「ソトを居場所に、イイバショに!」ソトノバ・アワード二次審査会レポート【ソトノバTABLE#22】

「ソトを居場所に、イイバショに!」──そんなパブリックスペースの未来を目指し、注目すべき先駆的事例を顕彰する「ソトノバ・アワード」。10月14日、その二次審査会を東京・八重洲のコワーキングスペース&イベントスペース「DIAGONAL RUN TOKYO」を会場に開催しました。

公開の審査会と、ゲスト審査員のアワード振り返りトーク(ソトノバTABLE#22)の2部構成。5時間に及んだ審査をめぐる議論の中で、持続性や事業性をどのように実現していくか、メディアとして我々が今後発信していくべき視点は何かが問われました。

17名の審査員で議論を重ねる

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DIAGONAL RUN TOKYOでの審査会の様子

審査結果はこちら

具体的な事例で評価基準を示すことを通じて、改めて屋外空間のあり方をめぐる議論の場を設けよう、という狙いです。

審査の視点は以下の5つ。
・共感性:Sympathy
・独自性:Originality
・デザイン性:Design
・アクティビティ:Activity
・持続性:Sustainability

一次審査では、これら5つ視点を軸に議論を重ねて審査し、各事例について評価の目安となるレーダーチャートを作成しました。

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一次審査のレーダーチャートを手元に議論

応募があった9事例はそれぞれ特色があり、追加質問をフィードバックしてすべて一次審査を通過しました。最終となる二次審査に向けて改めてパネルや動画資料を提出してもらい、審査員各々が評価。その後全体での議論の場を設けて最後に投票、大賞・準大賞・特別賞を決定しました。

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審査パネルがずらり

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二次審査の会場にはソトノバメンバーのほか、ゲスト審査員2名、戦略的パブリックスペース活用学若手奨励特別研究委員会から3名からなる総勢16名(1名欠席)の審査メンバーが一堂に会しました

都心では空間をつくれば人は集まる

ひとつ目の大手町ファーストスクエアガーデンでは、都心と地方という環境の違いについて議論が展開されました。

大手町の事例に対し、デザイン性は高いけれども結局は座るだけの場所になっており、使用者が主体を持つ場面が乏しいため持続性に疑問を抱く意見が挙がりました。対してゲスト審査員の泉英明さん(ハートビートプラン代表)は、都心では持続性は空間ができた時点で確実であると主張。

都心と地方では、そもそも人の数に大きな差異があります。都心であれば、なにか滞在できるような空間をつくれば、必ず一定数の人がそこを訪れるという環境は、大きなアドバンテージになっているようです。

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大手町ファーストスクエアガーデンの様子。大きな投資でなく、小さな投資から巻き込んで展開していくプロセスについても、都心では珍しく先端的な事例として高く評価されました

地方ではコンテンツとの絡め方が重要

確かに地方では、都心と同様に空間を用意したとしても、それだけで自ずと人が集まってくることはあまり期待できません。地方の事例を比較してみると、まずそこに行こうとするきっかけや、目的になるコンテンツをセットで上手く絡めているかどうかが成功の鍵として浮かび上がってきます。

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宇部の「多世代交流スペース」は、暫定空地とコンテナハウスをセットにした3年更新計画(3年ごとに新たな空地が確保される仕組み)です。審査員からは常時人がいるような拠点を置くなど、コンテンツをもっと練ることでより良くなるはず、との意見が

左近山の団地広場「みんなのにわ」や松山「みんなのひろば」をはじめ、郊外や地方での事例からは、コンテンツを上手く組み込む事で周囲を巻き込み、だんだんと参加者を増やし大きなムーブメントへと発展していった経緯が伺えます。

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松山「みんなのひろば」

松山「みんなのひろば」では、公・民・学が連携してまちづくりを推進する組織「松山アーバンデザインセンター(UDCM)」が日常的な管理やイベント運営を担当。広場を整備した後も、きめ細かいマネジメントを続けています。

まちにの人々から寄せられた「こんな事がやりたい」、「あんな場所が欲しい」という声からあらゆるコンテンツを用意し、人々の日常生活の中に溶け込む事ができています。

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「左近山みんなのにわ」の様子

同様に、団地の広場活用事例「左近山みんなのにわ」プロジェクトでも、様々な趣味活動に応えるようなイベントの企画が、利用の入り口を広げているようです。

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「かまがわ川床桜祭り」も川というリソースに「お花見」というコンテンツを上手く絡めた事例のひとつ。5年目を迎える熟年プロジェクトですが、常設化や道路とのセット計画など、何か今後の展開を見据えた上でイベントを社会実験的にやっていく事も有意義では、という提案も

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コンテンツをたくさん盛り込んだ「徳大ファーマーズマーケット」。このプロジェクトについては、開催する「場所」をまちのどこに仕掛けるかについても議論が白熱しました

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アワードトークにて、泉さんによるレクチャーの様子

事業性については審査会後のアワードトークにて、泉さんから手厚いレクチャーがありました。いきなりハード整備だけしても誰も使わない、という厳しい現実の中で、自立した事業化ができるように面白いアイデアを持った人とつなげ、人が集まるコンテンツをつくり出す。そんなプロデューサー的な役割を果たしている泉さんだからこそ、説得力があります。

「個人の妄想に公共性が付加してくる時代。顔の見える主体が自らの色で運営できる」という締めくくりが強く心に響きました。

使い手が主体となって持続する

丁寧な事業体制が評価される一方で、それらが行政の支援や意向の上に成り立っている場合、行政人事の関係で一気になくなってしまう可能性を危惧する声も。持続性を担保する要素として、使い手が自ら場をつくる側として主体性を持っているかどうかが重要なポイントになっています。

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「ミズベリング遠江」では、「サイクルジムカーナ」などちょっと変わった砂浜ならではのイベントが特徴ですが、行政主体のため参加者が「お客様」になってしまっている面も

もしもつくる側としての運営者がいなくなっても、その場所が引き続き使われるかどうかは使い手次第。その場所ができた後も自ずと使われ続けるためには、つくる側による企画や基本計画だけで終わらずに、使い手にも関心を持ってもらい、彼ら自身がその場をつくりあげる主体となっていく必要があります。

その一歩目の手段として挙げられるのがワークショプです。住民がつくる場面に参加する事で愛着や関心をもつきっかけを生もうとする取り組みは、数々の事例で組み込まれています。

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芝生を張るのを子どもたちがお手伝い。(松山「みんなのひろば」)

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同じく松山の商店街を使った社会実験「イコトコ」プロジェクトでも、市民参加のワークショプを開催。地域の需要に応えるコンテンツの充実を図っています

つくり手と使い手の垣根を超える──「未来のアーバニスト」は誰か

「はじめからそのような主体が現れたときに、一気に動くような可能性を残した計画のあり方もあるのでは。最新の都市計画のあり方として面白いですね。個別の動きがどう都市計画家のあり方につながるのか、どうしたら結びつくのか、という事も考えさせられました」──ゲスト審査員の中島直人さん(東京大学准教授)からは、主に「つくる側」として立ち回ることが多かった、従来の都市計画家のあり方からの展開を示唆するコメントがありました。

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審査後のアワードトーク(ソトノバTABLE#22)にて、中島さんによるレクチャーの様子

中島さんは、「アーバニスト」を「主体的に目の前の都市に介入する人」と定義。過去の様々な言説を引き合いに、レクチャーを展開しました。

「都市に介入するのに強い専門性はいらない。弱い専門性を持った人がたくさんいれば、いい社会ができてくる」

都市空間が都市デザイナーを育むという点で、都市デザイナーは都市の作者でありながら都市の作品でもある。メディアをもつ「ソトノバ」一員としても、都市に関わる全ての人がアーバニストになり得るという視点は、より多くの人に広めていかなければ、と思わず使命感を掻き立てられました。

やりたいことをゲリラ的にやってみることからはじまる

個人の「やりたい」から、行政まで巻き込んで日常化してしまう展開もあり得る、という新たな可能性を感じさせる事例が、多摩川河川敷を活用する東京・狛江市の住民団体「コマエカラー」によるプロジェクトです。

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コマエカラーとその活動を応援するみなさん

チーム「コマエカラー」を構成するのは地域住民のみなさん。にぎわいがなくなっていく周囲の環境にもったいなさを感じた異業種の大人たちが、「ここであんな事をしたら面白そう」、「こんな事もできるんじゃないか」と、それぞれ出入りするバーで妄想を交わしていくうちにチームが立ち上がったそうです。

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にぎわいを取り戻した河川敷の様子

ソトでこんなことできたら楽しそう!やってみたい!という純粋な思いに突き動かされるがままに、人々が自身の環境を変えていこうと自発的に動き出す。面白そう、楽しそう、と周りもどんどん巻き込まれていって、最初は小さな投資からはじめたものも、純粋な想いに共感が集まれば大きなムーブメントへと展開していく。

ソトノバメンバー一同はこの経緯に対し、まさにソトノバの鑑なのでは、と“ソトノバ・スピリッツ”を強く感じた模様。未来のソトノバに希望が持てるような、とても前向きで勇気付けられる事例でした。

誰もがはじめられるのがソトノバらしさ

昼過ぎから始まった審査は、予定時間を1時間ほどオーバー。1回の投票では決まらず、決選投票にまでもつれ込んだ結果、コマエカラーが大賞を受賞しました。準大賞に、松山「みんなのひろば」と左近山団地「みんなのにわ」の2作品を、特別賞として、大手町ファーストスクエアガーデンと宇部「多世代交流スペース」を選出しました。

「狛江の事例は、個人から始まってどんどん周囲を巻き込んでいったもの。人に寄り添っている。ソトノバは誰もがはじめられるという点で、ソトノバらしいと思いました!」と、審査員長の泉山さんは締めくくりのコメント。

幅広いソトでの取り組みが集まった第1回ソトノバ・アワード。ソト空間の傾向を掴みつつ、今後のあり方の基準を問う、難しくも大切な機会となったのではないでしょうか。評価の難しさも感じつつ、ソトノバとしても今後の課題が見えてきました。受賞されたみなさま、おめでとうございます!

11/11に開催するソトノバ2周年パーティでは、受賞記念プレゼンも企画しています。こちらもぜひチェックしてください。

これからも、ソトを居場所に、イイバショに!

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会場写真:樋口トモユキ、事例写真:各応募者

「ソトノバ・アワード2017 公開二次審査会&アワードトーク!」 ソトノバTABLE#22

日時 10/14(土) 13:30-20:00
場所 DIAGONAL RUN TOKYO
主催 ソトノバ

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熊澤 綾乃

熊澤 綾乃

早稲田大学大学院建築学専攻中。女子学院高等学校卒。卒業論文では東京都23区内を対象に、都市計画道路事業のために一時的に生じている未利用地が市民によって活用される効果と有効性について研究。学生ならではのフットワークの軽さを活かし、多方面にアンテナを張りながら日々勉強中です。