水辺からはじまるエリアマネジメントって? ミズベリングテーマ会議「初めてのエリマネ」【イベントレポート】

日本全国の水辺を、次々と楽しい場所に変えているミズベリングプロジェクト。この水辺の活気を、次は地域全体へ広げていこう!ということから「ミズベリング×初めてのエリマネ」をテーマにした会議が催されましたのでレポートします!

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世界最高のまちにするというビジョンを掲げたNYCブルックリンの再生

まずは、ミズベリング・プロデューサーの山名清隆氏のNYCブルックリンの視察報告から!
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ブルックリンではいま、ウォーターフロントの土地価格が上昇しており、以前はさほど注目されていなかったエリアが大人気の場所へと変化してきているそうです。そのエリアには、マンハッタンの夜景が見えるマンションが建ち並び、リノベーションされたブリュワリーやアトリエなど、古き・新しきが融合したまちとして生まれ変わっているそうです。さらに、その魅力に惹かれ、全米各地から大手企業がブルックリンに拠点を置くまでに変化しました。

そしてなんとこの秋、ミズベリングでNYC視察旅行を行うことが発表されました! 誰でも参加可能とのことなので、詳細はミズベリングへ問い合わせてみてくださいね!

ミズベリストたちがいまさら聞けない「エリアマネジメント」とは?

さて、今回のミズベリングは「エリアマネジメント(以下、エリマネ)」がメインテーマ。なぜいま、エリマネがミズベリストたちの注目を集めているのでしょうか?

河川の空間は、基本的に誰でも使える空間です。けれど、河川中心にものごとを考えてきた結果、これまで日本では地域の人たちに使われない、もったいない空間として存在していました。

しかし、河川空間を使ったミズベリングプロジェクトによって、ここ数年、様々なコトが巻き起こっています。すると、水辺の賑わいがどんどん陸側はみでてくることがわかりました。ならば、地域と河川(水辺)がもっとつながったほうが楽しいはず! 水辺から更に周辺へとつなげていくためには、地域の合意やまちのマネジメントのことを知らないとね!ということで、今回のテーマが決まったそうです。

国土交通省河川環境課の田中里佳氏からも「河川空間はみんなのもの。誰でも使っていいというのが原則です」とお話しいただきました。

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それでは、法政大学の保井美樹教授による「エリアマネジメント入門講座」です!

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まずは、保井先生とエリアマネジメントが出会うきっかけになったバックグラウンドの紹介から。

保井先生がエリアマネジメント研究に行き着いた背景には、実は幼少期のご経験の影響があったそうです。保井先生のご実家は事業を営んでおり、先生はお祖父さんなどの背中を見ながら、「自分の家の発展と地域の発展、また、まちに暮らす人は同士はお互い様の関係で成り立っているんだ」ということを身近な感覚として捉えていたそう。

しかし、社会生活を振り返ると、その関係性はすっかり薄れてしまっているのが現状です。そこでもう一度、関係性を紡ぎ直さなければという思いから、保井先生は金融業界への就職を経て、都市計画を勉強するためにアメリカの大学院へ留学されたそうです。

保井先生がアメリカにお住まいの頃は、NYCにBID地区※がどんどん増え始めた時期だったそうです。それまで投資されず放置されていた場所が、安心安全で快適な場所に生まれ変わっていく様子を見ながら、保井先生が最も印象的だったのは、まちの中にそのまちの環境をケアしてくれる人たちがたくさんいるということでした。「まちをよくする」ということは、その小さなケアからはじまっているのだと感じたそうです。

※BID:Business Improvement Districtの略。1960年代以降、中心市街地活性化のための官民協力の取り組みとして、北米を中心に実施されてきた制度。地域内の地権者による共同負担金を原資に、担治安維持、清掃、公的施設の管理など行政が行うサービスや、行政のみでは得られにくいサービスを独自に地域に提供する。

エリアマネジメントがつくる社会資本関係

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エリアマネジメントとは、「地域の価値を維持・向上させ、また新たな地域価値を創造するために行われ、内発的で自律的に継続できる地域経営の仕組みづくり」のこと。でも実はこの『エリアマネジメント』という言葉、2005年に小林重敬先生によって命名された和製英語だそうです。みなさん知っていましたか? このように日本人にもわかりやすい名前が付けられたことで、広く知られるようになったのだそうです。

まちなかには、商店街や町内会など様々な主体が存在します。例えばイベントをやろうとした時、地域の様々な主体と連携しなければ大きな成功を生むことは難しいでしょう。そこで、合意形成など様々な役割を果たすのがエリマネ組織です。この組織が行政を含む様々なまちの主体をつなぎ、エリアとしてのビジョンを実現するために動きます。

地域のエリマネ推進組織が自ら、エリアの将来のために、従来の行政サービスに上乗せしたサービスを行うことで「新たな公共」をつくりだしていくことが重要だと保井先生は語ってくださいました。

水辺のような「公共空間」を使って稼ぐ!

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日本と海外のエリマネで大きな違いは、その資金源。日本の制度では、法律や条例に即して権利者がお金を出し合う強制力を持ち合わせていません。

そこで資金確保の手段として注目されているのが、水辺のような「公共空間」です。現在主流となっているのは、公共空間を使ったイベントや広告事業など収益性の高い事業でまちを活気づけ、そこで上がった収益を、収益性は低いもののまちにとっては必要不可欠な活動(防犯活動、清掃管理活動など)の費用に回すことで、地域全体のマネジメントを行うという動きだそうです。

これまでは収益事業を行うことが難しいといわれていた公共空間ですが、「公共空間を使って稼ぐ」ことが、自律的なエリアマネジメントに直結しているのです。

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エリアマネジメントは、まちづくりの新しいかたちです。行政が市民主体のまちづくりを主導するときには、「参加と協働」という言葉がよく使われます。

それに対し、エリマネでは「自立」することが重要である、と保井先生は語ってくださいました。地域を面的にとらえ、みんなの空間である公共空間であげた収益を使って地域課題を解決していく。この自律的なまちづくりの仕組みこそが、コミュニティの絆を深め、さらに地域の新しい価値につながっていくのだと感じました。保井先生の熱のこもったお話に、ミズべリストたちも、深く頷いていましたね!

海外のエリアマネジメントはどうなっているの?

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海外では、BIDやCID(Community Improvement District)などの組織が法律に基づき、行政ともタッグを組んで地域経営を行っています。地域に設立された民間団体が行政に変わって公共空間の管理を行うだけではなく、地域に求められる事業を行政サービスの上乗せとして行っているということがポイントです。

財源はどこから?というのが一番気になるところですが、主な収入源である地域に資産を持つ地権者から強制的に徴収される負担金をベースに、行政からの委託料のほか自主財源を確保するという仕組みになっています。その地域組織で何をやるのか、どのようにお金を使うのかを全て地域で決めるというから驚きです。

また、そこには必ず地区マネージャーが存在し、地域の声にあたる理事会で決めた事業を行います。このように、ルールとビジョンを実践できる組織によって、事業収入をエリアに還元する仕組みづくりを行うことが、エリアの継続的な発展につながるのです。 みんなで集まって話し合いをしつつ、同時にアクションを起こし始めるやり方は、ミズベリングにも通じるところがありそうです!

ミズベリング的、エリアマネジメントのあり方とは?

後半の座談会では、保井美樹・法政大学教授、山名清隆・ミズベリングプロデューサー、辻田昌弘・東京大学公共政策大学院特任教授、岩本唯史氏・水辺総研、そしてソトノバ編集長の泉山塁威が登壇しました。

保井(以下敬称略)「エリマネは関係部署を全部集めて、関係者の温度を合わせることからはじめます。そこに、生活者の生活感覚をのせていくことが大事です。」

辻田「 アメリカは人材が流動的なので、様々な職能を持った人たちが集まっています。日本は人材間の対話が足りないのではないかと思います。 縦割りではなく、組織を横断できる人材を育てることが必要だと思います。」

エリアとしてなにかを起こそうとするとき、特に公共空間においてなにかアクションを起こそうとするときには、関係各所を巻き込んでいく必要があります。それぞれの力を持ち寄って、みんなでひとつのビジョンに向かっていく推進力が求められています。

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泉山「僕は公共空間の中で、水辺が一番自由度が高いのではないかと思っています。川はまちを跨っており、見えないエリア性を感じます。」

岩本「たしかに川は、いろいろな公共空間を自分ごとするための入口として、ハードルが低いと感じます。そこから始まって、他の公共空間に波及していくといいと思います。」

参加者も巻き込んでのトークでは、水辺の特徴として、陸地と違って不動産開発が起こらないというポイントに注目が集まりました。そこに固有の権利者がいないからこそ、それぞれがリソースを持ち寄ってプロジェクトを起こしていける。そんな水辺ならではの可能性を感じました!

また、国土交通省河川環境課では、新たに「かわよろず」という相談窓口が設置されたそうです。水辺をもっと使いたい!という方はぜひ相談してみては?

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タクティカルに、動きながら考える

話題は都市計画の新たな概念として頭角を現わしつつある、タクティカルアーバニズムへ。

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泉山 「タクティカル=戦術的という意味。タクティカルアーバニズムとは、サブプライムローン危機以降 アメリカではじまった「つくりながら考える」というプロセス論のこと。」

山名「タクティカルアーバニズムはいわばゲリラ的方法論。名前が付けられることによって、若い人たちが、おれはタクティカルアーバニストだぜ、と堂々と言えるようになる。 やっちゃえ!というエネルギーをもっていることが大事だと思います。」

泉山によると、タクティカルアーバニズムは完全なゲリラ行為ではなく、きちんと許可を得て行った上でゲリラ的にやってみせること。山名氏の言葉を借りれば、それはまさに「公共空間におけるハプニング性」の演出でもあります。

また、ポイントは、専門家だけではなく、住民やアーティスト、様々な人が行動を起こしていけるということ。それはミズベリングが巻き起こしている水辺ムーブメントにも共通しています。

組織的価値観からの逸脱者がいるからこそ、エリマネが実現できる?!

この会議には、全国からまちのマネジメントに関わる方々が集まっていたため、参加者側からも重要なキーワードがたくさん出てきました!それを受け、山名氏からはこんな言葉が。

山名「実は、今日ここにいるひとたちは、みんな組織のセンターからちょっとずれてる人たち、いわゆる『逸脱者』なんじゃないかと思っています。組織の価値観から外れたひとたちがいるから、時代の先端を切ってエリマネが実現できるのではないかと。」

保井「山名さんの逸脱者という言葉は、私の言葉では『生活者』と読みかえられると思っています。みなさんが生活者として持っている総合力、お財布管理力、井戸端会議力というものを忘れないで、それぞれの仕事場に戻ってもらえたらすごく大きな力になるのではと思います。」

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プレーヤーでありマネージャーである人たちは、組織から良い意味で逸脱している! その逸脱した感覚を持っている人が、時代の先端を切り開いていっているのでは、という言葉で、会場全体の温度が上がったように感じました。

水辺でも、まちなかのエリアマネジメントでも共通するのは「やるひと(プレーヤー・マネージャー等)」と「それを許す人(協議会等)」の両方が存在していること。組織に属していながらも、生活者としての感覚やエリアにとって本当に必要なものを嗅ぎ分ける嗅覚と実行力が、エリマネに必要な力のひとつであるといえるかもしれません。

終了後は、懇親会で、ミズベリストとエリマネリストが交流をしました。
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次回のミズベリングテーマ会議は、7月12日(火)「水上アクティビティとタクティカルアーバニズム」。 加速するミズベリングから目が離せません!次回もお楽しみに!

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photo by 三谷繭子

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三谷 繭子

三谷 繭子

ソトノバ副編集長/Groove Designs/修士(デザイン学)/広島県福山市出身 パブリックスペースを媒介としてまちなかで様々な人が居場所を感じられる場と魅力ある都市空間をつくりだすため、地域支援やプレイスメイキングの実践を行う。地元孝行プロジェクト「備後のギフト」事務局。