レポート
【ソトノバ・ピープル】ソトがもっと「みんなのモノ」になるといい──名古屋大学大学院 渡邉真理さん
パブリックスペースに関心がある有志が集まって発信する、パブリックスペース特化型ウェブマガジン「ソトノバ」。2015年11月の正式オープン以来、200本を超える記事を配信してきました。1周年記念パーティーの開催に向けて、ソトノバを支えるメンバーにスポットを当てて紹介していきます。
本日紹介するのは渡邉真理さん。名古屋大学大学院 環境学研究科 都市環境学専攻の修士課程に在籍中で、パークレットを研究対象にしています。オーストラリア・アデレードへの1年間の留学で、現地のパブリックスペース活用を目の当たりに。地元の錦二丁目長者町のまちづくり活動にも参加し、まちの人々との交流を楽しみながら研究と実践を両立しています。
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── ソトノバ名古屋支部ということで。
渡邉さん はい、いま名古屋大学大学院の修士2年で、来年にはこちらのメーカーに就職します。東京の企業も考えたのですが、結局地元に縁があったということですね。学生時代から参加している、錦二丁目長者町の活動も続けられるし。
── 名古屋の中心部、古くからの繊維問屋が集まっている長者町エリアでのまちづくり活動ですね。研究室単位で関わっているとか。
渡邉さん 名古屋大学の「都市の木質化プロジェクト」の一環として、ウッドデッキをつくったり木製のベンチを設置したりといったことを、社会実験として実施しています。学部生の頃に、体験みたいな感じで参加する機会があって、面白そうだなと思って。それがきっかけで村山先生(現・東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の村山顕人准教授)の研究室を希望しました。
── 「パークレット」という研究テーマは、どうやって絞り込んでいったのですか?
渡邉さん 錦二丁目の活動に参加しながら研究テーマを探していくうちに、公共空間と公園に興味が集中してきて。公共空間をうまく使って公園みたいな空間を実現している「パークレット」というものがあるということを知って、重点的に追いかけるようになりました。
── 海外で先行している分野ですよね。それでオーストラリアに留学を。
渡邉さん もともと留学はしたいと思っていました。都市計画が勉強できる大学と、パークレットが実際にあるところを探した結果、南オーストラリア州の州都アデレードに昨年1年間行ってました。並行して、米国サンフランシスコのパークレットについても研究を進めています。
日本人はソトづかいに不慣れ?
── そうした中で、日本と海外の違いを感じたりすることはあるでしょうか。
渡邉さん うーん、日本も海外も100%理解している訳ではないので難しいところですが、傾向としてはソトでの活動に対する「閾値(いきち)」の違いを感じます。オーストラリアの人も米国の人も、日本人なら使わないような所にどんどん出て行くんですよね。例えば、道路沿いに幅2mぐらいの芝生帯がある場所で読書していたり、座ってしゃべっているとかもよく見かけます。
日本では、場だけつくってもなかなか使われない。特に独りだと見かけない。ソトの場を使う、ということに慣れていないのかな。
── そういう面はありそうですね。他人の目を過剰に気にする国民性も影響しているかと。他には何かありますか?
渡邉さん 私の見聞きした範囲だと、自分の住んでいる街を大好きな人が多い印象です。「世界中でこの街に住むのが一番でしょ」、みたいな人が多くて驚きます。それも他の街と比べてのプライドではなくて、純粋に自分の街が好き。そういう気持ちになるのに、屋外空間を「自分のモノ」として扱う感覚が大事なんじゃないかな。
── 「自分のモノ」というと?
渡邉さん ソトはみんなの空間であり、みんなが使える場所ということです。みんなで使う場所でもあるし。まちのイメージや、拠り所としての感覚を持てる場所だと思います。錦二丁目の会議でも、「みんなの手の下にパブリックスペースを取り戻さないと」という話題はよく出ます。
でも使う以上は、管理や責任も伴ってくる。ウッドデッキの社会実験をやったときには、まちの人から意見があれば対応したり。みんなで使うものだから、みんなで、という感覚を取り戻していきたいですよね。年齢も職業も幅広いまちの方に会うのは楽しくて勉強にもなるし、今後も活動を続けながら、ソトを使うことの楽しさを広めていきたいと思います。
ソトノバ・ピープルに会える、11/5の1周年記念パーティはこちら。
「1周年記念パーティ!ソトノバとパブリックスペースの1年を振り返る」ソトノバ TABLE#10
Portrait by Mari WATANABE