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宇都宮プレイヤーが議論する今後の中心市街地|プレみやトーク#2&PW宇都宮2022#3

2月17日(木)にPlacemaking Week 宇都宮 2022と同時開催された「プレみやトーク#02 宇都宮プレイヤーが議論する今後の宇都宮中心市街地」のイベントでは、宇都宮の地元プレイヤーによる現在の中心市街地における取り組みや実践していく中で生まれた課題に関するプレゼンが行われました。
それを踏まえ、今後の宇都宮中心市街地について、プレイスメイキングを通しどのように再生できるのかを議論した様子を共有し宇都宮市役所ていきたいと思います。
プレゼンでは、
間中美徳さん(宇都宮市役所宇都宮市役所 総合政策部 地域政策室 中心市街地活性化グループ)
安藤英夫さん(NPO法人宇都宮まちづくり推進機構 魅力ある都心創造部会)
塩田大成さん(株式会社ビルススタジオ)
の3名が登壇しました。当日の様子は、Twitterテキスト中継からもご確認いただけます。

公共空間を利活用して、まちなかに目的地を ❘ 間中美徳さん

はじめに、間中美徳さん(宇都宮市役所 総合政策部 地域政策室 中心市街地活性化グループ)から、宇都宮市中心市街地の取り組みについて紹介がありました。

宇都宮中心市街地ってこんなところ


栃木県宇都宮市は人口約52万人の北関東最大都市で、市民のソウルフードである宇都宮餃子はもちろん、いちごやネギなどの農産物、また国内トップクラスのバーテンダーが集まるカクテルやジャズでも有名なまちです。
二荒山神社の門前町や城址公園、またJR宇都宮駅や宇都宮市役所など、商業・業務・公共施設などが集まり、政治・経済・文化の中心的役割を果たしてきた場所でもあります。そのような「宇都宮の顔」ともいえる場所を含めた、宇都宮市民がイメージするまちなかが第3期中心市街地活性化基本計画区域に該当します。

宇都宮中心市街地の課題

現在、中心市街地の課題のひとつとして、高次な都市機能の集約を図るべき中心市街地に、コインパーキングなどの低末利用地が虫食い状に分布・増加しているため、まちの連続性や賑わい創出に影響を与えていることが挙げられます。現に中心市街地面積の約1割が駐車場となっており、土地利用に関する意向のヒアリングでも、宇都宮の駐車場はだいぶ使われているため、安定した収入が得られている状況に加え、資産の管理運営の煩わしさがないことから扱いやすく、7割近くの所有者が駐車場としての土地利用に満足している状況。そのため、自発的な土地利用の転換を望むのは困難だと考えています。
その中で、まずは行政ができる公共空間(道路、公園、広場など)に着目して取り組み、公共空間を利活用することで、まちなかに目的地となる場所を創ってみる。それにより、まちなかの回遊性が高まったり、まちの賑わいや魅力が高まるのではないかと考えているそうです。

宇都宮中心市街地の取組み

現在、中心市街地の公共空間の利活用に関する様々な取り組みとして、街なかに流れる釜川を誰もが自由に使える中庭のような、居心地の良い空間を創出する取り組み「KAMAGAAWA YARD」、コロナで影響を受けている飲食店を支援するための制度であるコロナ占用特例を活用した取り組み「ミヤストリートデザインテラス」、宇都宮市中心部に位置するアーケード街オリオン通りにおける道路占用による賑わい創出の取り組み「まちなかオープンカフェ」などさまざまな取り組みが進んでいます。
また、2022年11月にまちびらきを予定している宇都宮駅東口地区では、コンベンションホールで2000人収容可能な大ホールである「交流拠点施設」と1階が水盤、2階は木陰、3階は芝生や樹木で四季の移り変わりや風を感じられる空間「交流広場」の整備が推進されています。各種交通との連携や、乗り降りの容易性などの面で優れた次世代の交通システムであるLRTも、JR宇都宮駅東口から芳賀町の本田技研北門までの整備が始まっている状態です。

3次世代型の路面電車LRTの整備

間中さんは

「こうした大規模な取り組みによって変化するまちの構造などにも、抽象化しながら引き続きプレイスメイキングに取り組みたい」

と締めくくりました。

行政の関わり方

行政としてさまざまな事業に関わる中で、どれくらいまで行政がイニシアチブをとって動くのか。という質問に対し、
間中さんは

「公共空間で何か仕掛けていくことであれば、行政がイニシアチブを取れるときもあります。ただ、今後のことを考えると新たにそこに何かを仕掛けていくことは民間の方やその場所に興味がある方、今後も引き続き関わってくれる方々がいて、そういう方々をうまく巻き込んでやっていかないといけません。その場所を使いたい人が居て、そういった人たちと一緒につくり上げていくことが必要だと考えています。」

と話します。
行政はさまざまな取り組みに対して、自分のためではなく、あくまでも民間の方のための事業であるという考えのもと行っているということが伝わってきました。

オープンカフェ事業で魅力向上に ❘ 安藤英夫さん

続いて、安藤英夫さん(NPO法人宇都宮まちづくり推進機構 魅力ある都心創造部会)から、宇都宮市中心市街地の取り組みについて紹介。

釜川を一年中魅力発信

まちづくり推進機構として最初に取り組んだのは、一級河川だった釜川が改修工事をされ20年経ち、それを記念して「ハッピーバースデー釜川」と題した釜川にスポットを当てた魅力づくりでした。
春夏秋冬の釜川を知ってもらおうと、春には中心市街地活性化のための賑わいづくりと地域住民の福利厚生向上を図ることを目的とした、しだれ桜を満喫することができる「かまがわ川床桜まつり」、夏には小さなお子さんに人気な「鮎のつかみどり」、秋には釜川の歴史や文化,河川機能などについて資料を整理するとともに、釜川の見どころや魅力を発信する人材養成の一環としてお年寄りに人気な「釜川源流ウォーキング」冬にはデートスポットとして若者にも有名な「カマガワイルミネーション」といった、季節ごとに変わりゆく釜川を体感することができます。

4冬の釜川で行われる「カマガワイルミネーション」

しかし、これらすべて短期間のイベントであり、やはり中心部には常設の場所が必要であると安藤さんは考えたそうです。

常設へ向けたオープンカフェ事業

そこで、宇都宮の中心部のひとつであるオリオン通りに着目し、シャッター化や夜には若者のスケボーが目立つ状況を打破するために、オリオン通りを素材とした取り組みとしてオープンカフェ事業を始めました。
安心して歩ける空間を目指し宇都宮市、警察、消防、自治会、商店街で会議を重ね、2016年10月に社会実験を実施し、2017年4月には本格的に実施されました。当初13店舗の参加から今現在は38店舗に及んでおり、成功したといえるのではないでしょうか。

賑わいによる弊害

飲食が多くなるとお酒によるトラブルなどが発生してきます。賑わいが出ることによっての弊害が、商店街や地権者との意見交換でオリオン通りのイメージが異なるという意見に繋がっています。事業発信者として、そのギャップを埋めることが一番の課題であると考えています。
今日までの価値観の違いや生活スタイルの変化などが商店街にも大きく影響がでていると考えており、商店街のあり方について、賑わいを保ちながら商店街の人たちや地権者の人たちがうまく連携できるように調整し、利用し続けていただけるようにオープンカフェを成功させるためには、課題が多いと感じるといいます。

個人的欲望から始まるまちづくり ❘ 塩田大成さん

最後に、塩田大成さん(株式会社ビルススタジオ)から、宇都宮市中心市街地の取り組みについて紹介。

こうきょう を つくる

塩田さんは

「一般的に公共空間と私的空間は対極にあるが、公共空間は誰もが使える私的空間であると捉えている。」

と話します。
こういった考えで、日常につながる欲望を価値に変えることが重要であるとし、「もみじ通り」の取り組みが始まりました。
元は生活商店街だったもみじ通りに、10年前に自身の事務所を移転した際、“食べるところやコーヒーが飲めるところ、またおやつやおかずが買えるところが欲しい。これら全部美味しいものが欲しい。”という個人的欲望から始まります。さらには、塩田さんは自身を“出不精で人見知り”と表し、これら全部が近所に欲しい、という欲望が沸き上がったそうです。
そこでとった手段はとにかく言いふらすことでした。すると事務所の近所に、カフェが移店してくれたり、雑貨店が開かれたり、ドーナツ屋やお惣菜屋がオープンしたりなど、始めは3-4店舗の出店から、徐々に県内のメディアを賑わし始め、出店希望者が増加し、22-23店舗までに拡大しました。これらすべての店舗が自身の事務所から徒歩3分圏内にあります。

52021年4月時点でのもみじ通り出店店舗

良い場所とは

塩田さんは良い場所を、良い空間×良い人×良い使われ方×良い稼ぎ方の全てが揃ったものであると考え、どれでもひとつ、自分が明確に“これはできる”と思っているところから着手すれば、おのずとほかの要素も遅れてついてくると言います。まずは、その場所単体の成立を描き、ひとつ小さくても自分で実現させることが重要だそうです。
よりよい実現のために「使えるもの」は使っていくことをモットーにしている中で、「使えるもの」や「使えるといいもの」というのは公共空間の場合が意外と多いと言います。さらには、公共空間がない場合は民地で公共的なスペースを作ってしまうのもひとつの手だといいます。
塩田さんは

「良い場所づくりの過程において、“自分の近所にあったら良いな”と思うことを、実現に向けての判断基準にしている」

と締めくくりました。

クロストーク

最後は前のセッションに参加した、宋俊煥さん(山口大学准教授)、田邊優里子さん(オンデザイン)、泉山塁威さん(ソトノバ共同代表)を迎え、登壇者によるクロストークを紹介します。

時間のマネジメント

今後の宇都宮中心市街地をどのように再生できるのかを考えるうえで、それぞれが思う課題を提示していただき、それについて議論します。
安藤さんによると

「イベントのような短期間のしかけだけでなく、常設の場所もしかける中で、時間をどのようにマネジメントしていくか。」

が課題のひとつであるとのこと。
泉山さんは、

「それぞれのアクションのタイミングを全体的に計画すると、街全体が繋がっていくのではないかと考え、宋さんもプレイスメイキングの基盤づくりはある程度できていると感じため、そういったものをベースに大きな公共投資事業がある場合には、それの時間軸に合ったビジョンづくりをセットで考えるべきなのでは」

と話します。
一時的に変えるのではなく、今後を見据え街全体を変えていくためにも、時間のマネジメント方法など計画段階が重要であるようです。

プレイヤーの輩出

 

塩田さんは宇都宮だけでなく、全国の中心市街地にいえる課題を掲げました。
塩田さんは

「消費に偏りすぎてはいないか。街なかでも、プレイヤーを輩出するような生産型の施設を増やすことも大事であるだろう。またその中でも、行政とどのように連携して創っていくか。」

と話します。加えて、


「その場所について考える時、ビジョンを実現できそうな人やまちにとってプラスになりそうな人を一本釣りし、そこから広めていくことが良い」



と話します。
塩田さんのお話でもあったように、プレイヤーを輩出するしくみとしてどのようなことが考えられるか。という質問に対して、
泉山さんは

「対話してこれやりたいという旗に共感できる人がいることがチームにとって大事だと考える。そういった人たちとどう出会っていくかを考えたときに、街なかに生産する施設があると大事なのではないか。」

と話します。
宇都宮中心市街地の活性化という目的に対する活動の中で、中心市街地という場所を受け身に捉えるのではなく、宇都宮中心市街地だからこその生産性を見つけることも大事な活動になるのかもしれません。

行政との関わり方

その中でも行政とどのように連携して創っていくかが議論の中で課題に挙がりました。
宋さんは

「“こういうことをやったらいいね”を行動に移すときには、リスクが付き物であると思う。さまざまなプレイをするうえで、多様なアクティビティを起こすことは良いと思うが、その時にプレイヤーが動ける場づくりにするには、自分がリスクを負ってまでも投資しともよいと思えるプレイヤーやある程度財力のあるプレイヤーの存在が重要であるのでは。」

と考えています。
プレイヤーひとりの一本釣りというのは、公募もやらなければならない立場にある行政の立場からするとなかなかうまくいかないと考えられます。その中でも、行政がプラスになれそうな人と取り組むためには、今日までの過程で街なかの“面白い人リスト”をつくっていき、公募する手前で一本釣りができるような関係性づくりをやっていかないとならない時期に入っているようです。

「プレイヤーの立場からも、何か情報を得たいときにだれかひとりが行政との窓口として繋がれる人がいれば非常に動きやすくなると思う。」

と塩田さんもいいます。
民間と行政の関わりについて、プレイヤーそれぞれの考え方がありました。それでも、行政の活動と民間の活動を別物として捉えるのではなく、双方が同じ着地点を探していくことで相互利益の活動が行えるのではないでしょうか。

2クロストークの様子

クロストークを終えて

最後に、登壇者からのコメントがありました。
安藤さんは

「スピードが大事であるとして今までやってきたが、ひとつひとつを積み上げて来たならば、大きなトラブルにならないうちに少しずつ良い方向にいけたのではないかと反省している。スピードも大事であるが、ひとつひとつをチェックしていかないとトラブルに繋がっていき、上手くいっていたまちづくりも中止せざる負えなくなってしまう。」

と話します。
塩田さんは

「行政と民間の関係性について、行政が明確にしたビジョンの中でこの人はそこに寄与してくれそうだなという人を捕まえて、日ごろからコミュニケーションを取り続けることが、いざ自分がアクションを起こすときに使える人材となれるだろう。いざ動くときそこが重要だと考える。」

と話します。
宋さんは

「中心市街地の課題として、行政と民間は回すべきサイクルの速さも大きさも異なるため、そこをどうマネジメントするかが大事であり、そのために行政と民間が共同で、意思疎通をはかりながらまちづくりビジョンをつくることが重要だろう。」

と話します。
田邊さんは

「行政の方々がどのようにキーマンを見つけるかの過程において、本人は自覚がなくても街に貢献している人というのはたくさんいる。今ではSNSを通じて、繋がり方やコミュニケーションの方法はたくさんある。」

と話します。
ソトノバ共同代表の泉山さんは今回のプレみやトークを踏まえたPlacemaking Week in 宇都宮 2022の全体の感想として、

「学ぶことがとても多く、充実した時間だった。行政の動きと民間の動きにおいての話では、僕らでもできることがあればやっていきたい。」

と締めくくりました。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は、宇都宮中心市街地で今どんなことが起こっているのか、またこれからどんなことが起こっていくのかという基盤情報を踏まえて、各人各様の考えを持つプレイヤーの方の宇都宮に対する率直な意見を伺うことができました。
議論の中で、宇都宮にはあまり問題はないのでは,,⁉という声も挙がり、実際にさまざまな取り組みが紹介されました。宇都宮にはポテンシャルが高い多くの仕掛けられる場所があり、中心市街地活性化のためにさまざまな角度から活動が実施されてきました。
その活動があるが故に、また新たな課題に対する議論であったと感じます。今後も、宇都宮中心市街地の公共空間の賑わいに注目したいです。
テキスト:竹中彩(日本大学理工学部建築学科3年 都市計画研究室(根上・泉山ゼミ))
グラフィックレコーディング:古谷栞

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