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公共空間活用の手引きでパブリックスペースを使いやすく!TUJスピンオフ横浜 前編

2020年も注目が高まるパブリックスペース活用。これまでの法改正による規制緩和を契機に日本全国での実践が積み重なり、先進的な取組みを行う行政も注目を集めています。一方、世界のトレンドを見てみるとプレイスメイキング(Placemaking)やタクティカル・アーバニズム(Tactical Urbanism)という名称で世界的なムーブメントが起こっており、知見やノウハウも共有されています。

そこで、1月23日にソトノバでは初の試みである行政との共同企画として、横浜市と共催で「横浜と世界のパブリックスペース活用Tactical Urbanism Japanスピンオフ」を開催しました。前編は、横浜市政策局共創推進課の森脇美也子さん、同市環境創造局公園緑地管理課の今村隆さん、横浜国立大学の野原卓さんが話されました。その内容を報告します!


横浜市民と共創するパブリックスペース活用の仕組みづくり

最初のスピーカーは横浜市政策局共創推進課の森脇さん。テーマは横浜市におけるパブリックスペース活用の取組みと横浜市が策定した「公共空間活用の手引き」について。

人口減少や高齢社会の到来で財政が厳しくなり、郊外の活性化や地域コミュニティの維持が必要とされているなか、横浜市では多様なパブリックスペース活用を実践しながら地域課題の解決を目指しています。

たとえば、道路の活用事例として、日本大通りでは、沿道の店舗や事業所を含む有志で「日本大通り活性化委員会」を組織し、横浜市とともに2005年よりオープンカフェを設置したり、関内さくら通りを中心に、アーツ・コミッション・ヨコハマなどと共催で道路や周辺ビルの屋上を利用してクリエイターとのワークショップを楽しめるパークフェス「関内外OPEN!」を2016年より実施しています。

このような事例を庁内横断プロジェクトの中で共有しながら、まちの魅力向上や管理費縮減、新たな歳入確保等を目指し、公民連携によるパブリックスペース活用に取り組んでいるところです。

20200123-180920-4横浜市のパブリックスペース活用について紹介する森脇さん

横浜市での新しい取組み

森脇さんからは、その他、庁内横断プロジェクトでの取組みの紹介もありました。2017年度に都心臨海部の複数のパブリックスペースを面的に活用する「持続可能なまちづくりに向けたモデル事業」を募集し、2018年度にナイトドッグランを含む5つの提案が実現しました。

モデル事業への参加事業者から「横浜市のパブリックスペースは魅力的だが手続きが分かりにくい」という意見をいただいたことをきっかけに、許認可手続きに関する窓口や手続フロー、取組み事例などの内容を盛り込んだ「公共空間活用の手引き」がつくられました。

20200123-200901「公共空間活用の手引き」を掲げる西田司さん(右)

公共空間活用の手引きは横浜市のウェブサイトでダウンロードできます。

最後に、地域の課題解決やイノベーションの創出等につながる連携を進めるための、民間事業者や地域団体向けの調整窓口(共創フロント)の紹介もありました。ウェブサイトを通じて、24時間いつでも提案を送れる仕組みになっています。

具体的な事例や庁内連携の取組み内容など、パブリックスペースの活用において先進的な横浜市の考えを知ることができました!

横浜市の公園活用における公民連携

2番目のスピーカーは横浜市環境創造局公園緑地管理課の今村さん。テーマは「横浜市の公園における公民連携の動き」について。

20200123-182311横浜市の公園の利活用について紹介される今村さん

2019年9月に策定されたばかりの基本方針は、公民連携の取組みを進めるための基本的な考え方や具体的な取組等を示したもの。これからの公園行政のあり方、公民連携の基本理念、取組みを進めていくにあたって配慮事項等を示した行動5原則と、パークマネジメントプランの策定や公民連携推進の仕組みの整備といった5つの具体的な取組みなどが書かれています。

公園ではこれまでも、身近な公園における日常のきめ細かな維持管理を担う公園愛護会の取組みや指定管理者制度、山下公園レストハウスの運営やアメリカ山公園の便益施設の運営における設置管理許可制度の活用など、市として、公民連携の取組みを進めてきましたが、近年の人口減少、超高齢社会の進展により、公園で清掃等の活動を行う担い手の減少、社会情勢の変化による地域課題や公園に求められるニーズの多様化が顕在化しています。

また、国の動きとして、都市公園法の改正により「Park-PFI」が創設され、都市公園における公民連携の推進やストックの活用が明示されました。

このような状況の中で、優れたノウハウやアイデアを持った多様な主体とこれまで以上に連携し、今までの取組みの更なる充実や、新たな取組の展開を進めることを目指し、当方針を策定したとのことです。

横浜で動き出したPark-PFI

今村さんからは、2017年の都市公園法の改正を契機に動き出した、横浜市のPark-PFIの事例紹介もありました。Park-PFI(公募設置管理制度)とは、飲食店、売店等の公園利用者の利便の向上に資する収益施設(公募対象公園施設)の設置と、当該施設から生ずる収益を活用してその周辺の園路、広場等の一般の公園利用者が利用できる施設(特定公園施設)の整備・改修等を一体的に行う民間事業者を公募により選定する制度です。民間事業者にとっては、建物の建蔽率の緩和や設置管理許可期間が20年までに延長できるといったメリットがあります。同市では初めてPark-PFIが導入されたフォレストアドベンチャーで樹林を楽しむアスレチック施設が2019年9月にオープンしました。

また、都心臨海部の公園では公園の魅力アップと市民の健康づくりを目的としたヨガ等を行う事業者の公募試行的に実施していて、従来の行為許可の基準の一部を緩和し、民間事業者等が単独で行為許可申請できることや、実施回数の制限を緩和することができるようになっています。なお、公益性の担保という観点から、今回実施予定のヨガ等に参加しない人にとってもヨガ等のメリットを受けられるよう、提案内容の条件として、ヨガ等の実施とともに公園の魅力アップに資する行為を提案内容の条件の一つとして盛り込まれているようです。

さいごに、2020年1月に記者発表された公民連携による公園利活用に関する窓口Park-PPP※ Yokohama(略称:P×P)」について報告がありました。冒頭に説明のあった基本方針にもとづき、開設されたもので、共創フロントとも連携しているとのこと。P×Pは、各公園の利活用に関する公募情報等を発信したり、基本方針を踏まえた民間事業者等からの相談・提案を受け止め、一元的に関係部署及び提案者と検討・調整する役割を持っています。

発表のなかで、公園では、生活に必要な食品や日用品を販売する店舗が近くにない高齢者等の買い物困難者に対する支援を目的として、地域と民間事業者の連携による

移動販売を行っていて、地域の課題解決の役割を担っているというお話もありました。市民をはじめ民間事業者等の多様な主体による活発な公園利活用の動きは方針策定も相まって一層活発に進みそうですね。

※Park-PPP とは、Park-Public・Private・Partnershipの略。

レガシーを有する横浜市のパブリックスペースの可能性

3番目のスピーカーは横浜国立大学准教授、野原さん。

横浜市の都市美対策審議会や創造界隈形成推進委員会でも関わっている立場から、横浜市のパブリックスペースの魅力について話されました。

20200123-184512大学での研究や市との共同を通じて横浜市に関わりの深い野原さん

野原さんによると、横浜はレガシーを有するまち。戦後から1960年以降にかけて復興が進む過程で市民が早くからパブリックスペースの不足に気づき、活動が始まるとともに、市としては都市デザイン室(現・都市整備局。当初は企画調整局内)が1970年代から人間的なまちづくりを提起し、歩行者空間、自然、地形、オープンスペース、緑、コミュニティという要素を含めたまちづくりを検討してきました。横浜市を地図で見てみると、海とまちを繋ぐ動線上に公園・道路・港湾緑地など異なるパブリックスペースが点在しており、緑の軸線を形成しています。まちから海へ歩くことができる都市空間を有するアーバンデザイン、これはまさに都市の遺産といえます。

パブリックスペースのマネジメントを類型化!

先進的な都市デザインを取り入れてきた横浜ですが、日本の他の都市と同様に、これまでつくられた都市空間をどのように使いこなすかという課題に直面しています。そこで、野原さんは横浜市にある既存開発を活かす5つのタイプのパブリックスペースマネジメントを提起しました。

①アップデート型

まず、①のアップデート型は元町商店街がその一例で、戦後に商店街組織(元町SS会)ができ、狭い空間でも豊かな空間をつくる工夫をしています。当初は道路を広げず1階の建物をセットバックすることで歩行者空間を確保し、1985年には通りを一方通行化、2004年には店舗の敷地内の舗装と歩道やストリートファニチュアのデザインを統一し、道路空間を広く確保することができています。商店街組織が行政と協力しながら、空間を常にアップデートしています。

②ハード・ソフト一体型

②ハード・ソフト一体型は、「ひろばみち」という広場とみちが一体化するというコンセプトの日本大通りが挙げられます。イチョウ並木を挟んで両側に歩道を設置し、片側でオープンカフェを設置しても反対側は通行できるといった特長があります。また、奥の海側が見えるように周辺機器を隠し、景観配慮も欠かせません。日本大通りではもともと地元組織がなかったため、委員会(日本大通り活性化委員会)を立ち上げて地元の人々自身がハードとソフト両方の面で工夫や仕組みづくりをしています。

③コア&プレイス型

③コア&プレイス型は、港湾緑地に位置付けられている象の鼻パーク・テラス。広場空間の前面に活動拠点となる建物があり、連続性のある空間構成が魅力です。また、単に場所を使うのではなく、設立10周年の際には未来のパブリックスペースのあり方を考える100のアイデアを募集し、実践しました。

④ローカルハイブリッド型

④ローカルハイブリッド型は、保土ヶ谷駅前公園で、一日限定の防災活動を実施しました。テントを張って炊き出しもするなど、通常の公園では規制されることを、地域組織である公園愛護会と外部組織であるNPO法人の協働で実現しました。地域の組織と外の力をかりながらハイブリッドして、地域とともに場づくりを行うという動きです。

⑤巻き込み型

⑤巻き込み型は、森脇さんも紹介された道路のパークフェス。すでに4年目を迎え、これまで関内さくら通りでのピクニックや、オープンウエディングを行いました。イベントにはクリエイターが多く参加しており、特に沿道のビルの店舗なども巻き込んでいる特徴があります。

最後に、野原さんからは2つの重要な考え方についてお話がありました。

整備×管理×利活用のスパイラルアップサイクル

一つは、パブリックスペースの活用を、整備×管理×利活用のスパイラルアップサイクルとしてまわしていくこと。人々の活動のなかで空間のあり方を考え、活動を定着させたり、見える化するためには、その場所のみではなく周りの空間をどのように生かすかが大事ということです。

使えば使うほど味が出てくる都市空間の活かしかた

もう一つは、時間の経過に伴い物の価値が下がると考えられてきたものが、使えば使うほど味が出てくるような都市空間の活かし方が必要だということでした。

20200123-184700パブリックスペースのマネジメントを類型化を語る野原さん

温故知新の精神が生きる横浜市のまちづくり

いかがでしたでしょうか。

横浜市の都市計画や市民参加の歴史は古く、都市の随所に人々の活動を誘発するパブリックスペースがあり、工夫がされていることは興味深かったです。こういった蓄積があったからこそ、手引きの作成にも至ったのだと思います。野原さんの5つのマネジメント手法も、他の地域に照らし合わせてみるといろいろな発見ができそうですね。

前編は横浜市の政策紹介やパブリックスペースの取組みについてでした。中編は、日本と世界のパブリックスペースについてのお話、そして後編ではオープントークの内容をレポートします。お楽しみに。

Photo by Takahisa Yamashita

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