レポート
プレイス・ゲーム実践編!プレイス・ゲーム ハツダイ PWJ2021vol.2 #6
ニューヨークに拠点をおく非営利団体Project for Public Spacesが、プレイス・ゲームの手法を開発しています。これを受け、一般社団法人ソトノバ、Placemaking Japan、UR都市機構が共同でプレイスメイキング研究会を発足し、2021年7月に日本版の『プレイス・ゲーム|プレイスメイキング・ガイド』を制作・一般公開しました。
2021年10月には、日本における都市の屋外空間に居心地の良い場所をつくる「プレイスメイキング」の普及への継続的な取り組みと、日本における道路空間を人のための空間に変える継続的なパブリックスペースアクションが評価され、グッドデザイン賞を受賞しています。
今回、Placemaking Week JAPAN 2021 vol.2では、唯一のオフラインプログラムとして、『#6 プレイス・ゲーム 実践編!~まちなかを楽しみながら評価しよう!~』が開催されました。
本記事では、プレイス・ゲーム 実践編の会場設営から終了までの様子を紹介します。また、当日の様子は、Twitterテキスト中継からも確認できます。
Contents
実践編に密着!プレイス・ゲーム ハツダイ
今回プレイス・ゲームの舞台となったのは、東京都渋谷区本町にある初台エリアでした。
初台エリアは、西新宿のオフィス街から近く、エリア内には新国立劇場・東京オペラシティなどが立地しています。一方で、エリアの大半は住宅地や情緒あふれる商店街が立地し、大変閑静な場所となっています。
このようなエリアで開催されたプレイス・ゲームは、次のような手順で実施されていました。
①会場準備~会場選定と設え~
②プレイス・ゲーム開催~アイスブレイクとレクチャー~
③現地調査~まち歩きと評価~
④テーブルワーク~場所の機会と課題、取組を議論~
⑤全体シェア~各班発表と総括~
上記の手順は、『プレイス・ゲーム|プレイスメイキング・ガイド』に進め方のポイントの解説やファシリテータガイドも記載していますので、是非ご一読ください!
①会場準備~会場選定と設え~
プレイス・ゲーム ハツダイでは、地域のレンタルスペースを貸し切り、お洒落なスペースで開催されました。今回は、12月ということもあり、クリスマス仕様に設えてありました。
このような空間的な設えは、参加者にとって少しでも敷居が低くなるような工夫であると感じています。
②プレイス・ゲーム開催~アイスブレイクとレクチャー~
参加者が集まり、いよいよ始まります。
本題に入る前に、アイスブレイクで自己紹介が始まりました。今回の参加者は、プレイス・ゲームやプレイスメイキングに興味がある方々が集まり、自分が普段どのようなことをやっているかを話し合っていました。
参加者の一人として参加していた田村康一郎さん(一般社団法人ソトノバ)は、自前の椅子を持参していて、チームに共有していました。
持参した椅子を紹介する田村さん Photo by ondesign partnersアイスブレイクで参加者の緊張がほぐれたら、早速プレイス・ゲームについて、田邉優里子さん(オンデザインパートナーズ)からレクチャーが始まりました。
レクチャーでは、プレイスメイキングの背景、プレイス・ゲームガイドの概要、本日のプレイス・ゲームについて説明がありました。
プレイスとスペースの違いをレクチャー Photo by ondesign partners『まちなかにある場所や空間は、ただのスペースです。そのような場や空間にまちの人にとって思い入れが入ることでプレイスになります。今回のプレイス・ゲームでは、まちの中のプレイスを探してみましょう!』
と、田邉さんから案内がありました。
『プレイス・ゲームは、評価をすることも重要ですが、今日は街の人や利用者になりきってみましょう!プレイス・ゲームを思いっきり楽しんでください!』
と、千代田彩華さん(オンデザインパートナーズ)からも、プレイス・ゲームのコツについて案内がありました。
③現地調査~まち歩きと評価~
レクチャーを終えると、各班で対象エリアをどのように歩くかを作戦会議します。
各班で本日歩くエリアをシェア Photo by Takuma OBARA作戦会議を終えると、まち歩きスタートです。
まち歩きでは、評価シートに記入しながら、場の評価を行っていきます。評価軸は、「アクセスと接続」「利用と活動」「快適さと印象」「社交性」のパブリックスペースの4つの性質にあてはめて評価していきます。
詳しい評価項目を知りたい方は、『プレイス・ゲーム|プレイスメイキング・ガイド』の39頁を見てみてください!
また、まち歩きでは、千代田さんから案内があったように『なりきること』が重要です。例えば、実際にここにベンチがあった時に、居心地がよいのかを体感しながら評価します。
準備した椅子に座ってみる Photo by ondesign partnersまちにある余剰なスペースを、まちの居場所となるのかを体感することで、この場所の機会や課題を発見することができます。
使わなくなったスペースの別の使い方を模索 Photo by ondesign partners場所の機会や課題を発見することで、新しい利用や活動など、その場所のビジョンやマネジメント戦略を現地で妄想することができます。
利用や活動を妄想しながら実際に利用者になりきってみる Photo by Takuma OBARA④テーブルワーク~場所の機会と課題、取組を議論~
まち歩きを終えると早速テーブルワークに入っていきます。
テーブルワークでは、各エリアの良い点、悪い点をパブリックスペースの4つの性質に整理しながら書き出していきます。
良い点・悪い点を書き出した後には、その場所が持つ機会と課題を整理していきます。
機会と課題を整理した後に、その場所で実施したい短期的な取り組み、長期的な取り組みを書き出していきます。各個人の専門的な知識や知見が多種多様なアイディアを出します。
さらにその取組を展開していくうえで、必要なパートナーを考えまとめていきます。
⑤全体シェア~各班発表と総括~
ワークシートをまとめ上げたら、各班の成果を全体にシェアします。
1班は、都道沿線に小規模な公園が点在するエリアの発表です。
1班は点在する公園の可能性に視点をおいて発表 Photo by ondesign partners『都道沿線に、お洒落な店舗があった!小さな公園がいっぱいあったけど、使いにくく汚い印象がありました。
取り組みとしては、小さな公園を綺麗にして、各公園でカラーを決めていくと良いかもと感じました。その際には、掃除の文化を根付かせていく必要あるかもしれません。』
2班は、新国立劇場を含む初台駅周辺エリアの発表です!
2班は劇場の公開空地の可能性に視点をおいて発表 Photo by ondesign partners『新国立劇場が立地しており、音楽の街と感じました。ただ、監視されている感じがあり、地域のコミュニティが入ることに難しさも感じました。
まず第一歩としては、オープンカフェやマーケットなどの実験をして、公開空地の可能性を探ってみたいとおもいました。アトリウムの良い空間があるため、アートやパフォーマンスとコラボしていければいいかもと感じました。』
3班は、地元の商店街を含むエリアの発表です!
3班は地元商店街の歩きやすさに視点をおいて発表 Photo by ondesign partners『まち全体がレトロな雰囲気があり、坂の奥行きや街の彩りが非常に良い印象がありました。一方で、まち全体で休憩できる場所がないと感じました。
そのためにも、おばさまが休憩できる井戸端会議場所を作ってみたいと感じました。また、街のファニチャーがバラバラであるため、統一感を持たせながら、歩きやすい街にしていきたいと思いました。』
こうしてみると、議論する場所や議論の内容によって、プレイスメイキングの着眼点に特色が出ていました。初台エリアにこれだけの面白い場所があることが発見でき、参加者全員にシェアできたと思います。
『プレイス・ゲームは、プレイスメイキングの5ステップの2つ目であり、地元のステークホルダと一緒にやることが醍醐味です!今回のように、評価していくことで街のことがよくわかることがプレイス・ゲームの特徴ですので、是非活用してみてください!』
と、最後に泉山塁威さん(一般社団法人ソトノバ)から総括コメントがありました。
プレイス・ゲーム ハツダイを終えて
プレイス・ゲーム ハツダイでは、プレイス・ゲームガイドに則って実施されていました。
今回のように一度プレイス・ゲームに参加したり、地元の地域に入る前に試験的に実施してみることで、よりプレイス・ゲームガイドを深く理解できると考えています。
また、プレイス・ゲーム キタナカのレポートでも触れましたが、プレイス・ゲームのプログラムをこなすのではなく、その場を楽しむことが非常に重要と感じました。
今回は、時期的にクリスマスが近いこともあり、会場の設えや雰囲気づくりが初対面の参加者の緊張を和らげていたと思います。
今回はクリスマスケーキを食べながらのワークを企画 Photo by ondesign partners是非一度ガイドを手に取って、身近のプレイスメイキングについて考えてみてはいかがでしょうか?
Graphic recording by Shiori FURUYA
Cover Photo by ondesign partners
Text by Takuma OBARA