森に広がる「秋時雨」にダイブ! 経験引き継ぐ学生団体が広場をプロデュース

2016年11月3日から6日の4日間、千葉大学では学祭「千葉大祭」が開催されました。期間中、西千葉キャンパスの正門すぐにある「語らいの森」という広場には、建築サークル「CUAD」による体験型インスタレーションが展示されました。

今年で8作目となる、語らいの森でのインスタレーション。広場に育つ立派な木々を使いこなし、このソトの場所の魅力を最大限引き出す作品を提案しています。代々同じ場所を使ってきた経験から、木の特徴をくみ取り、施工技術も受け継ぎながら、簡単かつユニークなソトの空間を生み出していました。

今回は、学生たちの工夫や思いをCUAD代表の同級生に聞きながら、この空間に魅了された1人として三栗野がレポートしたいと思います。

心躍る秋時雨の世界

今年の作品タイトルは「秋時雨(あきしぐれ)」。雨の降る中で傘を差したとき、傘の内にできる落ち着く空間をイメージしました。取材当日は天気にも恵まれ、秋の気配に彩られた広場の中、秋の太陽に照らされながら降る「時雨」は、言葉を失うほどの美しさがありました。

建築学生サークル「CUAD」によるインスタレーション「秋時雨(あきしぐれ)」

建築学生サークル「CUAD」によるインスタレーション「秋時雨(あきしぐれ)」

CUADが代々展示場所にしてきたのが「語らいの森」。生い茂る大きな木々が、文字どおり作品を支えてきました。今年度代表の神藤麻美さん(千葉大学工学部建築学科3年生)は、「毎年、木々を使いながら試行錯誤を重ねてきました。作品の幅がどんどん広がってきています」と話します。

浮かぶ空間に欠かせないテグスの存在。2014年度のCUADの作品「囁きの帳」 photo by CUAD

2014年度のCUADの作品「囁きの帳」。テグスの張り方のノウハウを蓄積しています photo by CUAD

今回は中心の木から四方にテグスを張って、プラスチックボードで作った短冊を下げることで、木々の間に降る「時雨」を表現しています。この木はその見た目から、CUADの中では「ブロッコリー」という愛称で親しまれています。登りやすく、設置の基準木として代々使われているそうです。周囲の木の配置は、図面化したものを受け継ぎながらバージョンアップしています。

中心の木(愛称:プロッコリー)から四方にテグスを張って、空間を演出

中心の木(愛称:プロッコリー)から四方にテグスを張って、空間を演出

木の間に張るテグスの施工についても、場所によって種類を使い分けたり、高いところにはテニスボールにテグスを付けて投げたりと、先輩から後輩にノウハウを受け継いでいます。

細いテグスで中空に浮かぶように見える短冊は、木漏れ日を反射させ合い、風に揺られて形を変え、柔らかな空間を生み出します。広場にある石のファーニチャーや飛び石の道の部分をうまく除けて設置することで、「時雨」に囲まれた休憩所や通り道を設えています。

夕暮れ時を迎えると、学生たちが短冊の下端にLEDライトを設置します。このライト、実は1年生が回路から構成した特製品。夜は寒くなる時期ですが、その暖かな光に包まれた空間を見ていると、心まで暖かくなる気分でした。

「秋時雨」の中で休憩する人々。風の存在も可視化され、ソトの魅力を最大限に生かしていました

「秋時雨」の中で休憩する人々。風の存在も可視化され、ソトの魅力を最大限に生かしていました

飛び石の通り道

飛び石の通り道

「秋時雨」の夜の風景

「秋時雨」の夜の風景

駆け回って、戦って。ソトの使いこなし上手な子供たち

千葉大祭には毎年、学生だけでなく地域に住む方も多く来場します。ちびっ子たちの姿もちらほら。CUADは子供たちにも遊んでもらえるように、「時雨」の中に複数の通り道を作るなど工夫をしていました。

くぐったり、飛び石の道を使いながら遊んだりと様々。

「時雨」の中に助走をつけながら飛び込んで駆け回ったり、風に揺らめく短冊に向かって戦い始めたりするちびっ子たちがとてもたくさんいました。その表情は笑顔でいっぱい。楽しそうに全力で遊ぶ姿に、作った学生たちもうれしい驚きを感じていたようです。

子供は空間使いこなしの天才です。飛び石の道を使いながら、ゲームを始める子供たち

子供は空間使いこなしの天才です。飛び石の道を使いながら、ゲームを始める子供たち

助走をつけながら走り回る子供たち

助走をつけながら走り回る子供たち

「時雨」を相手に戦う子供たち。時にはバルーン製の刀を手に挑む姿も

「時雨」を相手に戦う子供たち。時にはバルーン製の刀を手に挑む姿も

使い手の本音を集める「ご意見帳」

秋時雨に囲まれた休憩所の石の机の上には、1冊の小さなスケッチブックがありました。このスケッチブックは、毎年CUADが用意する「ご意見帳」です。この「秋時雨」の空間を使った大人から子供まで、多くの使い手たちが思いを綴っていました。

「ご自由にお書きください」と書いたご意見帳を置くことで、使い手からの本音を引き出す工夫です。こうしたイベントではよくアンケートを実施しますが、そうした堅苦しさにとらわれず、感じたままの意見を気軽に書いてもらえます。

実際には言葉だけではなく、それぞれの人が感じた風景も多く描かれていました。次回のインスタレーションのヒントにもなるでしょう。

机の上に置かれた「ご意見帳」

机の上に置かれた「ご意見帳」

幅広い年代の来場者が、言葉やイラストを使って思いを綴っています

幅広い年代の来場者が、言葉やイラストを使って思いを綴っています

発案から施工、実施まで学生が作り上げた空間は、皆さんにはどう映ったでしょうか。約10カ月を通して、学びの中から作り上げていくこのインスタレーションには、そのかけた時間ほどの丁寧さがあり、参考になる工夫もたくさんありました。

このCUADの作り上げた、人の居心地のいい休憩所や、子供たちが無邪気に遊びまわれる空間が、今ある公園や広場の姿に投影できたら、ソトの場も大活躍になりそうでした。

学生シリーズ第3弾として、今回は、大学祭中の広場について取り上げました(第一弾「サトイス・ツナガル開催レポート」、第二弾「シャレットワークショップ in 杵築2016 体験レポート」)。他にも、大学祭中の大学敷地内のソトの場は、広い道やスペースを生かし、露店や野外ステージには人が集まっています。キャンパスには地域を結び、地域を盛り上げるという、学生とまちとの接点としてのポテンシャルが秘められているのかもしれません。

CUADに所属する千葉大学建築学科の学生のみなさん

CUADに所属する千葉大学建築学科の学生のみなさん

photo by MIKURINO Suzuna(特記以外)

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三栗野鈴菜

三栗野鈴菜

千葉大学工学部建築学科(在学中)。地元の福岡県久留米市で、久留米のまちづくり活動に参加しながら、以前の出身校・有明高専在学時には八女福島地区の歴史的市街地における近隣交流に着目し、研究を行う。ヒトやコトがウチやソトのまじりあいによってにぎわいが生まれる空間に好意を持ち、そんな空間を探し求めている。学生ならではの視線を大事にしながら、今アツいオープンスペースについて学習中。