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レポート

道路協力団体が橋上をカフェに!「犀川リバーカフェ」現地リポート

道路空間を利活用する民間団体と道路管理者が連携して道路管理のさらなる充実を図ることを目的に、平成28年の道路法改正により創設された「道路協力団体」制度。

その全国第一号認定団体のひとつとなった「金沢片町まちづくり会議」では、国登録有形文化財「犀川大橋」をカフェとする収益活動を展開。

今回は、その企画から運営に携わるスタッフの視点で現地リポートをお届けします。

ところで、「道路協力団体」ってなに?

「金沢片町まちづくり会議」は、平成25年5月に地元町会、商店街、学生団体、社交料飲組合、金沢市関係課などから設立された団体であり、パブリックスペースの利活用など、多くの人や地域との連携・協働によるまちづくり活動を展開しています。代表的な取り組みとしては、過去の記事でも取り上げた犀川河川敷での「サイガワあかりテラス」があり、水辺の魅力を活かしたまちなかの付加価値向上に取り組んでいます。(前編後編
金沢片町まちづくり会議は、平成28年12月に国土交通省金沢河川国道事務所より「道路協力団体」の指定を受けました。道路協力団体とは、“道路の維持管理に協力する団体”のことであり、その一番の特徴は、維持管理にかかる費用を捻出するための収益活動を道路上で実施できる点です。

金沢片町まちづくり会議の取り組み-2

道路協力団体の概要 Photo by Masahiro Katagishi

集合写真

金沢河川国道事務所長からの指定証伝達式 Photo by Masahiro Katagishi

類似の制度として、都市再生特別措置法改正に基づく、「道路占用許可の特例」制度があり、この場合は都市再生整備計画への位置づけ等が必要となりますが、道路協力団体は申請時に活動の範囲や内容を定めることで、道路管理者との事前協議のみで占用許可が不要となる仕組みを有しています。

活動内容は、道路の清掃等の維持管理を担う公益活動、それらの原資を得るためのオープンカフェ等の収益活動であり、「札幌大通まちづくり会社」が運営する「すわろうテラス」のような恒久的な構造物を道路上に設置することも可能となっています。

金沢片町まちづくり会議では、収益活動としてオープンカフェを位置づけ、その収益で道路の清掃や花植え、犀川大橋ライトアップ支援、ベンチの設置・管理等の公益活動を行う計画としています。なお、まだ始まったばかりの「国の制度」であることから、対象となる道路は直轄国道のみとなります。

金沢片町まちづくり会議の取り組み-3

金沢片町まちづくり会議における道路協力団体としての活動内容 Photo by Masahiro Katagishi

橋上からの眺めがご馳走!「犀川リバーカフェ」の展開

そんな道路協力団体としての収益活動第1弾が「犀川リバーカフェ」です。

このカフェの主な特徴は下記の3点。

①金沢片町まちづくり会議が特注で製造した専用カウンターを犀川大橋の高欄に設置(8台)

②犀川大橋北詰のポケットパーク(国道上)に飲食ブースを設置(アルコール含む)

③特別な演出はせず、昼は橋上からの眺め、夜は犀川大橋ライトアップを楽しむ場に

期間は、4月14日(金曜、17-20時)、15日(土曜、15-20時)、16日(日曜、15-18時)の3日間。

繁華街に向かう前の「ゼロ次会」の立ち飲みバーをコンセプトに実施しました。

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ドリンクやフードを置くため高欄に設置された特注カウンター Photo by Masahiro Katagishi

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橋詰ポケットパークに仮設した飲食ブースは会議メンバーが模擬店として出店 Photo by Masahiro Katagishi

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シンプルなメニューと注意書き(橋上でのマナー等) Photo by Masahiro Katagishi

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金沢河川国道事務所長、金沢市長、金沢中警察署副所長同席のもと、乾杯でスタート! Photo by Makoto Yokoyama

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外国人カップルも橋上からの眺めにうっとり Photo by Masahiro Katagishi

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お年寄りからお子様連れまで多世代が橋上でほっこり Photo by Masahiro Katagishi

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橋上での女子会に会話の花が咲きます Photo by Masahiro Katagishi

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夕暮れ時には多くの市民や来街者が来場 Photo by Masahiro Katagishi

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ご家族でのご来場、ありがとうございます! Photo by Masahiro Katagishi

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橋上からの眺めが最高のご馳走 Photo by Masahiro Katagishi

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見事なライティングと歩道張り出し部のカフェ空間 Photo by Makoto Yokoyama

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素敵なライトアップをつまみにビールを味わう Photo by Masahiro Katagishi

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夜間の大人な雰囲気も人気の犀川リバーカフェ Photo by Masahiro Katagishi

カフェで得た収益を「花植え」で還元!

3日間の限られた時間帯での営業でしたが、天候に恵まれ一定以上の収益を得ることができました。会長である諸江洋さんの発案により、収益の一部を道路の維持管理に還元し、4月28日から5月15日までの間、カウンターにプランターを設置して花を飾ることになりました。

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会議メンバーでカウンター上にプランターを設置 Photo by Masahiro Katagishi

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カウンターに花を飾るという会長の粋な提案 Photo by Masahiro Katagishi

道路協力団体のメリットとこれからの課題

会議メンバーの斬新なアイデアと抜群の行動力により、わずか2週間ほどの準備期間で実現した「犀川リバーカフェ」。

一見、橋の上を簡単に利用しているようにみえますが、「道路協力団体」としての公的な位置づけがなければ成し得なかったこの取り組み。

道路管理者である国土交通省金沢河川国道事務所をはじめ、河川管理者である石川県県央土木総合事務所、当会議を支援する金沢市、そして交通管理者である金沢中警察署の多大なる理解と協力を得られたことが、道路協力団体としての最大のメリットだと実感しています。

一方、国としてもノウハウの蓄積がまだ無い、できたてホヤホヤの制度であることから、道路占用に係る事前協議や道路占用料の取扱い(今回は初めてということで通常通り一時占用の届出と占用料の支払いが発生)、警察との協議や道路使用許可申請など、まだまだ「手続きの簡略化」には至っていない状況です。

今後、より良いパブリックスペース利活用の実績を重ねるとともに、そこで得た収益をパブリックスペースの充実に還元していくことで、「道路協力団体」の公的な位置づけを高めていく必要があります。

同時に、収益活動にかかる長期の道路占用・道路使用の許可や占用料及び使用料の免除あるいは減免、警察協議の簡素化など、より柔軟なパブリックスペースの利活用に向けた協議・調整のあり方を模索していきたいと思います。

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犀川リバーカフェの恒久的な実施に向けて Photo by Makoto Yokoyama

【イベント概要】
期 間: 2017年4月14日 [金] 〜 4月16日 [日]
会 場: 犀川大橋(上流側の歩道張り出し部分、北詰ポケットパーク)
出 展: 飲食ブース出店(ドリンク、フード)、特注カウンター設置
主 催: 金沢片町まちづくり会議
協 力: 国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所、石川県、金沢市、金沢中警察署
ウェブサイト: facebookページ

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