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世界と日本のプレイスメイキングの現在地!TUJスピンオフ横浜 中編

1月23日に横浜市と共催で開催した「横浜と世界のパブリックスペース活用Tactical Urbanism Japanスピンオフ」について、中編ではソトノバ代表の泉山塁威さん、UR中山靖史さんの発表をお伝えします。どちらも日本での取り組みを軸に、世界の事例や実践方法と比較しながら考察を加えており、日本のパブリックスペース活用の将来について考えさせられるものでした。


(前編はこちら)

パブリックスペースをとりまく世界的ムーブメント

4番目のスピーカーは、ソトノバ共同代表理事であり東京大学先端科学技術研究センター助教の泉山塁威さん。2019年11月にマレーシアで開催されたPlacemaker Week ASEANの参加報告と同年12月にソトノバが日本で開催したTactical Urbanism Japan (TUJ)の報告をしました。

昨今、世界中で広がりを見せるプレイスメイキング(Placemaking)ですが、Placemaking Week(Placemaker Weekの名称はアセアン(マレーシア)のみ)のイベントは、アメリカ、インド、スペイン、オーストラリア、中国で開催されています。そして昨年のPlacemaker Week ASEANの会場はマレーシアでした。マレーシアを訪れたときに泉山さんが抱いたソトの感想の中で、宗教上の理由などで屋外はノンアルコールのビアガーデンで賑わっていたり、世界遺産のペナン島のジョージタウンではアーティストのミューラル(壁画)やアンブレラスカイなどすぐできるアクションをたくさん見かけたとのこと。日本では時間をかけて社会実験を行うことが多くありますが、海外では即効性のあるプレイスメイキングが多く実践されている印象でした。

PB034647-2ノンアルコールで楽しむビアガーデンのような場(FOOD TRACK PARK “TAPAK” URBAN STREET DINING:マレーシア・クアラルンプール) Photo by Rui IZUMIYAMA
マレーシア・ペナン島・ジョージタウンにあるアンブレラスカイ Photo by Rui IZUMIYAMA

Placemaker Weekのプログラムは2019年11月4日から9日の1週間、マレーシアのクアラルンプールとペナンを会場にしており、ヨーロッパやアメリカ、東南アジア、南アジア、日本など世界中のプレイスメイキングの実践者が集まり、シンポジウム、プレイス・ゲーム(Place Game)、ワールドカフェ、ミニセッションなどを行いました。また、アメリカのプレイスメイキングNPO団体・PPS (Project for Public Spaces)のシンシア氏の講義や、PlacemakingXとしてプレイスメイキングの世界ムーブメントを展開するイーサン・ケント氏との再会もあり、貴重な体験だったとのことです。

Placemaker Week ASEANでの経験を日本で活かす

泉山さんは発表のなかで、ペナン島で実施したプレイス・ゲーム(Place Game)の紹介をされました。方法は、参加者が統一された評価シートを持ってまちあるきをして、評価シートの項目に沿ってGood(良い)~Poor(悪い)で評価を行うというもの。(ソトノバの「Project for Public Spacesが提唱するプレイスメイキングの5つのステップ」でも紹介しています)日本のまちあるきでは、ワークショップやKJ法で意見をまとめることが多いですが、個々人の思い付きの発言になりやすい一方で、

プレイス・ゲームは、全員が同じ評価項目を用いることで共通の議論ができる利点がある

と泉山さんは指摘しました。また、項目ごとの質問がシンプルであることから、専門知識のない地域の人を巻き込みやすい特徴があります。

さて、今回のPlacemaker Weekの参加者との議論を通してプレイスメイキングの意味を再考すると、プレイスメイキングの情報発信をしているアメリカのPlacemakingXは

「プレイスメイキングとは、コミュニティ中心にパブリックスペースを再考し、改革するために人々が一緒に集まり描く共通の理念である」

という定義しています。

日本では「場づくり」と一言で表現されてしまうこともあり、より手法やプロセスに注目する必要がある

と泉山さんは言及していました。さらに、

日本では世界のプレイスメイキングとの乖離が起きているのではないか

と問題提起もあり、グローバルな知識共有や交流に日本も加わっていく必要があると発言されました。

20200123-190720マレーシアのPlacemaker Week ASEANで経験したPlace Gameを説明する泉山さん

Tactical Urbanism Japanで本場の思考を学ぶ

次に、2019年11月から12月にかけてソトノバが実施したタクティカル・アーバニズムジャパン(Tactical Urbanism Japan、以下、TUJ)について。

2015年にマイク・ライドンさんとアンソニー・ガルシアさん(愛称トニーさん)の共著で「Tactical Urbanism: Short-term Action for Long-term Change」が出版されていますが、彼らはタクティカル・アーバニズムのことを

「意図的に長期的な変化を引き起こす短期的で低コストかつ測定可能なプロジェクトを用いたコミュニティ形成のアプローチ」

と定義しています。日本は社会実験が1日や1カ月のイベントで終わってしまうのに対して、段階的な実験を重ねて、政策や空間整備につなげることが特徴です。

タクティカル・アーバニズムジャパンでは、プレイベントとして11月にウェビナー(web講義)でマイクさんのビデオ講義と国土交通省道路局・都市局やミズベリングを招待してのオープントーク。12月9日から13日にかけては、東京大学の研究者と、マイクさん、トニーさんなどが議論する「アカデミックサロン」。ペチャクチャナイトの出演。マスタークラスは実践形式の1日研修など盛りだくさんの企画がありました。

企画の一部を見てみると、ペチャクチャナイトでは国内9人のタクティカル・アーバニズムの実践者がプレゼンを行い、マイクさん、トニーさんが日本の事例が彼らにどう映っているかフィードバックをしてくれました。国際シンポジウムでは国土交通省道路局長の池田さんから最新の道路活用の動きを教えてもらい、神戸や御堂筋、日本橋の事例なども聞きながらディスカッションを実施。マスタークラスは公募で集まった12人の参加者が研修に参加しました。マイクさん、トニーさんからは実践手法についてレクチャをしてもらいました。

TUJを実施した泉山さんの気づきとしては、タクティカル・アーバニズムについて実際にマイクさん、トニーさんのレクチャーを通して理解が深まったとのこと。タクティカルとは「戦術」という意味ですが、彼らはタクティカル・アーバニズムの手法は、都市計画やハード整備を見据えてアクションしていることを重視していました。また、日本ではイベント的に実施することが多いものの、単発で終わってしまうのではなく、1カ月、1年というように、長期の実験や検証につなげていくのが理想的だと泉山さんは指摘されました。さらに、マスタークラスで実践した48frameという手法は、課題のから対応方法を網羅しており論理的に考察するもので、日本でも導入できる内容だと仰っていました。

泉山さんからは最後に、日本でもPlacemaking Weekの開催を計画しているとの発表がありました。協力者を募集しているようです!

マレーシアのPlacemaker weekには私も参加しましたが、参加者同士が国を越えた交流や情報交換に非常に熱心で、1週間のプログラムを通してプレイスメイキング実践者とのネットワークが一気に広がりました。TUJも提唱者の2人から実践手法が学べる研修もあったとのこと非常に貴重な機会だと思います。実務に関心のある人は積極的に活用できる機会なので今後も注目ですね。

UR流、日本のプレイスメイキング

5番目のスピーカーはUR(都市再生機構)の中山靖史さん。URは200を越える日本各地で都市再生を実施しており、2004に独立行政法人化、横浜に本社を構えています。URは2019年11月15日に「居心地がよく、使われる公共空間をつくるために~プレイスメイキングから考えるまちづくり」の中間とりまとめをプレスリリースしましたが、これは3年前からUR内で始めたプレイスメイキングについての勉強会の内容をまとめ、UR職員が作成したものです。

URがプレイスメイキングに取り組む理由は、人口増・経済成長期につくってきたパブリックスペースが、人口減少時代では規模、耐久性、密度の変化によって十分に機能しなくなってきているという問題意識に対して、既存のパブリックスペースや建物を現在どのように活用できるかと考えているためです。

職員が抱いていた、都市の共有財産である「公共的空間」をもっと楽しく、誰もが時間を過ごせる空間にアップデートするべきでは、という想いから始まりました。今回リリースした中間取りまとめは、有識者による検討会の一連の議論や考察をふまえ、プレイスメイキングの考え方や手法を体系化したもの。

内容はプレイスメイキングを理論編、実践編、(都市部に適用する)展開編に分けています。まだ内容は仮説的であることから、今後実践を通して検証していくようですが、方法論に落とし込むことで、誰が実践しても一定のレベルに達するようになるという展望もあります。

20200123-192810URがパブリックスペースやプレイスメイキングに取り組む意義を説明する中山さん

中間取りまとめの要点を一気に紹介!

発表では、中山さんが中間取りまとめの要点をご紹介されました。まず、理論編では、URの問題意識やパブリックスペースを取り上げる理由について整理しています。あくまでもプレイスメイキングは手法であるため、最終的には他者とのかかわり、つまり人々のパブリックライフを実現することで、人々の暮らしが豊かになることを目指しています。

実践編ではプレイスメイキングの進め方を整理しており、一気につくらず実践と検証を通して改善していくLQC(Lighter Quicker Cheaper:手軽に、素早く、安価に)に言及しています。手順はPPSのまとめをアレンジして、7つのステップと17の実践ポイントをUR流にまとめています。ここで、検討会の座長をされた筑波大学・渡和由さんの言葉を中心に議論の過程で中山さんが印象に残っていることを紹介しました。

椅子ひとつでプレイスメイキングができる

一つ目は、椅子ひとつでプレイスメイキングができること。アメリカ、ニューヨークではブライアントパークで可動椅子を並べて人々が思い思いの空間をつくるように、椅子は自分の居心地のよい場をカスタマイズすることができます。一方、日本らしい自由な空間づくりという意味では、縁側を発想しました。

空間のギャップをうみだし、境界を曖昧にすることが魅力的な場所をつくりだせる

二つ目は、空間のギャップをうみだし、境界を曖昧にすることが魅力的な場所をつくりだせるということ。建物の一階など、公私の境界が曖昧なところで新しい活動が生まれ、パブリックな空間での滞留をつくりだせるという点です。

無料ゾーンと有料ゾーンを組み合わせる

三つ目は経済的な持続性で、有料ゾーンを設置する方法がありますが、無料ゾーンと有料ゾーンを組み合わせることで両方を行き来したり滞留するといった相互作用も生まれます。

実践編では、

「どのような規模の都市も、最低10か所の目的地が連続的に近接しているべきであり、各目的地はより小さな10の場所によって構成されるべきである。」

というPPSのPower of 10+を引用して日本の視点で整理したり、行政と実践していくためのヒントについても言及しています。

発表の締めにあたり中山さんは、居心地の良い空間づくりはビジネスコンテンツとしても有効であり、ボランティアではなく事業者が自分ゴトで実践するためのインセンティブとして、経済的な持続性を担保することも重要だというメッセージで締めくくられました。

中山さんのお話では、日本の都市発展を支えてきたURが現在は既存のパブリックスペースの利活用について体系的な整理を行い、実践しようとしていることを知ることができました。この動きについては行政や民間企業も大いに注目していると思います。中山さんのご説明には力強いメッセージも含まれていて、今後の活動に勇気をもらった人も多かったのではないでしょうか。

20200123-192405-2URの取り組みについて説明される中山さん、今回リリースされた中間取りまとめはVo.1で今後も更新していく予定とのこと

中編のレポートはいかがでしたでしょうか。

泉山さんと中山さんのお話から、世界のパブリックスペース活用のなかでの日本の立ち位置や現状をを知ることができました。

前編でもお伝えしたように、日本のパブリックスペース活用も知見やノウハウが深化していますが、世界でも大きなムーブメントがあり、実践者たちが国境を越えてコミュニケーションをとっています。日本にいる私たちも視野を広げ、世界と積極的に情報交換を行うことで、日本のパブリックスペース活用をより発展させていけるのではと感じました。

後編では、お2人が話した内容について、参加者が抱いた質問に対する答えも聞くことができました。ぜひ続きをご覧ください!

Photo by Takahisa Yamashita

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