アメリカでタクティカル・アーバニズムが議論された日:Tactical Urbanism Salon 2011(その1:プレゼン編)

タクティカル・アーバニズム(Tactical Urbanism)は、The Street Plans CollaborativeのMike Lydonらによって提唱された言葉とされていますが、その概念や取り組みが初めてパブリックな場で議論されたのは、2011年10月15日に開催された「タクティカル・アーバニズム・サロン」と言われています。

「タクティカル・アーバニズム・サロン」は、2011年10月2~21日にニューヨーク全土で開催された“Congress of Collectives”のイベントの1つです。“Congress of Collectives”は、「協同的に仕事をする(work collaboratively)」ことに関心がある個人を結び付ける(unite)ことを目的に、ブルックリンを拠点とするアーティスト集団“Flux Factory”の呼びかけのもと、アメリカ、ヨーロッパ、中東から、24ものアーティスト、シティプランナー、建築家、フィルムメーカー、活動家たちが集まり、活発な議論を繰り広げました。

3週間にわたる一連のイベントでは、さまざまなかたちでのコラボレーション、市民参加のありかたについて検討され、新しい作品や議論を生むことのできるプラットフォーム構築が目指されました。

そのような会議のなか、「タクティカル・アーバニズム・サロン」では、“Short Term Action // Long Term Change”が掲げられ、タクティカル・アーバニストたちによるプレゼンテーション、ペチャクチャプレゼン、そして“Tactical vs. DIY Urbanism”というテーマでパネルディスカッションが行われました。

そこで今回は、3回にわたり、「タクティカル・アーバニズム・サロン」でのプレゼンテーション、そしてパネルディスカッションについて紹介します。
まずはその1として、タクティカル・アーバニスト8名によってプレゼンされた彼らの取り組みについてレポートします。

※なお、本記事は、海外記事を筆者が翻訳し、解説を加えています。

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会場の様子(出典:Tactical Urbanism Facebook page

「タクティカル・アーバニズム・サロン」は、タクティカル・アーバニズムの提唱者であるMike Lydon(The Street Plans Collaborative)、そしてAurash Khawarzad(DoTank:Brooklyn, Project for Public Spaces)によるイントロダクションによりスタートしました。

イントロダクション―タクティカル・アーバニズムの急速な進展

Lydonは、タクティカル・アーバニズムの先駆けとして、パリ・セーヌ川沿いの“book boxes”をあげ、

いわゆるタクティカル・アーバニズムは数百年も続いているが、近年、その動きが加速している。実際、アメリカにおける56のオープンストリートイニシアティブのうち、40以上が過去3年のうちに着手されたものである

と述べ、タクティカル・アーバニズムがここ数年で注目を浴びてきたことを強調しました。

また、Khawarzad は、

私たちはこれまでに類似したさまざまなプロジェクトを実施してきた。今こそそれらがうまく結びつき、回っていくときである。タクティカル・アーバニズムは、トレンドではなくムーブメントである。より組織的に、なぜタクティカル・アーバニズムがこの分野において重要なのかを徹底的に議論すべきである。

と話しました。

パブリックスペースとしてのタイムズスクエアとプラザ・プログラム―Andy Wiley-Schwartz(ニューヨーク市交通局)

最初のプレゼンターは、ニューヨーク市交通局(NYCDOT)よりAndy Wiley-Schwartz。すでにソトノバでも何度か取り上げている通り(前編後編)、ニューヨークは、「プラザ・プログラム(広場プロジェクトを公募し、社会実験から事業化までする政策)」をはじめとした道路空間の利活用を積極的にすすめていることで注目を集めています。

Schwartzは、タイムズスクエア、そしてPutnam Triangle、ジャクソン・ハイツにある78th st Playstreet Plazaでの経験について語りました。

10年以上にわたって、タイムズスクエアは整備計画として再編が検討され続けてきた。人々はそのすべての時間を、それをどのように「みせる」べきかということを議論するためだけに費やしてきた。しかしながら、タイムズスクエアを素晴らしいパブリックスペースにすることは容易ではない。

ここで重要なのが、地域住民の積極的な参加です。

(社会実験として)市交通局がブロードウェイを閉鎖する際、市が発注した家具の到着が間に合わなかった。そのとき、タイムズスクエアアライアンスは、椅子を購入することで市を助けた。わずか1時間で椅子は市民でいっぱいになった。結果として「タイムズスクエアはパブリックスペースとなり得るか?」と問う者はいなくなった。なぜなら、はじめからそうである(タイムズスクエアはパブリックスペースとなり得る)と証明されたのだから。

このような住民主体の動きは、78th st Playstreet のプラザ化においても見ることができました。

ジャクソン・ハイツは、ニューヨークで最も人口密度の高い地区の一つで、1.5ブロックの公園をもつ。地域住民は、夏の間、毎週日曜日、隣接する通りを閉鎖することを考えていた。市交通局はそれを実現させ、地域が主体となってしっかりと機能させた。翌年には、住民グループは毎週末やりたいと提案し、それも実現させた。地域住民はステークホルダーとともにコミュニティ・ボード(諮問委員会)に要望し、勝利をおさめた。彼らは9月中ずっと通りを閉鎖することにも成功した。通りを継続的に閉鎖するために、彼らはプラザ・プログラムに申請済みで、ちょうど先週、市交通局はそれを承認した。また、近隣の学校から運動場を譲り受け、それらを集約してひとつの空間にするよう要望した。これは、ジャクソン・ハイツの2倍以上の広さの公共空間になる。

Schwartzは、自身の4年間にわたる交通局での経験から、自信をもってこう話します。

地域が自分たちでそれを実践し、私たち(市交通局)はただ彼らの好きなようにさせただけである。彼らが協同すれば、多くのことが実現できるだろう。もし25もの住民グループがそれぞれのメインとなる商業街路を週末に閉鎖したいと頼んできたら、それはあり得ないと思うかもしれない。しかし、我々はわずかなマーケティングのみで、何度もそれを実現させてきた。これは、78th Street の成功にみられるような素晴らしいアイディアを育てるための種となる。もしこれが最も完璧なタクティカル・アーバニズムの例でないとすれば、ほかに何がそれにあたるのか、私にはわからない。

ポートランドの食文化「フードカート(food cards)」―Kelly Rodgers(Cartopia)

Cartopiaは、ポートランド・Hawthorne大通りにあるフードカート(food carts)。火~木は深夜12時まで、金・土は深夜3時まで営業しています。ポートランドのフードカートの多くは私有地にあります。私有地では700ものフードカートが存在し、この数は2006年と比較して倍以上になっているそうです。

フードカートは、レストランと同様の、安全衛生、品質管理基準が適用されていますが、フードカートは市が運営しているものではないため、公式規則は存在しません。また、フードカートは、法的に “stationary mobile unit” と呼ばれており、それらは(理屈上)動ける限り、「mobile(可動性)である」とみなされるため、建築基準法の対象にもなりません。そのため、ポートランドのフードカートは、そういった「抜け穴」を利用して運営されています。

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ポートランドに立ち並ぶたくさんのフードカート(出典:https://www.travelportland.com/article/food-cart-pods/

このように、ある意味グレーゾーンとして捉えることのできるフードカートですが、豊かな食文化が存在するポートランドにあることから、レストランと同じクオリティの食品が提供されています。

Kelly Rodgersによると、ポートランドにおけるフードカートは、すでに都市計画の一部として捉えられているとのこと。

第一段階は、ダウンタウンにおけるフードカートだった。フードカートは空き地にも出現しはじめ、即興的にフードコートを形成している。今日においては、実際にデベロッパーたち自身が、清掃員、給水・電気車等も含め、キッチンカーを持ち込んでおり、運営手配の質はますます高くなっている。実際、優秀なデベロッパーの中には、将来を見据えて、建設予定のビルの敷地内にキッチンカーのインフラを整備したものもいる。

ジェイン・ジェイコブズが提唱した「エコノミックガーデニング」は、アントレプレナーのエネルギーがどこにあるのかを把握し、そして、ビジネスが成長する資源がある地域をターゲットにする。ポートランドの多くのフードカート運営業者は、最終的にはフードカートを永続的な場所で運営したいと強く望んでいる。

現在では、フードカートのモデルはPDXにシフトし、食料品だけではなく、サロンや商店といった他の業種が、カートのかたちでオープンしています。また、フードカートはTaxpayer-building(将来的に、より収入を得ることのできる大きな建物が再開発されることを期待しつつ、まずは税金を支払うのに十分な収入を生み出す暫定的な存在として、低コストの建物を作ること)としての役割も果たしているとのことで、今後どのように進化していくか注目されます。

地域の力でコンクリートを緑に戻す―Ted Labbe(DePave)

DePaveは、コンクリートやアスファルトで過度に舗装された場所(over-paved places)を転換すること(De-Pavement = DePave)を推進し、舗装による社会的・環境的影響を排除し、自然に優しい地域づくりをミッションとする、ポートランドを拠点とする非営利組織です。

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ポートランド・Woodmere Elementary Schoolで行われた活動の様子。60人のボランティアがdepavementを行った(出典:http://depave.org/woodmere/

DePaveは4年間で19もの場所を変化させ、約150,000平方フィートのpavementを取り除いた。2,000人以上の人々がかかわっており、そのような場所はPDXの小さな町にたくさん存在する。

活動においてDePaveが重視しているのは、DePaveのスタッフに育まれるリーダーシップ、そして参加する住民に育まれるスチュワードシップ(Stewardship)です。

リーダーシップは重要である。多くのDePaveプロジェクトに従事することで、スタッフたちにはリーダーシップが生まれてきたし、注目すべきは、それらプロジェクトの多くは女性が主導してきたということである。そして、Depaveに参加する人々は、積極的にこういった場を創造し、どのように「水が流れるか」を理解している。DePaveの大部分を占めているのは、人々が「源流を開拓すること」である。私たちは道具や少しの援助をしているだけで、これらはコミュニティ主導のプロジェクトである。約10パーセントは(私たち)組織の人間であるが、残り90パーセントはその場所の人々である。

Power of 10+ に基づいたプレイスメイキング―Ken Farmer (Project for Public Spaces)

Farmerは、Project for Public Spaces(PPS)は「プレイスメイキング、つまり人々が思い描く場所を創造すること」を実現していると話します。

PPSが大事にしているコンセプトとして、“Power of 10+”があげられます。“Power of 10+”は、多様な都市規模でのプレイスメイキングを評価・促進するために開発されたPPS独自のもので、ターゲットとなるプレイスメイキングの取り組みを判断するための建設的な話し合いを生み出す強力なツールです。都市がプレイスメイキングに成功するか失敗するかは、その都市のヒューマンスケール(human scale)によりますが、ヒューマンスケールはしばしば見過ごされています。

Power of 10+ は、地区の開発をする際に、人々の経験に注意を払うことが、いかに直接的かつ広範な影響を及ぼすかということを示しています。Power of 10+ の背景にあるのは、座る、遊び場を楽しむ、芸術に触れる、音楽を聞く、食べる、歴史を経験する、そして人に会うといったような、人々がその場所にいるさまざまな理由(10+)があるときに、その場所は繁栄することできるという考えです。将来的に、これらの活動が、周囲のコミュニティの文化や歴史を反映して、その場所特有のものとなることが理想であり、その場所を最も頻繁に使用する地域住民は、その場所でどんなことができるかを知るための最良の源となります。

さらに言えば、少なくとも10のこういった地区が含まれている都市は、市民と観光客双方の、パブリックスペースに対する認識が変化し、都市中心部はレジリエンスと確信を生み出すための土壌が強化されるといいます。

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ニューヨーク・ブライアントパークを例にしたPower of 10+(出典:https://www.pps.org/reference/the-power-of-10/

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オーストラリア・メルボルン。Power of 10+ によって生成されたアクティビティのレイヤーにより、さまざまなタイプのユーザーがパブリックスペースを「共有」している(出典:https://www.pps.org/reference/the-power-of-10/

最高の質を本当に引き出すことのできるスペースを作り出すために、PPSはコミュニティ主導のアプローチを採用している。つまり、PPSは、プレイスメイキングをするために、「熱心なナットたち(愛情をこめてこう呼んでいる)」と協同している。

我々はどのようにして、人々が空間と作用することのできる重要な機会を提供するプラットフォームを創造することができるだろうか。このタクティカル・アーバニズムのムーブメントにおいて、そのようなプラットフォームを創造することは刺激的なことである。

歩行者に優しい「島」づくり―Kevin Conger(CMG Architects)

サンフランシスコにある人工島・トレジャーアイランド。夜景スポットとして有名ですが、もともと、空港の建設を目的に造られた人口の島であり、かつては博覧会の会場や海軍基地として利用されました。結局、空港は建設されず、現在は大規模な再開発が進行中です。CMG ArchitectsのKevin Congerは、そんなトレジャーアイランドでのプロジェクトについて語りました。

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サンフランシスコの人工島・トレジャーアイランド(出典:https://www.cmgsite.com/project/treasure-island/treasure-island-master-planning/

36名の建築家とデザイナーを擁するCMG Architectsは、2002年より、トレジャーアイランドを海軍基地から近隣住民が気軽にアクセスできる島に転換するためのプロジェクトに参加しており、公園、ストリートといったオープンスペースのプランニング等を担当しています。

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2016年に建設が着手された第一フェーズ。300エーカーものオープンスペースに、ウォーターフロントパーク、広場が誕生予定(出典:https://www.cmgsite.com/project/treasure-island/treasure-island-major-phase-1/

プロジェクトのマスタープランには、「歩行者指向の通り(pedestrian-oriented street)」が含まれています。また、プロムナードや自転車道は島全体に整備される予定で、歩行者に優しい環境がつくられることが期待されています。

ニューヨークに巨大プールをつくる―Archie Lee Coats IV(PlayLab)

PlayLabは、2009年に設立された、ニューヨークを拠点とするクリエイティブ・スタジオです。PlayLabのArchie Lee Coats IVは、ストリートフェスティバルのコンペティションでの経験、そして、イーストリバーに「浮かぶ」プールをつくるプロジェクト“Plus Pool”について語りました。

まず、ストリートフェスティバルのコンペティションについてです。ニューヨークでは、夏になると、毎週各地でストリートフェスティバルが開催されています。歩行者天国となった街にはたくさんの屋台が出現し、多くの人々で賑わいます。
2011年、マンハッタンにあるNew Museum of Contemporary ArtとStorefront for Art and Architectureが開催した、ストリートフェスティバルのための新しいタイプのテントを設計するコンペティションにおいて、PlayLabの提案した“WORMS”が勝利しました。“WORMS”は、アコーディオン形式であり、明るく軽量で防水性のリップストップナイロンで覆われています。“WORMS”は、多くの屋台を「繋ぎ」、鮮やかで個性的なかたちは、それ自体が一種のフェスティバルとして、参加者の注目を集めました。

次に、“Plus Pool”です。マンハッタンとブルックリンの間を流れるイーストリバー(East River)。“Plus Pool”は、巨大なろ過装置を設置して、イーストリバーに浮遊式プール(floating pool)を作るプロジェクトです。
「マンハッタンは水で囲まれた島なのにプールがない!ならば作ってしまおう!」そんな思いから、Family New Yorkと共同創設されたこのプロジェクト。当初は不可能と思われていたアイディアですが、今では“Plus Pool”の実現と維持を目的とした非営利組織として運営されています。

我々は、イーストリバーで泳ぐことを可能にする“Plus Pool”と呼ばれるプロジェクトを提案した。ろ過装置としての壁を設置して、それが川の水をきれいにするというアイディアである。どのようにこれが機能するのかわからなかったが、とにかくそれを提案したのである。

イーストリバーの水は、化学薬品等は使わず、巨大ろ過装置のみでろ過されます。人々は、自然な川の水のプールを楽しむことができます。また、プールが設置されることで、毎日600,000ガロン以上の川の水がきれいになります。

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完成予想図(出典:http://www.playlab.org/work/plus-pool/

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プラス(+)のかたちをしたプールは、子供用、スポーツなど、それぞれ用途に応じて使用可能(出典:https://pluspool.org/pool/design/

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プールをつなげて「オリンピックサイズ・プール」としても使用可能(出典:https://pluspool.org/pool/design/

“Plus Pool”が実現すれば、ニューヨークの人々は、1938年以来、「川で泳ぐ」ことができるようになります。今後の展開が期待されます。

地域が欲しいものをデザインに―Daniel D’Oca(Interboro Partners)

Daniel D’Ocaは、Interboroのプロジェクト“Holding Pattern”についてプレゼンしました。

“Holding Pattern”は、“the 2011 Young Architects Program”のためのプロジェクトでした。“The Young Architects Program”は、ニューヨーク・クイーンズ地区にある現代美術専門の美術館であるMoMA PS1の中庭で開催される野外音楽イベント“Warm Up”の会場デザインのために、若手建築家を招待するプログラムであり、Interboroの “Holding Pattern”は、プログラムに採択されたプロジェクトのひとつです。

Interbroは、“Warm Up”終了後も、会場デザインに使われたものが捨てられずに済む、つまり地域で活用されることを望んでいました。

“Warm Up”のニーズと地域のニーズは、いくぶんオーバーラップしているようにみえた。Interboroは、美術館の近隣住民と話をすることで、彼らがどんな「もの」をほしがっているか判断しようとした。そして、“Warm Up”終了後に、彼らがそれらを活用できるようデザインに組み込んだ。

近隣住民からの希望としてでたものは、鏡、卓球台、ロッククライミングウォール、ライフガードチェア、ストリートにおくための家具など…。「どんなものが楽しく、そして公共の利益になるか」といった視点から議論された結果、最終的に80のもの、そして数十本の木が選ばれました。

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MoMA PS1に設置されたミラールーム。8つの大きな鏡は、地元ロングアイランド・バレエスクールからリクエストされたものであり、イベント終了後に寄贈された(出典:http://www.interboropartners.com/projects/holding-pattern

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中庭のサイドギャラリーには60本もの柏の木が建てられた。“Warm Up”終了後には、ロングアイランドシティ周辺に植えられた(出典:http://www.interboropartners.com/projects/holding-pattern

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ツリーの「行き先」を示すタグ(出典:http://www.interboropartners.com/projects/holding-pattern

テンポラリーなものとしてとらえられがちな野外イベントの環境を、イベント終了後に地域が活用することを前提にデザインする―。住民のニーズを直接聞き、それをデザインに反映させることは、近隣住民がイベント、そして会場の美術館に愛着をもつことができるといった意味でも、大事なことかもしれません。

世界初!リアルタイム・コンペティション―Nick Griffin(72 Hour Urban Action)

最後のプレゼンターは、Nick Griffin。今までにない新しいタイプのコンペティション“72 Hour Urban Action”について話しました。

“72 Hour Urban Action”は、10の国際チームが三日三晩、地域のニーズをもとに、パブリックスペースへの介入、設計について創造、実装するデザインビルド方式のリアルタイム・コンペティションです。
各チームは、限られた時間、予算、スペースのなかで、3日間現地で「生活」しながらパブリックスペースをデザイン、創造します。

“72 Hour Urban Action”において注目すべきは、コンペティションに専門家のみならず、地域住民が招待される点です。地域住民を「都市景観へ重要な影響、変化をもたらす活発なエージェント」としてとらえる考え方が、その背景にあります。

第1回“72 Hour Urban Action”は、2010年9月、イスラエルのバト・ヤムで開催された“The Bat-Yam Biennale of Landscape Urbanism”の一部として開催されました。“The Bat-Yam Biennale of Landscape Urbanism” は、自治体と協力して、パブリックスペースでの人々のアクティビティを奨励するユニークな市民活動モデルです。
第1回“72 Hour Urban Action”には20もの国から参加者が集まり、その様子は「ニューヨーク・タイムズ」や「Metropolis」(日本最大の英字フリーペーパー)、「Domus」(イタリアの建築雑誌)などをはじめとした、多くのメディアに取り上げられました。

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第1回“72 Hour Urban Action”の様子①(出典:http://www.abitare.it/it/architettura/2011/04/07/72-hour-urban-action/

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第1回“72 Hour Urban Action”の様子②(出典:http://www.abitare.it/it/architettura/2011/04/07/72-hour-urban-action/

“72 Hour Urban Action”は、“Urban Action”をタクティカル・アーバニズムという世界規模のムーブメントのなかで今後使用されていくであろう言葉(upcoming voice)と考えています。
“Urban Action”は、住民、意思決定者、専門家が関わるアーバンデザインの実践を指します。 コミュニティ内にあるクリエイティブ・シンキングや既存のリソースを十分に活用することで、スピード感をもって場所を創造するだけではなく、実験を通じて、長期的な変化と市民参加をうながします。

“72 Hour Urban Action”は、このような考えのもと、限られた時間、予算、スペースを設定することで、参加者の秘められた創造性を解放し、パブリックスペースにおける新しい可能性を生み出そうとしています。

以上、8人のプレゼンターの取り組みを紹介しました。主にニューヨークやポートランドにおける事例であり、かつ2011年前後の取り組みが中心ですが、いま私たちが参考にすべき点もたくさんあるのではないでしょうか。

後編もお楽しみに!

【Tactical Urbanism Salon】
日時: 2011年10月15日(土)
会場: ニューヨーク・ロングアイランドシティ
登壇者: Mike Lydon(The Street Plans Collaborative)
Aurash Khawarzad(DoTank:Brooklyn, Project for Public Spaces)
Andy Wiley-Schwartz(New York City Department of Transportation)
Kelly Rodgers(Cartopia)
Ted Labbe(DePave)
Ken Farmer(Project for Public Spaces)
Kevin Conger(CMG Architects)
Archie Lee Coarts IV(PlayLab)
Daniel D’Oca(Interboro Partners)
Nick Griffin(72 Hour Urban Action)

 

参考URL:

Cartopia Food Cart Pod(https://www.travelportland.com/directory/cartopia-food-cart-pod/
CMG Architects (https://www.cmgsite.com/
Congress of Collectives (http://www.fluxfactory.org/projects/congress-of-collectives/
DePave(http://depave.org/
Food cart pods(https://www.travelportland.com/article/food-cart-pods/
New Ideas City Museum “The Worms”(https://www.newmuseum.org/ideascity/view/the-worms
Interbro Partners(http://www.interboropartners.com/
PlayLab(http://www.playlab.org/
Plus Pool(https://pluspool.org/
Project for Public Spaces (https://www.pps.org/reference/the-power-of-10/
72 Hour Urban Action(http://www.72hoururbanaction.com/

翻訳サポート:原マリン

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鈴木 あい

鈴木 あい

University College London (UCL), Department of Security and Crime Science 博士課程在学中。Cardiff University修士課程修了。専門は、犯罪学(criminology)、犯罪科学(crime science)。関心分野は、交番制度をはじめとした日本における安全安心まちづくり。