ストリート|道路空間
ソトノバTABLE
日本の道路空間戦術としてのパークレットの可能性と始まるムーブメント!「Public Parklet Japan!」【ソトノバTABLE#6公式イベントレポート】
ソトノバ主催の座談会 「ソトノバTABLE」。
第6回はアメリカ・サンフランシスコ市発祥の「Public Parklet」を取り上げました。 「Public Parklet」は車道のParking(路上駐車帯)をPark(公園)のように使うプロジェクトで、世界的にも大変注目されています。
今回のソトノバTABLEも申込者多数で増席での開催となりました。熱気にあふれた会場の様子をレポートします!
まずは、本場サンフランシスコのパークレットをくまなく巡り、その全貌を整理されてきた工学院大学・遠藤新先生からのプレゼンです。
Contents
パークレット制度の仕組み
パークレットは「Pavement to Parks」と呼ばれる施策の一環で、カフェなどストリート沿いにある店舗やBIDs(Business Improvement District)が市に申請するものです。選定されれば、ガイドラインに沿いつつ、民設民営で店舗前面の駐車帯1~2台分を人の居場所として置き換え、有効活用することができます。
民間が負担するのは関連調査費が991USD、パーキングメータ撤去費が650USD、占用面積あたりの費用、そして道路上の占用を続けるための更新料が毎年221USDです。
こうして負担を担った民間が空間を自由に使えるかというとそうではありません。あくまでストリートはパブリックな場所。テイクアウトしたものをパークレットで食べてもらうのはOKですが、営業行為はNGです。
遠藤先生によると、この制度の背景には、自動車の規格に合わせて設計されてきた道路を見直したいという昔からの問題意識があり、その実現を目的としたBetter Street Policyと呼ばれる施策の流れがあるそう。一朝一夕にして成ったというわけではないんですね。
空間デザインの意図とタイポロジー
サンフランシスコのパークレットは、パブリックな場所である、ということを強調するために、店舗が営業するテラス席と異なるデザインが用いられます。
49か所と、多数のパークレットがこれまで整備され、先生の調査によると、そのうち近隣商業系の用途地域に43か所が位置しています。また、45か所が公共交通路線に面するという傾向が見られるとのことです。
つまり、ストリートデザインでは、欠かすことのできない交通の視点も取り入れられています。パークレットのガイドラインでは、法定速度40km/h以下のストリートでの設置が前提となっています。
地域でパークレットを運営するモチベーションとは?
近年の日本での街路利活用は、地域活性化を意図したものが多いですが、サンフランシスコの場合は、どちらかというと汚い場所とみなされている、「ストリートに対する市民の意識を変えたい!」という強い想いがモチベーションになっています。
加えて、遠藤先生によるパークレット調査では、飲食が半数を占める一方で、編み物やノマドワーカーによる利用など、高い包摂性を持った空間を創出していることや、サンフランシスコ市による利用者調査ではアクティビティ量が周辺歩道より多いこと、最小限に抑えながらも何らかの消費行動がなされていることが示されています。
一方で、地域活性化の手段としてパークレットが全能ではないことも、実態調査で明らかになりました。
例えば、元々治安が悪い地域では、維持管理が十分にできておらず、あまり利用されていないという例もあるようです。
パークレットの公共性
日本の道路活用の場面で必ず出てくるキーワードである「公共性」。
パークレットとは、ストリートを「新たなパブリックライフの場に転換するための戦術」であり、ここでいう「パブリック」とは草の根的なもので、数十のパークレットが普及していくにつれて、新しい「パブリック」の形が市民に受け入れられていくというロジックではないかとおっしゃる、遠藤先生のまとめはとても示唆に富むものでした。
「オフィシャルな組織が主催する利活用こそ公共性がある」とするような日本での「公共性」の議論は、もう一歩先の段階に進む必要があるようです。
オーストラリア・アデレード版パークレットとは?
続いて、名古屋市錦二丁目でのパークレット社会実験の実践・研究にも関わってきた渡邉真理さんからのオーストラリア・アデレード市のレポート。
サンフランシスコバージョンにも精通している渡邉さん。アデレードへの留学時に調査した際の市内計6件のパークレットについて、アデレードの独自性に焦点を当てながら説明されました。
6件のうち、市主導のものが5件を占め、申請制で駐車帯を1~2台分活用する点など、空間の作り方がサンフランシスコによく似ているそう。
一方、残り1件は州の施策によるもので、川沿いにある公園と中華街を結ぶストリートで実施されています。こちらは4〜5台分の大規模なブースを1つの通り上に、連続的に2か所配置することでコミュニティ道路のような空間を作り上げています。
民間を最大限活用するサンフランシスコ版と異なり、大きなダメージに対応するなど、州が積極的に維持管理に関わっているのも特徴です。
行政による調査では、前面の店舗売り上げに10~20%の伸びが見られるそうで、効果も顕著です。
その他にアデレードで独特なのは、店先テラス席と一体的なデザインでも、あるいは駐車帯からはみ出ても(市主導の場合)、問題ないという点で、サンフランシスコより柔軟な運用となっています。
日本におけるパークレット製品化の可能性
締めのセッションでは、コトブキ・中野竜さんがプロバイダ視点から国内でのパークレット実現に向けた課題をまとめてくださいました。
横浜市日本大通りでの人工芝遊具空間実験を紹介しつつ、本来のパークレットは駐車スペースを使うものだけれども、現況では歩道部分をイベント的に公園のように、遊びの要素を入れ込むというのが現実的、と中野さん。
製造技術的視点からパークレット・ファニチャーを製品化する際のコンセプトとして、「メンテ手法の確立、可搬式で設置場所を選ばない、製品ユニットによる横展開、安全性への配慮」の4点を提示されました。
日本では特に安全性が大前提で、挟み込みや引っかかりのないつくり、水勾配への配慮、車道側から見て死角となる壁構造は避けることが望ましいとのこと。
DIO!Do It Ourselves みんなでやろう!
続けて、中野さんが紹介されたのは、ほったらかしでも10年程度の耐久性を持たせられた従来のファニチャーと異なり、台座を2年ごとに交換するなど地元で手入れをやってもらうパークレット独自の枠組み。
納入時も完成品としてではなく、地元で組み立ててもらうようにして、コストを抑えていくものとします。
つまり、「Do It Ourselves みんなでやろう」で愛着を持ってもらい、かっこよくローカライズしていくことが念頭に置かれています。製品のプロトタイプとして、オーニング、スクリーン、サイクルスタンド等々のユニット化イメージを共有してもらいました。
これらを今後展開していく上での課題として、買い手の確保、道路管理者の説得、安全性の担保や、財政的バックボーンを持つ地域組織が市に申請する枠組みづくりといった行政的課題と、本当に地域でローカライズ、メンテナンスできるのかといった製品課題を挙げていただきました。
ソトノバからパークレット・ムーブメントを!
3名のご登壇の後は、ディスカッションへ。
自身も池袋グリーン大通りでの社会実験の経験がある泉山ソトノバ編集長のコーディネートの中、地域においてどういった主体が担い手になるのか、ファニチャーの出し入れの問題など実務的観点からの議論が繰り広げられました。
どうしても前例や基準をベースに道路行政、交通行政との協議を行わなければならず、できることが制約される現状の中、まずは、都心でも地方都市でも事例を積み重ねて、世論をつくり、ムーブメントをつくることが重要だという締めくくり。
終了後は、恒例のソトノバ・ドリンクス!
50名を超える方々との交流は時間も足りない状況でしたが、道路やパークレットに関心ある方たちのパワーは、非常に熱く、名古屋や大阪、神戸、和歌山からもわざわざお越し頂くなどのモチベーション。
今回のソトノバTableを出発点として、ソトノバはパークレット・ムーブメントを起こしていきます!!
「Public Parklet Japan!道路をパークする仮設空間プロジェクト”Parklet”とは?」ソトノバTABLE#6
日 時:2016年6月27日(月)19:00-22:00
会 場:bird(東京都渋谷区代官山町9-10 Sodacco 2F)
主 催:ソトノバ|sotonoba.place 運 営:一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ
19:00- チェックイン
19:15- イントロ
19:30- トークセッション「パークレット最前線」
「サンフランシスコのパークレットの実態とケーススタディ」遠藤 新氏(工学院大学建築学部まちづくり学科教授)
「オーストラリアのパークレット」渡邉 真理氏(名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻/ソトノバ名古屋支部ライター)
「日本でのパークレット導入に向けたスペックと課題」中野 竜氏(株式会社コトブキ)
コーディネータ:泉山塁威(明治大学理工学部助教/ソトノバ編集長/(一社)パブリック・プレイス・パートナーズ共同代表理事)
20:15- ディスカッション「日本型パークレットとは?」
21:00- ドリンクス ※フード:bird daikanyama
22:00- クローズ