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まちづくりのプロ集団が提案する山手線の駅前広場 #東大まちづくり大学院演習2019

近年、駅の再開発によって駅前広場のあり方も多様化しています。多機能かつシンプルさを追求し、パーク&ライドやキス&ライドの設置により交通結節点として利便性を向上、ホームから駅前広場までを迷わせない簡単な構造にする駅が増えています。また、駅を出たときに地域を代表とする景色が広がるように緻密なデザインをしているところも多く、何気なく使っている駅前広場は実はかなりの工夫が施されています。では、駅前広場をデザインする人はどのような調査を得て、何を考え、誰に向けてその場所をつくるのでしょうか。

東京大学大学院には、不動産やコンサルタント、電鉄やマスコミ、議員などまちづくりに関わる業界の社会人が学生として、座学と演習のプログラムを受ける「まちづくり大学院」(正式名称:東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市持続再生コース)というコースがあります。

今回、その演習の授業で、秋葉原、大塚、駒込、品川の駅前広場を4つのチームでアクティビティ調査とデザイン提案をするので、ソトノバライターの私が昨年度受講経験を踏まえて最終講評を取材をしました。

過年度のレポートはこちら(2018:新宿駅東口、大塚駅南口、御徒町駅西口、東京駅丸の内口2017:有楽町、東京八重洲口、原宿、御徒町2016:秋葉原、有楽町、高田馬場、田町


講評する先生は、中島直人さん(東京大学都市工学専攻准教授)、泉山塁威さん(東京大学先端科学技術センター助教・ソトノバ編集長)、非常勤講師として、高松誠治さん(スペースシンタックス・ジャパン代表取締役)、鈴木俊治さん(芝浦工業大学環境システム学科教授・ハーツ研究デザイン主宰)、さらに、ゲストとして、大藪善久さん(Soci)、土方さやかさん(秋葉原タウンマネジメント)、永野真義さん(東京大学都市工学専攻助教)です。

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左上から時計回りに中島直人さん、泉山塁威さん、高松誠治さん、鈴木俊治さん
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左からゲストの大藪善久さん、土方さやかさん、永野真義さん

【Case1:秋葉原】
秋葉原駅から神田川まで続くATフィールドを構築せよ!

最初の発表は、秋葉原チーム。対象地は、JR秋葉原駅昭和通り口にある区立秋葉原公園です。この広場は、流入歩行者調査と通行量調査により秋葉原駅の4つの広場の中で1番歩行者が少なく、最も落ち着いた空間であることが分かりました。また、公園は岩本町からの通過動線になっていること、両脇の道路は交通密度が低く、移動交通としてのポテンシャルを活かしきれていないことが明らかになりました。

調査結果と明治時代より運河として利用されていた歴史的背景を活かし、区立秋葉原公園の両脇の道路を公園と一体化させ、公園内の一般駐輪場の移設、公園から和泉橋防災船着場までの横断歩道の拡幅により、公園の連続性をつくり、駅から神田川まで続くいこいの場を創出する提案に落とし込みました。

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調査結果を分析する秋葉原チーム

このチームの特徴は、運営の仕組みまで考えたこと。BIDを活用し、千代田区と秋葉原公園、周辺地権者が公民連携で運営。再開発の負担金を、資産価値増大効果と家賃増加分で補います。

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秋葉原チームの長期的提案 Figured by 東京大学まちづくり大学院都市デザイン演習「パブリックライフ/パブリックスペース スタジオ」

講評では、この2つの増収ではバリューが足りないと指摘。収入面以外に、地域のバリューとして誰をこの空間に誘導するかを考えることで、今まで生まれていなかったどんな活動が生まれるのか。そこも提案に含まれればよりよかった。また、BIDの提案があったことや、秋葉原公園から船着場まで一貫した複数の公共施設に一つのミッションを与えて、それにより魅力的な空間にしているところが評価されました。

【Case2:大塚】
トラムを降りたら、大塚ならではの飲兵衛文化を楽しめる。

次に、大塚駅南口広場。大塚は、2015年に多国籍でダイバーシティ性を備えた交流の場と保育園、コワーキングスペースを展開するRYOZAN PARKが開業、2018年に星野リゾートホテルがオープンし、インバウンド需要上昇中の多様性のあるエリアです。南口広場には、路面電車が通り、商店街には地元資本の居酒屋も多く、ローカル感や商売人情を楽しめることが特徴。

このチームは、流入人口調査や滞留時間調査から三角地帯となっている広場のデッドスペースや側道周辺、高架下スペースが有効活用されていないこと、店舗群の属性調査から駅前の路面店にチェーン店が多く、商店街にある地元資本の飲食店の魅力を活かせていない課題を確認。

そこで、三角地帯や高架下には、ベンチを新たに設置することで雨天・高温時も使える広場の連続性をつくり、側道には地域活動空間としてマルシェやライブの活動、その手前に地元飲食店が週替わりのキッチンカーを出店することで、大塚ならではの名店と来街者が触れ合える提案をしました。

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大塚チームの広場の長期的提案 Figured by 東京大学まちづくり大学院都市デザイン演習「パブリックライフ/パブリックスペース スタジオ」
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大塚チームの広場とまちを繋ぐ長期的提案 Figured by 東京大学まちづくり大学院都市デザイン演習「パブリックライフ/パブリックスペース スタジオ」

講評では、都電から降りたときに広がる風景や都電から見える風景まで考慮したデザインがあればよかった。小さいスケールの提案では、ベンチの置く場所1つで見せたい景色の意図がはっきりするのでもっと細部までこだわりが欲しいとしつつ、広域的にまちを捉えていることや、苦手なパース図をスケッチで表現したところが好評でした。

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アクティビティ調査結果を説明中。
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大塚チームは提案を手書きのパースで説明。スケッチブックに描かれた手書きのパースに場が和みました。

【Case3:駒込】
住民が誇る植木文化を活かして駅前にはなきひろばをつくろう!

駒込チームは、住宅街や商店街が広がる、生活感のある地域にチャレンジします。対象地のJR北口には、染井吉野桜記念公園があり、ソメイヨシノの発祥地として地域の誇りを感じることができます。周辺には、六義園や由緒ある寺社仏閣もあり、江戸時代から続く歴史が残ります。

調査では、公園付近や駅、図書館利用者の動線と地域習慣、周辺の建物の状況を調べました。動線調査では、本郷通りや駅北側の道路の交通量が多いこと、公園内を通過する歩行者は斜めに移動しようとするが構造物に阻まれ迂回していることが判明。地域習慣調査は、鉢植えなど植木をしている住宅が多くみられ、公共的な樹木と個人が植える植木が駒込のまちづくりを考える中で重要なこと、周辺状況調査で公共施設などの老朽化と視認性が低い課題を明らかにしました。

このチームの着眼点は花木文化。ソフト面の提案では、公園運営管理協議会をつくり、個人宅の庭を一般公開するオープンガーデンの実施や植木コンテストにより、住民の植木文化の誇りを伸ばします。20年後の駅前広場が完成する頃には、駅前広場にシェア花壇を設け、地域住民が主体的に広場の緑を育てていく住民参加型の広場づくりです。ハード面は、公園横の道路を歩行者専用道化することで道路を挟んだ先の店舗群と広場の関連性を高め、地下駐輪場入口をガラス屋根にすることで視認性の向上を提案。それにより、広場の滞留や活動を向上させる狙いです。雨天時も広場を活用できるように、桜の木と呼応するように木立屋根を複数創る、自然と屋根が違和感なく共存する提案をしました。

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駒込チームの長期的提案 Figured by 東京大学まちづくり大学院都市デザイン演習「パブリックライフ/パブリックスペース スタジオ」

質疑応答では、泉山先生から

「高齢化が進む中で広場の多世代性をどう考えているか」

の質問を受け、

「駒込で開催している桜祭りイベントを見に行ったとき、多国籍多世代が混在している印象を受けた。この広場もそのような使われ方をしていくのではないか。植木というとアッパーなイメージを与えるからこそ、花木という言葉を使っている。」

と答弁があったことが印象的でした。また、地域習慣まで調査した点や、オープンガーデンの提案が好評でした。

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教室は満席。みんなプレゼンに聞き入っている様子。
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はなきひろばの説明中。

【Case4:品川】
広場のアクティビティが変わる階段の使い方

最後は品川駅港南口。品川駅といえば、2027年にリニア中央新幹線(以下リニア)の始発駅となる日本各地と空港を結ぶ駅になる予定で、現在も新幹線をはじめ、羽田空港までアクセスできる京浜急行電鉄など複数の路線が乗り入れる首都圏有数の交通結節点です。平日は、交通利便性からオフィスが集積し、サラリーマンや乗り換え客が混在し、賑わいます。

このチームは、広場の用途や利用者属性を把握するためにアンケート調査を取り入たことが特徴。アンケートでは、品川区民以外の若年層の女性利用者が多いこと、マッピング調査と軌跡トレース調査ではペデストリアンデッキ上はビラ配りや居酒屋の呼び込みが多く、待ち合わせに活用されていないこと、行動パターンとしてふれいあい広場に直行、アレア品川、品川イーストワンに向かう3パターンがあることを確認しました。

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アンケート調査結果を発表中

調査結果を提案にするために着目したのは、デッキを結ぶ階段。現在、エスカレーターの左右にある階段を、エスカレーターを除き階段を拡幅することで、待ち合わせの人が階段に座ることもできるスペイン階段を導入。ペデストリアンデッキと階段下にカフェや屋台を設置することで、階段に座り、軽食もとれる、目的地が明確な品川駅利用者に出発前のひと時を楽しんでもらう工夫を考えました。

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品川チームの長期的提案 Figured by 東京大学まちづくり大学院都市デザイン演習「パブリックライフ/パブリックスペース スタジオ」

講評は、階段に着目した発想や調査方法が面白くてよかったという声と、反対に調査では属性によって広場の使い方が違うこと、朝昼晩によって用途が変化することも細かく追ってほしかった。広場を使うことでどういう人に何を提供するかをもっと考えてほしいと辛口なコメントも寄せられました。他にも、次の品川を考えた時にリニアの開通も考慮し、駅前広場の開発の良い面と悪い面を事例から学んで、次の世代に何を残すかチーム内で議論があればより良かったと、リニア始発駅を意識した意見も出ました。

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先生の講評は重要な気付きに。メモは必須。

アクティビティ調査から考える街のデザインは十人十色

以上、4チームがアクティビティ調査から様々な切り口で提案に落とし込むところをご紹介しました。まちは、そこで暮らす人、働く人、集う人によって日々進化しているもの。そのため、現状の調査結果に対しての提案では足りず、未来を考えながら残すべきものと、進化させるものを整理し、現在と未来の懸け橋として人にギャップを感じさせないようデザインをしなくてはなりません。だからこそ、椅子の置き方など細かいところにも考えを重ねる必要があるんですね。

私は昨年、受講生として提案を行いましたが、アクティビティ調査の結果を、洞察する未来に繋げることの難しさを感じました。昨年のチームで印象的だったのは、新時代の電車の乗り方を予測して駅前広場のデザインを考えたチーム。今年も、駒込チームが、これから高齢化していく中で対象の広場がどうなるか考えていたところが良かったです。

最後に、講評の際に出た意見で、一番印象に残った中島先生の言葉をご紹介します。

「調査はあまり面白くない結果が出たときこそ、工夫の仕方があるのではないでしょうか。」

面白い結果が出るまで、様々な切り口で掘り下げて検証する。そこまでやって、まちの神髄が浮き彫りになり、デザインに活かせると受け止めました。駅前広場をはじめとするパブリックスペースは調査を重ね、デザイナーたちが考え抜いて生まれた場所。皆さんも、駅前広場で待ち合わせまで時間がある時は、デザイナーがどうまちを捉えて、いまの空間を創ったのか考えるのも面白いかもしれません。

Photo by 土屋 有里恵(特記以外)

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