渋谷のどまんなかに家具を置いたら、「文脈の交差点」がうまれた!? 「Street Furniture@渋谷音楽祭2016」開催レポート

路上、路地、道端。

どれも「交通」の観点でとらえがちなものだけれど、ちょっと花壇に腰かけてコーヒーを飲んだり、溶けないうちにアイスクリームを仲間と分け合ったり。

私たちは、道や路地をなにげなく「活かす」ことがある。その無意識な行動って、もしかすると何かきっかけがあればもっと面白くなるのかもしれない  

そんなことに気づいたのは、10月23日(日)に渋谷・道玄坂で開催されたプログラム「Street Furniture@渋谷音楽祭2016」でのこと。

「ボトムアップで」未来のまちを考える実験プロジェクト「Shibuya Hack Project」の一環でおこなわれたプログラムの様子を、最近まちの空間活用事情に関心をもちはじめた、原口さとみがお届けします!

Street Furnitureとは

「Street Furniture@渋谷音楽祭2016(以下、Street Furnitute)」は、座ったり寄りかかったり覗き込んだり、つい「関わりたくなる」家具を渋谷の路上に配置し、まちゆくひとがいつもとちょっと変わった目線でまちを眺めたり、たたずむことのできる空間をつくる実験企画。

「渋谷は、もっと「寛容」になってもいい気がするんです。個人がやりたいと思ったことを、まちが許容するカルチャーがもっと醸成されたら、渋谷の未来はどうなるんだろう?と思ったのがはじまりです」

と、企画・運営を務める石川由佳子さん(ロフトワーク)は言います。

これまで色んなカルチャーを生み、日々まちの一個人がクリエイションをしている渋谷。スタートアップやNPO、大正時代から続くような大企業など、まちに集う組織やひともさまざまです。

Street Furnituteでは、そんな多様な渋谷のど真ん中にちょっと「Hack」された家具を置くと、まちの態度はどう変わるかを実験する企画としておこなわれました。

空が覗けるベンチ、座れる地図模型?

設置したのは、空が覗けるベンチ、座れる地図模型、「椅子性」を見出す家具など、「関わってみると」まちへの目線が変わるように「Hack」された全4種の家具です。

「FOUND CHAIRS」(mi-ri meter)photo by 佐藤邦彦

「FOUND CHAIRS」(mi-ri meter)photo by 佐藤邦彦

「しぶや座」(金泰範、橋本圭央)photo by 佐藤邦彦

「しぶや座」(金泰範、橋本圭央)photo by 佐藤邦彦

「渋谷鏡」(岩沢仁、堀川淳一郎)photo by 佐藤邦彦

「渋谷鏡」(岩沢仁、堀川淳一郎)photo by 佐藤邦彦

「Hack」された家具は、こうしてうまれた

photo by Satomi Haraguchi

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家具は、6名の建築家やデザイナーが、渋谷センター街や道玄坂など中心エリアでフィールドワークを行い「まちとひとの関わり方をシフトする」という視点でゼロから制作されました。

円山町、センター街、道玄坂、南街区。それぞれ個性ある路上で靴からスリッパに履き替え、座布団片手に歩き回り、路上に腰を下ろしてまちゆくひとを眺め、観察するフィールドワーク。

photo by Satomi Haraguchi

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「意外に座れるもんだな〜」、「だいたいみんな、柱や棒状のものがあるとそれに寄りかかってる」、「路上でたたずむ心理的なハードルを下げるものってなんだろう」などなど、観察からうまれたアイデアをチーム同士でレビューし合うプロセスを経て、まちに馴染みやすく、しかし「Hack」要素の強い全4種の家具がうまれました。

photo by Satomi Haraguchi

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家具を制作した建築家やデザイナー。橋本圭央、岩沢仁、宮口明子、笠置秀紀、金泰範、堀川淳一郎(左から・敬称略)

ものに意味を見出すと、ひとは無意識にかかわり「Hack」する

photo by Satomi Haraguchi

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そして当日、昼12時に道玄坂が封鎖、一気に路上に家具が置かれていく様子に、何も知らないひとたちは不思議そうな様子。

はじめはみなさんもの珍しく通り過ぎていきましたが、誰かがちょっと近寄ったり座ろうとすると、徐々に路上にひとが増えていきました。

photo by Satomi Haraguchi

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普段は自分と平行な位置にある鏡が垂直にあると、「覗きこむ」動作がうまれてなんだか不思議面白い。

photo by Satomi Haraguchi

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スイスからきたというカップルは、こちらが何も言わずとも、カラーコーン製のテーブルを椅子に引き寄せてコーヒーブレイク。上から覗くと、まるで道路?

photo by Satomi Haraguchi

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大きな荷物の方も、ホットドッグ片手にひとやすみしていたり。

photo by Satomi Haraguchi

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「FOUND CHAIRS」と名付けられたまちにありそうなモノたちには、シールの案内にうながされるままにひとが座っていきます。

私も手すりを背もたれに台車に腰掛けていたら、「この漫画、背中にはさめばもっと居心地よくなるんじゃない? ページの場所でやわらかさも調節できる!」と背当てをつくってくれた、優しいHackerもいました(笑)。

ふだんはただの「モノ」としか捉えていなかったものでも、そのモノに意味を見出すと、ひとは歩み寄ったり行動におこすのかもしれません。

photo by Satomi Haraguchi

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ある参加者の方が「椅子はずっと椅子じゃない。ひとが座っている時は椅子だけど、座っていない時は椅子じゃないかもしれない。既存のモノに新しい意味を見出す、つまり当たり前の文脈に何かもうひとつの文脈が交差したとき、面白いことが起きそう」(筆者意訳)と言っていたのが印象的でした。

まったく未知のものでもなく、いつも通りのものでもない。「Hack」されたモノからうまれる「何かがちょっと違う」シチュエーション、彼の言葉を借りるならば「文脈の交差点」には、ひとを動かすパワーがあるようです。

渋谷で、個人のクリエイションを後押しする意義

ソトノバでも公開されている通り、タクティカル・アーバニズムと呼ばれる、短期間のアクションを公共空間で実験的に繰り返し、まちに変化を起こそうとする動きは、最近日本でも散見されるようになっています。

photo by Satomi Haraguchi

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そんななか、今回ちょっと意外だったのは、渋谷という一見クリエイションに寛容そうなまちでも、意外に家具と関わるのは子どもや海外の方、若い女性が少々、といった具合だったこと。

「なんだなんだ?(わくわく)」といったテンションというより、ちょっと不安げに通り過ぎるひとが大半で、海外のようにどんどん人だかりができる……という状況にはなりませんでした。これは、もったいない。

海外でのフィールドワークも行っている参加クリエイターのひとりは「凝りかたまった習慣をほぐして日常に生かすと、文化の定着につながる。まず既成概念をとりはらうには、習慣をほぐすにはどうするか?を考えたい」と話していました。

photo by Satomi Haraguchi

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「ロンドン・パリ・ニューヨークともまた違う文化が世界でも評価されている『渋谷』というユニークなまちだからこそ、クリエイションの後押しに取り組む価値があると思う。渋谷はこれまでもいろんなカルチャーを生み・育んできた。大きな挑戦だけれど、小さく、たくさん、これからも実験的にプロジェクトを実施していきたい。Street Furnitureもその実験のひとつ。これからもアップデートしていきます!」

と、企画・運営の石川さん。

日本には、お花見という偉大なる言い訳のもと、路上に床の間を引っ張り出す文化があるはず。「路上」の概念を取り払い、個人のクリエイションがまちに滲み出すようにあらわれたら、もっとひととひと、ひととまちがかかわり、まちにポジティブな変化が生まれるのではないでしょうか。これまでもユニークな発展をしてきた渋谷。これからの移ろいも楽しみです!

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原口 さとみ

原口 さとみ

英治出版で出版プロデューサーとして書籍企画、編集、DTPデザイン、プロモーション等を担当したのち、新興国を主としたプロジェクト型教育プログラムを行うNPOの職員を経て、2015年よりロフトワークに参加。社内外のコミュニケーションを中心に、地域や公共空間のクリエイティブプロジェクトのPR等を担当する。関心領域は、社会課題とクリエイティブの可能性、身体表現と社会とのかかわり。