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ソトノバ・ラジオ#09 | 林匡宏さん|Commons fun

ソトノバ・ラジオ#09を紹介します。

ソトノバ・ラジオ#09のゲストは、北海道を中心に全国の街づくり活動を支援されている、Commons funの林匡宏さん。ワークショップやイベントに出向いては、その場で将来ビジョンをイラスト化する「ライブ・ドローイング」を武器に、組織づくり・事業づくりを進められています。
また、今回のコロナでも、街中のドライブシアターを企画・実施するなど、そのアクションのスピード感も見どころです。街に住む人々の自然なライフスタイルをどのように支えているか、林さんの経験から考えていきたいと思います。

パーソナリティは、東京大学の山崎 嵩拓さん。

ラジオの様子は、YouTubeの「ソトノバ・チャンネル」Spotifyのポッドキャスト、この記事では書き起こしをお届けします。


YouTube:「ソトノバ・チャンネル」

以下は、書き起こしです。当日の様子をお伝えします。

山崎:
ソトノバ・ラジオ第9回を始めます。私は北海道出身なのですが、いつも北海道の友人が北海道を盛り上げてくれていることをうれしく感じています。中でも、今日のゲストの林さんは、様々な取り組みを発信していて、頼もしく思っています。ということで、今日のゲスト林さんです、よろしくお願いします。

林:
お願いいたします。林です。もったいないお言葉ありがとうございます(笑)。

山崎:
最初は、林さんに自己紹介をお願いしてもいいですか?

林:
プレイスメイキングとか、公共空間活用のあたりを、ちょっとわちゃわちゃやってたりします。あと、札幌の隣の江別市でゲストハウスとシェアハウスをオープンさせて、経営しています。ゲストハウスは一時的に休館中ですが、やれること今やっているような状況です。あと、渋谷区の「リモート公務員」をやってます(笑)。渋谷区の公園関係のプロジェクトを担当しています。

山崎:
「リモート公務員」なんてあるんですね。

林:
ね、そんなんあったんですね(笑)

山崎:
あと北海道内で林さんが入り込んでる場所って、札幌のど真ん中とかじゃなくて結構”渋い”ところに入り込んでますよね。それは偶然ですか?

林:
確かに。偶然ですかね。今は選べるような立場でもないですし、呼ばれたら行くっていう感じです。行く先に面白そうな人がいたりとか地元で頑張ってるおばちゃんがいたりとかすると、何かすごいテンション上がって、全然儲けにはならないですけども、時間を費やして頑張るか!って感じになりますよね。

山崎:
そこへの時間の費やし方も、中途半端じゃなさそうですね。働き方の話だと、今回のコロナの影響はどうですか。

林:
今までも渋谷の仕事とか全部オンラインでやってたんですけど、相手側がちょっとまだ慣れていませんでした。それが、今はオンラインがスタンダードになってきたので、なんかすごく仕事しやすいです。

山崎:
では改めて、ゲストハウスのところから、林さんが何者なのかを深堀っていきたいと思います。

山崎:
ジャン!(写真を見ながら)これはまあどう見てもコロナ前に撮ったんだろうなという写真ですね(笑)。

ゲストハウス:ごちゃまぜな居場所ゲストハウス:ごちゃまぜな居場所

林:
これがさっきご紹介した、江別のゲストハウスの1階のラウンジ部分です。二階建ての商店街の空地を活用しています。2階が宿泊スペースで1階は交流ラウンジになっています。とりあえず集まってなんかしようぜ!みたいな雰囲気を作ってます。我々のゲストハウスの運営メンバーで開催する企画もあれば、勝手に外の人が企画するのもあります。

山崎:
この写真に漂ってる空気感は、近所の仲良しみたいな感じですね。

林:
宿泊者も含めて近所の人がよく使ってくれるのが、やってみた驚きと嬉しさです。近所の人がゲストハウス泊まるってちょっと意味が分からないんですけど(笑)

山崎:
帰れますもんね(笑)

林:
江別の大麻に住んでます、札幌に住んでます、みたいな人がここでちょっと時間を過ごして、みんなで飲んでそのまま寝る。それが良いって感じてくれている方とか。あとは、地元のママ友で騒ぎにきてくださる方々もいて。

山崎:
旅と暮らしが重なり合ってるっていうか、曖昧な感じがすごい良いですね。

林:
こないだある人に言われたのが、「なんかここゲストハウスじゃなくて、ホストハウスじゃないんですか」って。「なんかお客様扱いされないんですけど」みたいな(笑)。ゲストの中から運営メンバーに引き込むこともよくあって、そういう「旅行」という概念におさまらない時間の過ごし方が提供できたらなと思ってやっています。

山崎:
そして、林さんを語る上でもう1つ欠かせないのが、絵師としての活動だと思います。目標を可視化する力を持っていると思うのですが、こレはどのように始まったんですか?

※ドローイング:500m美術館ライブ・ドローイング

林:
もともとミズベリングのプロジェクトで、千歳川をどう面白くするか、最初はポストイットでアイデアを貼ってたんですけど、「絵で書いてみなよ」と言われました。「そんなんできるわけないじゃないですか」って言ったんすけど、ま、なんとなくできたんですよね(笑)。そこから始まりました。その場で議論した内容を可視化すると、参加者がどんどん盛り上がってくる点がいいと思って。ちなみにこの写真は、ソトノバさんのドローイングですね。「50人で未来を語るので、それを一つの絵にする」というものですね。

山崎:
人数は多くて大変そうですが、ライブって熱量が高まる良さがありますよね。

林:
はい、楽しいです。絵を描くだけじゃなくてその後にすぐアクションが生まれてきそうな、そんな雰囲気がいろんなワークショップで感じられます。その為にお役に立ててるんだったら、全然いいなって感じです。

山崎:
さて、自分のラジオ担当回は「都市と自然」をテーマにしています。その「自然」の中には、人が自然に振る舞える都市をいかに作るか?という意味も含めて「自然」を考えていきたいと思っています。なんでここから林さんが取り組まれてるプロジェクトを一緒に見ながら、「都市と自然」のことを話していけたらと思っています。

山崎:
まずこの写真のプロジェクトについて教えてくれますか?「指定管理者制度の最大活用」と書いてあって、硬い言葉と柔らかい言葉が組み合わさっている感じに興味を惹かれました。

四季の道:指定管理者制度の最大活用四季の道:指定管理者制度の最大活用

林:
これは、江別の四季のみちという場所で、かなり長い緑道が、通ってます。普段あんまり人が通ってない場所で、もう少し賑わいが欲しいと、行政サイドでは思っていて。この(共有画像を見ながら)手前のところが、江別蔦屋書店という民間の本屋さんなんですよね、ちょっと感じの良い。
これは去年(2019年)の企画なんですけど、民地と奥の緑地を一緒にして、ちょっと盛り上げることはできないかっていうところで。画像のステージがあるところは民地で、左側に太い木があると思うんですけど、その向こう側は公園。都市公園なんですよね。そこを一緒にして、ワイワイこうやろうぜってなってなりました。

山崎:
なるほど。

林:
そこに指定管理者さんがいて、「一般的な管理」をされていました。渋谷のまちづくりでは Park-PFIとか、規制緩和とか、いろんな手法を用いているのですが、どこのまちでもできるって訳じゃないです。まちにはまちのペースがあるので、このまちでは指定管理者制度を最大限活用することがいいと思いました。具体的には、「一般管理事業」に分類される、公園の魅力アップ事業を進めるために管理者のおっちゃんとまずはちょっと交わし、そこから話を広げていきました。裏では、行政の公園係と「こういうことやりたいね」っていうのはやってるんですけど。

山崎:
「焚きつけ屋」ですね、林さんは。絶対こっちの方が良いってわかっていながらも、なかなか変わらない世の中がある中で、人のモチベーション焚き付けるだけでこういう変化が表れるのは、まさに楽しい風景が生まれるきっかけですね。

林:
これをイベントごとに終わらせないで、今後ね、次の緑道のあり方だとか、こう言った民地内のスペースのあり方を模索できるといいですね。

山崎:
最初に、林さんが渋い場所ばっかりやってると言った理由の一つに、所有関係の複雑な場所でもやっちゃう、という点があります。

林:
このプロジェクトは渋いですよね。

山崎:
そして林さんは渋いところを焚きつけていってるっていうのが特徴だと思いました。北海道内でも「そこ行くか!」みたいな感じです。

林:
地元の人しか渋さが分かんないと思います。(笑)次に紹介するのは、札幌から地下鉄で終点にある真駒内です。ここには団地群があるんですけど、少子高齢化や孤独死といった課題の多い団地です。

あけぼのテラス:UR団地再生あけぼのテラス:団地再生

林:
自治会役員さんが色々頑張ってたんですけど「別にそんな地域の活動とかコミュニティとかどうでもいいわ」という人も結構いました。団地持ってる会社の人も、課題を感じていて、相談いただいて始めました。

林:
今は三年目になるんですけど、地元の人たちも面白がって。中には自分でプレイスメイキング系の勉強会に行って、ノートとって見せに来るっていう、意識の高いおばちゃんが生まれたりしています!笑

山崎:
そんなとこまで焚き付けちゃった訳ですね。(笑)また什器のデザインもいい感じですね。

林:
これも適当にみんなで作ったんです。

山崎:
そのセルフビルド感と、ちょっと整った感じと。これを真駒内でやっているのがすごいと感じます。

林:
この見た目よりも、仕組みとかを重視したいです。これ、4校の高校生が運営に携わってくれていて、単位がもらえるんです。校長先生もファンキーで「どんどんやりましょう!」みたいな人が結構多くて、それで巻き込んで。そうなると、おばちゃん達も張り合いが出ると言うか。
今ではそれを、札幌市の全市のプログラムって感じで取り入れられないかって、教育委員会と話をしてたりしています。ひとつの「教育とまちづくり」のプラットホームにできないかと思ってやっているところです。

山崎:
人が生き生きしてくるってのは、本当に良いですね。さいて、最後に紹介していただきたいのは、林さんが Facebookでシェアしていたこのプロジェクトです。自分自身がなかなか北海道に戻れない中で、北海道の人どうしてるかなという風に思っていました。その中で、この写真を林さんがアップロードしてくれて、かなり勇気付けられたと言うか、嬉しい気持ちになりました。

林:
どこの町も一緒だと思うけど、みんな自粛疲れがやばくて。みんな「ちょっとこれどうなる?」「もう何かやりたい!」「お天気も良くなってきてポカポカしてんのに何もできない!」みたいなイライラがすごいあって。そこで仲間と話して、ドライブインシアターを思いつきで言ってみて。で、3週間後にこれできた、みたいな感じです。
自分たちの人脈で、機材を持ってる人だったり、ラジオに長けてる人だったり、映画祭関係で活躍してる人だったりがメンバーになってくれて、場所も決まって。すごいスピード感がありました。やっぱその根底には皆うずうずしてたっていうのがあったんじゃないですかね。
これ、実際当日に来てくれた人もめっちゃ楽しんでくれました。後ろの人から見ると結構画面ちっさいんですよね。でも中では、リクライニングしてリラックスしながら別の遊びもしながら「リビングが延長している」ような感じでした。最後みんな、うわあって手振りながら帰ってくれるとか…すごく良かったですね。

あしたのしあたあ:ポストコロナ期の取組あしたのしあたあ:コロナ期の取組

山崎:
これも行動に移すまでのスピード感が速く見えましたが、盛り上がってから当日まではどういう感じだったんですか?

林:
盛り上がって当日までは、まず「ストリートビューで白い壁探そうぜ」ってところから、うわああって探して、見つかって、何件か断られながらも。それで、これ旭川なんですけど、旭川でこの壁を持ってるファンキーな会社の人が「やるぜぇ!」って感じになり。じゃあ「プロジェクターどうする?」って皆に、探し回ったら「俺持ってる!」みたいな人がいて、「いや音どうすんだ」みたいな話になったら「なんかラジオって噂があるけど…」て言うので色々調べて。「いや、でも電波法がやばいんじゃない?」って言ってそしたら「電波法、俺調べる!」みたいなこと言ってくれたりとか。結局そのラジオで飛ばして会場にいる人だけが聞こえるように、最初にアナウンスで「ここのチャンネルに合わせてください」っていうのを言って。会場はシーンってしてるんですよ。それぞれの車の中は爆音で、めちゃくちゃ楽しんでましたね。

山崎:
この範囲だけの「静かな情熱」というか。

林:
めっちゃ簡単でした、この仕組みは。FMのトランスミッターを買って、ちょっと設定するだけなので、誰でもできるかなと思います。これでドライブイン・オリンピックをちょっと狙ってますんで。

山崎:
ドライブイン・オリンピック?

林:
パブリックビューイングとか、スポーツを皆で観ようよという企画を進めてます。無観客試合もオンラインで繋がってれば、それでオリンピック出来るんじゃない?わかんないすけど。

山崎:
オリンピック今年は延期になっちゃいましたけど、オリンピックが開催されるはずだった日とか、札幌でマラソンが走るはずだった日とかあるじゃないですか。そこでドライブイン・オリンピックができると北海道のどこにいても大丈夫ですし、むしろ一体感みたいなものが出てくるかもしれないですね。

林:
一体感はね、意外と車でも、パッシングで拍手代わりにすると、もうめっちゃ綺麗で。会場一体感出てました。

山崎:
その映像を事前に見せてもらったら、普段は鬱陶しいパッシングの光がこんな綺麗なもんなんだなと思いました。こうクイックにプロジェクトを仕込んで、ちゃんと実施して、って言うのを北海道でやってくれているってことに僕はもう感謝しかない。

林:
ありがとうございます、頑張ります!笑

山崎:
最後に抽象的な事を林さんに聞いてみたいなと思います。今コロナによって人が外に出れなかったり、状況の変化がありますけども。これからの都市とかを考えるきっかけにはなったかなと言う風に思うんですよね。もちろんコロナに関してでも、そうじゃなくてもいいんですけども、これからの都市とか、都市と自然とか、そこで暮らす人とか、どういう風になってって欲しい、していきたい、みたいな夢を語ってもらいたいです。

林:
これは動きながら考えるしかないかなとちょっと思ってて。ドライブインシアターもそうなんですけど、もうあんま考えてない。とりあえず動いて、ただやってたら色々気付きがあって。もう毎月ぐらいで今これの予定が入ってるんですけど。いろんな場所でやりながら、新しい時代のエンターテイメントとか、さっき「リビングがちょっと延長している」って表現しましたけど、街中で楽しめるような仕掛けをどんどんやって行って、そして反省していく、みたいな。

林:
1つ考えたのはオンラインの幅が広がったので、オンラインとオフラインを上手く掛け合わせるようなイメージを持っています。ソフトもそうなんですけど、活動のお金もそうですし。例えばエリマネでは収入を広告でも賄う話がよくあります。これも、オンラインの広告とオフラインの広告と両方あるだろうし、上手く掛け合わせながら、今までなかったプレイスメイキングのスキームができたらいいなと思っています。

山崎:
広告の話では、渋谷ぐらいの巨大な街でもだんだん広告がなくなっていて、エリマネの大事な収益源が変わらざるを得ない。その中で、オフラインとオンラインを組み合わせていくっていうのは一つの可能性というか。

林:
オンラインだと場所がなくなりますからね。

山崎:
自分たちの生活も、だんだんオンラインとオフラインの境目がよくわかんなくなってくる、みたいな話もありますしね。そういう中でライフスタイルが少しずつ変わりそうだとは思います。

林:
楽しみですね。

山崎:
楽しみです。ありがとうございます。コミュニティのメンバーからは質問を受け付けていました。林さんの絵が力を持っている秘密?みたいな事聞きたいです。

林:
以前は書いたら楽しそうな意見をバァーって書いてたけど、今は事前の描くまでの準備に時間を使ってます。このまちでは誰が何考えてて、どんな人たちがいてみたいな。下調べをした上で、行政は何をお考えなんだろうかだとか議員さんはどんな方がいらっしゃるんだろうかだとか、その上でこのまちにはこういう風なビジョン図があった方が良いんじゃないですかね〜みたいな自分の視点を入れつつ。そして、中心性のある絵にするのか、それとも色んなものがごちゃごちゃっとなる絵にするのか、一点透視にするのかとか、そこら辺は大体構図を描いた上で臨む。でその臨む時はどの人をそこに呼ぶべきかみたいなのを考えますね。

山崎:
それだけ下ごしらえをして、ライブで書き上げるというところは実は自分は知らなかったので、なるほどなあと思いました。それがやっぱり刺さるんですね。

林:
あんまりこういうの言わない方が良いかな、下調べとか。(笑)

山崎:
みてる人もすごい楽しいです。今日は色んな話を聞けて楽しかったです。個人的には、これからもプロジェクトでご一緒にさせていただきますので、引き続きよろしくお願いします。ということで本日のゲストは林さんでした。ありがとうございました。

林:
ありがとうございました〜

Photo by 林匡宏
テキスト: 秋元友里


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