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ストリート|道路空間

福井駅周辺のみちが新しいまちの風景へ!ほこみち指定に向けた先導的社会実験「ふくみち」

近年、ウォーカブルなまちづくりや中心市街地の再生など、車中心から人中心へのまちづくりへの機運が高まっています。

国土交通省では、2020年11月に歩行者利便増進道路制度(通称:ほこみち)の創設を発表し、歩行者が安全・快適に歩行・滞留できる空間構築を可能にすることを目的として進めています。

ソトノバにおいても、歩行者利便増進道路1号指定の速報やPlacemaking Week JAPAN 2021で歩行者利便増進道路とストリートプレイスの可能性に関して紹介してきました。

そんな中、福井県福井市では、2021年10月2日~17日にかけて、ほこみち指定に向けた先導的な取り組みとして、道路空間活用の社会実験「ふくみち」が行われていました。

今回は、「ふくみち」の社会実験の様子と、社会実験を通して感じたほこみち指定の取り組みに重要なポイントをお伝えします。

なお、執筆にあたっては、「ふくみち」の主催である福井市役所の福岡さんをはじめ、企画運営受託として関わっているまちづくり福井の岩出さん、森ビル都市企画の三輪さん、中谷さんに社会実験の内容をヒアリングしています。


福井駅周辺市街地は都市再生の転換期を迎えている

福井市は、1945年の福井大空襲、1948年の福井地震により、都市基盤に大きな打撃を受けており、戦災・震災から速やかな復興を目指した復興都市計画が進められました。

このような復興による計画的なまちづくりは、福井市の骨格を作り出し、これまでの福井市の発展を支えてきましたが、復興から50年以上が経過し、都市基盤や建物の老朽化が課題となっています。

このような中で、2024年の北陸新幹線の福井開業に向け、福井駅周辺の基盤整備・再開発が順次進められており、都市再生の転換期に来ています。

そのため、福井市では福井駅周辺の大規模な再開発を契機に、これまでまちづくりを担ってきた車中心の都市から、人中心で多様な活動が繰り広げられる都市への転換を目指しています。

DSC07747左手の街区で再開発が進行し、奥には再開発ビル(ハピリン)が立地 Photo by Takuma OBARA

車から人へ!「ふくみち」で風景とライフスタイルが変化

「ふくみち」では、福井駅周辺市街地において、歩行者中心の道路へ転換する可能性を探ることを目的に、道路空間に市民の憩いやにぎわいを創出する実験が実施されていました。

IMG_2019福井駅周辺の対象となる街路(ふくみちInstagramから引用)

「ふくみち」では、歩道や民地の軒下を活用し、飲食、読書、音楽、遊び、くつろぎなどの多様な活動が見えるスペースの創出がされていました。

DSC07872民地の軒下を活用したライブラリースペース Photo by Takuma OBARA

多様な活動が表に出ることで、少し立ち止まるきっかけとなります。

IMGP2643市民が発表できるような場となる機会 Photo by Asami TAKANO

広く寂しかった道路空間が、賑わいのある空間へ変化していました。

IMG_2976子どもから大人まで遊べ、奥でハンモックで休憩できる Photo by Asami TAKANO

また、当地区に勤務する方々は、お弁当を持参する人が多く、お昼になってもなかなか外に出ることはないそうです。社会実験では、キッチンカーに行列ができ、ランチの楽しみが増えたとの声があったそうです。

DSC07845昼時になるとランチを楽しみたい人たちが Photo by Takuma OBARA

また、夜になると、バルの美味しそうな香りと明かりに誘われ、立ち寄りたくなる雰囲気を醸し出していました。

IMGP2741夜はバルの美味しそうな香りに誘われる Photo by Asami TAKANO

ほこみち指定の取り組みに重要な3つのポイント

「ふくみち」での社会実験の内容やそこに至るプロセスを聞くの中で、ほこみち指定の取り組みに重要な視点として、「①各所調整と機運醸成」「②空間デザイン」「③結果検証」の3つがあると感じました。

①社会実験に向けた各所調整と機運醸成

社会実験を実施するにあたり、市民に「市役所が勝手に実施したイベント」と捉えられては、意味がありません。将来の形を見据え、いかに関係する方々と繋がりを持ちながら実施することが重要です。

「ふくみち」の実施にあたり、対象となるエリア・沿道ビルのテナント企業や店舗の約40社に、市役所職員が一軒一軒直接訪問を行い、社会実験に関する説明を行っていました。

さらに、沿道ビルに勤務する方々や出店事業者などを招集し、ほこみちについて理解を深め、まちづくりについて考える機会を設けました。

IMG_2021ふくみち開催に向け、沿道ビル勤務者や出店事業者を対象にしたワークショップ(福井市から提供)

この機会に、今回の社会実験に協力できることについても考えてもらい、軒下利用や協賛企業の参画(家具貸出、人流調査の無償協力等)などが実現しています。

DSC07805ふくみちに協賛した企業 Photo by Takuma OBARA

また、タウンマネージメント機構であるまちづくり福井では、ソライロテラスなどの中心市街地活性化に関する取り組みを実施しています。このような取り組みを通して、地元との関係性と併せて、警察からの信頼性もあり、道路使用に係る警察協議がスムーズにできていました。

②訪れ、滞在したくなる空間デザイン

社会実験は、今後の都市整備の方向性を意識した空間デザインを行い、新しくなった場所を訪れる方に「いいね!」と共感してもらうことが重要です。

ほこみちでは、地元のデザイナーによる空間デザインにより、場所場所に応じた特徴ある設えが行われていました。

DSC07828民地の軒下を利用したお洒落なテラススペース Photo by Takuma OBARA

また、フクビ化学工業の協力による座り方にバリエーションがあるベンチ、トンカンテラスの協力による夢中になってしまう遊び場等、民間企業・活動団体の協力の基で、創意工夫がなされたストリートファニチャーが設置されていました。

IMGP2666座り方にバリエーションがあるベンチ Photo by Asami TAKANO

そのようなストリートファニチャーでは、歩いて休憩できる場所だけではなく、友人とくつろぎながら談笑したり、親子で食事・遊ぶことができ、訪れて滞在したくなるような空間となっていました。

IMG_2978遊べるストリートファニチャーに夢中な子どもたち Photo by Asami TAKANO

③歩行量調査等による結果検証

社会実験は、実施することがゴールではなく、社会実験の結果を受けて、次の政策にどのように展開していくかが重要です。

特に、道路・街路の社会実験では、歩行者や自動車に支障がなかったか、市民や社会実験参加者にとって満足する内容だったか、定量的な検証を行うことが望ましいと考えます。

「ふくみち」では、対象エリアに立地しているNTT西日本の協力により、定点カメラによる人流計測及び解析が行われていました。

IMG_2015人流調査のための定点カメラを設置(福井市から提供)

ほこみちから、まちづくりの深度化に向けて

ほこみち指定によって、全国的にも道路や街路の風景がいい方向に変化すると思います。

一方で、変化した素敵な風景を、継続しながらより良いものにアップデートしていくことを念頭に置いておく必要があると考えます。

そのためにも、「ふくみち」で実施していたように、指定に向けた社会実験の段階で、企画に向けた「各所調整と機運醸成」、社会実験の「空間デザイン」、「結果検証」によるフィードバックを地元企業やステークホルダーとの関係性を築きながら実施していくことが必要と感じました。

今後、ほこみち指定を検討している地域は、是非先導的な社会実験の実施と併せて、「ふくみち」のような取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。ほこみちを考える過程で生まれる工夫や関係性をきっかけに、まちづくりが深度化していくことに期待します。

Cover Photo by Asami TAKANO

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