ソト事例

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オープンスペース|空地

ソト事例

消滅可能性都市「三浦」の軒先から始まる新しい地域交流のかたち

「ソト」初心者の私は、「ソトを楽しむってどうしたらいいのだろう?」と考え、答えを見つけられずにいました。

私たちの暮らしは「ソト」で起こる小さな出来事に囲まれている、そう気づかせてくれたのは、私の大好きなまち、神奈川県の三崎にある一軒の蔵書室「本と屯(たむろ)」の軒先でした。

三浦市は、神奈川県の市で唯一の「消滅可能性都市」

今回訪れた「本と屯」は三浦半島の先っちょ、神奈川県三浦市にあります。
三崎といえば、マグロ!!
品川からは、京浜急行で1時間という近さで美味しいマグロが食べられると、観光で三崎を訪れたことのある人も多いのではないでしょうか。実際に三浦市には年間で591万人もの観光客が訪れています。(平成29年統計)

しかし三浦市は、少子化や人口流出の影響で存続が困難になるおそれがあると、2014年に「消滅可能性都市」に指定されました。
消滅可能性都市とは、出産の中心となる20~30歳代の若年女性の人口が、2010~2040年の間に5割以下になると予測される自治体で、神奈川県では、三浦市、二宮町、大井町、松田町、山北町、箱根町、真鶴町、湯河原町、清川村の1市7町1村があげられています。

そんな、三崎にある「本と屯」とは一体、どのような場所なのでしょうか?

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三崎口から三崎まではバスで10分ほど!

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三崎のバス停を降りると、漁師町を感じる風景が目の前に広がります。

夫婦出版社が営む海辺の蔵書室「本と屯」

三崎港の中心となる商店街に建つ築90年の元船具店に、「本と屯」がオープンしたのは2017年12月のこと。
商店街といっても、平日は人通りもまばら。観光客の多く集まる休日になると商店街の活気も溢れてきます。

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商店街の入り口。昔ながらの看板建築の建物と蔵が多く建ち並びます。

「本と屯」を運営しているのは、ミネさんご夫婦。ミネさんは「夫婦」という最小単位のチームで出版社を営み、夫のミネシンゴさんが編集を、妻の三根加代子さんがデザインを担い、雑誌「髪とアタシ」や「たたみかた」の出版や書籍の編集をしています。

「本と屯」は本屋ではなく、蔵書室。
本棚には、小説から絵本まで様々な本が並び、三崎に住む人だけではなく、誰でも自由に本を読める場所です。子どもから年配の方まで集まる「本と屯」は、三崎のコミュニティの中心となりつつあります。

三崎のコミュニティの中心となっている「本と屯」のイベントの中でも、「ソト」で行われた軒先BBQ(6月7日開催)の様子をお伝えします。

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軒先きでたむろする人たち。まさに「本と屯」

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築90年の米山船具店をリノベーションした「本と屯」

軒先でBBQ!人が集まる理由とは

今回、「本と屯」の軒先で行われたBBQには、子どもから大人まで、地元の人たちだけではなく、横浜や東京など遠いところからも、三崎が好きな人たち30名ほど集まりました。

BBQで振舞われた食材は、三浦の農家さんの野菜に、三浦の魚介類と、まさに三浦づくし!つくり手の顔がわかる美味しい食材というだけでも、集まった人たちの笑顔でいっぱいになることは間違い無しですよね。

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みんなで協力しながらの、食事づくり

港町で昔から内外の人たちの交流が盛んなこのまちは、外の人を受け入れる風習もあり、遠くから参加しても馴染みやすい、おおらかな空気の流れるまちなのだと実感します。

三崎の好きなところや、三崎を好きになったきっかけ、さらには三崎の将来の話まで。美味しい食材を口に運ぶ箸も、盛り上がる話しも尽きることがありません。

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日が沈み始めてもなお、盛り上がりは冷めることがありません

お酒が入り、どんどんと盛り上がって気がつけば、終電間近。
東京から来た人は、遅くまで居られないのが悔しいですが、三崎に一昨年できたゲストハウス「bed & breakfast ichi」に宿泊するのもお薦めです。

ここ最近、移住者が増えている三崎には、先輩移住者が開いた拠点がいくつもあり、「本と屯」や「bed & breakfast ichi」は、そんな拠点のひとつです。

いつも子どもから大人まで多くの人が集まり、コミュニケーションの中心となっている「本と屯」の軒先だからこそ、たくさんの人が足を運びたくなるのかもしれませんね。

身近な「ソト」から始まる、新しいコミュニケーションのかたち

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「ソト」と「ナカ」の中間。それが「軒先」

軒先という、気持ちが自然と解放される「ソト」に開かれたイベントだからこそ、三崎を訪れた「ソト」の人たちも立ち寄りやすく、気負わずにそのコミュニティに入ることができる。
「ソト」と「ナカ」の人がつながることで、いろんな人を巻き込んでいける。

どこにでもある身近な「ソト」と「ナカ」の中間である「軒先」だからこそ、町のコミュニケーションの中心になることができる。

そんなちょっと新しい「ソト」の使い方が、まちの可能性を広げていけると感じたひと時でした。

軒先や庭、身近なソトで自然を感じながら、大切な人と時間を過ごせば、きっともっと距離が近くなるはず。みなさんも、身近なところから「ソト」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

All photo by Miki Madarame

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