指す「2期整備区域」、特例区域のベンチ・デジタルサイネージ・モビリティハブの設置による滞在空間化を目指す「モデル整備区域」、沿道店舗のオープンカフェによる回遊動線の創出を目指す「モデル整備西側区域+カフェストリート」の3つの区域に分けられます。

IMG_7078御堂筋チャレンジの広告 IMG_74352期整備区域、モデル整備区域、モデル整備西側区域+カフェストリート (引用:御堂筋チャレンジ2021 社会実験概要版)

ウィズコロナ下においてメインストリート・御堂筋があるべき姿を検証

御堂筋チャレンジの目的として、「①道路の将来形と持続的な管理形態の検証」、「②コロナ下でのほこみちの利活用形態の検証」、「③エリアの回遊創出とスマート化への検証」があります。これらを一つずつ紹介していきたいと思います。

①道路の将来形と持続的な管理形態の検証

1つ目の目的として、ベンチ配置や歩車分離など沿道の将来形を定め、公民分担による持続的な管理のあり方が検証されました。

将来のベンチの配置を検証し、道路管理者・道路協力団体との役割分担を決定するために、御堂筋には様々な形のベンチが置かれていました。整備・設置には、民設民営型、公設民営型、公設公営型があり、将来形としては毎日出し入れする方法、日常のものとして維持管理する方法といった違いがあるようです。

視察した際は、背もたれのない3種類のベンチが置かれていました。簡易ベンチは真ん中が少し盛り上がっていたため、滞在はできるものの長時間の滞在を回避し、治安を守っているのではないかと感じました。しかし、L型ベンチと灰色のベンチは寝そべることができるため、毎日出し入れする方がその場の空間に適しているのではないかと思います。以上のように、置くベンチの種類によって管理方法を変えていく必要があると感じました。

C3F9BECC-482D-4BC6-B52D-E67B4B6396E3簡易ベンチ 真ん中が少し盛り上がっている E03D601B-6B76-431D-80EE-4E5C2B5200AAL型ベンチ 85B1B3A4-89A5-4651-A62D-254982A4BC6F灰色のベンチ

ベンチの他にも植栽の維持管理や道路の維持管理、不法駐輪対策業務など様々な項目について、道路管理者と道路協力団体の公民連携による持続的な維持管理ができるよう、適切な役割分担を社会実験を通じて設定し、実現できる仕組みを検討するということが今後の課題になってくるといいます。

さらに、道路協力団体は道路の維持管理活動実施のために広告等の掲示による収益を活用することが可能ですが、一定の財源を確保することについては課題も残るそうです。

②コロナ下でのほこみちの利活用形態の検証

2つ目の目的として、コロナ禍で将来候補を含む、ほこみちの特例区域における道路空間利活用の形態を実験し、常設化へのルール等が検証されました。

ベンチ・植栽が設置された「休憩スペース」、シェアサイクル・ベンチ・デジタルサイネージが設置された「モビリティ・ハブ」、沿道店舗で管理される「オープンカフェ」など様々な利活用が検証されました。

シェアサイクルポートの設置

今回の社会実験において、放置自転車の削減と新しい生活様式に対応したシェアサイクルのポートが設置されました。

シェアサイクル利用やバナー等の収益を活用し、放置自転車対策を実施したり生活困窮者の雇用につなげたりと、将来的には道路協力団体の占用物として長期的に設置することも視野に入れられています。また、その設置場所にはデジタル情報案内板も設置され、周辺スポットの地図のほか、シェアサイクル利用方法などが案内され、ビジネス・観光両方から回遊をサポートすることも期待されています。

実際に見た時も放置自転車がなく、自転車道の脇にシェアサイクルポートが整備されていたことで、歩行者のゾーンと自転車のゾーンが分けられていて歩きやすい道になっていました。

FA112C78-5250-4EAC-A1BF-95BD9BF8B5CE整備されたシェアサイクルポート

・デジタルサイネージ+滞在空間の設置

同じく今回の社会実験において、広告の収益と情報発信で回遊を促すことを目的としたデジタルサイネージと滞在空間が設置されました。

デジタルサイネージは、社会実験情報のほか、広告や周辺のイベントも掲示し、回遊を促すツールとして活用し、表示内容や案内効果、収益性などが検証されました。

また、その周辺に前年度の社会実験と同様、コロナ禍でもオープンエアで休憩できる滞在空間としてベンチが複数設置されました。夜間景観の創出、御堂筋イルミネーションの鑑賞スポットとしても機能します。前述した通り、管理運営も検証されました。

デジタル社会の今、スマートフォンに依存した生活をする人が多く、歩きスマホが問題視されています。そのため、気軽に休憩できる滞在空間を設けることは、安全性の面でも大事であると考えます。そして、デジタルサイネージによる情報発信は、スマートフォンではなかなか知ることのできないマイナーな面白い情報やためになる情報などを発信することで、気づきを得る機会となり、滞在性を上げるとともに新たなコミュニティが生まれる場になるのではないかと感じました。

9D2A1066-D80C-4701-B398-85F26FD5C868デジタルサイネージと滞在空間

・オープンカフェの設置

沿道企業により、道路を一時的に利用したオープンカフェも設置され、将来的な「ほこみちの特例区域の指定」を念頭に道路空間の再編の形態が可視化されました。沿道店舗にとってメリットとなる将来の継続的な利用ができるよう、実施費用の一部と日常管理の一部を分担、そして道路協力団体や沿道協議会による公募・チェック・管理者等との調整といったことを実施・検証し、次年度以降の本格運用ルールにつなげることが目的とされています。

視察した際、駅前のオープンスペースには人が見られたものの、時間や気候の問題もあるのか御堂筋沿道のオープンカフェには利用者が見られませんでした。飲食が目的の人に対して、店内だけでなくオープンカフェも利用してもらえるような工夫を考え、検証していく必要があると感じました。

30C21A72-87EC-4037-AE3C-66217A7295BBオープンカフェの様子

以上のように、歩行者利便増進道路(ほこみち)を利用した沿道活動の将来形として、「最先端のミナミの魅力や意欲的なチャレンジが表出することにより、沿道・まちのバリューアップサイクルを生み出す道路空間」が目指されています。

③エリアの回遊創出とスマート化への検証

御堂筋・難波駅前広場からエリアへと回遊を拡げていく方策がAIカメラや人流データ等をもとに検証されました。具体的には、「御堂筋(なんば駅前広場)での通行・滞留状況の把握」、「御堂筋周辺エリアでの回遊性状況の把握」、「地下街から地上への人流状況の把握」の3つです。

・御堂筋(なんば駅前広場)での通行・滞留状況の把握

御堂筋・なんば駅前広場でそれぞれ滞在空間化を行うことによって、通行・滞留状況がどう変化するか検証されました。これには、AIカメラ設置による人流の把握、滞在行動調査による滞在効果の把握、大学による研究が行われました。AIカメラを新設された電源付き照明柱に設置し、2箇所で歩道空間の利用状況を把握するとともに、データマネジメントのあり方が検証されました。

電源付きの照明柱というのは今の時代に合った画期的なアイデアだと強く感じました。オフィスワーカーも多いエリアであるため、パソコンを充電しながら少し作業ができるような作業台も照明柱と組み合わせると、より滞在性のある空間になるのではないでしょうか。

CF476F57-83A0-4458-ABEA-EDFC3A203A6DAIカメラが設置された電源付き照明柱

・御堂筋周辺エリアでの回遊状況の把握

ミナミエリアの空間特性や人の流れを把握・分析の上で、御堂筋・なんば駅前広場の滞在空間化によって、東西の通りや商店街等の周辺エリアへの回遊がどう変化するか検証されました。これに伴い、「人流データの取得・可視化で密度を把握すること」と「経路分析」が行われました。

人流データの取得は、コロナ禍の影響が続くことも念頭に、コロナ前のインバウンド来街者やコロナ禍での日常的な来街者の通行・回遊データを取得することで、社会実験や将来的な空間再編等でどのような仕掛けが必要かを議論する材料となるそうです。

経路分析においては、御堂筋やなんば駅前広場を基点に、回遊創出の仕掛けを議論する材料となる空間特性が分析されました。これは、ウォーカブルミナミに向けての回遊促進策・データ利活用方策を考えていく際に活用されるといいます。

得られた人流データを可視化することで、より多くの人と今後の計画を議論しやすくなると感じました。

・地下街から地上への人流状況の把握

御堂筋・なんば駅前広場の滞在空間化や地下・地上での連動した誘導によって、地下街と地上間のアクセスに変化が見られるのか検証されました。これに伴い、地下鉄・地下街出入のビーコン設置と人流データの把握が行われました。

以上のように、スマートシティ化によるメインストリートのアップデートが行われることで、スマートストリートの実現が目指されています。

ミナミ御堂筋でめざす将来の姿

先述のように、ミナミ御堂筋でめざす将来の姿には、主に「道路協力団体による自律的な管理と公民連携」、「拡幅後の歩道空間活用によるバリューアップ」、「スマートストリート」が挙げられ、今回の御堂筋チャレンジではそれにつながる様々な検証が行われました。

特に、人が通る空間、自転車が通る空間、タクシーに乗る空間、といったように空間が明確に分けられたことで、歩きたくなる空間が実現されていて非常に良いと感じました。また、沿道の植栽を最初は低木にしようという計画について、ゴミがそこに溜まってしまう可能性があるとして芝生に変更することを検討しているとアルパックの中塚さんが仰っていました。そして視察した11月下旬には、その効果を検証するために芝生にする工事が進んでいました。実際に低木部分にゴミが捨てられているのも見て、今後を考えながら計画していく重要性を学びました。

このように社会実験等を通して実態を把握し、そこから将来のために何ができるのか、どうすれば実現できるのかを考えていくことで、さらに歩きやすく滞在しやすい道路空間をつくる上で大切になっていくのだと感じました。御堂筋チャレンジの振り返り報告を楽しみに待ちたいと思います。そして、御堂筋が今よりさらに素敵な空間となることを期待しています。

IMG_7127芝生が検討されている敷地 (撮影:小野寺瑞穂) IMG_7138低木部分に捨てられたゴミ(撮影:小野寺瑞穂)

参考文献
1)御堂筋チャレンジ2021 社会実験概要版
2)大阪市,御堂筋, https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000548208.html
3)御堂筋の会,御堂筋とは, https://minami-midosuji.net/about
4)御堂筋の会,ウィズコロナの「御堂筋」のスガタを作る社会実験「御堂筋チャレンジ2021」を11/3〜12/2に実施します!, https://minami-midosuji.net/archives/17210

テキスト:小野寺瑞穂(日本大学理工学部建築学科3年都市計画研究室(根上・泉山ゼミ))

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