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【速報考察】地域再生法改正・閣議決定により日本版BIDの展開となるか|「地域再生エリアマネジメント負担金制度」創設へ

2018年2月6日、国会で、地域再生法の改正が閣議決定され、日本版BIDの展開が期待されます。

今回の地域再生法の改正について、まだ情報は少ないですが、日本のエリアマネジメントとパブリックスペースの可能性について、速報的な考察をしてみたいと思います。法律の解説になるので、専門的な記事になります。

※今回の速報考察は、閣議決定の公表された情報と、内閣府へのインタビューを元に、個人の見解で考察するものです。

エリアマネジメントの定義は、

「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取組」

出典:国土交通省 土地・水資源局「エリアマネジメント推進マニュアル」(2008)

です。

エリアマネジメントとパブリックスペースの関係は、個々のエリアマネジメント活動の取り組みの中で、道路や公園、水辺や広場、公開空地などの活用がありました。また、道路占用許可の特例や国家戦略特区などの規制緩和制度を用いることで、パブリックスペース活用をエリアマネジメントの財源確保としても期待されていました。他にも道路上などで広告を掲出するエリアマネジメント広告(例えば、東京都では屋外広告物条例の特例がある)や、広場や公園の維持管理を担う主体としてエリアマネジメント団体が期待され、指定管理者制度を用いて、指定管理者になる例などもあります。必ずしも主目的が財源確保ではなく、地域の中での取り組みの一つで、パブリックスペースはあります。

しかし、財源確保という観点では、パブリックスペース活用だけでは、必ずしもエリアマネジメントの財源としては不完全の場合が多く、アメリカのようにBID(Business Improvement District:ビジネス改善地区)制度を用いて、指定した区域内で、地権者の2/3の投票を得て、5年間BID税を区域内の受益者全員から徴収し、安定した財源を確保するという制度はありませんでした。現在の日本のエリアマネジメントは、任意の会費制度を中心としているため、単年度発想のため、中長期的な事業戦略を描けず、またフリーライダー問題(負担をせずにタダ乗りで便益を受ける)によって、地区内の安定財源確保と合意形成に課題がありました。

今回の地域再生法の改正によって、その点を打開することが狙いとしてあるようです。

地域再生エリアマネジメント負担金制度の創設

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上記の内閣府の公表資料のうち、「2.地域再生エリアマネジメント負担金制度の創設」を書き出すと、以下の通りです。

○海外のBID制度等を参考とし、市町村が、地域再生に資するエリアマネジメント活動に要する費用を、受益者から徴収し、エリアマネジメント団体に交付する官民連携の制度を創設
・・・地域の発意や受益者の2/3以上の同意を要件

○地域の賑わいの創出に寄与する施設(自転車駐輪施設、観光案内所等)を都市公園の占用許可対象に追加【第17条の10】

⇒フリーライダーの発生を防ぎ、安定的な活動財源を確保し、地域再生に資するエリアマネジメント活動を促進

目標:エリアマネジメント活動を行うものとして地域再生法等に基づき指定されているNPO法人等の数:5年後までに100団体

一つ目は、「地域再生エリアマネジメント負担金制度の創設」の大枠を指しており、エリアマネジメントの受益者負担金の制度が、受益者の2/3の同意が必要ということがわかります。また、フリーライダーを防ぎ、安定財源の確保を狙っているようです。

二つ目の都市公園の方は、都市公園法に具体的な記述がないので、地域再生法改正に記述されていますが、都市再生特別措置法改正と同様のようです。「地域再生エリアマネジメント負担金制度」自体は都市公園に限らず、道路や他のパブリックスペース全般に使えるようです。

内閣府へのインタビューによると、目標に記述されている、

地域再生法等に基づき指定されているNPO法人等

については、地域再生法に基づく、「地域再生推進法人」のほか、都市再生特別措置法に基づく「都市再生推進法人」、中心市街地活性化法に基づく、「中心市街地活性化機構」を想定しているようです。

制度の手続きの流れと概要:

内閣府へのインタビューによると、以下のような手続きフローが必要になるようです。2/3の事業者の同意と、市町村の議会承認が「地域来訪者等利便増進活動計画」と、「負担金条例」の中で必要になるところがポイントですね。

①市町村が国(内閣総理大臣)へ「地域再生計画」を申請
②国(内閣総理大臣)が「地域再生計画」を認定
③2/3以上の事業者・地権者の同意を得た上で、エリアマネジメント団体が市町村に「地域来訪者等利便増進活動計画」の申請(区域、活動内容、効果、受益者等を記載)
④市町村が議会承認を得た上で、「地域来訪者等利便増進活動計画」(5年以内)を認定
⑤市町村は新たに負担金条例を議会承認を経て制定(負担金の額の算定方法や、実際の徴収手続等を定める必要があり)
⑥事業者から「受益者負担金」を市町村が徴収
⑦市町村は交付金をエリアマネジメント団体へ交付する。
⑧エリアマネジメント団体が交付金を元にエリアマネジメント活動を実施する。

それでは、いくつか、ポイントや論点を条文を参照しながらみてみましょう。

対象地域:

地域再生法(第五条4項6号)をみると、

自然的経済的社会的条件からみて一体である地域であって当該地域の来訪者又は滞在者の増加により事業機会の増大又は収益性の向上が図られる事業を行う事業者が集積している地域

とあり、つまり商業地域を想定していること。住宅地は対象としていないことがわかります。

エリアマネジメント団体(法人):

地域再生法(第五条第4項6号)を見ると、

特定非営利活動法人等(特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人、一般社団法人若しくは一般財団法人その他の営利を目的としない法人又は地域再生の推進を図る活動を行うことを目的とする会社をいう。

とあり、法人格が必要で、特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人等の非営利法人や株式会社(地域再生の推進を図る活動を行うことを目的とする会社)が候補となるようで、任意団体の場合はいずれかの法人格を取得する必要がありますね。多様なエリアマネジメント団体の中で、一定のレベル感は求められます。

対象活動:

地域再生法(第五条4項6号イ及びロ)をみると、

イ:来訪者等の利便の増進に資する施設又は設備の整備又は管理に関する活動
ロ:来訪者等の増加を図るための広報又は行事の実施その他の活動

とあり、パブリックスペース活用に必要な施設(ベンチや椅子テーブル、プランターなど)の整備、管理や来訪者等の増加のための活動の広報やイベントなども対象と言えるでしょう。

地域来訪者等利便増進活動計画:

地域再生法(第十七条の七第2項及び第3項)を見ると、

2 地域来訪者等利便増進活動計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 地域来訪者等利便増進活動を実施する区域

二 地域来訪者等利便増進活動の目標

三 地域来訪者等利便増進活動の内容

四 地域来訪者等利便増進活動により事業者が受けると見込まれる利益の内容及び程度

五 前号の利益を受ける事業者の範囲

六 計画期間(五年を超えないものに限る。)

七 資金計画

八 その他内閣府令で定める事項

3 前項第七号の資金計画には、同項第五号の事業者(以下「受益事業者」という。)が負担することとなる負担金の額及び徴収方法の素案を添えなければならない。

地域来訪者等利便増進活動計画を作成する際に、記載内容が示されています。エリアマネジメント団体は上記事項を協議の上作成する必要があります。

「地域来訪者等利便増進活動を実施する区域」は、これまでのエリアマネジメントの多くの事例は、線引きをしていない団体も多いですが、今回は明確に 対象区域を線引きする必要があります。

「地域来訪者等利便増進活動により事業者が受けると見込まれる利益の内容及び程度」及び「利益を受ける事業者の範囲」をエリアマネジメント団体自ら定める必要があります。

「計画期間(五年を超えないものに限る。)」とありますので、最大5年ごとに計画を再作成・認定の手続きをする必要があります。

「資金計画」は、「利益を受ける事業者の範囲」の事業者(「受益事業者」)が負担することとなる負担金の額及び徴収方法の素案を添えなければならない。」とありますので、負担金の額や徴収方法はエリアマネジメント団体が関係者と協議の上、決める必要があります。

2/3以上の同意:

認定の申請をしようとする地域来訪者等利便増進活動実施団体は、当該地域来訪者等利便増進活動計画について、総受益事業者の三分の二以上であって、その負担することとなる負担金の合計額が総受益事業者の負担することとなる負担金の総額の三分の二以上となる受益事業者の同意を得なければならない。

総受益事業者の数だけでなく、負担金額も2/3である必要があるようです。

1/3以上で認定の取り消し

地域再生法(第17条の11)を見ると、

認定市町村の長は、受益事業者が、総受益事業者の三分の一を超え、又はその負担する負担金の合計額が総受益事業者の負担する負担金の総額(次条第二項において「負担金総額」という。)の三分の一を超える受益事業者の同意を得て、第十七条の七第八項の認定の取消しを請求したときは、当該認定を取り消さなければならない。

ということで、認定を取り消す権利も保障されていますね。

負担金の徴収:

地域再生法(第十七条の八)を見ると、

認定市町村は、認定地域来訪者等利便増進活動計画に基づき認定地域来訪者等利便増進活動実施団体が実施する地域来訪者等利便増進活動に必要な経費の財源に充てるため、当該地域来訪者等利便増進活動により受けると見込まれる利益の限度において、受益事業者から負担金を徴収することができる。

2 前項の場合において、その受益事業者の範囲並びに負担金の額及び徴収方法については、認定市町村の条例で定める。

とあり、エリアマネジメント団体が作成した「地域来訪者等利便増進活動計画」で、負担金に関する素案を作成するので、それに基づき、市町村が負担金条例を制定し、負担金を徴収するということになります。

受益者負担金制度:

ここで、受益者負担金制度について、触れますが、受益者負担金制度は、それぞれの法律で定めるもので、個別法があるわけではありません。今回は、地域再生法(第十七条の八)などで定められています。下水道などの公共インフラの整備などで、その財源が公共だけで難しい場合や受益者が明確な場合は、受益者負担金制度が成立します。

受益者は誰か:

ここで、受益者は誰なのかを、エリアマネジメント団体が「地域来訪者等利便増進活動計画」で定めることになりますが、「地域来訪者等利便増進活動により生ずる利益を受ける事業者」になります。具体的には、内閣府のインタビューによると、

地域の来訪者⼜は滞在者の利便の増進やその増加により経済効果の増進を図り、地域における就業機会の創出や経済基盤の強化に資する活動

の受益者は誰かというと、イベントやパブリックスペース活用などを行うことで、来訪者や滞在者が増えた時に受益を得るのは、「小売業者、サービス業者、不動産賃貸業者等」になります。ここで、地権者も商業地域では不動産賃貸業者である場合が多いので、地権者も該当すると考えられます。いずれも、エリアマネジメント団体が自分の地域での受益者の範囲を定めることになりますので、各地で議論していくことになりますね。

考察:

今回は、地域再生法改正の条文や資料を見ながら、「地域再生エリアマネジメント負担金制度」とはどのような制度なのかを速報的に解説しました。エリアマネジメント団体は、「地域来訪者等利便増進活動計画」の作成の中で、区域や受益者の範囲、負担金の額や徴収方法を定め、また市町村は議会承認による「地域来訪者等利便増進活動計画」の認定や負担金条例の制定などがあるので、第一号の事例が出るのは調査や協議などで時間がかかりそうです。

まずは、市町村が国へ「地域再生計画」を申請し、認定を受ける必要があるので、どこが最初に出てくるのかは注目です。また、エリアマネジメント団体と市町村が連携して作る必要があるので、公民連携で一緒に議論し取り組んでいく必要はあります。

また、受益者の範囲をエリアマネジメント団体が自ら定めるということで、商業・業務地区の他にも、観光庁の進めるDMO(Destination Marketing/Management Organization)や米国でその財源確保として導入されている、TID(Tourism Improvemnt District)も受益者を宿泊施設に限定するなどすれば、応用可能なのではないかと私は思います。

これまでのエリアマネジメントは多様化し、様々な形態がありますが、法人格を取得したエリアマネジメント団体になることと、2/3以上の受益者の同意を取り、地区内受益者全員からの負担金の徴収により、より活動に公的責任や成果が求められることになりそうです。また、1/3以上の反対者による認定取り消しもあることで、成果の上がっていない場合は、認定の取り消しなども起こる可能性がありますので、最大5年間は、緊張感のあるエリアマネジメント活動が求められてくるでしょう。

これに対して、エリアマネジメント活動や「地域来訪者等利便増進活動計画」の作成、受益者の同意を得るためにも、綿密な調査や効果測定、情報発信、アニュアルレポートの発行なども重要な論点になりそうです。「地域再生エリアマネジメント負担金制度」を活用することは、緊張感のある取り組みや苦労もあるかと思いますが、ポジティブに捉えれば、複数年度設計可能な安定財源の確保や、質の高いエリアマネジメント活動を行うきっかけとなりますね。

たくさんのエリアマネジメント団体が模索しながらも、この制度を使い、質の高いエリアマネジメントを行っていくことを望みます。

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