レポート

Reports

レポート

【ソトノバ・ピープル】新しい発見をシェアできる魅力──横浜国立大学助教 三浦詩乃さん

パブリックスペースに関心がある有志が集まって発信する、パブリックスペース特化型ウェブマガジン「ソトノバ」。2015年11月の正式オープン以来、200本を超える記事を配信してきました。1周年記念パーティーの開催に向けて、ソトノバを支えるメンバーにスポットを当てて紹介していきます。

本日は三浦詩乃さんをご紹介します。東京大学大学院でストリートのデザインとマネジメントについての研究で博士号(環境学)を取得した、ストリートの専門家です。現在は、横浜国立大学都市イノベーション大学院に助教として勤務。交通と都市研究室に所属して1年が経過したところです。国内・国外を飛び回る研究生活を送っており、このインタビューも、米国出張中にビデオチャットで敢行しました。

*     *     *

── 朝早くからすみません(取材開始は現地時間の午前5時)。よろしくお願いします。

三浦さん 時差ボケで目が覚めてしまっているので大丈夫ですよ(笑)。

── では、早速。三浦さんがソトノバのライターに加わったのは去年の12月ですが、参加してみてどうですか?

三浦さん 今回の出張もそうなんですが、大学の研究者という立場でいろんな場所に行くことが多いので、そこでの新しい発見や、いいなと思った空間の情報を、広くシェアしていけるのが魅力ですね。論文や研究会など、専門家に対して専門家の用語で伝える場はありますが、どうしても閉じた世界になりがち。ソトノバならより広く伝えられるし、実務に関わっている人たちとコミュニケーションできる場にもなっています。

── 「ストリート」への興味はいつ頃から?

三浦さん うーん、もともと大学入試は生物選択で、バイオ系をやろうと思っていたんです。いろんな実験の授業を体験したのですが、顕微鏡を覗いているよりも、もうちょっと人との関わりがある方が性に合っているかな、と思って(笑)。社会基盤学科の景観研究室で、沖縄県竹富島の集落の景観と防災についての研究で卒論を書きました。

竹富の人は、毎朝砂浜から砂を運んで道に敷いていきます。それは神様が通る道という意味もあるし、ハブがいる場所を避ける目印の役割も果たすという合理的な仕組みでした。当時は特に意識していなかったのですが、原初的な道、ストリートを対象にしていた訳で、現在の研究につながっているな、と思うことはあります。

── 大学院は柏キャンパスでしたね。

三浦さん 新領域創成科学研究科の空間計画研究室でした。いろんな場所に行って、調べて、人に伝えることが好きだな、と自覚したのは修士に入ってからですね。

三浦さんのソトノバデビュー記事、ブラジル・クリチバのストリートデザインについてのレポート。歴史がある取り組みの最新状況を紹介しています。

三浦さんのソトノバデビュー記事、ブラジル・クリチバのストリートデザインについてのレポート。歴史がある取り組みの最新状況を紹介しています。

パブリックスペースには新陳代謝が必要

三浦さん ソトノバの他のメンバーは、ソトを使いこなすことを自分の生活の一部として実践している人が多くて、それが記事になったりしているので、刺激をもらいます。私自身は自分が取り組むというよりも、その仕組みを調べて伝えていく方に興味がありますね。

── いままで研究してきた場所で、「ここは!」と思う所はありますか?

三浦さん そもそも実際にその場所に行ってみて、すごいな、皆さんこだわりを持って頑張っているな、と感じた所を研究させてもらっているので。研究を通して、ずっと付き合っていきたい人たちとの出会いもありました。

そういった所には、何らかの形で関わり続けていきたいですね。人を紹介したり、プロジェクトを提案してみたり。パブリックスペースは、外部から来た人や若い人が関わって新陳代謝していかないと、時代遅れになって結局また使われなくなってしまうので。

三浦さんが担当した神戸市の公園を舞台にした社会実験、「URBAN PICNIC」のレポート記事。戦術に深く切り込んでいます。

三浦さんが担当した神戸市の公園を舞台にした社会実験、「URBAN PICNIC」のレポート記事。戦術に深く切り込んでいます。

── ソトノバでは、パブリックスペースの最新動向をいち早く発信していますが、三浦さんの記事はアプローチが一味違う気がしています。

三浦さん どちらかというと息の長い取り組みに興味があるんです。研究では1970年代に頑張って、人間のための空間をつくっている場所に焦点を絞っています。今回来ているアメリカもそうなんですけど、60年代、70年代に頑張っていて、現在、またプレイスメイキングして、より人に開かれた空間にしていこうと取り組みを続けているような所です。

いま輝いている空間が50年後にも輝きを失わないためには、50年前の取り組みから学ぶところは多いと思っています。具体的なデザインの思想や手法は時代時代で異なりますが、活動に込められた想い、まちを変えたいという想いは同じぐらい強かったと思うので。それまでの前提、常識を変えるぐらいの勢いでやっている。あまり一般に知られていない事例も、これからどんどん紹介できればと思っています。

*     *     *

ソトノバ・ピープルに会える、11/5の1周年記念パーティはこちら。
「1周年記念パーティ!ソトノバとパブリックスペースの1年を振り返る」ソトノバ TABLE#10

Portrait by Shino MIURA

Twitter

Facebook

note