ストリート|道路空間
ソト事例
車両規制なしでの居場所づくりの挑戦!Park(ing)Day2021神田 実践のレポート
2017年から、ソトノバで毎年開催しているPark(ing)Day!
ソトノバではこれまで、Park(ing)Dayを2017年に大宮(埼玉県さいたま市)、2018年に沼津(静岡県沼津市)、2019年に渋谷宮益坂(東京都渋谷区)、2020年に国内6都市(横浜・八千代・四日市・長浜・倉敷・竹原)で開催してきました。
そして2021年のPark(ing)Dayは、山形・塩尻・米子・神田での開催になりました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、神田の実施日のみが10/20(水)に変更になりましたが、いずれも無事実施されました!
この記事では、アクティビティ調査の手伝いもかねて参加した筆者が、Park(ing)Day2021神田について、実践の様子と実践者の想いをレポートします。
Contents
Park(ing)Dayとは
2005年に米国・サンフランシスコの大学生が「道路は誰のものなのか?」という思いから起こした挑戦で始まった、路上パーキングスペースを人のための居場所に変える取組みです。毎年9月第3金曜日に実施され、世界中のパブリックスペースのムーブメントになっています。詳細は、Park(ing)Day JAPANウェブサイトをご覧ください。
ソトノバでも、以前から各記事で取り上げています!記事のリンクを以下にまとめます!
路上駐車場ハックの世界ムーブメントを実践!Park(ing)day2018沼津 | ソトノバ | sotonoba.place
公募参加者が企画から実践まで学ぶ!Park(ing)day2019渋谷宮益坂 | ソトノバ | sotonoba.place
Park(ing)Day2020やってみた!6都市の実践と報告会をレポート | ソトノバ | sotonoba.place
路上駐車スペースを公園に変えるアクションのためのガイド「Park(ing)Dayガイド」を公開! | ソトノバ | sotonoba.place
Park(ing)Day2021神田について
Park(ing)Day2021は、ウィズコロナ時代におけるパブリックスペースの活用の可能性を探る機会になりました。ソトノバ・スタジオ|Park(ing)Dayクラスを通じて、各開催地のホスト(自治体や地域団体)のサポートのもと開催されました。神田には、公募で20名の実践者が集まってくれました!
神田の実践では、クッションドラムという、中に水袋を入れて重しにすることで、車衝突時の衝撃を緩衝できる道具を、各エリアで設置しました。
これまでの日本で実施してきたPark(ing)Dayでは、車両規制を行い、車道を歩行者専用にしたうえで実施することがほとんどでした。
しかし、神田のPark(ing)Dayは、この道具も駆使しながら、車両規制をかけずに、車が普通に通行する中での人の居場所づくりに挑戦したことが、新しいポイントになっています!!
これに成功することで、車の通行を完全に排除せずとも、人が滞留する場をつくることができるので、車両の通行量が少ない場所では、歩道が狭くても車道側に滞留空間をつくることが可能になります!!
設営の様子。クッションドラムに水袋をいれ、まずは場の安全を確保!また、今回は、歩きたくなるまちなかの実現にむけての調査もしっかり行っていました!今後、神田のストリートに滞まり場を設けた時などの可能性を、データで見える状態で示すことを目的として実施しました。歩行者カウント調査(方向・交通量など)・アクティビティ調査(滞在時間・行動内容など)を行い、実施場所とその近辺も含めて、データを取得していました!将来的な神田のウォーカブルのあり方の検討に、しっかりと役立てるための重要な取り組みです!
アクティビティ調査を実施する筆者。ランチで15分ほど利用する一般の方も!イベントの概要は以下の記事にまとまっています!
【10/20】神田の路上駐車スペースをウォーカブルな道路空間に変える!「Park(ing)Day2021神田」開催 | ソトノバ | sotonoba.place
Park(ing)Day 4か所での実践:実践者の思いと空間体験レポート
Park(ing)Day2021神田では2つにエリアを分け、錦町エリアは12:00~17:00、内神田エリアは11:00~17:00での開催になりました。
それぞれのエリアで2か所ずつ、合計4か所での実践について、空間のコンセプトや実践者の想いに、空間体験をしてみた筆者のヒトコト感想を添えてご紹介します。
錦町A:癒しの森 ~「自分の空間」を見つけよう~
この場所は、他の場所と違って、沿道にある建物がフェンスで覆われて入れず、店舗(飲食・小売りなどの路上に活動が出しやすいお店)ではないという特性がありました。沿道に店舗があるとその活動が外に出やすく(沿道店舗にも利益がでやすい)、その場所ならではの個性が発揮されやすいので、一般的には場づくりを行いやすいのですが、沿道の建物と連携した場づくりがしづらく、その場所ならではの個性のある空間がつくりにくいという課題を抱えていました。しかし、「壁の印象を消したい!」「周辺をよく歩いているサラリーマンに、タバコよりもおいしい空気を吸ってほしい」という思いから、緑を増やした場づくりをしたいと思い、この場所ならではのコンセプトを決めていきました。
居場所づくりのコンセプトは、その人にとってちょうどいいと感じる場に、たまたま巡り合う幸運の演出です!キーワードは「セレンディピティ」。椅子になったり、机になったり、その人なりの素敵な使い方を偶然に発見してもらうことを考えていたそうです。
場のつくり方は、パレット20枚と植栽をレンタルで注文、クッションとローテーブルは実践者の持ち込みで空間を構成しました。人通りの多い神田警察通りからの見え方を意識して、当日即興で調整しながら配置を検討したそうです!
実際にやってみるまでは、レンタルしようとしていたモノが想像通りに良い空間を演出できるかどうか、とても不安を感じていたようです。実際にやってみて、思ったよりも満足のいく緑化景観やパレットのボリューム感が演出でき、やってみてよかったと感じたようです。
(Park(ing)Dayクラス錦町A企画担当者 塩谷桃加さんにヒアリング)
大きな緑と多様な座る場所が、グループ間のちょうどよい距離感を演出している【使ってみてヒトコト】
人の居場所に「緑」があるというのがとてもよかったです。都会のオアシス。異なる高さで、積み上げられたパレットは、ちょうどよい高さの椅子やちょっとしたモノを置く机の代わりになり、自分で使いやすさを発見できる良さがありました。ランダムな配置が空間にゆとりを生んでいて、子供と大人のスケールの違いや、その時の気分によって、座り方を変えられるといった良さを感じました。
錦町B:路上に昼寝空間
居場所づくりのコンセプトは、ビジネス街でのお昼寝空間!家の中にいる感覚を、ソトでもつくる。道(ソト)に休む空間があるという意識が持てるように、寝られるような、リビングのような空間を意識したそうです。
場のつくり方は、「休む」という行為には段階があると考えて、靴を脱がないスペース(リクライニングチェア・ハンモック)から、靴を脱ぐスペース(yogibo・マット)までを段階的に配置したそうです。また、沿道に営業している店舗があるので、建物に入る動線はしっかり確保。サウナがお店の地下にあるという沿道建物の特性も活かし、「ヴィヒタ」と呼ばれる、サウナで使う白樺の若い枝葉を束ねた小道具で、空間を演出していました。什器のサイズ感・色、白樺の香りや、自然の音をPCから流すことで、五感のそれぞれにアプローチをかけて、リラックスできるよう工夫していました。
ここのポイントは、なんといってもサウナカー(サウナトースター)です。サウナカーが来ることで、ハンモックの配置がずれてしまったそうですが、偶然起こる出来事を受け入れて、場づくりを楽しんでいました。
実際にやってみて、異業種の交流、他者との会話を生む場が道にある良さを実感できたことがよかったそうです。
(Park(ing)Dayクラス錦町B企画担当者 鈴木杏奈さん・金保旼さん・高橋大樹さんにヒアリング)
ソトで寝転がるぜいたくな体験!【使ってみてヒトコト】
都市を見上げてくつろぐ事の新鮮さ、座位・姿勢の豊かさ、都市の見方・体験の仕方の多様さを感じました。道路でくつろぐということも、まだまだ工夫できる余地が隠されているのかなと感じることができました。また、ソトでのハンモックはとても気持ちよかったです!
「ヴィヒタ」という小道具によって、クッションドラムの仰々しい仮設感を和らげる工夫をしていたのも、良いと思いました。
途中で到着したサウナカー(サウナトースター)内神田A:『わ』”あの懐かしさ”思い出しませんか?
居場所づくりのコンセプトは、日本(の庭)を感じてもらうことです。
色々な小道具(花札・ゴザ・風鈴)で演出していました。また、沿道店舗の豊島屋さんの協力で、座高の異なるイス(酒樽)を置いてました。
事前に受けた講習での、「廃棄までを考える」「LQC(Lighter・Quicker・Cheaper:気軽に・迅速に・安価に)」をきちんと踏まえて場づくりをしたそうです。特に、たくさん使っていた風鈴の音色で、心の安らぎを感じることがポイントになります。
茣蓙(ござ)はもともと他の場所(内神田B)で使う予定だったそうですが、「とても良いアイデアだ!」と感じ、すのこのベンチの上に敷いて、この場所でも展開したそうです。
(Park(ing)Dayクラス内神田A企画担当者 大山優さんにヒアリング)
風鈴の音に誘われる。遊ぶための小道具が楽しさと会話を生み出す。【使ってみてヒトコト】
ござは意外にクッション性があって良いと感じました。他班の取り組みも柔軟に取り込んだのは、LQCな取り組みの良さを活かせていてとても良いなと感じました。また、長いベンチと、1人用のイス(酒樽)という2種類の座る場所を用意し、さらに、道路だけでなく民地空間にも座る場所をつくっていたので、その場所を最大限に使っているなと感じました。
内神田B:東京最古の酒屋の前に、誰もが寛げる居場所=居×酒屋をつくる
居場所づくりのコンセプトは、誰もが寛げる場所!日本最古の酒屋である豊島屋さんの店舗入り口前であることを活かして、日本風の場をつくっています。最も狭いスペースでの実践でしたが、すのこの上に茣蓙(ござ)を敷いて床座の居場所にして、空間をフルに使っていました。
和風の傘・茣蓙(ござ)・打ち水用の桶から江戸の情緒を感じてもらうように演出していたそうです。古地図からみる昔の通りと今の道路との重なりを示す資料や、『狂詠 江戸乃はな』という江戸の名物・暮らしを紹介した資料を印刷したり、神田の地域雑誌を置くことで、「居場所と情報を発信する文化の拠点の両立」を図っていました。
豊島屋さんからもらったお酒を置いたり、クッションドラムに緑をくくりつけ、和傘を立てかけて、なんとか仮設感を和らげようとしていました。
(Park(ing)Dayクラス内神田B企画担当者 田名麻衣子さんにヒアリング)
腰を落ち着けて、ゆっくりおしゃべり。黒いカウンター上に地域雑誌や江戸の資料を展示。
【使ってみてヒトコト】
ソトなので、狭い空間の活用でも、床座にすると不思議と狭さを感じなかったです。ちょっと休憩するスペースの目に留まるところに、まちの楽しい情報があると嬉しいし、特に江戸の歴史が残る神田のまちにはマッチしていたと感じました。
Park(ing)Dayの良さを次につなげていくには?
今回は、Park(ing)Dayという1日限定での道路空間活用で、日常的に人が佇める場を生み出すための、第一歩の取り組みにあたります!
実際に参加・レポートしてみて、道路で人の居場所を作るときに、各取り組みで共通して気づかいながらやっていたことをまとめると、
『LQC(気軽に・迅速に・安価に)でつくり出す、偶然おこるグッドな出来事をおおらかに受け入れながら、実施する側にも、場所を使う人にも、楽しい良い空間をつくっていくこと。』
『沿道の用途や特性という周辺環境と上手に呼応し、豊かな個性ある人の居場所にしていくこと。』
などがありました。
今回の取り組みは、車道規制をかけずに人が滞留しても問題ないことを実証できた点で、とても先進的な取り組みであったと思います。
一方で、クッションドラムの仰々しさと、視察に来た人の多さで、本当に人の居場所になり得ているのかという目線で見てみると、少し厳しいところもあったように思います。
ここで行った経験やアクティビティ調査のデータを活かして、次に神田で行われる社会実験・実装では、どのような展開があるのか??見過ごせませんね!
最後の振り返り。皆さんお疲れさまでした!All photo by Takahisa Yamashita