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ストリート|道路空間

「全長75mもの車道空間が芝生広場に」かながわMIRAIストリート

全国から熱い注目を浴びている歩行者利便増進道路制度(ほこみち)。ソトノバでも、これまで、「歩行者利便増進道路」創設の速報考察や、ほこみち指定に向けた先導的な道路空間活用の社会実験「ふくみち」の紹介を行ってきました。そんな盛り上がりを見せているほこみちですが、「首都圏で唯一、ほこみち指定を行っている市町村」をご存知ですか?

それが横浜市です!今回、横浜市でほこみち指定を受けている3つの市道のうちの1つ、「日本大通り」で2021年5月28日~29日に実施された「かながわMIRAIストリート」イベントにおける道路空間活用の様子をレポートします。


「かながわMIRAIストリート」は株式会社テレビ神奈川が「神奈川の子どもたちと未来のために」というテーマで主催したイベントで、多くの企業・団体による共催・協力で実施されました。

このうち、本記事では、下記のゆっくり・まったりエリア(青紫ゾーン)で「横浜ParkLine推進協議会」が中心となって実施した、道路空間活用の様子をレポートし、「ほこみち指定区間における社会実験の意義・目的」の考察を行います。

通常、ほこみち指定に向けて社会実験が行われるのが定番ですが、既にほこみち指定された区間で行われる社会実験の目的とは?

横浜日本大通り社会実験 図イベントMAP ゆっくり・まったりエリアに芝生が敷かれました


テレビ神奈川ホームページ「tvk かながわMIRAIストリート」

インパクト大!車道に75mの芝生空間

ゆっくり・まったりゾーンにおける道路空間活用の取り組みは、大成建設株式会社をはじめとする9者が参画する横浜ParkLine推進協議会が中心となり、「神奈川の子どもたちと未来のために」というテーマで実施されました。

「道路を人のための空間に」という動きが活発な中、「子どもたちのために」という、より踏み込んだテーマは新鮮に感じました。

かながわMIRAIストリートの一番の特徴は「その広大な芝生」です。日本大通りの車道75mの長さに人工芝が敷かれました。

2022-05-28_13-15-38_000 通りに現れた芝生空間

この人工芝にはリサイクル可能な素材が使用されていました。通常の人工芝は、廃棄物であるマイクロプラスチックを発生させてしまいますが、今回使用されている人工芝は、「自然界で分解可能な素材」が使われており、人工芝の破片が自然界に流れてしまった場合でも、従来製品に比べ環境に優しいとのことでした。

普段は車の走る車道が、様々な仕掛けであっという間に広場空間に。多くの人がくつろいでいました。出入り口付近に置かれた「PARKLINEの文字列モニュメント」やその近辺に配置されたベンチやソファが、通行スペースと滞留スペースを区切る役割を果たしていました。目の前を多くの人が通行していく場所では、なかなか地べたやベンチでくつろぎにくいですよね。

モニュメントやベンチの配置の重要さが感じられました。

2022-05-28_13-16-18_000通行スペースと滞留スペースを区切るモニュメントやベンチ等の配置

また、この大規模な芝生空間も1日目の夜間には一時的に撤去しなくてはならないそうで、イベント時間が終わった後は、このように綺麗に片づけられていました。

スクリーンショット 2022-05-31 2217081日目の夜には芝生やベンチなどが撤去されました

積み木にヨガに音楽まで!? 道路空間の使い方は自由

大きな芝生空間に驚いた次は、多様な空間の使われ方に驚きました。

かながわMIRAIストリートは、「神奈川の子どもたちと未来のために」というテーマで実施されている背景もあり、子ども向けの積み木スペースや、ストラックアウトが設置されていました。

DSC_0561子どもたちが楽しそうにストラックアウトコーナーで遊んでいました

さらに、ヨガを楽しんでいる人や地元の中学生のブラスバンド演奏に聞き入る人など、多様な楽しみ方が確認できました。

近年、人のための道路空間活用という流れでありますが、私自身、いざ「道路空間で何がしたい?」と聞かれたら中々即答するのは難しいと感じていました。

しかし、こういった多様な使われ方を肌で感じることで、「こんなこともしてみたい!こんなこともできるんじゃ無いか?」とアイデアを掻き立てられました。
バラエティに富んだパブリックスペース活用を検討する他地域の人にも、こういった事例は参考になるのではないかと思います。

ほこみち制度の活用といえば、オープンカフェといったイメージがあると思いますが、この事例のように、「遊べるスペース」「音楽を楽しめるスペース」「運動できるスペース」など、従来のイメージを超えた自由な活用策の検討も重要と感じられました。

さらに、かながわMIRAIストリートでは、子どもが喜ぶ仕掛けを多く準備することで、ファミリー層を多く誘致できていることが確認できました。これは、賑わい創出の1つの手法として参考になりますね。

一方、無目的なふらっと立ち寄った人にとって、日常的に居心地が良いと感じる空間であることも重要と感じますが、これは各地域の道路の性格付けや上位計画に即しての検討が行われているものと思います。

DSC_0603インストラクターのレクチャーを受けながらヨガを楽しむ人 2022-05-28音楽コーナーでは地元の中学生の演奏に多くの人が聴き入っていました

日本大通りの今後のゆくえに注目

かながわMIRAIストリートは、大成建設株式会社をはじめとする9者が参画する横浜ParkLine推進協議会が中心となって実施したものですが、これまでも横浜市では、様々な主体が連携し先進的なまちづくりが行われており、ソトノバでも横浜市の歩行者空間整備のビジョンなどを紹介・考察してきました。
日本大通りにおいても、2000年代初頭より、オープンカフェをはじめとする様々な社会実験が実施されてきており、それらの実証は着実に道路再整備等のまちづくり活動にも活かされてきました。

そのような中、この取り組みが実施された目的を下記のように考察します。

  • 元々オープンカフェは常設化されていましたが、かながわMIRAIストリートを通して新たな「道路空間活用方策」を試行することで、今後控えているほこみち活用による道路空間活用のあり方検討に柔軟な発想を持ち込むこと
  • 占用者の決定や公募指針の策定(実施有無は不明)に活かすこと
  • 子どもが喜ぶ空間づくりの意義や、子ども連れによる賑わい創出のノウハウ獲得

今回の社会実験をまた1つのきっかけとし、今後の「日本大通り」や「横浜市」でどんなまちづくりが行われていくのか要注目ですね。

さらに、こういった横浜市での事例も踏まえ、全国のほこみちがどのような空間を目指し、どのような活用がなされるのか、注目していきたいと思います。

ソトノバでは引き続き、全国のほこみち事例をウォッチし、ほこみち普及に向けた情報発信をしていきます。

ほこみちプロジェクト事務局で運営するfacebookにも写真が掲載されているようです。

ほこみちフェイスブック
ほこみち研究会HP
参考サイト:国土交通省HP ほこみち・よろず窓口

All photo by Hiroyuki TANAKA

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