ソト事例

Example

プラザ|広場

大阪のおもてなし玄関口を夢見て 「なんばひろば改造計画」視察レポート

皆さんは歩行者優先の都市空間整備が、世界的な潮流になっているということを耳にしたことはありますか。

欧州都市を見ると、かつて自動車が行き交っていた街の中心的な広場や主要な観光施設の周辺、そして商店が立ち並び集積した地区が、自動車との折り合いにも工夫が施され、一層、歩行者を優先した空間へと再整備され、その結果として歩きやすい地区に変貌していることを実感します。

ソトノバでも「歩行者利便増進道路」や、「ウォーカブル」について何度か紹介(「リンク&プレイス」とウォーカブルストリートウォーカブルとプレイスメイキングの親和性と可能性)してきました。今回、それらに加えて道路空間や駅前広場というパブリックスペース活用に焦点をあて、「なんばひろば改造計画」の社会実験の概要やその様子と、筆者自身の社会実験視察を通しての気づきなどをまとめました。この記事が、少しでも日本のこれからのパブリックスペース活用のヒントになったら幸いです。

本記事で取り上げる大阪府大阪市中央区に位置するなんば駅は、事業計画に「誘導施設整備区」を定め、空き地等を集約し、集約した土地に医療・福祉施設等の誘導施設の整備を図る土地区画整理事業である「空間再編賑わい創出事業」をもとに、道路空間再編(歩行空間拡大)の社会実験とウォーカブルの社会実験を組み合わせ、さらには、御堂筋チャレンジと連携した日本国内の中でも注目の取り組みを行っています。


なんば駅前のタクシープールに違和感を抱いた周辺の人々によって

大阪ミナミの中央に位置する南海なんば駅前は、「高島屋」や「まるい」が位置し、揺るぎない人気があります。さらに、大阪全体が発展・繁栄していくためには、いくつかの代表的な拠点がそれぞれに個性を磨き、互いに競いあいながら、多様な魅力を発信していくことが重要です。特に、コロナウイルスが終息した際には、大阪万博へ向けインバウンド観光が急増することが期待できます。食やショッピング、エンターテイメントをはじめ歴史、文化、芸術、芸能などにおいて様々な魅力を有しているなんば駅周辺は、大阪における受け入れ拠点としてポテンシャルが高いといえます。

なんば駅前は、新大阪駅、関西国際空港が近く、多くの国内外からの来街者が行き来する場所であるにもかかわらず、市民からの評価や駅前空間の利用は減少してしまいました。これは駅前空間の大半を車両が占めるタクシープールとしてしまっているなど、時代にそぐわない現状の課題を改善しようという周辺地域のまちづくりの動きによって、本来まちの賑わいのキーポイントといえる駅前空間の使われ方について2008年に地元発意で空間再編の検討がはじまりました。

駅前_タクシープールの様子タクシープールとして使用される現状 なんば駅周辺道路空間の再編に係る基本計画(kihonkeikaku.pdf (namba-hiroba.jp))

車中心の空間から人中心の空間へ! 大阪のおもてなし玄関口とは(将来像)

2008年の空間再編の検討からまもなく、2011年に周辺の町会、商店街、企業等の27団体が参加し、「なんば安全安心にぎわいまちづくり協会」を設立し、まちづくり構想が策定されました。2016年には、なんば駅周辺道路空間を来街者が待ち合わせ等に活用できる憩い・くつろげる空間と、地域情報をはじめ関西エリアの観光情報を発信するなど、世界をひきつける観光拠点にふさわしい人中心の空間として整備し、その空間に対する評価を行うことを目的とした社会実験(なんばひろば改造計画)を実施し、官民で大阪のおもてなし玄関口を実現するために、3つの基本方針が策定されました。

1つ目は「人中心の空間に再編し、世界的繁華街のミナミの新たなシンボル空間を生み出すこと」。

2つ目は「ミナミ・大阪・関西を回遊する拠点として、地域と連携し情報を届けること」。

3つ目は「人のまちミナミの中心として、居心地よく安心感のある空間を創造すること」。

です。

この3つを柱とし、歩道拡幅による安全性向上と車両と歩行者が混在することの緩和。歩行者空間拡大による憩いの場の創出と利活用を目指しています。これらの実現するためには、道路交通再編が重要であると考えられます。

そこで、本社会実験では、「御堂筋からの通過交通をなくす・貨物車両のみの通行(南からの進入)に限定・タクシー、バスをはじめとする公共交通を再配置」の3つの交通再編が行われました。この実験を通して、駅前を拠点とした歩⾏者空間拡張を実現することで、その結果として、「既存の歩⾏者モール」・「周辺の特徴的なエリア」「御堂筋の空間再編計画エリア」・「なにわ筋線新難波駅」へとコミュニティが繋がり、エリア全体を回遊するネットワークを創出していくことができるといえます。

img02_2021_1(なんばひろば将来イメージ)なんば駅前広場の将来イメージ なんば広場改造計画(http://www.namba-hiroba.jp/plan/index.html)

実現に向けた交通量調査・ウォーカブルの2つの社会実験について

先述のように、本計画(なんば駅周辺における空間再編推進事業)において、『「大阪のおもてなし玄関口」~世界をひきつける観光拠点づくり~』をコンセプトに行われている「なんばひろば改造計画」。

これは、なんば駅周辺の道路空間を、現在の車中心の状況から、人中心の空間へと再編し、地元の組織等のエリアマネジメント活動により、世界をひきつける観光拠点として上質で居心地の良い空間の創出をはかるものです。道路整備やウォーカブルの促進などの際には、社会実験が重要であるといえます。それは、周囲への交通や、変化による周辺の人々への影響、経済効果などに対して情報を集めるとともに、人々の理解を深めるためだと考えられます。

そこで、今回実際に行われた社会実験、2つについて概要を説明します。

①なんば駅周辺 道路空間再編(歩行者空間の拡大)の社会実験

2016年の社会実験を引き続き、なんば駅周辺の交通荷捌き運用や安全性を検証する社会実験が実施されました。

検証項目としては大きく分けて3つあり、

・社会実験中に設ける停車帯や通行証発行により、なんさん南北通りへの荷捌き車両の進入を管理し運用方法の検証

・歩行者天国区間の歩行者の安全性の検証

・駅前広場からなんさん南北通り区間における押しチャリの徹底など、自転車の適切な通行および駐輪場の利用状況の検証

です。

このような社会実験を実施する際には、当日の交通量を推測することや、地域の人々の理解を深めるなどの事前準備が重要です。なんばひろば改造計画でも、荷捌きルール説明会などを設け、周辺店舗への平常時との違いと、実験時でも問題なく営業できるという理解を深めてもらうことで、今後もこのプロジェクトに意欲的に協力してもらえるように努めているようです。

traffic2021_3(交通規制内容)社会実験期間中の交通規制 なんば広場改造計画(http://www.namba-hiroba.jp/about/index.html)

②なんば駅周辺 ウォーカブル(歩行者空間の利活用)の社会実験

エリアに回遊性を生み出すことを目的に、将来の日常的な使われ方を意識した滞留空間の創出を検討する社会実験も①と同時に実施されていました。

検証項目としては大きく分けて3つあり、

・「動線、滞留空間、利活用区域、広告の設置位置や喫煙所の規模を検証し、設計プランを検証すること」

・「観光案内事業等の事業性や実施位置を検証し事業計画へ反映を行うこと」

・「可動式の机・椅子の運用を検証し運営計画へ反映を⾏うこと」

です。エリアに回流を生み出す工夫として、休憩や待ち合わせに利⽤できる机・椅子を配置し休憩スペースを演出する様子が見られました。

IMG-8079なんば駅前広場の滞在空間のための可動式机・椅子 Photo by NATSUHO MIZUSHINA

また、おもてなしの玄関口として広場内に移動式の観光案内を置き、なんばエリアのオススメを発信する様子。経済効果を期待し、なんばエリア周辺の劇場等のチケットの当日&翌日分のチケットが割引販売で販売される「tkts」などが配置されている様子も見られました。

これらの駅前を拠点とした歩行者空間活用により、エリア全体を回遊するネットワークが創出され、なんばエリアの1日乗降客数、約90万人の流れがこの広場整備により大きく変化することが期待できるとされています。

今後は、行政との協働のもと、「なんば広場マネジメント法人設立準備委員会」の発展型となる運営法人が管理運営を行い、なんさん南北通りの無電柱化を含め、2025年の大阪万博までになんば駅周辺における空間再編推進事業の核といえる駅前ひろばの将来イメージを実現させていくようです。

IMG-8082劇場のチケットが割引販売で販売される「tkts」 Photo by NATSUHO MIZUSHINA

駅前の道路空間再編(なんばひろば改造計画)から

今後、なんば駅周辺では、南海本線が2031年春に開業予定の「なにわ筋線」(南海なんば~JR新大阪間)へと乗り入れるために1つ手前の新今宮駅から分岐して地下路線を新設。そして、ここなんば駅周辺の地下に新南海難波駅が整備される計画(関西高速鉄道株式会社│なにわ筋線)となっています。これにより、南大阪方面や関西国際空港だけでなく、新大阪方面からも1本につながることとなれば、なんば駅が路線の中心地という位置づけになると考えられています。

なんば駅周辺における空間再編推進事業・「なんばひろば改造計画」によって、なんば駅前広場が観光客にとって魅力あふれるシンボリックな空間へ、また住民にとっての安全で安心感を感じる憩いの場へと変貌することで、大阪・関西の玄関口としてよりふさわしい場所になり、より多くの人が集まるエリアとなることが期待できると感じました。

また、なんば駅前広場と同じく歩道拡張などの空間再編に着手している御堂筋にも接続しており、御堂筋から道頓堀川の水辺空間を楽しめる「とんぼりリバーウォーク」にもアクセスも可能になります。これと、駅前広場や御堂筋とった歩行者空間と、ミナミ界隈の商店街を中心としたアーケードが一体となることで、回遊性のあるミナミエリアが形成されることになり、歩いて楽しい、開放的な空間に生まれ変わるなんばの街並みが期待できると考えています。

さらに、今回の社会実験を視察した際に、理想的なまちづくりを実現させていく為には周囲の人々の理解と協力が必要不可欠であると改めて感じました。今回の社会実験を視察した際も、意欲的な組合やエリアマネジメント法人等によって取り組みが進められていく一方で、平成29年3月27日になんば駅前広場空間利用検討会によって策定された、「なんば駅周辺道路空間の再編に係る基本計画」の中で社会実験の意図や様子を見ていない人の、広場化に対するイメージは「何とも言えない・現状のままが良い」と回答した人が、半数以上だと示しているデータがありました。

社会実験を重ね交通状況の影響や、空間再編によって得られる賑わいのイメージを周囲の人々に示すことで、理解を得ることが重要であると感じました。

なんば駅前広場では、歩行者が主役となる空間を目指して、大阪なんばエリアに来街者や観光客をどのように迎えるのか検討すべく、2016年、そして2021年の計2回の社会実験の行われてきました。さらなる社会実験を重ね、正確なデータと周囲の人々の理解を深めた上で、再編事業が促進され、2025年開催の大阪万博へ向けて大阪のおもてなし玄関口としてなんばひろば一帯が最高の人のための空間へと変わって行くことを期待しています。

さらに、今のなんば駅のように本来、鉄道の利用が盛んである都心部においてまちの顔ともいえる駅前がバスターミナルやタクシープールなどの車中心の空間として利用され、まちづくりやエリアマネジメントの視点から歩行者に目を向けた際にもったいないといえる場所は多いと感じています。この駅前の道路空間再編(なんばひろば改造計画)を積極的に行うことで、各地で見られる駅前の現状に疑問を抱き、車から人中心の空間へと再編し、有効活用していくことの必要性を人々に感じさせることができるのではないかと考えています。各駅に特徴があり、その全てに人が安らげる賑わいの空間があったら…そう考えるだけでとてもわくわくしますし、どんな過ごし方をしようかと妄想が膨らみます。

そんなことを期待しつつ、この「なんば駅周辺における空間再編推進事業」が無事に進んでいくことを願っています。

テキスト:水信夏穂(日本大学理工学部建築学科3年都市計画研究室(根上・泉山ゼミ))

(参考文献)
なんば駅周辺における空間再編推進事業〔整備概要〕
なんば駅周辺道路空間の再編に係る基本計画:kihonkeikaku.pdf (namba-hiroba.jp)
なんばひろば改造計画 (namba-hiroba.jp)
大阪市:令和3年11月23日から なんば駅周辺における道路空間再編のための社会実験を実施します (…>道路>御堂筋) (osaka.lg.jp)
なんばひろば改造計画公式facebookより
https://www.facebook.com/nambahiroba/videos/592802475164180/
https://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/press/290428namb.pdf

Twitter

Facebook

note

7+