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【速報考察】法律・予算・税制のウォーカブルパッケージ揃う:都市再生特別措置法改正

(Cover Photo: オーストラリア・アデレード市・バンクストリートのシェアードストリート Photo by Rui IZUMIYAMA)

2020年2月7日。都市再生特別措置法改正案が閣議決定されました。

今回の法改正によって、これまでと何が変わるのか、担当者インタビューを元に考察してみたいと思います。

※今回の速報考察は、閣議決定の公表された情報と、国土交通省都市局へのインタビューを元に、個人の見解で考察するものです。

速報考察は、以前日本版BID道路法改正の際にも行いましたが、それ以来となり、これまでストリートや道路空間活用などに取り組んできたソトノバ的にも大きなトピックだと思います。

(法律の解説になりますので、難しい内容やテクニカルな内容が多いですが、ご容赦ください。)


改正内容は11点。安全なまちづくりと魅力的なまちづくりの2カテゴリから。

(1) 安全なまちづくり

[1]   災害ハザードエリアにおける新規立地の抑制

   1)  災害レッドゾーンにおける自己業務用施設の開発を原則禁止 (都市計画法第33条)

   2)  市街化調整区域の浸水ハザードエリア等における住宅等の開発許可の厳格化 (都市計画法第34条)

   3)  居住誘導区域外における災害レッドゾーン内での住宅等の開発に対する勧告・公表 (都市再生特別措置法第88条)

[2]   災害ハザードエリアからの移転の促進

   1)  市町村による災害ハザードエリアからの円滑な移転を支援するための計画作成 (都市再生特別措置法第81条等) 

[3]   居住エリアの安全確保

     1)  居住誘導区域から災害レッドゾーンを原則除外

    2)  市町村による居住誘導区域内の防災対策を盛り込んだ「防災指針」の作成 (都市再生特別措置法第81条)

 

(2) 魅力的なまちづくり

[1]   「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出

       都市再生整備計画に「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む区域を設定 (都市再生特別措置法第46条第2項第5号) し、以下の取組を推進

   1)  官民一体で取り組む「居心地が良く歩きたくなる」空間の創出(公共による車道の一部広場化と民間によるオープンスペース提供等)※予算・税制両面から支援 (都市再生特別措置法第46条第3項第2号)

    2)  まちなかエリアにおける駐車場出入口規制等の導入(メインストリート側ではなく裏道側に駐車場の出入口を設置) (都市再生特別措置法第62条の10等)

    3)  イベント実施時などにまちづくり会社等の都市再生推進法人が道路・公園の占用手続等を一括して対応 (都市再生特別措置法第62条の8)  等 

[2]  居住エリアの環境向上

   1)  居住誘導区域内における病院・店舗など日常生活に必要な施設について用途・容積率制限を緩和 (都市再生特別措置法第81条、都市計画法第8条、建築基準法第52条等)

   2)  居住誘導区域内における都市計画施設の改修促進 (都市再生特別措置法第81条等)

国土交通省WEB(「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定
~安全で魅力的なまちづくりを推進します~):https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi05_hh_000271.html
001327916 (1)

ソトノバでは、「魅力的なまちづくり」のうち、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出」に着目

ソトノバでは、2015年の活動開始以来、道路空間やストリートに関しては、関心テーマとして取り扱ってきました。ソトノバTABLE2018)での議論、丸の内・仲通りで開催のプロトタイピングフェスティバルストリートウィーク2018)、パークレットの議論(20162017)、Park(ing)dayの実践(2017,2018,2019)、そして、先日のタクティカル・アーバニズム・ジャパンなど、メンバーと共に、活動を蓄積してきています。

そんな中で、ソトノバは、歩行者中心のパブリックスペースに着目しています。今回の都市再生特別措置法改正内容のうち、「「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出」に絞って、速報考察していきます。

今回の都市再生特別措置法改正でなぜ「「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出」なのか。

法律改正には、なぜ?(WHY)が重要です。先日の道路法改正など、パブリックスペースや道路空間のパラダイムシフトが盛んです。

今回の法律改正の背景の文章をよく見ると、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出に関して、以下の文章を確認できます。

生産年齢人口の減少、社会経済の多様化に対応するため、まちなかにおいて多様な人々が集い、交流することのできる空間を形成し、都市の魅力を向上させることが必要

ここで、災害対策や防災のような安全なまちづくりに合わせて、人口減少よりも踏み込んだ生産年齢人口の減少、社会経済の多様化への対応について言及しています。そのために、まちなか(まちの中心部)に多様な人が集まり、交流することのできる場所を形成することが必要だといっています。コンパクトシティにも通ずる話ではありますが、より生活者に近く、踏み込んだ内容を期待しますね。

2020年・都市再生特別措置法改正内容(「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出)に迫る!

具体的に都市再生特別措置法改正内容に迫ります。「「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出」に絞ります。

(2) 魅力的なまちづくり

[1]   「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出
都市再生整備計画に「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む区域を設定 (都市再生特別措置法第46条第2項第5号) し、以下の取組を推進
1)  官民一体で取り組む「居心地が良く歩きたくなる」空間の創出(公共による車道の一部広場化と民間によるオープンスペース提供等)
※予算・税制両面から支援 (都市再生特別措置法第46条第3項第2号)

2)  まちなかエリアにおける駐車場出入口規制等の導入(メインストリート側ではなく裏道側に駐車場の出入口を設置) (都市再生特別措置法第62条の10等)

3)  イベント実施時などにまちづくり会社等の都市再生推進法人が道路・公園の占用手続等を一括して対応 (都市再生特別措置法第62条の8)  等 

国土交通省WEB(「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定
~安全で魅力的なまちづくりを推進します~):https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi05_hh_000271.html

今回の都市再生特別措置法改正。法改正の内容としては上記なのですが、これだけでは全体像が掴みにくくなっています。国土交通省都市局官民連携まちづくり推進室にメールインタビューをし、資料提供をしてもらいましたので、それを踏まえて解説いたします。

ウォーカブル(「居心地が良く歩きたくなる」まちなか)の推進!

さて、最近、よくウォーカブル(Walkable)ってよく聞きませんか?これは、世界的にもWalkable Cityという本が出ているのもありますが、車中心の都市から人中心の都市への転換のムーブメントともいえます。

「居心地が良く歩きたくなる」まちなかからはじまる都市の再生

官民のパブリック空間(街路、公園、広場、民間空地等)をウォーカブルな人中心の空間へ転換・先導し、民間投資と共鳴しながら「居心地が良く歩きたくなるまちなか」を形成
これにより、多様な人々の出会い・交流を通じたイノベーションの創出や人間中心の豊かな生活を実現し、まちの魅力・磁力・国際競争力の向上が内外の多様な人材、関係人口を更に惹きつける好循環が確立された都市を構築

²ñ¿_ページ_1資料提供:国土交通省

言い換えれば、ソトノバが目指しているパブリックスペースと同じように、敷地の所有を問わず公民のパブリックスペースをウォーカブルな人中心の空間へ転換し、民間投資を呼び込みながら「居心地が良く歩きたくなるまちなか」(ウォーカブル)をつくっていくということ。これによって多様な人の出会いや交流、イノベーションのおこる豊かな生活(パブリックライフ)を実現すること。まちの魅力やマグネットのパワーとなる磁力、グローバルな競争力向上が人材、関係人口を引きつける好循環(スパイラルアップ)を確立するような都市をつくっていくことを謳っています。

合言葉として、WEDO(Walkable Eyelevel Diversity Open)という、歩きたくなる/まちに開かれた1階(低層階でもいいように思いますが)/多様な人の多様な用途、使い方/開かれた空間が心地良い)の頭文字をとったことと、We do!(私たちがやる!)という2つの意味があるそうで、WEDOはウォーカブルを広めた1つのポイントであったように思います。これは国土交通省担当職員の方が考えたそうです。素晴らしいです。

都市構造の改変等
○都市構造の改変(通過交通をまちなか外へ誘導するための外周街路整備等)
○都市機能や居住機能の戦略的誘導と地域公共交通ネットワークの形成
○拠点と周辺エリアの有機的連携
○データ基盤の整備(人流・交通流、都市活動等に係るデータプラットフォームの構築等)等

同時に、都市構造の改変等と書かれていますが、ウォーカブルなエリアだけの改善だけではなく、特に地方都市では、ウォーカブルを推進しやすい都市構造に変えていくということは、ソトノバでも伝えてきたようなことで、パブリックスペース活用と歩行者中心の環境に転換することを同時にやっていく必要があります。姫路駅前広場の歩行者中心広場化に関しても、外周街路整備があったからこそトランジットモールも含め、ウォーカブルに推進できましたし、立地適正化計画との連動、センシングやデータ測定などを組み込んだスマートシティやデータ基盤の推進も重要なポイントだと思います。

まずは自分の街がウォーカブルを推進しやすい都市構造になっているのか、チェックするのも大事ですね。

ウォーカブルの流れは、コンパクトシティと「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」にあった!

国内で、ウォーカブルの推進をしている経緯を国土交通省にインタビューをしました。それによれば、「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」(2019年2月から6月)で委員およびゲスト委員のプレゼンや議論を経て、中間取りまとめを国土交通省大臣に提言したことに始まります。この懇談会はそもそも、国土交通省で推進していた、コンパクトシティ(コンパクト+ネットワーク)の議論が縮小や縮退(シュリンク)をイメージしがちな中で、よりプラス思考で将来を考えようという想いで懇談会が立ち上がったそうです。懇談会の名称通り、ダイバーシティ(多様性)に溢れ、イノベーション(変革)が沸き起こるような都市とは何かについて、様々な可能性を探求していくことからスタートを切ったそうです。

懇談会の様々な議論の中で、結局は「人々の出会いが生まれる場」こそ、多様性とイノベーションの源泉であることに気づき、そのためには人々が集う「パブリックな空間」が都市の求心力の源であるとの結論に至ったそうです。

ジャネット・サディク=カーン来日講演もウォーカブルの流れを牽引!

同インタビューによれば、懇談会の議論をしている最中、2019年5月に来日した、ジャネット・サディク=カーン氏(元ニューヨーク市交通局長)の来日講演があり、ソトノバでも取材しました。この際に、ジャネットさんと青木・国土交通省都市局長との対談があり、ジャネットさんの言葉やタイムズスクエアの歩行者中心広場化の事例に感銘を受けたことがウォーカブルの動きの原動力になったのではと話されていました。

都市再生整備計画にまちなかウォーカブル区域(滞在快適性等向上区域)を設定

具体的な法改正の内容に入っていきます。まずは、ウォーカブルを都市計画として位置付けることやビジョンや方向性の共有をする体制についてです。

スクリーンショット 2020-02-27 11.08.51資料提供:国土交通省

市町村が都市再生整備計画を策定し、官民一体で行う「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりのための取組を位置づけ

従来からある、「都市再生整備計画」。これまでの「道路占用許可の特例」など都市再生特別措置法に絡むものは、市町村が策定する(都市再生推進法人は提案が可能)、都市再生整備計画に位置付ける必要があります。これに、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりのための取組を行うエリア(通称:まちなかウォーカブル区域/法案名:滞在快適性等向上区域)を設定することができます。この区域を位置付けることで、ウォーカブル関連施策が使えるようになります。

市町村都市再生協議会の構成員として、公安委員会、公共交通事業者、公共施設管理者を追加

ウォーカブル(「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくり)には、公民の関係者が連携してまちづくりの計画(都市再生整備計画)を策定し、都市の方向性やビジョンを共有することが重要です。都市再生整備計画の策定・実施などについて協議を行う場である「市町村都市再生協議会」がこれまでもありましたが、この構成員として、公安委員会(警察)、公共施設管理者、公共交通事業者を追加して、公民一体で取り組むまちづくりに向けた検討体制を充実しています。

これはこれまでも運用ではできましたが、法案に入れることで、公定化と国からのメッセージともいえるでしょう。また、パブリックスペースを活用するなどその時に関係者協議をするというのが現状多いと思いますが、そもそもこのエリアのビジョンや方向性を早い段階から関係部署と共有し、組織としてのオーソライズをとっておくといった川上から関係者と想いと方向性を共有することで、関係者が一体感を持って取り組むことも期待されます。

(KPI)「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む区域を設定した市町村数:2025年度までに100市町村以上

また、この法制度のKPIとして、2025年度までに100市町村以上の「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む区域(まちなかウォーカブル区域:滞在快適性等向上区域)を設定とあります。現在、200都市以上がウォーカブル推進都市に賛同していますので、半分が5年で動き出すことができますね。

法律・予算・税制パッケージでウォーカブルを支援

今回、法改正だけでなく、予算や税制と一体的に政策にしているところもミソです。

法律では、❶駐車場の出入口の設置の制限、❷民間事業者が公園管理者と締結する協定に基づき、公園内にカフェ・売店等を設置、❸都市再生推進法人による道路・公園の占用許可等のサポート、の3点

駐車場の出入口の設置の制限

歩行者中心のストリートや道路空間活用を行っていく際に、1つの制約になるのは、建築側の駐車場の出入口です。私も池袋グリーン大通りの社会実験の経験でも体験したところです。

歩行者中心とするストリートなど、市町村が都市再生整備計画で指定したまちなかウォーカブル区域内の道路について、駐車場の出入口の設置を制限(メインストリート側ではなく裏道側に出入口を設置)することができるようになり、パブリックスペース活用やアクティビティが円滑にできるようになり、まちなかで活動する人々の安全確保にも寄与するということです。

これは全てが歩行者中心のストリートになるわけではないので、荷捌きや住民の自動車利用、ビル内の自動車利用者の車の利用状況などを調査やニーズ把握も同時に重要になるでしょうね。その上で、このストリートは歩行者中心、この道路は車中心というメリハリは自治体や地域で検討、共有することも必要でしょう。

国土交通省へのインタビューによれば、この駐車場の出入口の設置の制限は、あくまで、設置の制限なので、「駐車場を新設するとき」と「駐車場の出入口を変更するとき」に効力を発揮します。自治体が規制の対象とする道路を都市再生整備計画に位置づけた上で、さらに、自治体が条例で規制の対象となる駐車場の規模を決めることで出入口規制ができるようになるという仕組みだそうです。いつまで規制措置を続けるかなどは、自治体の判断でできるようです。

民間事業者が公園管理者と締結する協定(公園施設設置管理協定)に基づき、公園内にカフェ・売店等を設置

公園に対しては、設置管理許可やPark-PFI(公募設置管理制度)などで、パークマネジメントや公園内にカフェなどの民間施設の導入が増加しています。

(詳しくは論文にまとめているので参照ください)
「設置管理許可制度」を用いたパークマネジメントにおける設置管理事業者の関与実態に関する研究
全国の都市公園における公募を通じた収益施設の設置実態と立地条件の関係

まちなかウォーカブル区域で都市公園と一体となったオープンスペースの提供を行う「民間事業者」や、都市公園を活用したまちづくり活動を行う「都市再生推進法人」(市町村が指定するまちづくり活動を行う法人)が、「公園管理者」と締結する協定に基づき、公園内にカフェ・売店等を設置する場合、建蔽率の上限緩和などが可能(カフェ・売店等の設置とともに、園路の整備等も行うことが必要)とのことです。

協定の名称は、法案によれば、「公園施設設置管理協定」。協定の締結が可能なのは、民間事業者、都市再生推進法人、公園管理者です。国土交通省インタビューによれば、ここでいう民間事業者は、税制特例の対象となる行政による公共施設の改修・利活用と併せて行われる周辺の土地所有者等の方がオープンスペースの提供や家屋の1階部分をオープン化する改修を行う主体:法案名「一体型滞在快適性等向上事業の実施主体」に限られるようです。

「公園施設設置管理協定」の効力は?

公園施設設置管理協定の効力は、都市利便増進協定などとは異なり、公園の規制緩和メニューが紐づいています。

設置管理許可期間の特例:カフェなどの交流・滞在拠点となる公園施設に対し、設置管理許可期間の特例を受けられます。協定の有効期限が最大20年となっており、実質、設置管理許可が10年から20年に期間が延び、Park-PFIと同様になります。
建蔽率の特例:カフェ等の交流・滞在拠点となる公園施設に対し、建蔽率の特例(上限2%→上限12%)があります。
都市公園の占用物件の特例:都市公園の占用物件の特例(自転車駐車場、看板、広告塔の設置を可能に)が受けられます。

また、Park-PFIと同様に、これらの特例措置を受けるに当たっては、収益を上げるカフェ等の公園施設の設置・管理だけでなく、併せて、園路、広場などの整備が必要になります。

都市再生推進法人による道路・公園の占用許可等のサポート

まちづくり活動の担い手である都市再生推進法人(市町村が指定するまちづくり活動を行う法人)が、各種イベントに際しての道路や公園の占用許可等の申請手続を一括して行うことで、パブリックスペース活用などの活動をサポート(個々の申請者の申請事務のサポート、一括して対応することによる手続きの円滑化など)することとするものです。

これは、占用の許可要件の緩和ではなく、都市再生推進法人を経由した申請手続きについて、都市再生推進法人の業務として法律上位置づけて、同一のイベントで複数の占用許可等が必要な場合、個々の申請者のサポート、書類のとりまとめや一括した提出などを都市再生推進法人が行うことで、手続きを円滑化するものです。

道路法改正(歩行者利便増進道路)と都市再生特別措置法改正(まちなかウォーカブル区域:滞在快適性等向上区域)の合わせ技で相乗効果大

先日の道路法改正の「歩行者利便増進道路」制度と今回の都市再生特別措置法改正の「まちなかウォーカブル区域:滞在快適性等向上区域」の合わせ技で、相乗効果大という資料を、なんと!国土交通省都市局と道路局で一緒に作った資料です。これまではそれぞれの局が政策を打っていた印象がありましたが、同時期に、また組み合わせた絵姿を一緒に見せてくれたのは非常に明快です。

都市再生整備計画で、「まちなかウォーカブル区域:滞在快適性等向上区域」を設定し、歩行者中心の道路を選定し、「歩行者利便増進道路」を指定。その上で、駐車場出入口の設置制限、グランドレベルの推進、公民のパークマネジメントの推進と、組み合わせやすくなりましたね。

また、自治体の都市系部局と道路管理者が連携しなければ、実現しないかsendと思いますので、国土交通省の中で連携しているように、自治体の方でも部署間連携をより促進すれば、実現性もより高まるのではないでしょうか。

スクリーンショット 2020-02-27 11.22.35資料提供:国土交通省都市局+道路局

法改正以外にも充実している「まちなかウォーカブル推進プログラム」

法改正以外にも令和2年度予算や税制改正、検討会・懇談会、作成予定の事例集等をとりまとめた「まちなかウォーカブル推進プログラム」が充実しています。

²ñ¿_ページ_3資料提供:国土交通省

予算では、❶まちなかウォーカブル推進事業、❷官民連携まちなか再生推進事業の2点

まちなかウォーカブル推進事業

市町村等による歩行者滞在空間の創出(街路の広場化等)を交付金等で重点的に支援する予算制度(まちなかウォーカブル推進事業)を新たに創設(令和2年度予算政府案)です。

²ñ¿_ページ_4資料提供:国土交通省

予算内容は以下の通りです。

○対象事業:以下のメニューを基幹事業とする新たな支援制度を創設

ウォーカブルな空間整備
・道路、公園、広場等既存ストックの修復・改変
・上記を下支えする周辺環境整備(通過交通を排除する環状街路、公共交通基盤の整備等)に対して限定的かつ重点的に支援

アイレベルの刷新 (拡充
・沿道施設の1階部分をリノベーションし、市民に開かれた民間による公共空間を提供する取組や、1階部分の透明化等の修景整備などを支援対象化

滞在環境の向上 (新規)
・『滞在環境整備事業』を新たに基幹事業として創設し、滞在者の快適性の向上に資する屋根やトランジットモール化に必要な施設等の整備、社会実験・コーディネート等を支援対象化

景観の向上
・外観修景や歴史的建造物の修理、照明施設の整備、道路の美装化等の景観資源の活用を図る取組を重点的に支援

支援を明確化
・上記の他、荷さばき駐車場や駐車場出入口付替、給電・給排水施設の整備について

○対象区域:都市再生整備計画事業区域内のまちなかウォーカブル区域
 (周辺環境整備に係る事業を含む)
 ※まちなかウォーカブル区域は概ね1㎞程度以内の区域を想定
○国費率:40%(45%)⇒1/2(拡充)
○事業主体:【交付金】市町村等【補助金】都道府県、民間事業者等

「コーディネート・社会実験等」が基幹事業になった『滞在環境整備事業』

これまでの都市再生整備計画に紐づく補助金予算は、ほとんどが道路整備などのハード整備に対しての補助がほとんどでした。また、任意の事業だった「コーディネート・社会実験等」と呼ぶ、地域のネットワークをつくり、ビジョンを描くようなコーディネートや、将来ビジョンに向けてパブリックスペース活用などの社会実験などを行っていくことは「提案事業」として(全体事業費の2割以内という)という状況でした。

こういった取り組みは今回、新たに『滞在環境整備事業』を創設し、これを「基幹事業」として支援対象にしたことが新しいポイントです。

国土交通省のインタビューによれば、ほかに、給排水設備や屋根、トイレほか、ストリート活用を進めるような設えや、トランジットモール化に必要な設備についても、新たに支援対象になっています。

これらの取り組みを重点的に支援するため、通常の交付金の交付率が40%・4 5%であるところを、1/2に引き上げたこともポイントです。

官民連携まちなか再生推進事業

従来の民間まちづくり活動促進事業がパワーアップしたような印象です。前述のように、空間整備以外の予算拡充が目新しいです。特に、協議会や任意団体などのエリアプラットフォーム設立の準備、将来ビジョンの策定、シティプロモーションなどの情報発信、社会実験・データ活用などは、なかなか初期投資も難しいところでした。ウォーカブルを推進したい、スタートアップ地域には、非常に助かるのではないでしょうか。しかし、補助金を使い切るというような補助金依存ではなく、これをバネに次のステップに突き進むことが重要です。

官民の様々な人材が集積するエリアプラットフォームの構築やエリアの将来像を明確にした未来ビジョンの策定、ビジョンを実現するための自立・自走型システムの構築に向けた取組を総合的に支援し、多様な人材の集積や投資を惹きつける都市の魅力・国際競争力の強化を図ります。

①エリアプラットフォーム構築
②未来ビジョン等策定
③シティプロモーション・情報発信
④社会実験・データ活用
⑤交流拠点等整備
⑥普及啓発

²ñ¿_ページ_6資料提供:国土交通省

税制優遇で、

下記2つの特例措置( ~令和4年3月31日)を創設するそうです。

①公共空間の拡大を図るため公共施設等の用に供した土地及び当該土地の上に設置した償却資産に係る課税の特例

【固定資産税(土地・償却資産)・都市計画税(土地)】
道路、広場等の用に供する土地及びこれらの上に設置された芝生、ベンチ等の償却資産の課税標準額を5年間1/2に軽減
<適用イメージ>
民地部分を開放(広場化)し、公共空間を拡大

松山市(愛媛県)のみんなのひろば宇部市(山口県)のしばふ広場のように、民地を広場化や芝生広場化することやベンチなどの設置に役立ちそうですね。

②公共空間の充実を図るために改修した家屋(原則として1階部分)に係る課税の特例

【固定資産税・都市計画税】
オープン化(ガラス張り化等)した改修後の家屋(※)のうち市町村の認める範囲(不特定多数の者が自由に交流・滞在できるスペースに限る)の課税標準額を5年間1/2に軽減
(※)食事施設、購買施設、休憩施設、案内施設その他これらに類するものに該当するもの
<適用イメージ>
建物低層部をオープン化(ガラス張り化等)し、公共空間を充実

こちらは、パブリックスペースと建築の低層部(原則として1階部分)を一体的にウォーカブルにする時に使えそうです。既存建物の改修で使えそうですが、都市再生整備計画に位置付ける必要があるため、自治体や地域との相談、共有の上、進める必要がありますね。

²ñ¿_ページ_5資料提供:国土交通省

都市再生推進法人による公共空間の利活用を促進(まちなか公共空間等活用支援事業)

こちらは都市再生推進法人のみに、パブリックスペースを活用する上での民間都市開発推進機構からの低利貸付制度ですね。

これは、コンテナなどの設置物をおく時や芝生広場整備など、都市再生推進法人自体が整備する場合に有効ですね。道路で使う場合は、道路法改正の「歩行者利便増進道路」制度と一緒に使うと、道路占用許可期間が最長20年になるので、一緒に使いやすいですね。いずれ、都市再生推進法人自らがパブリックスペース自体に投資しやすくなる制度です。

²ñ¿_ページ_7資料提供:国土交通省

2つの法改正を考察して

いかがでしたでしょうか。非常にボリュームがありましたね。

私が感じるのは、今回の改正で大きいのは、ウォーカブル(「居心地が良く歩きたくなる」まちなか)という都市やパブリックスペースの方向性が大きく打ち出されたことです。これまでの法改正は占用許可の特例、法人指定、協定制度の創設など、法律の規制緩和や制度創設によって、様々な制度ができました。それ自体は非常に良かったのですが、何のためにパブリックスペースを活用するのか?といった思想や方向性が打ち出されていなかったことがあります。これによって、コンパクトシティやまちなかを推進している都市については、非常にわかりやすくなったと思います。これまでの制度も一度棚卸し、何のためにどの制度を使うのか、じっくり考えることも重要です。

また、都市再生推進法人の具体的なメリットも非常に増えてきた印象です。エリアプラとフォームを構築し、将来ビジョンを設定し、コーディネートや事業を実施する都市再生推進法人が各種団体と連携し動いていく。言うのは易しですが、使える手段が明確になってきました。

これからは、こういった法制度、補助金、税制優遇など様々な手段を棚卸し、自治体独自でやるべき政策やプロジェクトを考えて実施する時代に来ています。国の支援制度も使うことだけが目的化されては、使って終わり。ウォーカブルに動き出すスタートアップ支援や継続的なパブリックスペースマネジメントを行う支援策や法制度が整ってきていますので、これを自分の街で使いこなしていきたいですね。

また、道路局と都市局の連携。法改正のタイミングや一緒に取りまとめた資料など、一体的にウォーカブルや歩行者中心の道路を進めて行こうという意志が感じられます。これは自治体の都市系部局と道路管理者も一緒に連携して進めていくしかないですね。

あとは、タクティカル・アーバニズムのように、考えすぎず、アクションをしながら考えるということで、社会実験やデータ活用の支援も増えました。これらをもとにビジョンの策定やエリアプラットフォーム構築への準備や合意形成を整えるということもできますね。

可能性は無限大ですが、1つでもウォーカブルな政策やプロジェクトをどんどん進めることが大事ですね。わからないことはどんどん国土交通省に問い合わせましょう。制度を使って欲しくて待っているはずです。

一人の、そして小さなアクションから何事も動き出します。ぜひウォーカブルに向けて動き出しましょう!

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