日本の道路空間でパークレットができないワケとは?池袋・GREEN BLVD MARKETの経験から見えた日本の道路空間の課題

最近、道路空間の活用の検討や、社会実験や国家戦略特区でオープンカフェやマーケットを行うなど、道路を面白く楽しく使おうという機運が、起きていますね。道路だけではなく、公園や水辺、広場など、パブリックスペース全般に言えることです。

しかし、道路空間の活用事例を見ていると、イベントか、オープンカフェ、マーケットなど、パターンが少し限られていることを懸念する声を聞くことが多く、新しいアイデアはないかと、相談に連絡がくるのも少なくはありません。

では、なぜ、道路空間の活用は苦戦しているのか、私自身が昨年度関わっていた、池袋・GREEN BLVD MARKETの経験を踏まえて、お知らせしたいと思います。

海外に目を向けると、オープンカフェのデザインガイドラインで細かくストリートごとに許認可をしていたり、ニューヨーク市では、ゾーニングという都市計画に、オープンカフェが組み込まれ、オープンカフェマップも存在します。ポートランドでは、TIF(Tax Increment Financing)という固定資産税の上乗せ分の金額を財源とした特区(Special District)の中で、道路の沿道建物の店舗改修費用に50%補助をしたり、ファニッシュゾーンという歩行空間と車道の間にアクティビティを生むゾーニングを指定するなど、沿道の賑わいを創出しています。

サンフランシスコでは、パークレット(Parklet)という車道空間の路上パーキングスペースに、デッキスペースのキットをはめ込み、目の前の店舗などが半分資金を負担し、飲食スペースや大学の展示スペースなど、思い思いの使い方をしています。パークレットマニュアルもWEBで公開されていて、デザインも場所によって異なります。道路を公園のように使うという、Pavement to Parksというプロジェクトから生まれた仕組みです。まさにソトノバが注目するタクティカルアーバニズム

ソトノバでも、ソトノバTABLE#6で、パークレットをテーマに議論します。

photo by Samuel Heller

photo by Samuel Heller

こういった道路空間の活用を日本でもできないものでしょうか?

そのような想いを持ってプレーヤーの1人として関わった、昨年実施した、GREEN BLVD MARKETの検討プロセスから、今の日本の道路空間の課題を見ていきたいと思います。

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まずは、池袋・GREEN BLVD MARKETについてですが、今年の4月に国家戦略特区の国家戦略道路占用事業を、内閣総理大臣認定を受けた、池袋グリーン大通り(豊島区)のプロジェクトで、国家戦略特区を取得するための実績づくりやチャレンジとして、オープンカフェ社会実験が2014年秋から3度行われました。

豊島区役所が2015年春に移転することを契機に、池袋駅東口エリアの再編(豊島区役所新庁舎建設、旧庁舎のPFI開発、南池袋公園整備、グリーン大通り)や副都心競争の駅再生という池袋の新たなウネリが生まれようとしています。その第一弾として、グリーン大通りのオープンカフェが始まりました。

オープンカフェ社会実験を2014年秋、2015年春と積み重ね、2015秋の社会実験では、飲食特化型マーケットとして、GREEN BLVD MARKETを実施しました。GREEN BLVD MARKETは、2015年春から始まりましたが、移動式仮設空間のベンダー・リアカーを製作し、2ヶ月間実施しましたが、そこで行った人間中心視点でのアクティビティ調査の結果から、滞在時間を増やす手段として、飲食の必要性の結果が出たのです。

以前にソトノバでは、池袋GREEN BLVD MARKETの路上活用サイドストーリー!路上のピザ屋さんから感じたことでも紹介しておりますが、メインストーリーをご紹介しましょう!

GREEN BLVD MARKETのタクティカルなストリート空間の特徴

2015年秋のGREEN BLVD MARKETの空間を見てみましょう。

まずは、道路空間を活用するには、歩行者通行帯という歩行者が通行するための幅を確保しなければいけません。グリーン大通りは、50mの広幅員道路のため、歩道も10mほどあり、十分な滞留空間を確保しやすかったのです。車道側に、ベンダーと飲食スペースを並べ、通行空間と滞留空間のゾーニングを明確にしました。

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今回は、飲食特化型マーケットにしたことで、飲食するスペースを設ける必要がありました。しかし、歩道の場合、広場や公園に比べ、まとまったスペースが取りにくく、十分な席数が確保しにくいのです。

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そこで、ハイカウンターを設け、座らずとも食べることができ、またコミュニケーションを取りやすい空間の設えにしました。

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また、アルコール提供に加え、夜19:00まで使用許可を得たため、少ない光源の中で夜の飲食空間の演出を行いました。

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こういった社会実験で大事なのは、アクティビティリサーチ。単なる交通量調査だけでは歩行者通行量は把握できても、利用者の利用数は把握できないのです。利用者の行動を観察したり、アンケートによる満足度を測ったりしながら、効果測定や社会実験のデータを取ることが、活用の是非や内容の議論に繋がったり、そのリサーチ結果を踏まえてさらなる社会実験の検討や空間改善をすることが大事ですね。

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池袋・GREEN BLVD MARKETの歩道版パークレットとは?

それでは、池袋の歩道版パークレットを紹介しましょう。

今回のパークレットの構成は、パレット、長毛人工芝、ビストロチェア・テーブル、パラソル、チャンネル文字(BLVD)、パークレット表示(PUBLIC PARKLET)。非常に簡易的な構成にしています。機能的には、飲食スペースであったり、くつろぐスペースを想定しています。

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BLVDというのは、Blvd(ブールバール)、大通りという意味です。この赤いチャンネル文字は、TEDのようですが、パブリックスペース活用において重要なアクセントになっています。

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そして、外国人観光客や若者は、写真を撮って、SNSでアップします。広報効果としても大きいです。

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BLVDの文字は、固定物ではないので、状況によって置き方も変わります。風が強ければ寝かしたりします。このチャンネル文字によって、特別な空間を演出するとともに、通りがかった人に目を引かせる仕掛けになります。

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そして、人工芝は、あえて、長毛人工芝(文字通り、毛の長い人工芝)にしているのは、パークレットという空間の領域性を出すのに加え、居心地の良さを高め、人々の居場所(プレイス)になってほしいという想いがありました。薄い人工芝だと見た目でも、触感でもこの居心地がつくれないのです。

12195097_977144272327396_5907633776498364162_o そして、想い想いに、飲食をしたり、会話をしたり、コミュニケーションをとります。

12183982_977143085660848_3526066790637324836_o 1人でも佇むことのできる特別な時間。

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カップルや女性が時間を過ごしたくなる空間。

12187977_977138642327959_8799138757845485108_o  本来のパークレットは、路上パーキングにユニット化したもの。つまり、車道空間に対して、歩道空間を拡張したものなんです。

では、なぜ池袋のグリーン大通りで歩道版パークレットを導入したか。これは、オープンカフェの空間は、期間限定ながら、毎日設営・撤去を沿道のお店が行っていました。この日常的な負担を減らし、エリアマネジメントの活動に展開していくための1つの手段だったのです。

日本の道路空間の制約とは?

では、道路空間の制約とは何なのか。

道路空間を活用するには、道路管理者=自治体(区道の場合は区)に道路占用許可を取った上で(道路法)、交通管理者=警察(所管警察署)に道路使用許可を取る必要があります(道路交通法)。

道路管理者は、活動の主旨やパブリック性があり、信頼できる主体であれば、あまり制約が多いことはないです。町内会や商店街のお祭りに加え、最近では、エリアマネジメント組織などであり、民間企業だけでは許可が下りないことが多いです。

一方で、交通管理者は、第一に交通事故防止、治安維持の観点にいるため、道路空間の活用には慎重的です。また例えばニューヨーク市の場合は、市の中に交通局があり、都市交通の専門家がいますが、日本の交通管理者(警察)は、交通の専門家ではありません。協議では、いかに自動車の交通事故や、自転車、歩行者の事故が起こらないか、酔っ払い等の迷惑行為が起こらないか、火事は起こらないかなどの治安維持の点が指摘されます。

近年の規制緩和で、道路空間は劇的に変わりました。都市再生特別措置法の「道路占用許可の特例」、国家戦略特区(国家戦略特別区域法)の「国家戦略道路占用事業」で、計40地域以上が道路空間を弾力的に活用しています。しかし、全て緩和されているのは、道路占用許可。道路使用許可は緩和されていないのです。

具体的に道路空間の確保で制約となったのは、交差点から一定程度のバッファをとること、そして、電話ボックスや郵便ポスト、バス停への動線、沿道建物の駐車場出入り口、非常用消火栓、これらに十分な余白を取らなければならないのです。こうなると、使用できる歩道は連続性を失うようにぶつ切りになり、使用できるスペースの30%は使用できなくなりました。道路には様々な構造物があるため、制約の1つになります。

他にも細かな点として、光源、電源、飲食、風の対応、協議スケジュールなど、課題はたくさんありますが、それはまたの機会にお知らせしますね。

日本の道路空間でのパークレット設置の具体的制約とは?

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まずは、アメリカのように、車道での設置が難しいということです。上記のように交通管理者の協議ハードルは高く、特に自動車の通る車道は、より協議上も神経を使います。自動車事故からの安全性の検証など、説明材料がないと難しいです。可能性があるとしたら、車両規制を行った歩行者天国上の設置になるかと思います。

また、日本の道路空間や公園は、設置物(ベンチや街路灯)以外は、一時的な占用物となるため、長期間設置するというのは難しいです。サンフランシスコのパークレットは、1年更新のため、最低1年置きっ放しですが、日本の道路空間の場合は、即日設営・即日撤去となります。

そして、事故や緊急時に備え、「緊急時に2人で運べるものでないと認められない」という話でした。この理屈は不明なのですが、活用することと合わせて日本の道路空間の公的責任の所在をクリアすることと関係しています。2人で運べるものとなると、2×7mもある本場のパークレットは、日本の道路空間ではまだまだハードルは高いです。即日設営・撤去もあるので、日本版のパークレットは、ユニット化した運搬も考慮された形態を開発していく必要があると思います。池袋・GREEN BLVD MARKETの歩道版パークレットもこの協議の結果から、写真のような簡易的な形態になっています。

 

これからの道路空間への視座!

そして、最後に、日本の道路空間を楽しく活用していくには、これまでの発想を超えた若いアイデアが必要です。世界では、見たこともない使い方が多く見られます。日本の道路空間の使い方は、パターン化してしまっています。そして、日本の道路空間の活用をする機会はまだまだ限定的です。若い世代がこのような貴重な機会に多く関わり、一人一人のパブリックスペースへの関わり方が変わっていくことで、もっと日本のパブリックスペースは面白くなると思います。近い将来、アッと驚くパブリックスペースの活用、そして、日本版のパークレットが生まれることを楽しみにしています。

そして、本日、もうチケット完売ですが、ソトノバTABLE#6Public Parklet Japan!道路をパークする仮設空間プロジェクト”パークレット”とは」で、日本版パークレットの可能性を探る公開勉強会を行います。その模様は、ソトノバレポートにて。

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ちなみに、池袋GREEN BLVD MARKETを中心的に企画したメンバーは、次のフィールドで面白いパブリックスペース活用を検討していますよ!また、改めてお知らせしますね!

もっと、日本の道路空間やパブリックスペース活用が面白くなるために!

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photo by 泉山塁威+Knit Green 実行委員会(GREEN BLVD MARKET主催者)

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泉山 塁威
ソトノバ編集長/明治大学理工学部建築学科助教/一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ/博士(工学) パブリックスペースとエリアマネジメントを専門とするタクティカル・アーバニスト。リサーチャー・プロジェクトデザイナー。 公開空地や道路占用許可の特例、エリアマネジメントのビジネスモデルの視覚化などの研究や実践プロジェクトを手がける。