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すべての都市がパブリックライフの質を高めるためにできる20のこと

アメリカの都市・建築メディアのCurbedで「すべての都市がパブリックライフの質を高めるためにできる20のこと」という記事が公開され(2018年6月21日)、話題になっていたので翻訳・紹介します!

この記事は、都市デザインにかかわるアメリカの非営利団体「センター・フォー・アクティブデザイン」が発表したデザインガイドラインのポイントをまとめたものです。

アクティビティなどの面から語られ、注目が高まるパブリックライフ(Public Life)というコンセプトですが、この記事では日常における人々の信頼や選挙を通じた公共への参加といった側面からパブリックライフをとらえています。
そして、取り組むべきアクションを交通やストリートに関すること(提言1~4)、都市・地区レベルのこと(5、6)、スポットやプロジェクトレベルで取り組めること(7~20)にまとめています。

人々がパブリックに関わるためのデザインを考えるヒントが見つかるのではないでしょうか。

それでは以下、記事本文です!

都市はどのようにパブリックライフの質を高めることができるのか

健康増進のためのデザインソリューションの振興を図る非営利団体センター・フォー・アクティブデザイン (CfAD)とナイト財団は、公共領域に対する提言をアセンブリー・シビックデザイン・ガイドライン(*)にまとめました。
(*訳注:アセンブリーはCfADが行っている活動の名称。集合、集まりといった意味。)

樹を植える、公共交通を改善する、自転車レーンを増やすといったCfADの提言はありきたりのものに見えるかもしれません。しかし、この報告書はそれらを、しっかりとしたパブリックライフというひとつの目的に結びつけています。CfADは、しっかりとしたパブリックライフとは信頼や参加、責任、選択肢をより感じさせるものであると位置づけています。提言を裏付けるために、何年にもわたって調査がなされています。

CfADのパートナーシップ・ディレクターであるスザンヌ・ニーナバーは、

「最近、アメリカはますます二極化している場所になっているように感じられます」

とCurbedに語っています。

「人々は政府、企業、メディア、そして隣人さえも信用していません。アセンブリーでは、近隣地区のデザインと維持管理が信頼感に影響があるという実証的根拠を示しています。日常で体験するパブリックスペースに注目すると、地域レベルでの信頼の再構築をはじめることができるのです。」

CfADとナイト財団は都市デザインに対する科学的なアプローチをとって、緑化や案内板、よりよい維持管理が自治体に対する態度をよくするかどうか知るために、調査、現地踏査、データ分析、歴史調査を行いました。また、人々が市に対して悪い意見を抱いてしまうものも調査しました。たとえば、過度にごみが散らかっていると、コミュニティのプライドが10パーセント、警察への信頼が5パーセント、自治体への信頼が4パーセント低下します。

CfADはアセンブリー・シビックエンゲージメント・サーベイ(ACES)での発見を、アセンブリー・シビックデザイン・ガイドラインに反映しました。

「私たちの調査からとてもおもしろい発見が生まれました。比較的小さなデザインの変化で、市民がもつ印象が目に見えて変わるのです」

と、CfADの代表兼CEOのジョアンナ・フランクはCurbedに語ります。

「また、年齢、人口構成や社会経済的立場に関わらず、人々はデザインの変化に対して驚くほど似かよった反応を示すことをわかりました。」

この報告書の提言を実施することで、都市は住民に集団としてのアイデンティティを感じさせ、異なる社会経済的背景をもつ人々の交流ができるパブリックスペースの日常的な利用を促進し、公共のコミュニティスペースの世話人や支持者を生み、地域の選挙への参加を活発にすることができると、CfADは考えています。

ここで、都市が生活の質を高め、住民のつながりを強めるためにできる20のことがあります。報告書全体とすべての提言は、センター・フォー・アクティブデザインのウェブサイトからご覧ください

1.住民がコミュニティのどこでも歩ける包括的な歩行者ネットワークをつくる

なぜか:

「より歩きやすい地区に住む人々は、コミュニティの感覚と社会的なネットワークをより強く示す傾向があります。加えて、よく歩く人はほとんど歩かない人に比べて、より高い連帯感(4%分)と参加(6%分)の傾向があります。」

2.歩行者が快適になるようなベンチ、街路樹、照明といった歩道のアメニティをもうける

なぜか:

「調査によると、人々は通常、速度が速い複数車線道路の歩道が歩きやすいとは感じません。一方で、にぎやかなメインストリート沿いの快適で植樹された歩道は、歩行者を使いたい気にさせます。」

フィラデルフィアの交通のハブである30thストリート駅横のポケットパークThe Porchは、このアプローチの実例です。(cover Photo)

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ジョージア州ニュータウン・メイコンは世界最大のポップアップ自転車レーン網を導入し、1,000人以上の地域住民をプロセスに巻き込んで、恒久的な自転車インフラへの投資に結びつきました。Photo by NewTown Macon

3.安全で連続的な自転車レーンと関連する自転車インフラのネットワークを整備する

なぜか:

「公共交通にアクセスしにくいか、人々が車で通勤する場合、社会的なつながりが弱くなることを調査が示しています。」

4.公共交通のサービス頻度を増やし、信頼性を高め、停留所をより快適でアクセスしやすくすることで、システムを強化する

なぜか:

「投票所への長い移動距離と交通手段の不足は、どちらも低い投票率と関係しています。」

5.地区にわたって、また個別の建物の中で多様な利用のミックスができるよう区画する

なぜか:

「調査によると、公園と商店の徒歩圏に住む人々はより隣人に出会う機会があり、社会的なつながりと市民の信頼感が増すことが示されています。住宅、商業、レクリエーションの場をそれぞれ近くに配置することで(同じ建物の中や同じ土地区画の中であっても)、このような出会いを促進することができます。」

6.コミュニティ全体で経済的に多様な住宅を奨励する

なぜか:

「市場価格、低価格、そして補助金つき住宅のミックスは地区を安定化させ、人口特性的・経済的な一体化を助け、貧困が集中したエリアを減らすことができます。」

7.ごみを清掃し、収集・リサイクルを増やし、ストリートをきれいにし、ごみ・リサイクル容器を増やす

なぜか:

「ごみが散らかっていることは市民の信頼感の低下に関係しています。」

8.空地をきれいにして利用する

なぜか:

「ACES調査で、自宅の近くの空地にコミュニティーガーデンやパブリックアートがあると答えた人は、より高い信頼、参加、責任、および地域での投票行動を示しています。」

9.子どもたちのためにデザインする

なぜか:

「遊び場、スポーツ場、手洗場、および子供と家族のための設備がひどい状態にあると、市民の信頼感は低下する傾向にあります。一方で、子どものための設備の改善で、子どもを持たない人も含めてすべての住民の信頼を高めることができます。」

詳細はこちら

10.すべての新規開発や主要なリノベーションに樹木や緑のスペースを含めることを求める

なぜか:

「ボルチモアの調査で、樹木の密度が高い地区ではソーシャルキャピタルのレベルが高いことが分かりました。隣人たちの結びつきがより強く、より互いに信頼しているということです。」

11.既存のパブリックスペースおよび大規模住宅開発でコミュニティガーデンを奨励する

なぜか:

「コミュニティガーデンに参加している人は、していない人に比べて地域コミュニティに強い愛着を示しています。ガーデンは世代と文化をこえた関りの場にもなります。」

12.歴史的資産を保存し転用する

なぜか:

「歴史的建築物やパブリックスペース、地域のランドマークは場所につながっているという豊かな感覚を高めます。」

13.地域の食べ物を奨励する

なぜか:

「ファーマーズマーケットは地域の農業を助け、定期的なイベントは地域コミュニティの食事やレストランを取り上げることができます。多くのコミュニティは歴史的な食事処を地元の人と観光客の目的地として称えています。」加えて、食べ物指向のデザインは不公平と闘うこともできます

14.公共建物の“玄関先”を座席や照明、植物といった控えめな改善で変える

なぜか:

「このような要素は公共建物をより近づきやすく、歓迎しているように感じさせます。」

15.来訪者がパブリックスペースに入って利用したくなるようなポジティブなサインを設置する

なぜか:

「パブリックスペースのサインは、規則に集中してばかりではいけません。シャーロット市は地域の公園の規則に基づいた伝統的なサイン(たとえば“犬の放し飼い禁止”)を、楽しさや気まぐれの行動を誘発する‘できる’というポジティブなサインにしました。ACESにおける写真を使った実験は、これに触発されました。結果は、公園と屋外スペースにおけるポジティブなサインは、市民の信頼感を高めるということを示すものでした。」

16.案内を直感的にする

なぜか:

「効果的な道案内は訪問者のパブリックスペースと建物での移動を助け、パブリックライフへの参加を促進します。」

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シカゴ・リバーウォークの水辺の座席は、来訪者が川とまちの景色を見入る屋外の観客席を生み出しています。Photo by Ross Barney Architects / Kate Joyce Studios

17.公共の座席に投資する

なぜか:

「座席は広場をより‘訪れることができる’ものにし、利用者を空間に引き寄せます。高齢者のニーズにこたえ、コミュニティにおける移動を促進し、他者を観察してつながる場所をつくるため、ベンチは特に重要です。そのうえ、公共の座席は商店街のにぎわいにポジティブな影響があります。」

18.建物と公園を明るくする

なぜか:

ACES調査によると、よく照明された公園の利用者は自治体をより信頼し、地方選挙に参加し、近隣地区の世話人となり、パブリックライフにより参加するということが分かりました。壊れた照明は、地区の安全性への認識が20%低いことに関係していました。

19.投票所の外で選挙日のフェスティバルを開催する

なぜか:

「アメリカ全土の14のコミュニティの調査で、無料の食べ物と音楽を提供する選挙日のフェスティバルが、投票のためのより祝祭的で社会的な環境をつくり、高い投票率に結びついていることが分かりました。」

20.あまり活用されていないインフラを再利用する

なぜか:

「都市開発の歴史は、多くの都市に高架の高速道路や、鉄道、広大な工業地区、利用されない駐車場といった、課題となる物理的なバリアを残してきました。このようなバリアは、しばしば低所得の住民と有色人種のコミュニティに偏った負担をもたらしてきました。」

まとめ:なぜパブリックスペースのデザインが必要なのか

以上、翻訳記事の20のポイントはいかがだったでしょうか?

ひとつひとつの提言は一見目新しいものではないかもしれませんが、この記事で大事なのはそれぞれのデザインが「なぜ必要なのか」を示している点にあると、訳者は感じました。

そこには、デザインによって人々のつながりからなる「パブリック」をより充実したものにするという視点があります。

にぎわいを生む先にこういった価値もあることを意識してみると、より踏み込んでパブリックスペースとパブリックライフのことを考えられるのではないでしょうか。

ガイドラインの本文は英語ですが、豊富な事例写真と調査データ、デザインのチェックリストが掲載されているので、興味をもたれた方はぜひアクセスしてみてください!

Cover Photo by GGLO Design / ArtPlace
翻訳:田村康一郎

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