レポート

Reports

レポート

小さなアクションが都市をかえる『タクティカル・アーバニズム』出版1周年イベント

2021年6月9日に出版された『タクティカル・アーバニズム 小さなアクションから都市を大きく変える』。

2022年7月8日に、『タクティカル・アーバニズム』@うめきた外庭SQUAREが開催されました。

書籍の出版から1年、新たな都市再生の動きが活発化している中での実験的な取り組みや都市とアクティビティのつながりについて、タクティカル・アーバニズムの編著者である泉山 塁威さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/日本大学理工学部建築学科助教)、田村 康一郎さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/株式会社クオル・チーフディレクター)、矢野 拓洋さん(一般社団法人ソトノバ・パートナー/一般社団法人IFAS共同代表)、西田 司さん(一般社団法人ソトノバ・パートナー/株式会社オンデザインパートナーズ代表/東京理科大学准教授)、山崎 嵩拓さん(一般社団法人ソトノバ・パートナー/神戸芸術工科大学芸術工学部環境デザイン学科助教)が、(仮称)うめきた公園での1000日間限定の暫定活用プロジェクトとして2020年7月から実証実験を行っている大阪うめきた外庭SQUAREに一堂に会し、熱い議論を交わしました。

今回はそんな『タクティカル・アーバニズム』出版1周年記念トークイベントの様子をレポートします!

Cover Photo by Chihiro Hasegawa


トークイベント会場もタクティカル・アーバニズム!うめきた外庭SQUARE概要説明

トークイベントに先立ち、大阪うめきた2期の取り組みとうめきた外庭SQUAREの概要について、東窪有紀さん(UR都市機構 西日本支社 うめきた都市再生事務所 工事課)から話がありました。

今回のトークイベント会場である「うめきた外庭SQUARE」は、「うめきた2期」の2024年先行まちびらきに先立つ事業として、事業区域内の土地を暫定活用して設けられた広場です。暫定的な活用の中で変化・成長する空間が魅力の「うめきた外庭SQUARE」は、都市や街に長期的な変化を起こすための短期的なアクションである、タクティカル・アーバニズムを議論するにふさわしい会場となりました。

画像2大阪うめきた2期プロジェクトの概要ついて話す東窪有紀さん Photo by Chihiro Hasegawa

『「みどり」と「イノベーション」の融合拠点』をまちづくり方針とする(仮称)うめき た 2 期地区開発事業において、うめきた全体のプロデューサーであるURは、公園や道路などの社会基盤を創っていく役割と、開発事業者とまちづくりを検討していく役割を担っていました。プロジェクトにおいては、市民が主体となる「みどり」を活用した魅力的なアクティビティの場を創設し、 緑をつくるだけではなく、多くの人が交流をしてイノベーションを起こし、未来の価値をつくる取り組みがされていました。

オフィスや、世界を見据えた都市を創っていかなくてはならないという視点と、緑が少ないという大阪の課題を解決し、緑の価値を広げていく出発地点になればいいと思っている。

と東窪さんは話しました。また、

公園や道路などの社会資本をつくると共に、地域の人が活躍し、賑わいの場所を創っていくことも未来へのまちづくりだと思う。

と続けました。

ここからはじまる。書籍「タクティカル・アーバニズム」について

「タクティカル・アーバニズム 小さなアクションから都市を大きく変える」は、小さなアクションからはじめ、そこから得られた結果から学び、次のステップに繋げていくという手法を、日本に広めていくためのアクションや理論、実践例が詰まった本です。

トークイベントの皮切りとして、筆者の一人である泉山さんは、

海外との都市間競争や地震や台風などの災害による不確実性が増す社会において、どのように実効力のある都市のビジョンや戦略をたてるのか。デザイン的な思考のように、実験や試作をして、仮説が合っているのか、違うのかを検証しながら、ビジョンや戦略を詰めていくことが、不確実性に対応したアーバニズムとして必須になってくる。

と述べました。

画像3書籍「タクティカル・アーバニズム」について紹介 Photo by Chihiro Hasegawa

小さなアクションからデザインへ。タクティカル分野の特徴とは?

続いて話したのは、西田司さんです。西田さんは建築と都市の境界を超えて、公共空間の活用実験から地域の拠点となる建築の設計まで、さまざまなプロジェクトを手掛けていました。

書籍「タクティカル・アーバニズム」では、「建築家が都市にコミットするための実践的アプローチ」という部分を書いていました。

今回のトークイベントでは、

1公共空間がアツい
2楽しみ方が多様
3空間→時間

の3つのポイントから街づくりにおけるタクティカル的分野のポイントを話しました。

ここでいうタクティカル的分野とは、市民や学生など、そこで暮らす住民一人からでも始められるような小さなアクションを実際に行い、まちの空間を変える提案をしていく分野をいいます。

西田さん:

多くの人にとって、自分の居場所をおうちや学校だけではなく、公共空間にまで広げていくアクションは重要です。日本の公共空間は、日常生活の中で人々が使えるようになってきつつあり、公共空間がアツくなっているなと感じています。

また、興味のある対象がまちなかにあることで、楽しみ方を見つけ、自分なりにまちを解釈をしていくことが、まちの面白さに気づくきっかけになります。

その結果、公共空間に自分の領域となる居場所を発生させて、自分の時間を埋め込んでいくことで、まち自体にデザインが生まれるのです。

画像4街の中で自分が興味のある対象を見つけにいく。例えば、スポーツ×クリエイティブなど。 資料提供:西田司

公共空間に、自分の時間を埋め込む

そして西田さんは、まちの中にいかに自分の時間を埋め込むのか、その重要性について「みっけるみなぶん(横浜市)」の社会実験を例に話をしました。

この実験では、会場となる沿道500mの中に異なるタイプのスペースをつくり、来訪者が自分の居場所が見つけられるようにしました。

画像5各々自分の好きな時間を過ごしている「みっけるみなぶん」の様子 Photo by 西田司

画像6タクティカル分野に関して熱いトークを繰り広げていく西田さん Photo by Chihiro Hasegawa

タクティカル・アーバニズムを成功させるには?暫定利活用からはじまるパークマネジメント

続いて話をしたのが山崎さんです。山崎さんは神戸芸術工科大学芸術工学部環境デザイン学科の助教を勤め、ランドスケープを専門に、緑とまちをつなげていく活動をおこなっていました。

本では、3章の「小さなアクションの始め方」の部分を担当しました。

今回は公共空間の中でも、公園をテーマに話をしました。

山崎さん:

今、社会の制約条件として公園の”利用”と”費用”は減少しています。

一方で、まちづくりの核として公園は使いやすく、多面的な魅力があります。そこで、いかに公園の”主体的”な利用を増やしていくかが問題となってくるのです。

そこで書籍に掲載されている「戦術」として、環境に対しての欲求から起こる暫定的な空間利用を、それを使う人や管理者みんなが許容し支えていくことが、公園の価値の向上につながると考えます。

と話をしました。

画像7途中雨が降ったため、急遽テントを広げテントの下でトークイベントを聞く来場者 Photo by Chihiro Hasegawa

本稿の筆者は、登壇者の話から、

主体的な市民の小さなアクションに行政が寄り添うことで、その後の政策や空間整備などの長期的変化につながり、計画を実現できるといった、タクティカル・アーバニズムのプロセスを知ることができました。

これから何かまちを変えていきたいと思い、新しい提案を検討している市民に対して、参考になると感じました。

一方で、利用者自身の公共空間での過ごし方によって、まちのデザインは居心地の良い空間へと変化し、自分自身の居場所が生まれてきます。このことによってまちへの愛着が湧いてきて、さらに、まちの中で興味がある分野を自分から見つけていくことや、訪れる人がそのまちを楽しむことで、居心地の良さだけではなく、まちの賑わいに繋がっていくということがわかりました。

さらに、その場所の価値は、環境に対する課題や欲求から生まれた暫定的な場所性や活動を許容し、受け入れ、支えていくことで、上がっていくと感じました。

書籍「タクティカル・アーバニズム」の編著者が、UR島本さんを交えタクティカル・ディスカッション

続いて会場やオンライン参加者から寄せられた質問やメンバーのディスカッションから、トークテーマをさらに深堀りをしました。

まずは、トークイベントの登壇者同士のディスカッションがおこなわれ、

矢野さんからの

2021年に本を書いてみて、今日までに、心境の変化はありましたか?

という質問に対し、田村さんは

実際に日本でもタクティカル・アーバニズム的な視点から社会に実装されているものが増えてきたと思います。うめきた2期もその1つ。またさらに今後も増えていくと感じています。

さらに西田さんが実践者の視点から

コロナになり家にいる時間が増え、少し外に出てみようと思う人が多くなったと思う。せっかく外に出たなら建物の中に入るよりも、外にある公園や公共空間での過ごし方を考えてみよう。という人が多くなっていると感じます。

と話をしました。また、泉山さんは、

実験的な取り組みをおこなうことへの理解は、この5〜6年で急激に上がってきています。しかし、実験の後、何がしたいのかが見えません。実験がイベントのように扱われているところは、今も昔も変わらない問題で、コロナ後のタクティカル・アーバニズム的な動きもこれからふり返っていく必要があります。

と、最初のアクションを起こした後のステップについて、アクションを振り返り、結果や周りのリアクションから次のステップにつなげていく事の大切さを話しました。

山崎さんは、

自分流の時間の使いこなしと、余白のある遊びのような感覚が小さなアクションのハードルを下げる事につながっていくと思います。

と、最初にアクションをする人が生まれてくるような周りの環境や雰囲気の重要性について話しました。

画像8参加者から寄せられた質問に、「タクティカル・アーバニズム」編著者メンバーが答えていきました。 Photo by Chihiro Hasegawa

矢野さんからはさらに

タクティカル・アーバニズム的アクションを実行するにあたっての周りの肯定的な空気感のつくり方はありましたか?

という質問がつづき、これに対して西田さんは、

プロジェクトを計画していくのではなく、ストーリーを描くことが大事。ステップを踏んでいくだけではなく、さまざまな人と共有して、人の共感から次のステップに向かうことで、大きなアクションにつながっていきます。

と、アクションを起こすきっかけや、かける想いなど、まちづくりにおけるストーリーの重要性について話しました。

ここで、うめきた外庭SQUARE運営事務局のUR都市機構 西日本支社 都市再生業務部担当部長 島本 健太さんから、うめきた外庭SQUAREの取り組みとタクティカル・アーバニズムとのつながりについての話がありました。

島本さん:

先進的な活動をしていくことで共にその活動していきたいというパートナーが増え、データ活用やテクノロジーからニーズが明確になったことで、公園に新しい作り方が生まれました。その価値は、公園の価値自体をあげていったり、次のステップに向かう後押しになったりすることにつながっていきました。

画像9うめきた外庭SQUAREの取り組みとタクティカル・アーバニズムとのつながりについて話す島本部長 Photo by Chihiro Hasegawa

さらに、島本さんからの

今後、公園管理やPark-PFI事業を推進していく中で、タクティカル・アーバニズムのプロセスはうまく活用できるのか、タクティカル・アーバニズムの取り入れ方の考えをお聞きしたい。

という質問に、泉山さんは

Park-PFIに欠かせないのは事業性だけではない。評価してくれる人が増えていくことが大切。公園の価値が街の価値を変えていく。そういった面では、暫定的な活用やプロセスを描いていくことが街の評価につながっていく。

と見解を述べました。

画像10島本さんからの質問に答える泉山さん。 Photo by Chihiro Hasegawa

最後に。公園のあり方におけるタクティカル・アーバニズムとは

最後に登壇者から一言ずつ、今回の総括がありました。

田村さん:

これから、うめきた外庭SQUAREから大阪駅を含めた周辺エリアに波及する中で、緑というポテンシャルが今後の公園で広がっていくと思う。そういった意味では、外庭SQUAREにおいて、暫定利用だけではない、まちづくりの新しい手法があるのではないかと想像がふくらむ。

山崎さん:

まちの課題にも目を向けていくことで、誰でも使える公共空間ができる。おおらかなまなざしを持って、計画や管理をおこなうことが大事。

西田さん:

まちや場所を考えるとき、自分以外の他者や自分の環境について想像してみると、多様性や寛容性が生まれてくる。切り口が多様になっていくことでアクションを起こす人の意識が高まっていく。

泉山さん:

うめきた2期プロジェクトは、これからの日本の公園のあり方について新しく積み上げをおこなっているプロジェクトだと思う。小さなアクションだからこその取り組みや価値を期待したい。タクティカル・アーバニズムが広がり、小さな実験から大きなアクションが増えていけば良いと思う。

今回のイベントでは、小さなアクションを積みかさねて将来的な変化につながっていくことがタクティカル・アーバニズムの醍醐味であること、アクティビティの可能性を広げるのは、周りの多様性や寛容性も重要であることが必要であることがよくわかりました。これからのまちや公園をよりよく変えていくためには、新しい取り組みに挑戦し続けることが大切なんですね。

このような取り組みを継続していくなかで、様々な人が空間の活用に関わり、自分がいる場所に対して居心地がよいと思える空間を生み出すことができると確信しました。

Twitter

Facebook

note

13+