知っておきたいこれからのアーケード ~高松中央商店街をソト視点で歩く~

香川県高松市の中心市街地。
ここに日本一と呼ばれるアーケード・高松中央商店街はあります。市民の生活拠点でありながら、旅行ガイドブックにも載る一大名所でもあります。

途中3本の幹線道路を挟み続くアーケードの総延長は2.7㎞と日本最長のアーケードとしてだけでなく、最北端にある高松中央商店街のシンボルでもある高さ32mのクリスタルドームは、アーケード構造としても日本一を誇ります。

その中の一つ丸亀町商店街は、都市系のなかでは、その再開発事業スキームがこれからの自立した中心市街地の在り方として大いに注目されたのは有名な話としてご存知の方も多いのではないでしょうか。

そんな高松中央商店街を今回は、ソト視点で紹介していきます。

デザインの異なる複数の商店街がつくる時空的空間

高松中央商店街は丸亀町・南新町・田町・兵庫町・片原町西部/東部・ライオン通・常磐町の8つの商店街の総称でアーケードも商店街ごとに異なるデザインとなっています。

特に南北の軸となっている丸亀町・南新町・田町商店街は、再開発事業により再整備された都会的空間から昔からの雰囲気が残るローカルな空間へ変貌していきます。ただ歩いているだけで高松中央商店街の歴史をその街並みやスケールの時空的空間の変化から味わえるのです。

ここを歩いていて違和感を得たのが自転車通行について。一般的なアーケード街は、自転車の走行を禁止しているところが多いのに対し、丸亀町商店街を除く高松中央商店街では自転車通行が許されておりアーケード内を自転車も行き交います。(なかには曜日・時間帯により走行禁止としている商店街もあります。)

そんな市民にとって生活の拠点ともなっている高松中央商店街。ここからは、平成にはいってから再開発事業が進められ変貌を続ける丸亀町商店街に焦点をあててご紹介していきます。

田町商店街。香川県ゆかりのイラストが描かれたアーケードが特徴。


丸亀町商店街F街区


丸亀町商店街。再開発事業により生まれ変わり都会的な空間に。

時間によって異なる印象を与えるアーケード・丸亀町商店街

丸亀町商店街は、A~Gの7街区のうち現在までにA・B・C・Gの4街区で事業を完了しています。そこで最も特徴といえるのがアーケードの高さではないでしょうか。歩いていても、内部空間というよりはソトという開放的な感覚を得ます。

一般的にアーケードというと2~3層の部分で屋根がかかり、ストリートからはそれ以上の階のファサードが見えないのをイメージしますが、ここでは商業用途として利用されている低層階をまるまるアーケードで覆っているため低層部分のテナントはすべてストリートから伺えます。

またガラス屋根であるのも特徴で、一般的には日中でも電気がないと暗いアーケードも、ここは太陽の光が直接入ってくるため日中は太陽光を感じ、夜になると街灯や店舗からの照明が浮かび上がるといった同じアーケードでも時刻によって異なる印象を与えます。

丸亀町再開発の事業区域(出典:高松丸亀町商店街G街区ホームページより)


昼間の丸亀町商店街C街区。太陽光が入りソトを歩いている感覚。


夕暮れの丸亀町商店街A街区。街路樹のイルミネーションが際立ちます。

高松市中心市街地のノードとして市民が集まる丸亀町壱番街前ドーム広場

そんな丸亀町商店街を南から北へ上がっていくと最北端にあるのが丸亀町壱番街前ドーム広場です。3つの商店街の交差点に現れる広場は、大型ポスターその先にあるクリスタルドームがその空間にインパクトを与えます。

「Peace」と名付けられたモザイク模様のペーブメントが印象的なこの広場。デザインしたのは、現在この地を拠点に活動する現代アート作家・川島猛氏によるもの。商店街の手すりや壁画など彼によるアートが商店街を彩っています。

この広場は約500㎡とマルシェやコンサートなど多様なイベントが可能な規模を確保していますが、再開発前はわずか130㎡と小さなものでした。再開発事業での壁面後退で広場の拡張を実現しており、一部が民地となっています。実は、川島猛氏の広場のペーブメントは昔の広場の大きさで描かれており、広場を囲む壱番街の建物の2階のテラスからそこを見下ろすと昔の広場の大きさを伺うことができます。

広場は、地権者中心となって設立された「高松丸亀町まちづくり株式会社」(以下、まちづくり会社)によりマネジメントが行われており、多様な利用を可能とするため電源や音響の設備を備えるだけでなく、まちづくり会社がイベントのプロの職員を雇いフルサポートする体制をつくっています。

筆者が訪問したこの日はマーケットが行われていましたが、コンサート、お祭り、オープンカフェなど実際に多様な利用がなされているようで、高松市中心市街地のノードとして市民が集まる広場となっています。

丸亀町壱番街前ドーム広場。広場部分のペーブメントデザインは、川島猛氏によるもの


広場を囲む建物に電源などの設備が整います


上を見上げクリスタルドームには猪熊弦一郎氏のアート

再開発事業で生まれた二つの広場 ~丸亀町グリーン~

丸亀町の再開発事業のうち最も新しく竣工したのがG街区「丸亀町グリーン」です。丸亀町グリーンは、丸亀町商店街の南側の玄関口でありながら高松中央商店街の中心部に位置しており丸亀町商店街とその南に続く商店街をつなげる役目を担います。

アーケードの高さは18mと再開発前に比べ約2倍の高さとなり低層部分の商業施設を覆います。このアーケードは、東館・西館に分かれる低層部分の建物の屋根にかかっているため柱のないアーケードを実現しています。アーケードより低い位置には、2つの建物をつなぐ渡り廊下にもありますがアーケードが高い分その圧迫感もありません。

そして丸亀町グリーンの中心にあるのが「けやき広場」です。その名のとおり、けやきの木がシンボルとして広場の中心に植えられています。筆者が訪問したのは冬真っ只中ということもあり、葉がすべて散っていましたが、半屋外的空間で四季を感じられるのもいいですよね。

けやき広場には椅子とテーブルが置かれており、路面店のカフェスペースとして利用できます。さらに再開発事業では1階店舗へのオーニングの設置を義務付けておりただの壁面に温かみを与えます。

さらに丸亀町グリーンには低層部分の屋上に屋外広場「テラスガーデン」も。一般開放されており、暖かいシーズンは芝生の丘は子どもたちの遊び場として、夜にはガーデンの一角にあるレストランのテラス席として利用されているようです。

丸亀町グリーン南側エントランス。


けやき広場。真冬のこの季節、木の葉は落ちていますが、これはこれで季節を感じられます。

高松中央商店街からみるこれからのアーケード街への展望 ~さらなる日本一への可能性~

さて、ソトという切り口からみた高松中央商店街。アーケードの高さやデザインを工夫するだけで商店街と外部を自然と結び、これまで来る機会のなかった人をも呼び込むことを実現しています。またソトを感じられるアーケードは、時間・季節・天候が変わるたび異なる景色を与え、来るたびに新しい発見に出会うことができます。

シャッター商店街と呼ばれる商店街が増加する国内の地方都市。既存の空間だけで解決しようとするのではなく、広場整備やアーケードの改造など大胆なハード整備することで、もう一度行きたい商店街とすることができます。そしてその先にあるアーケード内でのパブリックライフが、そのまちの魅力を再確認できる場になるのではないでしょうか。

All photo by Shihona ARAI

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荒井 詩穂那

荒井 詩穂那

ソトノバ副編集長/(株)首都圏総合計画研究所研究員/NPO法人・ハマのトウダイパークキャラバン実行委員会メンバー  神奈川県横浜市出身。行動派。現場派。学生時代は、近代における東京・大阪・横浜の公園計画や小広場空間の採用について研究。現在は、都市計画コンサルタントとして働く傍ら、休みの日には地元横浜で、公園等の活用プロジェクトを実施。