手づくり遊具で都市の隙間に遊び場を! 移動式「プレーリヤカー」が変えるソトの風景

誰よりもソトを使いこなすのが得意なのは、子どもたちかもしれません。

思い返せば子どもの頃、路上やマンションの駐車場でよく遊んでいたものです。そこではじめて知り合った子と仲良くなって、触れ合いながら遊びを覚えてきたような体験を持つ筆者は、田舎から都市に越してきて、路上で子どもたちが遊ぶ姿や声を見かけなくなったことに一抹の寂しさをずっと感じています。

そんな中、都市ならではの子どもの遊び方を提案しているのが、移動式の遊び場「プレーリヤカー」です。

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普段は休憩所として開放されている、都市の小さな空きスペースです

暫定利用の都市の隙間

公園が少ないことが問題となっている東京ですが、ほんの少し余った軒先のスペースや空き地、広場など、小さな「空き」がちらほらと点在しています。4月には、こうした軒先のスペースを活用した谷根千エリアの「一箱古本市」をレポートしました。

今回は、空きスペースを子どもの遊び場に変えてしまう試みをご紹介します。プレーリヤカーが訪れたのは、小田急線下北沢駅北口すぐの休憩所「しもきたスクエア」。未利用の道路予定地を暫定的に活用した空間です。

実際に子どもが遊ぶのに必要な範囲は、広くて15畳ほど。目の前の遊びに夢中になってしまえば、しゃがみこんだ周り半径1mほどで十分な、小さな世界です。つまり都市に散らばる小さな「空き」さえあれば、大きな公園だったり、遊び道具が整ったりしていなくても、十分な遊び場になり得るということ。

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となると必要なのは、そこを「遊び場」に変えてしまう装置だけ。どんな場所にも持っていける、固定されていない、移動式のもの。

そんな考えから開発されたのが、身近な道具を遊具にしてリヤカーに積んだ「プレーリヤカー」でした。世田谷区に拠点を置く「冒険遊び場と子育て支援団体 KOPA」が開発し、10年以上の歴史があります。東京都内にとどまらず、滋賀県や岡山県など地方都市にも展開しています。

都市だからこそ、移動する遊び場を

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この小型リヤカーにいろんな遊び道具をのせ、目的地まで運んでいきます。駐車料金もかからず、細い道も通れるため、リヤカーを選んだそうです。

移動式とすることで、ひとつの固定した場所で遊び場を運営するよりも、管理面・経済面ともに楽になるそう。とはいえ、団体の倉庫や個人宅のガレージなどの保管場所から、人力で2、3時間かけて現地まで歩いて引いていく労力は相当のものです。

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リヤカーひとつで「いつも」が変わる

現地についたら、さっそくリヤカーの中から遊び場をつくっていきます。手づくりの装飾や遊び道具たちを広げていけば、あっという間に、いつもの風景に新鮮な空気が流れ込んでいきます。

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休憩しているおじいちゃんは、ぼんやりと子どもたちが遊ぶのをただ眺めている様子。同じ場所に居合わせながら、なんとなく、同じ時間を共有しているような、そんな温かみのある空気が流れていました。

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KOPAの代表を務める矢郷恵子(写真右)さんは、1980年代から世田谷区内で自主保育の活動を続けています。主に乳幼児を対象に、自主保育しやすい環境づくりや支援などを展開し、多くのサポーターが参加しています。

昭和の頃は、路地に子どもの遊ぶ声が響いていました。段々と車が増えて道路が整備され、公園ができはじめました。都市内の公園は、外で遊べなくなった場所に後からできるものだったんです。主に未就学児の子どもたちを対象に、小さな遊び場をつくりたいと思っています。大きなイベントにはせず、あくまで日常的なことに力を注ぎたい。生活の延長にあることを大切にしています。

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設営中の矢郷さん(右)。とっても元気でパワフルな方でした!

以前、山間地でまちづくり携わっていた事もある矢郷さんは、「移動型の商店街をつくりたい」と構想した事も。その際に、都市において固定の店舗を持たない可能性を感じたそう。たしかに、商いは本来、市場など人がいるところに出掛けていくものでもありました。

暮らしとまちは、つながっている

遊び道具をよく見てみると、フライパン、しゃもじ、おわん、ざる、箸置きやペットボトルのキャップなど、どれも家庭から持ってきたものばかり。「あるもので十分、間に合うんです」と、矢郷さんはやわらかに語ります。

自分の暮らしからモノがはじまることを知っているからか、まちで活動するのは女性の方が多いです。とくに身の回りの小さな地域で活動する傾向があります。昔から、女性は顔と手で商売するのが得意だからでしょうか。まちづくりに関心をもつ人も、自然と多いですよね。生活の延長にあることが分かっているんだと思います。

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自分の暮らしを豊かにすることを考えて実行してみたら、いつのまにか「まちづくり」になっていた。気付けば最近、そんな事例ばかり追いかけている筆者です。今回のインタビュー中にも、「実際やってみるのがいちばんいいわよ」と、背中を押されてしまいました。そろそろ言っているだけでなく、実行に移していくべきですね……。

矢郷さんをはじめ、自らの生活環境を変えていこうとする方々のパワーやエネルギーにはいつも圧倒されます。実際にお話を伺うと、身の回りの問題や状況をよく見て、肌で感じている方が多いなと感じます。

まちと自分の暮らしはつながっている。そのことが感じられる環境や土壌を耕していく。それが、何かにつながるかもしれません。

All photos by Ayano KUMAZAWA

プレーリヤカー in 下北沢

日時 6/6(火)10:00~13:00(毎月第1火曜日予定)
場所 しもきたスクエア(東京都世田谷区下北2)
企画・運営 KOPA世田谷区自然体験遊び場事業(世田谷区子ども・若者部児童課)
協力 しもきた商店街振興組合
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熊澤 綾乃

熊澤 綾乃

早稲田大学大学院建築学専攻中。女子学院高等学校卒。卒業論文では東京都23区内を対象に、都市計画道路事業のために一時的に生じている未利用地が市民によって活用される効果と有効性について研究。学生ならではのフットワークの軽さを活かし、多方面にアンテナを張りながら日々勉強中です。