道路への挑戦!車道空間にいかにアクティビティをもたらすか?「神田警察通り賑わい社会実験2016」レポート

先日、ソトノバでも紹介した、日本で初めて車道空間に展開した、パークレット(Parklet)事例のKOBEパークレット。数ヶ月に渡る期間限定・常設設置の社会実験として、ストリート界隈に衝撃を与えました。パークレットについてはこちら

さて、東京でも、車道空間を活用する動きがあります。
それが、なんと、「神田警察通り」。警察署があることが通りの由来となっていますが、その「警察通り」が車道空間の活用に展開されているということで、ソトノバとしては見逃せません。

11月に行われた「神田警察通り賑わい社会実験2016」において、ミニ社会実験として実験的にパークレット的空間が試行されました。この社会実験は、①ミニ社会実験とオープンワークショップ、②トークセッションとワークショップ、③アクティビティ調査で構成されています。

今回は、ソトノバは「神田警察通り賑わい社会実験2016」そのうち、ミニ社会実験とオープンワークショップ、アクティビティ調査の一部の様子をお送りいたします。

今回のミニ社会実験では、何と言っても制約の多い道路の中でも、最も制約の多い「車道空間」で実施しているという点です。基本的には、道路は、歩行者のための空間が歩道、車のための空間が車道。将来の道路再配分も含めた車道の歩行者空間化に向けて、ミニ社会実験を展開しているため、「車の空間を人の空間へシフトさせる」、人間中心視点な取り組みです。

しかし、筆者も池袋で警察協議なども経験をしておりますが、都市交通(交通安全含む)と、道路空間活用の両輪の議論は、非常に難易度が高く、両立するように説得材料となるロジックや実績、素材を用意する必要があります。

今回は、将来の歩行者空間化に向け、道路空間の新たなチャレンジをしている、そういった位置付けだと思います。それでは、実際の空間を見てみましょう。

「神田警察通り賑わい社会実験2016」の空間レビュー!

まずは、一方通行4車線の神田警察通りのうち、1車線及び路上パーキング部分を車両規制し、歩行者空間化しているようです。元々歩道は、歩行者通行帯ギリギリ(およそ2.5mほど)しかないので、これでは歩行者の通行空間しか確保できず、滞留行動は生まれません。そこで、幅10〜15m×奥行4m程度の歩行者空間ゾーンを神田警察通り・車道の2箇所に設置したようです。

カフェの前に歩行者空間が展開する Photo By Takuya Wakabayashi

活用ゾーンの内部では、椅子やテーブル、温かいコーヒーなどが提供され、コミュニケーション行動を導く仕掛けが散りばめられています。この日は11月でしたが前日に雪が降り、寒いながらも青空が広がった中での社会実験になりました。天候は重要ですね。

無料で温かいコーヒーが配布され、寒くても滞留行動が見受けられる Photo By Takuya Wakabayashi

そして、一際目立っているのが、このボックス型のファーニチャーというより、パビリオン。これは、それぞれのスペースにパーソナルスペース(個人のスペース)があり、棚にコーヒーカップやモノを置いたりできるなど、思い思いの行動ができるように設計されています。静かに読書する、コーヒーを飲む、スマホをいじるなど、落ち着きやすい点がいいですね。

そして、チョークで色々描ける黒板塗料になっているので、前に来た人が残していったメッセージの痕跡や、子どものちょっとした絵や落書きなど、コミュニケーションツールとして使えますね。

内部空間は、2−3人が座れそうなこじんまりとした空間。コミュニケーションをとるのに最適なスペースで設計されていますね。

Photo by Takuya Wakabayashi

パークレット的空間にアクティビティデザインの視点を!

今回の空間のデザインとしては、それぞれのファーニチャーのデザインは居心地が良さそうでした。他にも柵がカラーコーンではなく、木製でしたし、多角形のテーブル・イスなどもデザインが良さそうです。

また、経験者として気にするのは、現行の道路空間の制約の上で計画するレイアウトです。実際、全体のレイアウトやアクティビティ設計をいかに良くするかに注力したことが伺えました。

ソトノバ的・外部評価アジェンダ

今後のパークレット的空間のデザインについて、ソトノバ的視点(外部視点)で、勝手に外部評価してみましょう。

既存の道路空間の制約 入り口が歩道の柵などがあるために限られたアプローチであること。

植栽やガードレールなど、既存の道路空間が活用を前提とした空間ではないために、変えられないものの中でアクティビティを設計していく必要があります。しかし、協議上の制約の中でも、いかに入りやすくオープンに入口を複数取ることが大切です。

滞留空間のゾーニング 活用する上で、どこを活用するかという配置と、滞留空間をいかにゾーニングするかがポイントになります。

道路空間は車両及び歩行者の通行空間が基本です。人が大勢歩く場所のすぐ隣でコーヒーをゆっくり飲もうにも落ち着きません。それは自動車も同じこと。自動車が通行する隣接車線と滞留空間とのバッファーは1m程度あるとよいでしょう。

ファーニチャー・テイスト ファーニチャーのテイストを決めるのは難しいテーマです。活用(社会実験)のコンセプトの切れ味やCIカラーの設定など、一貫したトータルデザインであるべきだと思います。
歩道と車道の段差 アメリカのパークレットがなぜいいのか。それは、歩道と車道にデッキを引いてフラットに設計しているからです。

車道を活用すると言ってもあくまで歩行者空間としての活用。歩いていても、座っていても目線の高さが同じという点は大事なポイントです。

アスファルト いかに居心地の良い空間を演出するかが重要です。もし、デッキの設置などが難しくても、アスファルト上に人工芝を引くなど、様々な工夫ができそうです。
開催時期の検討(気候) 日本で比較的穏やかな気候な20℃以上なのは、4月〜10月(7~9月は30℃超え)。

意外に日本は活用の穏やかな気候の時期は少ないです。それ以外の時期には、自然発生的なアクティビティは少なく、カフェの前など目的のある場所での活用がより求められるでしょう。

社会実験は、初めてやってみて、課題や改善点を出すことが最大の成果。「やった」という実績だけになったり、社会実験が目的化するのは他事例でよく陥りがちな傾向です。

「神田警察通り」は今回のミニ社会実験やワークショップ、アクティビティ調査の結果を踏まえて、来年度本格的な社会実も視野に、さらに検討をすすめていく予定とのことですので、楽しみですね!

神田警察通りの歩行者空間化のビジョンとは?

一方で、忘れてはいけないのは、社会実験というのは、道路空間の挑戦のために社会実験をやっているのではなく、地域の課題解決やあるべきビジョン、エリア価値を高めることを目的としています。地域と一緒に成功体験を少しずつ積み重ねていく必要があります。

神田警察通りでは、「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」が作成されており、その周辺地域全体の将来ビジョンが示されています。自動車中心から人と賑わい中心の道路への転換を目標として3つのゾーニングがなされ、それぞれイベント時、通常時の空間像とアクティビティのシーンが示されています。神田警察通りの将来像は、車道を減らし、歩道と自転車道を整備するという案になっています。

そして、現在、神田警察通りには低層階にお店や緑、広場が少ない状況ですが、沿道賑わいガイドラインに描かれているように、建て替えや用途の誘導などによって、道路、公開空地、沿道建物が連携して賑わいをつくり、神田警察通りを軸に地域全体の個性と魅力を高めていくということを狙っているようです。

地域のタイムラインの中での未来を志向するプロセス

そういった将来ビジョンに向け、またそのビジョンを地域の方々や会社員などまちを使う人と共有するため、オープン・ワークショップをやっていました。この手法は、インスピレーション・ワークショップの手法で、将来の神田警察通りがこうなってほしいなどの意見やアイデアを言葉だけではなく、類似事例などの写真とともに添えていくことで、ビジュアルにイメージを共有でき、参加者の意見を引き出しやすくする手法です。これは、昨年のGehl Architectsのセミナーでもやっていた手法で、ソトノバでもレポートしました。今回は航空写真にのマップにお気に入りの場所をポストイットで出したり、インスピレーションをまとめていくことを行ったようです。こういったプロセスを社会実験の現場で丁寧にやっていくことで、街の価値を高め、街の人に気に入ってもらい、愛着の持てる街へと育てていけるのかもしれませんね。

Photo By Takuya Wakabayashi

ゲール・アーキテクツとのコラボによるアクティビティ調査!

社会実験をやる際に、忘れがちなアクティビティ調査。交通量調査とアンケート調査だけでは、本質的な実験結果は得られません。

そこで、今回のアクティビティ調査では最初にゲール・アーキテクツのディビッド・シム(David Sim)とエヴィ(Evi Petcu)による、アクティビティ調査のレクチャーがあり、計測する学生スタッフにアクティビティ調査の考え方ややり方を指導し、今回の社会実験のアクティビティ調査体制を構築していました。人に着目したアクティビティ調査をベースにしたパブリックスペースの実態調査には、様々な気づきが得られます。

Photo by Rui IZUMIYAMA

最後に、アクティビティ調査を実際に体験した、スタッフに感想をいただきました。

かの有名なゲールアーキテクツ。どんなすごい調査が始まるんだろうと胸を膨らませていたら、手法自体は超シンプルかつローテクニック。歩行者数という単純な数値データが、どうして豊かな都市空間のデザインに昇華されるんだろう。そんな単純で些細な要素が都市空間の豊かさにつながるのであれば、その大切な要素たちを自分はどれだけ見過ごしてきたんだろう。ひたすらに計測器をカチカチしながら、都市デザインについて思いを巡らせた二日間でした。

提供:UR都市機構

Photo by 砂塚大河

今回の実験結果や成果を踏まえ、社会実験で設定した仮説を検証して、来年度検討している社会実験など、次のステップにフィードバックしていくことが大切です。それには、社会実験のアクション、オープンワークショップによる将来像の共有、アクティビティ調査による効果計測という今回の3点セットは、社会実験の一つのメソッドとして、いいプログラムバランスだと思います。今後の展開も期待されます!

神田警察通り賑わい社会実験2016 ミニ社会実験&オープンワークショップ

日時:2016年11月25日(金)11:00−15:00
会場:神田警察通り(東京都千代田区)
主催:神田警察通り賑わい社会実験実行委員会(神田警察通り沿道整備推進協議会、UR都市機構)

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泉山 塁威
ソトノバ編集長/明治大学理工学部建築学科助教/一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ/博士(工学) パブリックスペースとエリアマネジメントを専門とするタクティカル・アーバニスト。リサーチャー・プロジェクトデザイナー。 公開空地や道路占用許可の特例、エリアマネジメントのビジネスモデルの視覚化などの研究や実践プロジェクトを手がける。