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宇都宮の可能性を探った2日間!プレイスメイキングデイズin宇都宮 レポート

プレイスメイキングうつのみや(プレみや)では、2021年11月10日(水)及び11日(木)に「プレイスメイキングデイズin宇都宮」を開催しました(リリース記事はこちら)。「プレイスメイキングデイズin宇都宮」は、オリオンスクエア(宇都宮市オリオン市民広場)にて実施され、宇都宮市中心市街地のパブリックスペースの可能性を探ることを目的に、宇都宮の人々から中心市街地の現在の印象や今後に期待することを共有してもらいました。

2021年9月に都市計画学を修了した筆者は、今回ソトノバ編集部ライターとして「プレイスメイキングデイズin宇都宮」に参加しました。自身も地方都市・仙台市の出身であるということから、宇都宮では「宇都宮におけるプレイスメイキングの可能性」だけでなく「日本国内の地方都市において今後どのようにプレイスメイキングが展開していくのか」という点も考えた2日間でした。

本レポートでは、プレみやのこれまでの活動や2日間のワークショップの様子をレポートします。その後で、2日間ワークショップを実践しての感想と、筆者が今後プレみやの活動に期待する点について共有していきたいと思います。


プレイスメイキングうつのみやとは?

プレイスメイキングうつのみや(プレみや)は、宇都宮市において地域の文化歴史や地理的な背景を考慮しながら、それらの特性を生かした新たなプレイス(居場所)を創り出し街全体が活性化することをゴールに活動しています。宇都宮市は、

「宇都宮市中心市街地において、地域資源や空間の特性を生かし、これまでの取組等との連携を図りながら、一人ひとりにとって特別な居場所をまちなかにつくり出すことで、中心市街地の更なる活性化を目指す。」

宇都宮市

と掲げ、宇都宮市中心市街地活性化協議会やソトノバ、日本大学理工学部建築学科都市計画研究室(根上・泉山ゼミ)と協力しながらこれまで活動を展開してきました。

これまでには、2021年3月にプレみやトーク#01の開催(前半後半)や、同年10月にニュースレター(プレみやだより)の発行などの活動を行ってきました。

プレイスメイキングデイズin宇都宮

プレイスメイキングデイズin宇都宮は、宇都宮市中心市街地におけるプレイスメイキングのビジョン(プレイス・ビジョン)の策定を目指し、市民や地域団体との対話とプレイスの可能性を調査することをゴールに開催されました。会場となったオリオンスクエアは、オリオン通りというアーケードにも面している、中心市街地の活性化とにぎわい創出の拠点として週末はイベントで賑わう広場です。2021年11月10日および11日は平日だったため、アーケードは日中の時間は買い物をしたり散歩をしている人々、2日目の夕方になると授業と部活動が終わった学生の姿が多く見られました。

_33A0629当日はオリオン広場の手前部分にパネルを設置しました。2日間天候に恵まれ、多くの方が足を止めてくださいました!

プレイスメイキングデイズin宇都宮が開催された2日間は、プレイスメイキングの紹介やこれまでのプレみやの活動をまとめたポスターとエリアの可能性を探るための質問が書かれたボードを設置しました。参加者からは付箋にその質問を中心にお気に入りの場所や「こうなったらいいな」「こんな場所になってほしい」という想いを共有してもらいました。

_33A0620参加者から共有された想いを付箋に書き込み、写真中央のボードに貼り付けます。

当日は3種類のボードが設置されました。1番目には、普段利用している場所を振り返ったり宇都宮のどんなプレイスが好きかを書き込んでもらう「フィーリングボード」、2番目にはこんな場所があったらいいなというワクワク共有してもらう「インスピレーションボード」、最後の3番目には2つの質問を踏まえ今後の宇都宮にどんな場所ができたらいいかを具体的に考える「Power of 10+ボード」を設置しました。それでは、一つずつ詳しくみていきましょう。

①「宇都宮のお気に入りの場所を探そう」|フィーリングボード

ワークショップのはじめには、「宇都宮のお気に入りの場所を探そう」というフィーリングボードが設置されました。参加者には、このボードに貼られている宇都宮の中心市街地の地図に「お気に入りの場所」「改善してほしいところ」などを付箋を使って書き加えてもらいました。

_33A0239ピンクの付箋には好きな点を、青い付箋には改善してほしい点を記入してもらいました。

宇都宮のお気に入りの場所を聞かれた参加者からは、オリオン通りや八幡山公園、中央公園などといった有名なスポットから、「あまり他人には教えたくないんだけれど…」と言いながら書き込んでもらった隠れスポットなど多くの「お気に入り」の場所を追加してもらいました。付箋には様々なスポットが記載されていましたが、それらを一つずつ読むと、「楽しく散歩ができる」「季節の移り変わりを楽しめる」「みんなで遊べるスペースがある」などといった理由から公園が多くの人から愛されているようでした。

_33A0776地図が見えなくなるほど付箋がいっぱいになりました!他の人のお気に入りスポットをみて、週末のお出かけの計画を立てる人もいました。

改善してほしい点を記入してもらった青い付箋には、移動にまつわる意見が多くみられました。宇都宮は、鉄道やバスなどといった公共交通がある一方で自家用車を利用して移動する人が多いそうです。そのためか「駐車場を増やしてほしい」という付箋が中心地周辺に何枚か貼られていました。しかし、駐車場が増えたことにより無くなってしまったお気に入りのスポットを懐かしむ人や、歩行者の安全を考慮して、これ以上駐車場を増やすことには懐疑的な人もいました。

また、車に関することだけではなく自転車に関する付箋もありました。特に多かったのは、パネルを設置していたオリオン広場が面するオリオン通りに関してで「歩行者が楽しく散歩や買い物できるように改善してほしい」という付箋がいくつかありました。

②「居心地の良い場所を探そう」|インスピレーションボード

フィーリングボードの後には、「居心地の良い場所を探そう」というインスピレーションボードを設置しました。このボードには、世界中のパブリックスペースの写真があらかじめ貼ってあり、そのなかから「宇都宮にあったらいいなと思う場所」「居心地が良さそうな場所」「過ごしてみたい場所」を選んでもらいました。その上で、付箋になぜその写真を選んだかの理由を記入してもらいました。

_33A0575ボードには広場やまちなかの休憩スポットなど様々なパブリックスペースの写真が貼ってありました。

選ばれた写真には、椅子やベンチがある広場やピクニックができる広い公園などがありました。椅子やベンチがある広場を選んだ人は「まちなかやアーケードにちょっとお茶を飲んだり、待ち合わせの時に座れる椅子がほしい」「買い物で疲れた時に一息つけそう」「足を伸ばせる椅子でゆっくりしたい」「ゆらゆら揺れる椅子が面白そう!」などといった異なる椅子の特徴にも着目した意見が多くありました。パネルを設置していたオリオン広場で友人と待ち合わせをされていた人で、

「早く到着してしまったから、今まさに広場に椅子があればいいと思っていたんだ。でも、ここに椅子があったら待ち合わせしながら、日当たりが良くなって昼寝してしまいそうだ。だから、この足が伸ばせるのはやめておこう。」

などと足が伸ばせる椅子の写真をみながら楽しそうに話されるおじいさんもいました。その後に無事に合流した友人とも、どの椅子にするかを話し合われていました。

_33A0246「こんな場所が宇都宮にあったらいいな」「こんなことやってみたいな」という想いが記入された付箋が増えていくのを見るけでもワクワクでした!

また、芝生の公園やシートをひいて自由にリラックスできるスペースなどの写真も多くの方から選ばれていました。「音楽や映画のイベントなどを開催して、座りながら楽しみたい」「友達とピクニックしてインスタグラムに写真を載せたい」「気軽に座れる場所でお弁当が食べたい」などの付箋がありました。「散歩や買い物の間に利用したい」という声が多かった椅子やベンチに比べると、芝生や公園のようなパブリックスペースは、それ自体がメインのアクティビティをする場所となることがあります。そのため、もし芝生や公園のスペースが新たに中心市街地に設置された場合には、街での過ごし人やアクティビティの選択肢が増え、利用層もより多様化していくのではないかと思いました。

_33A0715普段遊ぶところが少なく少し不満だという高校生も「こんな広場があったらピクニックやお茶など色々やってみたい!」「この公園すごくおしゃれ!」とお気に入りの写真を次から次へと見つけていました。

③「これからの宇都宮の場所を考えよう」|「Power of 10+」ボード

最後には「これからの宇都宮の場所を考えよう」の「Power of 10+」ボードが設置されました。Power of 10+とは、Project for Public Spaces(PPS)がプレイスメイキングを評価し、促進するために開発された公共空間のためのプロジェクトです。このコンセプトの背後には、

「利用者がそこにいる様々な理由(10+)を持つことで、場所が繁栄する。さらに、このような観光地や地区が10カ所以上ある都市では、地元住民や観光客の間で認識が変わり始め、都市の中心部はレジリエンスとイノベーションを生み出すためのより良い環境となる。」

Project for Public Spaces

という考えがあります。その考えをもとに設置されたボードには、宇都宮の中心市街地(まちなか)の中で、お出かけや休日の目的地となりそうな可能性のある場所を10箇所程度あらかじめ選定していました。

参加者にはそれぞれの場所について、印象や改善点、どんな使い方をしたいかなどを付箋紙に記入してもらいました。目的地となりそうな可能性のある場所には、バンバひろばやオリオン通りやオリオンスクエア、釜川ふれあい広場、栃木会館跡地の芝生広場が選ばれました。

_33A0562左にある地図で場所を確認しながら、それぞれの場所についての感想などを書き込み、右のパネルに貼り付けていきます。

「居心地の良い場所を探そう」のインスピレーションボードで、芝生やベンチなどの写真に関するコメントが多かったのにも関係があるのか、各場所についてのコメントでも「ベンチがあれば嬉しい」「イベントを開催してほしい」などというものが多くみられました。

その一方で、「改善してほしいことはあるけれど何かと言われると難しい」「どんな使い方をすれば良いか分からない」など、2番目に設置されていたインスピレーションボードの写真と普段から利用している場所にギャップを感じてしまうという人も少なからず見受けられました。

_33A0811普段は学校生活で中心部にどんな場所があるかあまり分からないという女子高校生。「自由に使っていいと言われても…」と悩みながら付箋に書き込みます。

選ばれた場所がどこにあるのか分からないと地図をみながら確認する人もいました。このことから、宇都宮の人々が普段利用している場所やその場所でのアクティビティが固定化しているということが推測されます。また実際にイベントが開催されていたり、ベンチが設置されている場所があったりしても、その情報を把握していないということや初めていく場所にはなかなか足を伸ばしにくいということも考えられます。

このことから、今回選出した場所でプレイスメイキングプロジェクトを実施した場合などにも、認知してもらったり実際に継続して利用してもらったりする仕掛けづくり、また小さなことから少しずつ実施していくことが成功の鍵になるのではないでしょうか。また、それぞれのプレイスの位置や宇都宮の人々の生活圏内などを把握することも欠かせません。1番目の「宇都宮のお気に入りの場所を探そう」のフィーリングボードにも交通に関する記載が多かったことから、その目的地までの移動手段なども考慮したプレイスメイキングが求められていくのかもしれません。

2日間の活動を終えて:実践してわかった2つの難しさ

2日間にわたって開催された「プレイスメイキングデイズin宇都宮」を終え、運営メンバーによるミーティングが行われました。一人一人の感想を発表していく中で、共通して2点のことが挙げられました。

1点目は、「参加者の属性」についてです。今回、プレイスメイキングデイズin宇都宮が開催されたのは11月の平日でした。時間も、1日目が正午〜17時と2日目が10時〜17時と限られた時間での実施となりました。そのため、オリオン通りにいる人も日中は主婦や高齢者、夕方になると高校生や大学生などという層が多く見受けられました。一方で、会社員や家族連れの姿はあまりなかったり、学生も下校途中で急足だったりしたため、参加者の属性には偏りがありました。

そのため、実際に当日参加した人々の感想や意見だけが宇都宮市民の総意ではないという点をしっかりと理解し、今後の調査も必要そうです。

_33A0318小さな子や学生、平日の日中に働いている人など今回あまり参加できなかった層にもアプローチが必要そうです

2点目は、「今回集まったデータをどのようにまとめていくか」という点に関してです。今回は、参加者と対話をしながらコメントを付箋に書き込むという方法でデータを集めました。しかし、付箋に書き込む内容や問題の切り口は付箋ごとに十人十色。データをまとめるだけではなく、今後どのように集約してビジョンに落とし込むのか、どのようなプレイスメイキングのプロジェクトを実践していくのかなどを検討していきます。

_33A0329これらの付箋が今後どのようにまとめられ、どのような活動に繋がっていくのか、目が離せません!

おわりに:今後のプレみやの活動に筆者が期待すること

今回の「プレイスメイキングデイズin宇都宮」では、多くの宇都宮の人々が参加し、活発に対話が生まれました。その一方で、上記の「参加者の属性」「今回集まったデータをどのようにまとめていくか」という点やコロナ禍でのワークショップの実施など難しさも痛感しました。しかし、市民とお話をする中で「宇都宮でこんな活動があったんだ」「過ごしやすい場所を宇都宮にもっと増やしていきたい」という声も多くあり、プレイスメイキングの必要性を実感することができました。

日本国内では、プレイスメイキングの認知度はまだ高くなく、まだまだ地方都市では実施に至るケースやプレイスメイキングのプロジェクトは決して多くはありません。それゆえに、3番目の「Power of 10+」ボードにおいて、2番目に設置されていたインスピレーションボードの写真と普段から利用している場所にギャップを感じてしまうという人もいたのかもしれません。しかし、日本の地方都市においてプレイスメイキングの事例が生まれることで全国各地へプレイスメイキングを展開するハードルは一気に低くなると思います。

宇都宮の人と話をするなかで「宇都宮なんて…」「東京や仙台にはなれなかった…」という後ろ向きな声が多くありました。今後も「プレみや」の活動はさらに続いていきます。今後の活動で、徐々に中心市街地エリアだけでなく市民のマインドセットも変わっていき、さらには宇都宮から全国を元気づけていくことが期待されます。これからもプレみやの活動から目が離せません!

_33A0762運営メンバーで記念撮影!パネルにも付箋がたくさん集まりました。今後のプレみやの活動も楽しみです!

All Photo by Takahiro IDENOSHITA
Text by Midori DOBASHI

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