まちを彩り、人の居場所をつくる─横浜で行われたストリートファニチャーのデザインコンペって!?

近年「道路占用許可の特例」や「国家戦略道路占用事業」等により注目されている道路。オープンカフェやマルシェはさることながら、道路にさらにはまちなかに楽しさやワクワクを演出するアイテムとして重要な立役者がストリートファニチャーです。

そんなストリートファニチャーにスポットをあてたデザインコンペが横浜で行われました。今回はそのコンペから実際の設置までの模様をレポートします。

まちを楽しくするストリートファニチャーコンペに111点もの応募が!!

さかのぼること昨年7月、横浜市内にある建設会社の株式会社キクシマによる「まちを楽しくするストリートファニチャーデザインコンペ」が開催されました。

横浜市の協力のもと建築家、写真家、横浜のまちづくりに携わっている方を審査員に迎え進められたコンペは、111点にものぼる応募が寄せられたとことで注目の高さが伺えます。10月には一次審査を通過した11の作品について公開プレゼンテーションがBankART STUDIOで行われ、最終的に3つの作品が優秀賞として選ばれました。

◆優秀賞

 「みんなの輪〜樹の下のからみ合い〜」 株式会社アトリエハレトケ一級建築士事務所 長崎辰哉
 「Three Hundred Chairs」 慶應義塾大学ホルヘアルマザン研究室
「いぬの停留所」  DESIGN PEOPLE 久万 奈都子

「Three Hundred Chairs」からみる有機的ストリートファニチャーのヒント

さて、優秀賞のひとつ慶應義塾大学ホルヘアルマザン研究室による「Three Hundred Chairs」は、横浜市近郊の小・中学校、幼稚園・保育園から使われなくなった椅子を集め、市民と一緒に椅子に絵を描くという、市民を巻き込んだ提案が特徴の一つです。

ベンチがある道路はよく目にするものの、実態としてほとんど使われていないのも多くありますよね。「Three Hundred Chairs」を提案したホルヘアルマザン研究室の一人、草野萌さんが「自分でつくったものには愛着がわくもの。」とお話してくれたよう、市民が愛着あるものにするための仕掛けは、有機的なストリートファニチャーとなるヒントなのかと感じました。

さらに、この提案で特徴的なのが、自由に動かせるということ。そう、先日お届けした山下裕子さんの「あいうえお広場二スト入門」でも「「う」動かしてみる。」とありました。動かすと聞いて、ニューヨークのブライアントパークを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。パブリックスペースでありながら、自分が落ち着く場所・方向・スケールを自由に作り出し「わたしのスペース」つくれることが、動かせることの最大の魅力なのではないでしょうか。

今回の提案者アルマザン先生は「海外では、まちにある椅子を動かし、お金がなくても誰もが簡単にコミュニケーションの場を作っている姿を目にする。日本では椅子一つに座るにしても、コーヒー一杯買わなければいけない。」と社会コミュニティを形成していく上での日本の課題を指摘します。その背景には、まちなかで椅子を置くことによる、転倒の恐れ、持ってかれてしまう懸念といった問題のほうが大きくとりだたされる「安全第一」の日本の特性が大きく影響しているのかもしれません。アルマザン先生は「この機会を有効に活用し、行動観察等をすることで安全であることを証明していきたい。前例を増やすことが大切」とお話ししてくださいました。

そんな思いが込められた「Three Hundred Chairs」は、実際に今年1月17日(日)赤レンガ倉庫にてペインティングワークショップを開催され、小学生を中心に、親子や友達同士、夫婦など色んな層の方が参加していました。

そしてカラフルに彩られたたくさん椅子が1月28〜31日にわたり横浜赤レンガパークと赤レンガ広場に出現したのです!!

ペインティングワークショップのようす。子供も大人もかなり真剣になっていました!

ペインティングワークショップのようす。子供も大人もかなり真剣になっていました!

次々と完成した椅子が!思い思いに描かれた椅子は見事なアート作品に!

次々と完成した椅子が!思い思いに描かれた椅子は見事なアート作品に。photo by 荒井詩穂那

赤レンガ広場に「Three Hundred Chairs」が出現!そのとき人々がとった行動は…

さて実際の設置が行われ、特に最終日の1月31日(日)は、2棟の横浜赤レンガ倉庫に挟まれた赤レンガ広場という多くの人が行き交う場所での設置ということもあり、観光客などが自由に座っている姿が見られました。

実はこの赤レンガ広場、普段は意外と座れる場所がないため、座ってのんびりするといった姿が案外見られないのが実情...しかし、寒い季節にもかかわらずこの日ばかりは、みなさん自由に椅子を動かし自分たちの居場所をつくりしばらく、のんびり横浜の景色を楽しんでいたようです。

その他、優秀賞をとった2作品も日本大通りに設置がされ、実際に利用する人たちの姿を見ることができました。いつもの道路に突然出現した、ストリートファニチャーにみなさん最初は戸惑いつつも、近くでかったコーヒーを片手に自由に腰掛、ゆったりとした時間を過ごしていました。ここに現れたストリートファニチャーは、いつもは通りすぎる場所でも、なんだろうという興味からふと足を止め、滞在させる力をもっていました。

photo by 慶應義塾大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室

自分たちで自由に椅子を動かしつくられたそれぞれの「わたしのスペース」。冬の寒さを伺わせません。photo by 慶応義塾大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室

日本大通りでは優秀賞3作品が一挙に展示されていました!photo by ㈱キクシマWEBSITE

日本大通りでは優秀賞3作品が一挙に展示されていました!photo by ㈱キクシマWEBSITE

近くのコンビニで買ったコーヒーを片手にゆったりとくつろぐなんて姿が見られました

近くのコンビニで買ったコーヒーを片手にゆったりとくつろぐ姿。photo by 荒井詩穂那

市民人も楽しんでもらえるイベントをしたい!

さて今回の「まちを楽しくするストリートファニチャーデザインコンペ」、そもそもキクシマの50周年記念で企画されたとのことで、キクシマ営業部津田野恵さんは、「日ごろの恩返しができないかということで市民の方に楽しんでもらおうとこの企画がもちあがりました。ワークショップ形式をとったことで、一般の方も巻き込むことができて良かった。」とお話してくださいました。

そしてなんと、「Three Hundred Chairs」は、現在赤レンガ広場にて開催中の『横浜ストロベリーフェスティバル2016』にも休憩スペースの椅子として活躍しているのだとか。イベントは2月14日(日)までとのことで見逃した方は必見です。

横浜というまちに新たな彩りと発見を与えてくれた今回の「まちを楽しくするストリートファニチャーデザインコンペ」、第2回も考えているとのことで、今後の動きも楽しみです。

photo by 慶應義塾大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室

photo by 慶應義塾大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室

【まちを楽しくするストリートファニチャーデザインコンペWEBSITE】http://www.kikushima.co.jp/?page_id=21422

cover photo: 慶應義塾大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室

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荒井 詩穂那

荒井 詩穂那

ソトノバ副編集長/(株)首都圏総合計画研究所研究員/NPO法人・ハマのトウダイパークキャラバン実行委員会メンバー  神奈川県横浜市出身。行動派。現場派。学生時代は、近代における東京・大阪・横浜の公園計画や小広場空間の採用について研究。現在は、都市計画コンサルタントとして働く傍ら、休みの日には地元横浜で、公園等の活用プロジェクトを実施。