オープンイノベーションを仕掛ける裏側にある共通項とは。ミズベリングテーマ会議「水辺とオープンイノベーション」#イベントレポート

水辺のまちづくりや公共空間としての水辺活用を様々な視点から考えるため、毎回タイムリーなテーマを軸にその分野のスペシャリストをゲストに迎える「ミズベリングテーマ会議」。

第8回目となるテーマ会議が2月21日に「3×3 Lab Future」にて開催されました。今回のテーマは「オープンイノベーション」。実際のフィールドでオープンイノベーションを仕掛けるゲスト集まり、それぞれの実践からオープンイノベーションを生むための人や場の仕掛け方について展開したトーク。そこからは、オープンイノベーションの柱となる共通項がみえてきました。

オープンイノベーションってなに? オープンイノベーションを生むために必要な2つの要素

そもそもオープンイノベーションとは?オープニングアクトは、東京大学公共政策大学院特任教授・辻田昌弘先生による話題提供。

辻田先生曰く、オープンイノベーションとは「Think different=違いを考えること」。とはいえ、ゼロから新しく考えることはなかなか難しく、何かと何かを組み合わせる、しかもその組み合わせを全く異なる分野同士で組み合わせて生まれるものこそ「オープンイノベーション」であると話します。すなわちそれは「異種格闘技」。

しかし、大きな穴は日本の企業が、この「異種格闘技」が苦手だということ。その理由として辻田先生は、日本の企業はdiversity(=多様性)にかけているといいます。会社それぞれで独自の企業風土を持ち、横のコミュニケーションを取れない・取りたがらないという日本企業の特質がオープンイノベーションを生まない要因となっています。では、オープンイノベーションを生むには何が必要なのでしょうか?

オープンイノベーションに必要なこと1:つなぐ人(バウンダリースパナ―)とつなぐ場(プラットフォーム)
外部との連携をとらないが故に、同質性が高まりがちな日本の企業においても、外とつながろうと意欲のある人もいます。本来それがオープンイノベーションを生み出すキーマンなのですが、日本ではそれは「はみ出し者」としてレッテルを貼られ、邪見にされてしまいがち。そんな「はみ出し者」を大事にすることが大切であると辻田さんは話します。

そのために必要なのが、「はみ出し者」を「つなぐ人(バウンダリースパナ―)」と「つなぐ場(プラットフォーム)」だといいます。そう、まさにミズベリングも「つなぐ場」の役割を担っており、オープンイノベーションのひとつなのです。

オープンイノベーションに必要なこと2: ユルいつながりと共感・信頼
もう一つは、オープンイノベーションは、これまでの同質性の高い人たちが集まるいわゆる「群衆」の中では生まれず、点でゆるく繋がるところで生まれるということ。ただここで気を付けなければならないのが、そのユルいつながりは同時に個と個のつながりであるため、その先にで共感を得る・信頼関係を築くことが不可欠になってくると辻田先生は話します。オープンイノベーションを起こそうという人には、その共感や信頼を築く努力が求められるのです。

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そう今、巷を沸かせているApple+pen=Applepenもまさに異種格闘技。オープンイノベーションとはなにか、辻田先生の力説で笑いの渦に包まれる会場

目的を共有することで生まれるオープンイノベーション

辻田さんによるお話で会場が温まったところで、具体的なフィールドを持つ3名によるお話へ。まずは、ミズベリングテーマ会議が行われる会場「3×3 Lab Future」を拠点に大丸有エリアのまちづくり推進や、エコに関する調査研究・情報発信、各種イベントの開催などを行うエコッツェリア協会のプロジェクトマネージャー・田口真司さんのお話から。

大丸有エリアのフューチャーセンターとして、まさに辻田先生のお話であった「つなぐ場(プラットフォーム)」を運営する田口さんは、ヨーロッパ各都市のフューチャーセンターをまわり、そのノウハウを「3×3 Lab Future」で実践しています。その取り組みについて、誰でも関われる関係づくり、その関係で生まれるプロジェクト、そしてビジネスへと発展という3階層での展開がオープンイノベーションの過程において起きていると話します。

そんな田口さんがオープンイノベーションに必要不可欠なこととしてあげるのが「目的の共有化」。つまりは、共通の理念を持ち、よりよいものを作ろうという概念があるからこそ新しいものが生まれるのではないかということです。

また、これまでクローズドな体質であった組織のやり方は、最終的評価軸を売上金額など外部の評価に頼ることで、社員のモチベートとなりバランスがとれてきたのに対し、オープンイノベーションでは、その評価軸が内部に向くと話します。つまりプロジェクトに対する意思やポリシーといった部分でいかに共感できるかが問われてくるのです。

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エコッツェリア協会のプロジェクトマネージャー・田口真司さん。自身、ヨーロッパ各都市のフューチャーセンターをまわってこられた時の事例を紹介しながらオープンイノベーションの場づくりについて解説。

メンテナンス中の横浜西口、オープンイノベーションに向けた3つの仕掛け

続いては、相鉄アーバンクリエイツ・鳥畑智紀さんより横浜西口での取り組み紹介です。横浜西口は、ミズベリング横浜西口会議も開催しており、最近ではミズベリング横浜西口会議であげられたアイディアの実践も重ねながら、横浜西口の活性化に取り組んでいます。去年は一夜にして、砂浜「ハマプラージュ」を出現させるなど、そのダイナミックなアクションにも注目が寄せられています。

そもそも相鉄グループがこのような取り組みを始めたきっかけは、横浜西口の衰退でした。その課題解決方法の一つとして取り組み出したのがエリアマネジメント。現在、横浜西口にはエリアマネジメント組織として「横浜西口振興協議会」と「西口元気プロジェクト」の二つがあります。

この2団体は、活動の重複もあることから、組織を一本化し、より活動を加速させていくため新たなエリアマネジメント団体の発足に向け準備中とのことで、オープンイノベーションに向けた今後の活動として3つのコンテンツの紹介がありました。

1.アクセラレーションプログラムの実施
横浜西口のコア企業である相鉄・高島屋グループと周辺のベンチャー企業が持つノウハウ・機能・サービスなどのリソースを掛け合わせ、横浜西口活性化のための新規事業を検討するためのプログラム。その最終審査会となる「デモデイ」が3月30日に開催されるとのこと。公開プログラムなので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

2.エリマネ拠点の開設
フューチャーセンターとなる拠点づくりも準備中。まちの模型や、ミズベリング横浜西口ではキラーコンテンツとしても一役を買ってきた横浜西口をながれる帷子川水系の生物を集めたミニ水族館の設置などが予定されています。横浜西口の魅力の一つである水辺をフックにした、地域の交流・情報の集積拠点、エリアマネジメントの周知・参加促進の場として期待されます。

3.地域活性化サポーター
さらにこれらのエリアマネジメント活動に積極的に参加する人材の確保の仕組みづくりとして「地域活性化サポーター」の募集も始まるとのこと。「地域活性化サポーター」とは、外部の人材を活用し、企業人にない発想でまちづくりをしていくことで、「楽しいまち」をつくっていくことを目的とします。地元住民、商店主、学生、エリマネ・横浜が好きな人などの参加により、活動の幅が拡がっていくことを期待しているようです。

これまでの周辺企業や地域住民との連携を極力避けクローズドであったこれまでの古い企業体質など抜本的部分からの見直しを行い、今まさにメンテナンス段階にいる横浜西口、今後の動きに注目です。

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相鉄アーバンクリエイツ・鳥畑智紀さんより横浜西口の紹介

価値観を共有するための新たなコンテンツ『コンセプトブック』ってなに?

最後は民間のお二方とは異なり行政職員という違った視点から、横浜市都市デザイン室・桂有生さんより横浜市が新市庁舎建設に際し作成した『横浜市新市庁舎デザインコンセプトブック』(以下、『コンセプトブック』)についてのお話しです。

横浜市の都市デザイン室は、1960年代に横浜の中心部の再生・活性化のため実施された施策である6大事業をきっかけに、都市の課題解決だけでなく魅力を検討していく専門部署として1971年につくられました。そんな都市デザイン室について桂さんは、「価値観を共有し発信していく部署」であると話します。

さて現在、横浜市では2020年の新市庁舎完成を目指し議論がなされています。そんな横浜市が新市庁舎建設でとった手法が設計・施工を一括で発注する「デザインビルド方式」でした。つまりそれは、本来ならば市庁舎への想いなどを議論しながらつくられる基本設計を施行者に丸投げするということを意味しており、それではまずいと都市デザイン室で作ったのが『コンセプトブック』です。

『コンセプトブック』には、その場所への期待や歴史の読み込みなど、横浜の新市庁舎をつくるうえで大切にすべき理念がまとめられており、事業者はこの『コンセプトブック』をみてデザインしていくことが求められる仕組みとなっています。

『コンセプトブック』には、横浜の魅力である水辺の活用やみなとみらいと旧市街地の結節点としてのポテンシャル、さらに低層部における市民の利活用などへの期待がミッションとしてまとめられています。

このように『コンセプトブック』は、新市庁舎に対する価値観を共有のための指針として作成されました。桂さんは、『コンセプトブック』という新しい試みに対し、実際の発注段階での摺合せや発注者側の理解度など運用面での課題はまだあると話します。しかし、今回のデザインビルド方式の採用のように発注形式が変わっていくなかで、それに対応し「質」の話をするための拠り所となる『コンセプトブック』の存在は大きかったように思います。

桂さんは、新市庁舎建設について「新市庁舎をつくるということは新しい横浜をつくるということ」といいます。『コンセプトブック』は、新市庁舎建設というハード面での指針でしたが、今後は、運用・活用などソフト面の指針となる『マネジメントビジョン』などの作成も検討しているのだとか。

いろいろな人を巻き込み、あらゆるプログラムがうまれていくオープンイノベーションの時代だからこそ、みんなが価値観を共有し、同じ方向性のもと動いていける『コンセプトブック』のような大きな枠組みをつくるのが行政としての役割であり、このような取り組みは今後他都市への展開も期待されるところです。

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横浜市都市デザイン室の桂さんからは『横浜市新市庁舎デザインコンセプトブック』に関するお話しが。

場をつくる前に必要な助走期間

トークセッションでは、まずオープンイノベーションの場づくりに関する話題が。近年、フューチャーセンターのような場づくりが各都市で盛んになってきてはいますが、中には場所が先行してしまい、うまく運営が回らないという課題を抱える例をきくことも。場を継続させる努力ついて、実際にフューチャーセンターを運営する田口さんは、

「ひとことで言うと「助走期間」。助走(活動)期間中に別の伴走車がきて、また次の助走をうむという助走の繰り返しだと思う。活動しておいてから場をつくるのが本来の順番。ただ作ってしまったものは仕方がないので、流行っているものとコラボするとかいろんな人と連携し今から助走していくべきである」

とコメント。小さく始めた活動の重なりが次第にそこに求められるニーズを浮き彫りにさせ、場づくりへとつながっていくようです。
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社会貢献のためにできることを中心軸に物事を考える

話は次第にオープンイノベーションを仕掛ける人、いわゆる「はみ出し者」の話に展開。今回のゲストのなかで唯一プロパー社員としてのキャリアを貫く鳥畑さんにとってオープンイノベーションに対するモチベーションはなんだったのでしょうか。

「レールが引かれたところを歩くことが安全と思いながらも、集まっていると居心地がよく何も起こらない会社にふと疑問に思うことがあった。こころの奥底にある少し変えてみなければという反発心が起きてきた。」

と鳥畑さんのコメントを受け、ミズベリングプロデューサー山名清隆さんは

「王道を行く人たちと違う人にならなければいけないという強烈な危機感を持っていている人がいて、それがものすごいパワーになる」

とコメント。

つまりオープンイノベーションを仕掛ける人に共通するのは、組織の目標ではなく、社会貢献のためにできることを中心軸に物事を考えているということ。これについて辻田先生は、組織ではく外の人と話ができて、それを社内の文化に翻訳できる人がいることが大切だと話します。そう、これこそオープンイノベーションに必要とされる「つなぐ人(バウンダリースパナ―)」なのです。

さて、オープンイノベーションをキーワードに展開した今回のミズベリングテーマ会議。
個のエネルギーを起爆剤に、異分野同士の化学反応により起こるオープンイノベーション。その裏側には、仕掛ける人同士での、「都市を良くしたい」、「何とかしたい」といった想いなど、価値観の共有が柱としてあることが共通していました。ミズベリングもそんな個が集まる「つなぐ場」のひとつ。今後どんな化学反応が起きるのか楽しみなところです。

All Photos by ShihonaARAI

【イベント概要】
ミズベリング「水辺とオープンイノベーション」会議 第8回ミズベリングテーマ会議
日 時:2017年3月21日(火)19:00-21:30
会 場:3×3lab Future(東京都千代田区大手町1-1-2)
主 催:ミズベリング

【これまでのミズベリングテーマ会議レポート】
●ミズベリングテーマ会議「水辺広告の未来」
水辺は新たな広告メディアになりうるか?─ミズベリングテーマ会議#06「水辺広告の未来」 #レポート

●ミズベリングテーマ会議「水辺のアクティビティとタクティカル・アーバニズム」
大小のアクションを重ね築く新たなパブリックスペース活用──ミズベリングテーマ会議「水辺のアクティビティとタクティカル・アーバニズム」

●ミズベリングテーマ会議「初めてのエリマネ」
水辺からはじまるエリアマネジメントって? ミズベリングテーマ会議「初めてのエリマネ」
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荒井 詩穂那

荒井 詩穂那

ソトノバ副編集長/(株)首都圏総合計画研究所研究員/NPO法人・ハマのトウダイパークキャラバン実行委員会メンバー  神奈川県横浜市出身。行動派。現場派。学生時代は、近代における東京・大阪・横浜の公園計画や小広場空間の採用について研究。現在は、都市計画コンサルタントとして働く傍ら、休みの日には地元横浜で、公園等の活用プロジェクトを実施。