人々が集まる心地いい都会の渓谷 – 生まれ変わった「都市の庭」(ソトノバ・アワード2017一次WEB投票記事)

東京都千代田区大手町に位置する「大手町ファーストスクエア」の公開空地「ファーストスクエアガーデン」は、1Fの広場とB1のサンクンガーデンとが一体になった大手町エリアでは珍しい立体的な構成になっています。竣工当時(1997)はまだ公開空地自体が珍しかったものの、気づけば「ファーストスクエアガーデン」はただ広々としていて寄り付くところも少なく、都市計画上の「公開空地」としてしか機能していない状況にありました。

しかし、当地は日常的に人々が行き交う場所であるとともに、公共交通のアクセスにも恵まれた優れたロケーションにありました。また、今後の延伸計画が検討されている大手町・丸の内・有楽町エリアを南北に走る「丸の内仲通り」の帰結点であることも背景として、近隣のオフィスワーカーにとって真に価値のある、日常と非日常を享受できる新しい「都市の庭」を目指すリニューアル・プロジェクトがスタートしました。そして様々な取組みの結果、2017年2月27日、約20年の歳月を経て従来の「公開空地」から新しい「都市の庭」として生まれ変わりました。

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リニューアル前のファーストスクエアガーデン

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リニューアル後のファーストスクエアガーデン

ユーザー参加型によるリ・デザインプロセス

「ファーストスクエアガーデン」のリニューアルにおいては、近隣のオフィスワーカーなど、実際にこの場所を使う、日常目にしているなどの、利用者ならびに今後の想定利用者を交えたワークショップを重ねることによって、当地が抱えている課題、また、現状どのような評価を受けているか、そしてどうあってほしいと思われているかなどの、ユーザーの潜在ニーズの把握・想定を行いました。

そうした従来の枠組みにはないプロセスを実施することで、ユーザーのやりたいことを「より楽しく」「より心地よく」体験できるよう、日常の設えとしてのハードのデザインへの落とし込み(竣工時から存在する水盤を取り囲むようなグリーンプールとともにステップ状にひろがるテラス空間、隣地の「大手町の森」とのシナジーを意識した緑との距離感、視線のコントロールなど)とともに、非日常の設えとしての運営と一体となってサービスやイベントを提供する仕組みを構築しています。
また、ユーザー自身がプロジェクトに関わることをプロセスに取り込んだ時点から、ファンの獲得とともにインフルエンサーの醸成につながることも意図しています。

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近隣のオフィスワーカーを交えたワークショップ

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ファーストスクエアガーデンの現状から理想を考える

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自分たちの場所のこととして活発な意見が飛び交う

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ワークショップにより導き出されたフューチャーワード

プリント

導かれたデザイン指針

大手町の森とのシナジーが生み出す、敷地境界線を超えた広がりのある憩いの広場

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隣地の「大手町の森」とのシナジーを意識した一体的な緑のつながり

大手町ファーストスクエアの隣地である大手町タワーの公開空地には、武蔵野台地で育まれた自然林「大手町の森」がランドスケープを彩っています。しかし、大手町タワーができる2014年までは敷地境界まで建物が迫っており、ファーストスクエアガーデンも大手町ファーストスクエアのみに開かれた場所でした。
今回のリニューアルにおいては、ワークショップにより導かれたデザイン指針のもと、大手町タワーの公開空地「大手町の森」とのシナジーを意識し、敷地境界線を超えた緑のつながり(心理的領域)をつくることで、ユーザーにとって広がりのある一体的な広場をつくるとともに、距離感のある「眺める緑」ではなく、ヒューマンスケールを意識した「憩いの緑」を設え、当地を超えて大手町エリアのブランド価値を高めることを目指しています。

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噴水から広がる水面の波紋をイメージした“グリーンプール”。 水、植物、テラスへと輪を広げるようにデザインし、人が水音や植物を感じることができる空間に。

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植物は周辺の環境を意識しながら、新たな大手町エリアの豊かな緑化空間を軸にエリアを構築。噴水をそのまま生かし、水辺、草原から丘にかけて生息する植物をゾーニングして植え込みました。

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“グリーンプール”の真ん中を横断する小径。あえてちょっと不便な飛び石を足もとに注意しながら歩くと、ふと足もとにある植物に気付かせる仕掛けになっています。

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飛び石の小径を通って段差を降りると植物が目の位置に近づき、まるで植物に包まれるような錯覚に。目線には揺れる下草があり、植物のディテールや花の甘い香りを気づかせてくれます。

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テラスに腰掛けてみると同じ目線に植物があり、すぐその横にはそれぞれの植物の名前とその植物にまつわる物語や言い伝えなどを刻んだプレートを埋め込みました。

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リニューアル前の敷地境界線を明快にしていた植栽帯

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リニューアルされた植栽帯 – 大手町の森とゆるやかにつながる親密な緑へとリニューアル。緑との距離感を楽しめるベンチも併設。

ビジョンの共有と体験価値の高さがもたらす、「やすらぎ」と「賑わい」の自分たちの場所

大手町エリアは多くの企業がオフィスを構えていることから、様々な人々が日々を過ごされています。もちろんカフェやレストランなどの商業機能も多くありますが、誰もが自由に思い思いの時間を過ごせる場所というのはそう多くはありません。また、オープンエアで距離感の近い水や緑に囲まれた場所となると、このファーストスクエアガーデンが数少ない場所のひとつといえます。
また、この広場の将来的な使われ方をイメージしたシーンをイラストで描き起こし、そのイラストを用いたサインを広場に設置するなど、この広場のリニューアルを進めるにあたっての、様々な方とのビジョンの共有を目指した取組みも行っています。

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ファーストスクエアガーデンの将来イメージを描いたイラスト

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リニューアルした広場に設置されたビジョン共有サイン

そうした様々な取組みの結果として、生まれ変わったこの場所は運営開始直後から多くの方が時間を問わず、思い思いの時間を過ごしているシーンを目にすることができる場所になりました。勤務されている方々のランチタイム、ビジネスに訪れた方々の打合せ前後の時間、商業テナントの方々の休憩時間など、あらゆる日常使いとしての「やすらぎ」のシーンをつくっています。

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たくさんの人々が利用している平日のランチタイム

一方、日々の暮らしのアクセントとなる、屋外シネマを始めとした非日常イベントがもたらす「賑わい」のシーンも生み出します。このふたつのシーンをあまねく体験できる「自分たちの広場」として、テナントや近隣のオフィスワーカーに愛される場所となっています。

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リニューアルされたファーストスクエアガーデンで行われたシネマイベント「NIGHT GARDEN CINEMA」

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日常と非日常が交差する – いつもの帰り道にイベントの告知に気づく

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日常と非日常が交差する – 通りを歩いているとイベントに気づく

人の流れと交通が立体的に交差する場所だからこそ、思いがけない非日常と出会える場所にもなります。オープニングイベントとして行った屋外シネマイベント 「NIGHT GARDEN CINEMA」には事前に知っていた方、誘われて来られた方、そして、その日たまたま通りかかった方なども含め、非常に多くの来場者に恵まれました。この広場が様々なアクティビティが生まれる場所として「ファーストスクエアガーデン」が認知されるきっかけとなりました。

都市再生デザインにおける新しいプロセスとして

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大型ビルを開発供給する当社では、築年数の経過した保有ビルの長期的修繕・改修・更新計画を進めていますが、改修・更新費用はその規模と経年劣化に比例し、大きな負担であり、同時に負担に対する費用対効果も大きな課題であります。大手町ファーストスクエアにおいても、その課題を重く受け止めつつ、戦略的リニューアルを進めてきています。今回のファーストスクエアガーデンのリニューアルの改修プロセスは、そうした投資費用の効果や必要性を、利害の異なる関係者の間で共有し、自発的誘致からユーザー自身もプロセスの中の一員として参加することで生み出していく意義を感じています。
運用開始から間もないリニューアル後の風景は日常・非日常ともに心地よく賑わいを見せています。ユーザーが体感したい広場として実現しているのか、周囲を誘発する賑わいを創出しているのか、末永く経過を見守りたいと思います。

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