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リバー・ウォーターフロント|水辺

沼辺を座敷にすると何が起こる? 「テガヌマ・ウィークエンドvol.1」レポート

皆さん、「ヌマベ」を体験したことはあるでしょうか。

大きなウッドテラスを敷いてコーヒーを飲んだり、ヨガをしたり──。先日、千葉県手賀沼の極めて水面に近い場所、ヌマベの空間を活用したプレイスメイキングを実施しました。仕掛けたのは、東京大学都市デザイン研究室が中心とする手賀沼プロジェクト。同研究室は、手賀沼フィッシングセンターの施設改修など、同エリアで活動を展開しています。

当日の様子を、都市デザイン研究室に所属する筆者がレポートしていきます!

どんなイベント?

都市デザイン研究室の手賀沼プロジェクトでは、本年度から「テガヌマウィークエンド」と称して自分たちが設計した空間を「使ってみる」取り組みを始めています。その第1弾として11月10日と11日の週末に開催したのが、今回のイベント、「テガヌマウィークエンドvol.1」です。

普段は行政が管理していて、市民が自由に利用することができない土手や堤防、そして堤防の向こう側(水際)の空間を活用するイベントです。今回は、2日間限定で行政の許可を得て開催することとなりました。

水質が26年連続ワースト1だった手賀沼が市民の皆さんの活動によってようやくキレイになり始めたいま、再び人々と手賀沼の距離を近づけたい。だからこそ目が向けられていない堤防の下を使ってみる。それによって手賀沼湖畔の「場」をもっと多様に展開することが目的でした。

手賀沼アグリビジネスパーク事業推進協議会を主催者として、東大の都市デザイン研究室・空間計画研究室のプロジェクトメンバーが企画・運営に当たりました。さらに、手賀沼フィッシングセンターにてカフェなどを展開するEDGE HOUSE、柏市・我孫子市からの後援で実現したイベントです。

会場は、手賀沼東端に位置する手賀沼フィッシングセンターの隣接地。

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イベントの敷地である堤防下のヌマベ空間 Photo by Urban Design Lab

手賀沼周辺に住む方や柏の葉など近くの町に住む方、都心から自然を求めてくる方など様々な方に訪れてほしいという思いのもとで企画されました。

これまであまり足を踏み入れたことのない手賀沼の「本当のヌマベ」で水と触れ合い、夕陽を眺め、自然を感じながら手賀沼の魅力を知ってもらおうというのが一番の目的でした。

このイベントをきっかけに手賀沼の魅力を地域の方を含め、多くの方々に発信することで手賀沼を訪れる方を増やし、手賀沼で採れた農作物を堪能してもらい、手賀沼のアグリビジネスに貢献して地域の活力を取り戻していこうというのが大きな目標です。

水際を楽しむためのヌマベ・ザシキ

普段は降りることのできない水際の「本当のヌマベ」を魅力的な空間にするために、プロジェクトメンバーである都市デザイン研究室助教の永野真義さんと学生たちがプレイスメイキングに取り組みました。

空間のコンセプトは「ヌマベ・ザシキ」!堤防を降りた空き地に大きなウッドテラスをしつらえ、ザシキのように座ってくつろげる居場所をつくることに決めました。

このザシキは仮設の「運べるウッドテラス」になっています。移動可能なので、実験的にプレイスメイキングが可能になり、今後他の場所でも展開が可能なツールになっています。広々としたザシキでは訪れる皆さんが座って思い思いにくつろいだり、ヨガ教室を開けば一体感のある光景を演出したりと大活躍の居場所になりました。

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ビールケースと布を使ったベンチ、ザシキ、ブランコなどの手作りのファニチャーで思い思いに過ごす人々 Photo by Daichi MATSUMOTO

自分たちがしつらえたファニチャーがたくさんの人々が心地よさそうに使っている様子を見ると、時間をかけて制作したプロジェクトメンバーも非常に幸せな気分になりました!

魅力倍増! 沼辺を生かしたコンテンツ

沼辺の魅力を知ってもらうために用意したのは、ファニチャーだけではありません。沼辺だからこそ体験できる、そんなコンテンツも準備しました。

1つ目は、「ヌマベ・ヨガ」!


手賀沼周辺でヨガ教室を開いている山下有美さんをお呼びして、ザシキの上でヨガ教室を開きました。10日は午後15時から、11日は午前10時から、どちらも定員15人満員に迫る参加者が、沼辺で気持ちよくヨガを楽しんでいました。

ソトでヨガをするのはそんなに気持ちが良いのだろうかと、見ている方が驚くほどに参加者たちの表情が晴れやかになっていました。朝の澄んだ空気を吸いながら、もしくは夕陽を浴びながらのヨガは手賀沼のヌマベだからこそ実現できたものでしょう。

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夕陽に向かってのヨガ。ポーズに集中している参加者たち Photo by Daichi MATSUMOTO

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ヨガ教室終了後、非常に晴れやかな表情でおそろいのポーズを決めて記念撮影 Photo by Daichi MATSUMOTO

沼辺×ヨガは最高の組み合わせですね!

2つ目は、「ヌマヅリ・ボート」!


かつて手賀沼では貸しボートで大変にぎわっていたそうです。しかし、最近ではあまり流行っていないとのこと。そんな中、最も水面に近づけて手賀沼を楽しむことができるボートにもう一度光を当てようということで、手漕ぎボートを体験できるコンテンツを準備しました。

なんと2日で80名以上の方が体験する人気っぷり!普段はできない珍しい体験に、子供達は大はしゃぎ。さらには、昔はよく乗ったものだと年配の方たちからも人気を呼ぶ企画となりました。

数人の参加者の方から「もう一度手賀沼で貸しボートがにぎわえばいいのになあ」という声も聞くことができました。特に夕暮れのボートは、とても素敵な体験になったことでしょう。次の写真がそう物語っていますね。

これ程美しい夕陽を見ながらボートに乗れる場所が東京近郊にあるなんて、まさに手賀沼の魅力の1つに違いありません。

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美しい夕陽とボートを楽しむご家族 Photo by Daichi MATSUMOTO

ボート×手賀沼、これも最高の組み合わせですね!

3つ目は「ヌマベ・カフェ」!


ヌマベ・ザシキの横で、カフェを開きました。何を販売したかというと、手賀沼フィッシングセンター内にも店舗を構えるnuma cafeさんの美味しいコーヒー、地元で数少ない行列のできるお店、吉岡茶房さんの甘くておいしいシルクスイートの焼き芋、そしてこちらも地元で人気のPaisibleさんのパンと焼き菓子です。売り切れてしまう程の人気で大盛況でした!

いずれも地元のお店であり、そうした店舗がこういったイベントに協力しているというのはとても意味のあることだと思います。手賀沼という地域を盛り上げていきたいという思いがうかがえますね。

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タープの下でカフェを設営 Photo by Daichi MATSUMOTO

このように沼辺の魅力を知ってもらうために、沼辺を生かしたコンテンツを提供しました。ボートを貸してくださった小池さん、ヨガ教室の山下さん、地元のお店など多くの地元の方々のご協力があって、訪れた方々にはいずれも好評でした。

どんな人が訪れた?

では、一体どんな人が訪れたのでしょうか。

今後の手賀沼周辺でのプロジェクト活動の展開を探るためにも来訪者の方にアンケートを採りました。そのアンケートから分かったことを見ていきましょう!

今回のイベント会場が手賀沼フィッシングセンターの目の前ということもあり、週末フィッシングセンター内のnuma cafeや釣り堀、ドッグラン、BBQ場を訪れた人々が興味を持って、ヌマベにも降りてきてくれました。

また、事前にプロジェクトメンバーが中心になって、柏市や我孫子市などの施設の協力も得ながら告知にも力を入れていたため、そういった宣伝を見て訪れた方もいました。

手賀沼の周囲にはランニングやサイクリングのためのコースが整備されており、そのコースから堤防の下の様子を眺めて興味を持って降りてきてくれる方もいました。こういった日常的に手賀沼周辺でアクティビティをしている方に、ヌマベを知ってもらえたことはとても重要なことだと思います。

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堤防上からヌマベでのイベントに興味を持ち、スタッフに話しかけるランナーの方々 Photo by Daichi MATSUMOTO

アンケートによれば来訪者の中には、手賀沼周辺に居住、または勤めている方や柏市内の方、東京から来た方が多くを占めました。埼玉や神奈川、茨城などから来た方もあり、広い範囲から人を惹きつける手賀沼の魅力にさらなる可能性を感じました。また、訪れた方の多くは手賀沼フィッシングセンターや道の駅しょうなん、手賀公園、アリオ柏など多くの手賀沼周辺施設にも足を運んでいたことが分かりました。

手賀沼周辺全体として、人々を惹きつける魅力が他にもまだまだあるのではないかと思います。そういった場所をどんどん見つけていきたいですね!

週末2日間で約250名の方がこのヌマベに訪れたようです。大変多くの人が訪れましたが、重要なことは訪れた人の数ではなく、多くの人がヌマベのコンテンツに参加したり、カフェを使ってくれたり、ザシキでくつろいでみたりと思い思いの時間をヌマベで過ごしてくれたということです。

それでこそヌマベの魅力を感じてもらうきっかけになったと思います。

訪れた方の反応は?

約70名の方々が回答したアンケートから、印象的だった意見をご紹介したいと思います。

40代女性(手賀沼周辺在住)
「はじめて、沼の堤防の向こう側に降りました。楽しかったです!」

70代男性(我孫子市在住)
「沼をもっと生かして欲しいですね。自然を楽しめる空間がいいと思います」

30代女性(流山市在住)、40代女性(手賀沼周辺在住)
「気持ちのよい休日となりました」

40代女性(川崎市在住)、20代女性(手賀沼周辺在住)、60代男性(柏市在住)
「こんな場所知らなかった」

ヌマベという普段は入ることができない堤防下の空間が、周辺の人々にさえもあまり認知されていなかったようです。

実際に今回ヌマベを体験した方からは気持ち良い空間だったという意見が多く聞かれた一方で、整備してほしい場所の指摘もありました。このようにヌマベの魅力や課題を皆さんがそれぞれ感じることが出来たのではないでしょうか。

そうなっていれば、今回のテガヌマウィークエンドvol.1を実施した意義があったと思います。

大きな目標に向かって試行錯誤を重ねる

筆者も準備や当日も含め、何度か手賀沼を訪れていましたが、今回初めて船で沼の上も体験しましたし、美しい夕陽も見ることができました。どちらも都心では得られない感動的な体験。ヌマベではなにより自然を直に感じることができるので、都心からの週末ツーリズムという形で多くの人を惹きつける魅力があると思います。

手賀沼周辺の人々やその少し周りの柏や我孫子の住んでいる方々が手賀沼を地域の資源として捉え、興味を持ち、綺麗に、安全に保っていこうと思うことが大事だと思います。手賀沼ではこんな体験ができるのか、こんなに美しい風景があったのかということに気付いて、誇りに思える場所になって欲しいです。

そうすれば手賀沼を綺麗に保つ活動やヌマベを生かしたイベントなど、色々な手賀沼の使い方を地域の人々や行政が一体となって、今よりも活発に生み出していくことができそうです。それが手賀沼周辺の地域を盛り上げるという、最終的な目標につながっていくのではないでしょうか。

このテガヌマウィークエンドvol.1がそういった動きを生み出す一つの小さなきっかけになれば良いと思います。筆者はこの試みがが、長期の視点を持ちながら短期的な活動の試行錯誤を重ねていくという意味で、タクティカルアーバニズムの1つだと考えています。手賀沼プロジェクトとしての今後の展開も、長期的な戦略を忘れずに続けていく必要があります。

今回訪れた方以外にも、もっとたくさんの人に手賀沼の魅力を知ってほしいです。皆さん、一度手賀沼を訪れてみてはいかがでしょうか。

Cover photo by Dachi MATSUMOTO

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