まちの主役を歩行者に変えたニューヨーク市「プラザ・プログラム」のこれまで、これから (後編):プラザからみる「エリアマネジメント」の原点

前編に続き「プラザ・プログラム:PLAZA PROGRAM」を紹介!
今回は、プラザが地域にどう支えられているのか、その背景にあるコミュニティの深い想いを読み解きます。

「ニューヨークだから」できた?

ありそうで、今までなかったプラザ。

「ニューヨークだからできるんでしょ」という声も聞こえてきそうですが、果たしてそうでしょうか。

振り返ったり、話を聞いたりして見えてくるのは、これまで地道に土壌を育て、種をまいてきたニューヨークの姿です。「そんなニューヨークだから」できたのです。

セミパブリックスペースでの成功、ストリートでの苦労

戦後のニューヨークのオープンスペースで、もっとも注目されてきたのは、コミュニティガーデンや、公開空地のような、いわゆるPOPS(Privately owned public space)でしょう。つまり、民地を活用したセミパブリックの小さな場です。

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公開空地やポケットパークデザインのお手本となったPaley Park

もちろん、過去にはストリートについても、世界中に刺激をあたえたプロジェクトがありました。5番街の歩行者天国やフルトン通りのトランジット・モールです。これらの集大成のように、当時のリンゼイ市長は、1972年、マディソン・アベニューのモール化を提案しますが、地元の強い反対で実現できませんでした。以来、ニューヨークで歩行者モールは実現できていません。

ストリート上に大規模なモールでなく、小さな場を創るプラザに、これまでの成功と苦労があらわれているのです。

待ち望まれたプラザ

その一方で、コミュニティ活動が活発な地域では、広場として使えるストリートが待ち望まれていました。

Pershing Square

例えば、マンハッタンの中心、グランド・セントラル駅地区のエリアマネジメントを行ってきたBID (Business Improvement District) の Grand Central Partnershipがその代表例です。

1988年に設立したこの組織は、その前年に地区マスタープランを作成していて、そのときからすでに、高架下のカフェ沿いのストリートにプラザをつくることを計画していました。プラザ・プログラムで資金調達がようやく実現することとなったのです。ヒアリングによると1995年から、歩行者天国を継続してきた実績が、スムーズな認定につながったとのこと。

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1987年のマスタープランでのプラザ計画(Grand Plaza Patnershipから筆者への資料提供)

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まだプラザは建設中、完成後は高架下と一体的なオープンカフェとして運営予定

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このプラザも、歩行者天国からうまれたものの一つ。ジャクソン・ハイツというブルックリンの住宅地にあり、沿道は公園と学校です。

日本では遊戯道路とよばれますが、子どもの遊び場のための歩行者天国「Play Street」を運営してきました。ヨガ・イベントなど、大人も楽しめる場所として利活用中です。

78th st Plaza

Plaza de Las Americas

また、マーケットの運営から、プラザにつながったところも。名前からも想像できますが、民族多様性のあるこの地区では、80年代から住民の健康増進のためのグリーンマーケット、90年代以降は地域経済全体の底上げを目指して、露店商によるマーケットを許可してきました。

まちを象徴するUnited Palace(教会かつ劇場)の正面にある通りがプラザになり、マーケットは再配置されています。ビフォー・アフターを比べると、すっきりと統一された雰囲気が伝わりますが、整備前も悪くなかったかも!?

Plaza de Las Americas

プラザ整備前のマ―ケット(2014年)

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プラザ整備後のマーケット、通行空間を広めに再配置 via Flickr:NYC Dept. of Design & Construction

Corona Plaza

そして、交通局一押しのプラザがここ!

前編で、定量的にはかれない効果の話をしましたが、コミュニティへの住民意識がポジティブなものになったと、地元も交通局も実感している地区です。

クイーンズにある、高架メトロ沿線のイタリア系・アジア系商店街のまち。駅の入口にプラザがあります。周辺の美術館や大学など多様なステークホルダーが協力し、利活用の幅を広げています。

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地域の保健衛生をサポートするCorona Plaza たまに、ワゴンが来て、無料の食事をふるまう。

マネジメントのスキーム

「つくる」だけでなく、その後の「メンテナンス」と「利活用」がセットになって、地域が望む姿のプラザが完成しています。スキームとしては、各コミュニティの民間組織が、交通局のパートナーとなる協定を結びます。イベント活用やベンダー業者からの収入を管理運営にあてたい場合は、別途コンセッションに関する委員会との協定も必要です。

パートナーになるのは、BIDにかぎりません。もともと公園を管理していた団体、環境ボランティアなどが、ストリートに関わることも。マイノリティのための公益活動が盛んなニューヨークですが、こうしたプラザのパートナーと組むことで、活動のネットワークがひろがっています。

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オープンスペース図書館にするUni Projectの様子。Corona Plazaにて。 2012年度の40から、現在は135と連携コミュニティが急増。ブルックリンとクイーンズではプラザと組むことが多い via The Uni Project

「楽勝!」な場所なんてない

よく準備されたプラザ・プログラムですが、地域の手にわたってからのマネジメントは、易しいものではありません。一等地にあるプラザであっても、映画のロケ地とするなど、収入源に少しゆとりがあるくらいで、当初は資金調達が大変だったといいます。移民コミュニティでは、前稿で紹介した人材派遣パートナーやクラウドファンディングを活用するなど、もっと厳しい。

原則、補助金は出さず、意思の強いコミュニティがあらゆる方法を駆使してプラザを維持している、といった状況です。

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ベンダーとイベント、映画ロケ撮影等で収入を得ているマディソンスクエアの向かいにあるFlatironプラザ 広告収入を主としているのは都心でも、タイムズスクエアのみ。

WALK NYC!:交通局のこれから

さて現在、ブルームバーグからデブラシオ市長にバトンが手渡されてからしばらく経ちます。

デブラシオ市長のもとの交通局では、より「安全」なストリートにむけた、警察による取締まりとの連携が目立ちます。自動車の速度規制を取り入れるなど、ブルームバーグ時代よりも「交通運用」の視点が強いものになっています。

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今年は、週末歩行者天国イベントを60箇所で実施予定 via Twitter :NYC DOT

特に、今年はブルームバーグの長期計画「PlaNYC」の予算も終了する年。この10年間で活性化した、ニューヨークの公共空間への取り組みも変わっていくのかもしれません。

73のプラザもこれからが正念場なのです。

ゆらぐアメリカ、たかまるプラザの価値

政権交代といえば、大統領選も。

人種のるつぼ、そして、トランプ大統領の不動産がそびえ立つニューヨークは、大きなデモの場となりました。

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via Newyork Times:Inauguration Protests Held at a Trump Tower and Elsewhere(2017/01/19)

STREETS BLOGによると、こうしたデモや公共性の高いイベントを、ストリートで行えるようにする7ステップを記した書簡が市長に送られました。対象地は5番街と14th Street地区、そして事例にもあげたPlaza de las Americasを含むいくつかのプラザ。

プラザについては、人口・人種・所得データを集計して割りだされています。送り主には、Project for Public Spacesも含まれ、特に5番街については、前交通局長のサディク・カーン氏も言及しています。

ニューヨーク市では、表現の場としてのストリート空間、プラザの存在価値がますます高まっているのです。

日本型のエリアマネジメントや「楽しく、にぎわう」広場をめざす議論では、さけられがちなこの話題。だけど、特に首都レベルの都市においては「なぜ広場が必要か?」という根源的な問いへの1つの答えでもあります。

ニューヨークのストリートは何処へ向かうのか?これからも注目です!!

参考URL:
The Uni Project

STREETS BLOG

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三浦 詩乃

三浦 詩乃

助教横浜国立大学都市イノベーション大学院 交通と都市研究室
横浜国立大学都市イノベーション大学院 交通と都市研究室助教、ソトノバライター/博士(環境学)。歩行者空間に着目し、旭川市、東京都、アメリカ・ニューヨーク市など国内外のストリートデザインと、そのマネジメントに関する研究を行う。