レポート
まちなかを楽しみながら評価しよう!プレイスゲームキタナカ体験レポート
ソトノバでは、2021年3月に「Placemaking Week JAPAN 2021」を開催し、世界のプレイスメイカーが集い、プレイスメイキングの思想や手法、コロナ禍のパブリックスペースの可能性を語りあいました。
「Placemaking Week JAPAN 2021」では、プレイスメイキングを考える一つのツールとして、「プレイスゲーム」を取り上げ、日本版のプレイスゲームガイドの解説し、2021年7月には、日本版のプレイスゲームガイドを一般公開しました。
今回、日本版のプレイスゲームガイドの実装の一つとして、2021年7月に横浜市北仲地区にて、「プレイスゲームキタナカ」が開催されました。今回の参加者は、日本版のプレイスゲームガイドの実装を目的にしていることやコロナ対策の観点から、オンデザイン、UR都市機構、ソトノバ・コミュニティなどの関係者に限定し、非公開イベントとして行われました。
筆者は、ソトノバ・コミュニティメンバーの1人として、参加者の立場として参加しました。
本記事は、「プレイスゲームキタナカ」のプログラムの内容について体験を交えながらお伝えするとともに、ガイドにはなかった主催者の工夫ポイントをご紹介します。これから、プレイスメイキングを地元で展開する方にとって、少しでもヒントになれれば幸いです。
なお、執筆にあたっては、主催者であるオンデザインの田邉優里子さん、千代田彩華さんに主催者の立場としての所感等をお聞きしています。
Contents
横浜市北仲地区とは
横浜市北仲地区は、みなとみらい線馬車道駅から近く、横浜市役所新市庁舎をはじめとし、数多くの再開発事業が実施されている場所となっています。
まちなかには、横浜ならではの歴史を感じさせるような風景も残っており、新旧の意匠が共存するような街になってます。
今回は、プレイスゲームガイドの発行主体であるPlacemaking Japanメンバーのオンデザインの事務所とUR都市機構の本社ビルに近いエリアであることから、実装の場となりました。
プレイスゲームキタナカで感じた3つのポイント
プレイスゲームキタナカでは、プレイスゲームガイドの実装としての役割を有していることから、基本的にはガイドと同じプログラム構成で実施されました。
まず、プレイスメイキングやプレイスゲームを知らない人に対してもレクチャで丁寧に説明した上で、対象エリアをまち歩きし、場(プレイス)を評価、検討ワーク、全体シェアの順で実施されました。
今回のプレイスゲームキタナカで、筆者が特徴的と感じた3つのポイントである、「まち歩き」「場の評価」「検討ワーク」の内容についてご紹介します。
プレイスゲームのプログラムシート Photo by Takuma OBARA1.キタナカをまち歩き!重要なことは、”楽しむこと!”
今回のプレイスゲームでは、各班、対象のエリアを1時間で見てまわりました。
まちを歩きながら、各エリアに対して、どのような活動があると楽しいか、どのようなところが居心地が良いか、どういった使い方が良いかなど、プレイスメイキングの4つの性質を頭の片隅に入れながら、一人ひとりが場所を評価していきました。
横浜の景観を眺めながら、場所の評価する Photo by 川島彩水「まちを歩く上で、まちの特徴や課題を見つけながら歩くことも重要ですが、それ以上に”とにかく楽しむこと”を忘れないでください!」
と、千代田さんからアナウンスがありました。
そのアナウンスの通り、参加者はもちろん、主催者も一緒になりながら、利用者になりきり、まちとプレイスゲームを楽しんでいました。
そのようなまち歩きの中では、自分の立場で、実際に座ってみたり、眺めてみたりと、アクティビティを体感しながら、評価していきました。
座って初めて日陰ないことに気付いたり、会話をして初めて車が通る音が気になったり、水辺にもたれてお酒が欲しくなったりと、課題ややってみたいことが一つ一つみえてきました。
2.各エリアをPlacemaikingの4つの性質で評価しよう!
次に、まち歩きで感じたことを一つ一つ評価シートに落としていきます。プレイスゲームで最も特徴的なのは、この評価をする部分であると考えています。
評価する視点は、「アクセスと接続」「利用と活動」「快適さと印象」「社交性」のプレイスダイアグラムに記載のプレイスメイキングの4つの性質にあてはめて、評価していきます。
重要なプレイスダイアグラムの4つの性質この評価で、今まで主観的にまちを見て歩いてきたものから、一度プレイスダイアグラムの4つの性質について評価することにより、客観的な立場でエリアを見ることができました。
また、評価シートに明確な指標が書いてあることにより、普段意識しない視点を持ってまちを歩くことができ、参加者として大変勉強になる時間を過ごすことができました。
評価シートに記入しながら4つの性質について評価 Photo by 川島彩水3.まち歩きと場の評価を踏まえた検討ワーク!短期・長期的な改善を考えよう!
これまでまちを歩いて評価してきた内容をチームで共有して、各班でディスカッションをしました。
まず、先ほど紹介した「場の評価」を踏まえ、良い点、悪い点を整理し、全体の評価をまとめました。その上で、対象エリアにおいて、実践できそうな短期的(3ヶ月以内)な取組・改善策と長期的(3年以上)な取組・改善策を考えました。
今回のプレイスゲームでは、各班にファシリテーターとして、プレイスゲームガイドの制作に関わったメンバーが入り、45分間という限られた時間でしたが、全班とりまとめることができました。
筆者の班に担当になったファシリテーターは、
「ガイドブックの中にはファシリテーターガイドも掲載してあり、事前に流れを理解でき、スムーズなファシリテーションが可能となった」
と話していました。
プレイスゲームガイドにはない主催者の2つの工夫
プレイスゲームキタナカでは、プレイスゲームガイドの実装の場として開催されていましたが、その中でもより参加者が「楽しくなる仕掛け」を用意していたと田邉さん、千代田さんは話していました。
1.ソトを楽しむアイテムを用意
プレイスゲームキタナカのまち歩きでは、実際にまちでアクティビティを誘発するアイテムとして、主催者で椅子や敷物などのアイテムを用意していました。
参加者にとって、ハードルが高そうな「実際に体感してみる」の部分で、少しでも体感がしやすいという点で有用だったと考えています。
2.会場の空気感をカジュアルに
プレイスゲームの会場として、一般的な会議室で行うのではなく、より話しやすい環境として、オンデザインの事務所で行われました。会議室のような固い空間ではない、カフェのような空間でのワーキングスペースは、参加者の緊張をほぐし、他愛もない話を誘発してくれる空間だったと感じます。
また、ドレスコードとして、「港街や海、レトロのいずれかをテーマにした服装」と、主催者から指定があり、会場全体で一体感を感じていました。
カジュアルな服装で、カジュアルな空間に集まる参加者 Photo by 川島彩水プレイスゲームガイドの活用・展開に向けて
全国的にも、パブリックスペースやプレイスメイキングをキーワードにした取り組みが見られており、今後エリア分析・評価にあたり、プレイスゲームガイドが活用されることが期待されます。
プレイスゲームで場を評価することは、もちろん重要ですが、プレイスゲームキタナカでの田邉さん、千代田さんが言うように
「プレイスゲームとまちを全力で楽しむこと」
が重要と感じました。筆者も主催者につられるように楽しんでプレイスゲームを終えることができ、今後ステークホルダーを交えたまちづくりの場においても、このような空気感は必要だと感じました。
また、プレイスゲームガイドは、あくまでガイドであるため、自分たちの地域やエリアに応じた小さな工夫をしていくことにより、各地域や参加者にフィットしていくと実感しました。
今後、パブリックスペース等でのプレイスメイキングをはじめとしたまちづくりをご検討の方は、是非プレイスゲームガイドを手に取ってみてください。そして、是非自分の地域なりの小さな工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。
Cover Photo by 川島彩水
※写真撮影時のみマスクを外しています