学生たちのソトのアイデア大集合!「学生と地域との連携によるシャレットワークショップ in 松江2017」レポート

近年、地方都市では、人口減少等を要因に中心市街地の活力の衰退が問題となっておりますが、実際にどのような対策を講じていけば良いのでしょうか?そんな中、注目されているのがシャレットワークショップです。(以下、「シャレットWS」)です。

シャレットWSとは、日本建築学会の関連プログラムとしてNPO法人まちづくりデザインサポートの運営のもと、公募により選抜された全国の都市・建築系大学院生・学生が、地域の方や専門家と討論しながら、実践的な計画・デザインを提案する、4泊5日の短期集中滞在型ワークショップです。

今年で13回目となったシャレットWSと舞台となったのは、島根県松江市。今年は全国から37名の学生が集結し、8月25日〜 8月29日の5日間にわたって開催されました。

長年、地域でまちづくりに関わってきた方々にとっても気になる、全国から集合したワカモノたちが松江を歩き、感じた新たな視点とアイデアとは?今回、学生ライター田中がシャレットWSに参加し、全国の学生の仲間たちとアツい議論を交わしつくり上げた成果を紹介すると共に、シャレットWSの模様をレポートします!

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国宝・松江城 重厚感のある佇まい  Photo by Shota TANAKA

風格漂う水辺の都・松江

今回のシャレットWSでフィールドとなった松江市街地は、松江城とその城下町に残る武家屋敷の町並みの美しさから、かねてより山陰の小京都と呼ばれております。
また、宍道湖の水を引いて作られた内堀、外堀などの水路網は松江堀川と総称されています。これらの豊かな水辺の存在によって松江市は、「東洋のヴェネツィア」として知られ、年間約400万人の観光客を引き付けています。

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松江を語る上で欠かせない松江城を囲むお堀の水辺  Photo by Rui IZUMIYAMA


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道路空間にも城下町を意識した意匠が随所に見られる  Photo by Rui IZUMIYAMA

ワカモノたちが見た松江

シャレットWSは5日間という短い期間で地域に対して提案をしていきます。そこでWS初日、私たち参加者は、NPO法人まつえ・まちづくり塾や松江市役所の方々の案内のもと松江市街地のまちあるきと松江の歴史やまちづくりの取り組みについてレクチャーを受け、各自で感じた印象や評価をレポートにまとめました。

歴史的な空間資源が多く残る一方、都市化された建築物が地域の連続性を絶っている部分も多く見られた松江市街地。そのため、都市化と歴史的な空間資源の保存・保全の間でどのように松江市街地をマネジメントすれば良いか学生たちの間で大きな議論を呼んでいました。また、松江が今後観光都市として躍進していく為に、市街地に張り巡らされたミズベと観光をどのようにネットワーク化することができるかも議題になっていました。

これらの議論を元に「A班:全体をつなぐ」、「B班:堀川の堀端景観」、「C班:大橋側水辺」、「D班:白潟地区」、「E班:広場・空地」、「F班:北堀(旧武家屋敷地区)」の6つの班を編成し提案を進めていくこととなりました。

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6つの班編成  Photo by Rui IZUMIYAMA


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道まちあるきで気づいた点をブレストしていく  Photo by Rui IZUMIYAMA

アイデアブレストを重ね生まれた6つの提案とは?

さて、6つの班に分かれるとすぐさまアイデアブレストが始まり、毎晩遅くまで作業がつづきます。中には徹夜をする班も!期間中は毎日、進捗状況を講師の先生方に発表し、アイデアをよりブラッシュアップさせます。まちづくりの第一線で研究をおこなう専門家である講師の方々による厳しい指摘を受けながら、アイデアが説得力のあるより素晴らしいものになっていきます。

こうしてつくりあげた私たちの提案をご紹介します!

A班・全体をつなぐ
提案メンバー:北島萌絵(東京大学)、北村彩夏(工学院大学)、五ノ井とも(宇都宮大学)、高瀬咲(福井大学)、
       田邉優里子(明治大学)、三栗野鈴菜(千葉大学)、本木光(九州大学)

松江市街地は、歩いて回るには広く、車が主な交通手段です。例えば松江駅から有名な観光スポットである松江城までは徒歩だと30分もかかります。しかし松江には歩かないと発見できないような魅力的なスポットが街中にあふれていることも事実です。

そこでこの班では、「まちなかを歩いてめぐることができる楽しいまちへ」というヴィジョンに向け、町に点在するスポットを結ぶことのできる「サポート」を設け、つながりを生むためのきっかけづくりができないかと考えました。具体的には、市街地各所にコミュニティサイクルのサイクルポートを設置しようという提案をしました。

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様々なサイクルポートが町に発生し、まちは時間をかけながら、住民、そして観光客と共に、より良い松江へと変化し続ける  Presented by北島萌絵(東京大学)、北村彩夏(工学院大学)、五ノ井とも(宇都宮大学)、高瀬咲(福井大学)、田邉優里子(明治大学)、三栗野鈴菜(千葉大学)、本木光(九州大学)


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スキームとして空き家バンクや起業支援窓口とサイクルポート設置事務局が連携をとり、様々なポート発生の支援を市がおこなうことで、自発的なサイクルポートの発生を促す  Presented by北島萌絵(東京大学)、北村彩夏(工学院大学)、五ノ井とも(宇都宮大学)、高瀬咲(福井大学)、田邉優里子(明治大学)、三栗野鈴菜(千葉大学)、本木光(九州大学)

B班・堀川の堀端景観
提案メンバー:矢野淳一(山口大学)、田高真璃(弘前大学)、田中健太(広島大学)、田渕煇(島根大学)、
       松尾夏奈(芝浦工業大学)、甲田 亮輔(首都大学東京)

かつて堀川の水は生活用水として使われ、遊びや仕事の場、祭りを行うハレの場として、水辺は松江市民の暮らしの中に深く根ざしていました。しかし、上水道の普及で徐々に堀川への関心は薄れていき、現在では日常的に堀川の活用といえば観光客向けの遊覧船のみで、松江市民は物理的にも感覚的にも水辺から遠ざかっているように感じます。

そこでB班では、近年薄れてきているミズベと松江市民の関係を再生し、松江の水辺に親しんでいる暮らしを観光客に水際から伝えることで、松江の魅力を向上させ市民の郷土愛を醸成していく提案をしました。

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堀川のゾーニング  Presented by矢野淳一(山口大学)、田高真璃(弘前大学)、田中健太(広島大学)、田渕煇(島根大学)、松尾夏奈(芝浦工業大学)、甲田 亮輔(首都大学東京)


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ゾーニングで分けたエリアごとで提案をし、カフェの設置、親水歩道の設置、植生の剪定など様々なコンテンツで市民と水辺の距離を縮める提案をしている  Presented by矢野淳一(山口大学)、田高真璃(弘前大学)、田中健太(広島大学)、田渕煇(島根大学)、松尾夏奈(芝浦工業大学)、甲田 亮輔(首都大学東京)

C班・大橋側水辺
提案メンバー:小竹輝彰(大阪大学)、佐々木綾香(東北大学)、永田千明(山口大学)、成田周平(工学院大学)、
       二川菜奈(関西大学)、橋本真実(東京大学)

C班では、「松江の地域住民の人生すべてをミズベに集める」といった思い切ったテーマを設定!水の都・松江に住んでいる実感を日常の営みとリンクさせ、水辺に賑わいを創出させる計画です。
親水性のある段々の護岸整備や、既に計画がなされている河川拡幅工事に合わせ広場を整備するなど、身近に水辺を感じることのできるような提案となっています。

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水辺は限定的ではなく、一体的な整備をする必要性がある  Presented by小竹輝彰(大阪大学)、佐々木綾香(東北大学)、永田千明(山口大学)、成田周平(工学院大学)、二川菜奈(関西大学)、橋本真実(東京大学)


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河幅拡張工事と合わせて整備する広場を人生で想定されるシチュエーションとリンクさせて提案をしている  Presented by小竹輝彰(大阪大学)、佐々木綾香(東北大学)、永田千明(山口大学)、成田周平(工学院大学)、二川菜奈(関西大学)、橋本真実(東京大学)

D班・白潟地区
提案メンバー:河野祐子(千葉工業大学)、外山裕太(芝浦工業大学)、中川雄太(金沢工業大学)、古川優衣(明治大学)、
       細野真央(横浜国立大)、吉田成宏(金沢大学)

白潟地区は時代的な背景が深い地域ですが、その資源が十分に生かしきれていない上に、商店街のコンテンツが、時代に適応していないことが課題としてあげられます。また、川幅拡張と道路拡張が予定されており、歴史的なまちの風景が大きく変わってしまうことに問題意識がもたれました。

そこでD班では、松江駅から松江城に向かう途中に存在する白潟地区を南北に貫くメインストリート・本町通りに着目し、職人(クリエイター)と暮らす手仕事のまちをつくるといったコンセプトの提案をしました。

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クリエイターのまちのイメージ  Presented by河野祐子(千葉工業大学)、外山裕太(芝浦工業大学)、中川雄太(金沢工業大学)、古川優衣(明治大学)、細野真央(横浜国立大)、吉田成宏(金沢大学)


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職人と住むまち・イメージパース  Presented by河野祐子(千葉工業大学)、外山裕太(芝浦工業大学)、中川雄太(金沢工業大学)、古川優衣(明治大学)、細野真央(横浜国立大)、吉田成宏(金沢大学)

E班・広場・空地
提案メンバー:松葉智子(山口大学)、堀田翔平(島根大学)、曽根田怜士(東京大学)、榊原亮(弘前大学)、
       小畑翔平(大阪大学)、井筒陽祐(関西大学)、石橋和也(広島大学)

この班が対象地としたのは、島根県庁や県民会館が付近に存在する官庁街でもある市街地の中心エリアです。県庁前庭園はあるものの、賑わいや、遊ぶための広場ではなく鑑賞するための広場であり、この付近には日常的に滞留する空間がないのが現状です。

そこでこの班では、気軽にイベント等が開催できる広場空間をつくることで、このエリアの賑わいの軸線を作り出すといった提案をしました。

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交通ターミナルと広場を一体的に整備  Presented by松葉智子(山口大学)、堀田翔平(島根大学)、曽根田怜士(東京大学)、榊原亮(弘前大学)、小畑翔平(大阪大学)、井筒陽祐(関西大学)、石橋和也(広島大学)


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広場のイメージパース  Presented by松葉智子(山口大学)、堀田翔平(島根大学)、曽根田怜士(東京大学)、榊原亮(弘前大学)、小畑翔平(大阪大学)、井筒陽祐(関西大学)、石橋和也(広島大学)

F班・北堀(旧武家屋敷地区)
提案メンバー:垣内雅仁(弘前大学)、阪口友晃(明治大学)、関春佳(千葉大学)、田中翔太(札幌市立大学)、德永晋(九州工業大学)

北堀地区はかつて武家屋敷があった場所で、道路沿いに瓦の塀が連続している特徴的な住宅地です。また、一軒あたりの敷地面積が比較的広い地域でもあります。しかし、敷地を分割して宅地として売却したり、駐車場にするなどで当時の町割りが失われつつあります。

そこで、地域の空き家等を改修して近隣にある島根大学の学生たちの住むシェアハウスを提案。塀のファサードを保存すると共に、地域の活性化につながる拠点づくりとすることを目指しました。

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塀の町並みを壊さずない景観を考慮したファサード  Presented by垣内雅仁(弘前大学)、阪口友晃(明治大学)、関春佳(千葉大学)、田中翔太(札幌市立大学)、德永晋(九州工業大学)


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母屋に地域住民が住み、離れに島根大の学生が住む  Presented by垣内雅仁(弘前大学)、阪口友晃(明治大学)、関春佳(千葉大学)、田中翔太(札幌市立大学)、德永晋(九州工業大学)

若きアイデアを松江のアップグレードのきっかけに!

いかがでしたでしょうか?全国から集まった学生たちの視点は、それぞれ異なり、そのアイデアを掛け合わせるからこそ、より良いアイデアが生まれるのではないのかと感じます。

自分の班もしかり、どんな提案をしたら地域のにぎわいを作り出すことができるかを考えるために、松江の皆さんと度重なる議論をしました。なので、全てのアイデアに共通していたことは「だれが、いつ、どのように空間を使うか」を意識したアイデアでした。このように、行政や地域住民の方々と議論し、提案に結びつけるといったフローを学生のうちに経験することができることが、シャレットWSの何よりの醍醐味だったと思っています。

こうしてみると道路や水辺の活用や広場の整備など、ソトがカギとなった提案が多かったのが印象的です。これほどまでに、参加した学生たちが松江のソトへ熱い視線を送っていた理由の一つとして、松江の重厚感の漂う景観をもっと色んな人々に味わってほしいという想いが共通認識としてあったからではないかと思っています。そのような空間資源を活かし、これまでマッチすることのなかったヒトとヒトが場(プレイス)を通して繋がっていくことで、松江のソトの価値は高まっていくのではないでしょうか?これらのアイデアを種のままで終わらせるのではなく、実現していくためのたたき台として活用することで、松江のソトをそしてまちをアップグレードできるのではないでしょうか。今回、私たちの提案したアイデアが、まずは松江のソトの活用に向けた議論のきっかけとなり、今後も続けていかれればと思っています。

自分自身、2回目の参加となったシャレットWS。終わった後も参加した学生たちと連絡を取り合ったりと、その縁こそシャレットWSに参加する価値とも感じています。シャレットWSで出会った仲間たちのほとんどが、将来同じ道を志す同志たちで、この出会いは将来、大きな力になるのだろうと確信しています。

縁結びの国でのご縁が未来のソトを切り拓く日はそう遠くないかもしれません。

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最終発表が終わった達成感から喜びを爆発させる  Photo by Rui IZUMIYAMA


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解散式での集合写真。みんなお疲れ様でした!  Photo by Rui IZUMIYAMA

期 間: 2017年8月25日 [金] 〜 8月29日 [火]
会 場: 城西ふれあいホール
現地協力大学: 島根大学大学院総合理工学研究科建築・生産設計工学領域 
中野茂夫、小林久高、井上亮
講 師: 小林正美(明治大学)、鵤心治(山口大学)、北原啓司(弘前大学)、
塚本俊明(広島大学)、小浦久子(神戸芸術工科大学)、
志村秀明(芝浦工業大学)、中野茂夫(島根大学)、野澤康(工学院大学)、
野嶋慎二(福井大学)、野原卓(横浜国立大学)、高鍋剛(都市環境研究所)、
高橋潤(明治大学)、泉山塁威(東京大学)、小林剛士(山口大学)、
宋俊煥(山口大学)、三浦詩乃(横浜国立大学)他
スタッフ: 斎藤愛(フリーランス)、坪井志朗(山口大学)、
山崎嵩拓(東京大学)、山本有希子(アール・アイ・エー)
主 催: (一社)日本建築学会 住まい・まちづくり支援建築会議 教育・普及部会
共 催: 松江市、NPO法人まちづくりデザインサポート
協 賛: レモン画翠
後 援: NPO法人まつえ・まちづくり塾
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田中翔太

田中翔太

木更津高専環境都市工学科卒業/かつて札幌オリンピックのメイン会場だった街、真駒内においてまちづくり活動に参加する傍ら、都心の余剰容積率に見るコンパクトシティの在り方について研究している。高専時代は土木工学を専攻し、建築と土木の二刀流を目指すべく修練の日々は続く。