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日曜日は車道のど真ん中を自転車で走ろう! ポートランドの「サンデー・パークウェイ」

ヨーロッパやアメリカの各都市では、普段は車に占領されている道路空間を、自転車や歩行者に解放する「ノーカーデイ(No Car Day)」(カーフリーデーと同様)が定期的に開催されるようになってきました。この日は市民が道路に座り込んでピクニックをしたり、道路全体が自転車天国になったりと、場所によって活用のされ方は様々です。

この記事では、主に北米を中心に移動しながら、フリーランスの編集者・ライターとして各都市のまちづくりに関するトレンドをリサーチしている筆者が、ポートランドのダウンタウンエリアで開催された自転車のための祭典「サンデー・パークウェイ」の様子をご紹介します。世界各地で筆者が目にしたまちづくりの面白い事例は、「Traveling Circus of Urbanism(アーバニズムの旅するサーカス)」というプラットフォームで英語での情報発信を行っているので、興味のある人は覗いてみてください。

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普段車に占拠されいる道路を、市民がここぞとばかりに使い倒す、ポートランドの自転車の祭典「サンデー・パークウェイ」。

道路空間を、市民の手に取り戻す

まず、欧米で盛んに行われるようになった「ノーカーデイ(No Car Day)」。どのような背景があるのでしょうか?

一つのきっかけとして、「リクレイム・ザ・ストリーツ(Reclaim the Streets)」という政治活動があります。日本語で「路上(道路)を奪還せよ」という意味で、主要道路や高速道路などを占拠し、公共空間の利用方法についての新しい提言を行うもの。1990年代のイギリスで始まり、現在はヨーロッパ全域、北米などに広がっています。都市により活動の趣旨や内容は様々ですが、道路という都市の重要な公共空間を、自動車から市民の手に取り戻そう、という大きなメッセージでは、共通しています。

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この日は道路のあちこちに屋台やフリーマーケット、ポップアップショップも多数出現。

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自転車で走ったら、フリーマーケットで一休み。

ポートランドの「サンデー・パークウェイ」でも、もちろんこの日は、特定地域での自家用車の使用は禁止(バス、消防車など公共の交通は除く)。北東部、南東部、ダウンタウンなどといくつか分かれてい中からルートを選び、普段は車に占拠されている道路の真ん中を、自転車で走ることができます。

自転車の日常使いをブームに

ここで自転車に乗る人々は、プロのスポーツ系サイクリストでもなんでもなく、一般の市民。小さな子供に自転車の乗り方を教えている家族もいれば、自転車の後ろに付けたカルゴに赤ん坊を乗せて走っている人も。誰もがカジュアルな普段着で、もちろん参加登録や参加費の支払いをすることもなく、自由にどこからでも参加できます。

カナダ・バンクーバーに拠点をもつ自転車促進団体「Modacity」の説明によると、自転車中心の街づくりで知られるオランダでは、自転車に乗る人々は大きく「wielrenner」と「fietser」(オランダ語でどちらも「サイクリスト」の意)の2種類に分けられると言われています。「wielrenner」は、スポーツやレジャーを目的に自転車に乗る人々。ロードレーサー、クロスバイク、マウンテンバイク使用者などがあげられます。一方で、街づくりの文脈で大切にしたいのが、もう一つのタイプである「fietser」。直訳すると「自転車に乗っている人」をさし、出勤やちょっとした用足しなど、日常の文脈で自転車を使用しているタイプの人々をさします。日本で言えば、ママチャリやシティバイク使用者といったところでしょうか。

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スポーツ文脈ではなく、日常の文脈で自転車を使用する「fietser」。普段着で、子供を連れて、カジュアルに。

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カゴに赤ちゃんを乗せて自転車に乗る人も、ポートランドでは良く目にする。

「サンデー・パークウェイ」の目指すサステイナブルな街づくりでは、都市の日常生活のなかで自転車を使用する「fietser」が大きな存在感を発揮します。普段の生活で車に頼らずに、より安全で環境に優しい自転車に切り替えるという選択は、車社会のアメリカでは特に大きな意味を持っています。

ポートランドの「 Green Loop」構想を、実際に体験する

もうひとつ、ポートランドの「サンデー・パークウェイ」が特徴的だったのは、私が参加した際に与えられたルートが、2035年に向けて提案されている新しい「Green Loop」構想と連携していた点でした。この「Green Loop」構想は、Green Loop(緑の輪っか)という名前の通り、ダウンタウンの複数の地区を、線状の公園で連結させるというもので、ポートランド市によって計画されています。完成したあかつきには、現在は車に占拠されている道路を、歩行者や自転車利用者が、今よりも自由かつ安全に楽しむことができるのです。

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現在は車が中心のこのルートも、いずれは公園になる予定。

今回の「サンデー・パークウェイ」では、この「Green Loop」構想のプランに沿ってルートが設定されており、このプランが実現した際の未来の街の姿を、市民が実際に体験できるようになっていました。

道路を市民の手に取り戻し、より健康的な活気のある都市生活をつくる目的で始まった「サンデー・パークウェイ」。一過性のイベントとしてではなく、持続的な都市計画という形で、ポートランド市が本気で市民のことを考えていることが、この事例でよくわかります。

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未来の街の姿を、市民が実際に体験できる

一過性のイベントで終わらせない

2035年のグリーンループ完成を待ちわびながら、日本ではどのような「No Car Day」をデザイン出来るだろう?そんな妄想が広がるポートランドの「サンデー・パークウェイ」でした。一時的な楽しみでももちろん良いですが、せっかくなら、将来的に道路空間が公共空間として市民に開放される未来を描きたいものです。そのためには、こうしたイベントを街の新しい構想策定のためのプロトタイプとして、市民のフィードバックを聞く場とするも良いかもしれません。

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「ブリッジ・タウン(橋の街)」という愛称をもつポートランド。この絶景が、主に自動車利用者だけに占拠されているのは、もったいない。

All photos by Mariko SUGITA

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