レポート
ソトノバ・ラジオ#10 | Lucinda Hartleyさん|Neighbourlytics, Porch Placemaking
ソトノバ・ラジオ#10を紹介します。
ソトノバ・ラジオ#10のゲストは、メルボルンを拠点とする都市デザイナーのルシンダ・ハートレイさん。
地域のソーシャルデータ・プラットフォームを行うNeighbourlyticsを率いています。また、プレイスメイキングのコンサルティング事務所であるCoDesign Studioを立ち上げた人物でもあります。最近は、COVID-19による世界各地での家の周りの空間の使い方の変化に注目し、軒先を使った活動「ポーチプレイスメイキング」のムーブメントを起こしています。
パブリックスペースにおけるデータ活用に加え、今まさに進んでいる「ポーチプレイスメイキングウィーク」についてうかがいます。
パーソナリティは、 クオル・ディレクターの田村康一郎さん 。
ラジオの様子は、YouTubeの「ソトノバ・チャンネル」,Spotifyのポッドキャスト、この記事では書き起こしをお届けします。
YouTube:「ソトノバ・チャンネル」
以下は、書き起こしです。当日の様子をお伝えします。
田村:
ソトノバラジオ10回目、本日はオーストラリアからLucinda Hartleyさんをお呼びしています。
Lucinda:
Hi,こんばんは Koichiro, and hello everybody. It’s a pleasure to be here today.
田村:
ルシンダさんも今日とても来れて嬉しいということで。彼女は最近ポーチプレイスメイキングという、ソトノバでも記事を出したんですけども、その活動であったり、データ関係の面でパブリックスペースに関わっていますので、色々聞いていきたいと思います。
通訳を挟んでいきながらいきたいと思います。では早速最初の質問を投げていきたいと思います。パブリックスペースに関する活動にどのように関わっているのか、聞いてみたいと思います。
Lucinda:
私はこれまで10 年ほどパブリックスペース関係に関わってきまして、最初はランドスケープから始めて大きなランドスケープデザイン事務所でキャリアを始めました。仕事をしていくうちにどんどん社会的な面だとか人の面というところに興味を持つようになりました。次第にプレイスメイキングという方向に向かっていきました。
10 年後にCoDesign Studioというプレイスメイキングの事務所を開きました。その活動をやっていて、最近ではNeighbourlyticsという会社を共同で設立しまして、その会社はデータを使いながらパブリックスペースのパフォーマンスを図っていく、そういったことやっています。
どちらもパブリックスペースをよくするという活動でやっています。前者の方に関してはプログラムを組んでいくということでやっていまして、後者の方ではビックデータを使いながらその場所について測っていく、そういうことやっています。
田村:
それではこれが最初の質問の答えということですので、もう少し具体的に聞いていきたいと思います。今ポーチプレイスメイキングウィークといったことを、やっていらっしゃるんですけども、これは一体どういうものなのかっていうところと、それの背景にはどういうことがあったか、それを聞いてみたいと思います。
ポーチプレイスメイキングウィークのイベントページLucinda:
一ヶ月ほど前、ロックダウンしている中で、周りの仲間たちと話していて、とてもパブリックスペースに関する活動が難しくなっている、そういったことを話していました。
パブリックスペースで、なかなか活動が難しいということになったんですけど、それでも自分の家で小さいプレイスメイキングができるのでは?とそういったことを考えました。ここでポーチと言ってるんですけども、これは住宅の前にある小さなテラスのようなスペースですけども、そこに限らずにバルコニーであったり、今家の前のストリートであったりそういったところで、よい時間を過ごせるようなそういうことができるんじゃないかと、考えました。
その時に私たちは皆隔絶されたような状態にあったんですけど、同僚や友達や近所の人たちと一緒にアクションをする、そういったことができるんじゃないかと考えました。
ポーチプレイスメイキングウィークに協力するグローバルなパートナーLucinda:
そこでグローバルないろんなネットワークに声をかけていって、ソトノバとも協力できましたし、そういったグローバルな繋がりから動きが「ポーチプレイスメイキングウィーク」としてできていきました。
この1ヶ月の間に30の世界のパートナーと繋がって、ケニアからノルウェー、シンガポール、日本、カナダなどいろんな国と地域を巻き込んだ動きができたということで、非常にワクワクしていています。
今ポーチプレイスメイキングウィークの半ばでして、100を超えるローカルなプロジェクトがどんどんと集まってきています。難しい状況にあった中でいろんなクリエイティブなアクションが出てきているところです。ここの画面に5月30日から6月5日と出ていますね。ポーチプレイスメイキングウィークの期間です。
田村:
ソトノバの記事からこのポーチプレイスメイキングウィーク、日本語もこのページに載せて頂いていますので是非チェックしてみてください。
それでは次のルシンダさんへの質問に移ってみたいと思います。
ポーチプレイスメイキングの全体像を伺ったんですけれども、なかなかイメージしにくいようなところもあるかもしれないので、そういった面白い事例であるとかこれまで気付いた事をお聞きしたいと思います。
Lucinda:
非常に大きなものから小さなものまであるというのが面白い。これから3つの例をご紹介したいと思います。オーストラリアのパースという街では、タウンチームという団体がいて、路上のフェスティバルというのを企画して行いました。地元のオーケストラを組んで路上で、本当のお祭りのようにやるといったことをして、そこでたくさんの地域の人たちが(もちろん距離を取った形だと思うんですけど)集まって、パブリックスペースのような使い方が出来たということが一つです。
もう一つの例はノルウェーでして、ここでプロジェクトをやった人は、ひまわりの種をご近所に配るといったことをやっているそうです、軒先でですね。それで近所の「人と繋がる」ような事が起こってるそうです。
もう一つはケニアのナイロビの例です。ここにスラムコードという団体がいまして、団体がバルコニーが使っていたりだとか、バルコニーにプランターを置いたりして非常に歓迎感のあるような、非常に気分が上がるような雰囲気を作っている、ということです。
田村:
非常に沢山のグローバルな事例をお聞きしました。
今言ったようなポーチプレイスメイキングの様子というのは、先ほど画面にお見せしたporchplacemaking.comのページで世界のマップが見れますし、あとはFacebook ページでも世界の事例がどんどん投稿されているようです。是非日本の皆様にも参加してもらいたいという、すぐできるアクションなんですけども、少しそこの方でコツを聞いてみたいと思います。
なかなか日本ではポーチと言われても馴染みがないかと思いますのでそこを聞いてみたいと思います。
Lucinda:
ポーチという言葉は、やっぱりオーストラリアでも必ずしもわからないという人もいるようで、私たちは住宅とパブリックスペースの間にある空間、そういう風に位置付けています。
具体的に言うと、家の前のストリートであるとかバルコニーで、または窓の表面であるとか、あるいは家の前に植物を置くとか、そういったところでこの場所を活用するよという、うまく使うよという、そういった雰囲気を出すということですね。そういったことを近所に伝える、といったことができると思います。
田村:
そこでもう一つ日本的なとこで気になるところを、聞いてみたいと思うんですけれども。やっぱりご近所の目というところが日本では気になるところもあるかなと思うので、そういったところのコツとかもお聞きしてみたいと思います。
Lucinda:
やっぱりそういったご近所問題は、オーストラリアでも共通するところもあるようです。一方で寂しい、孤独であるとかそういった状況もあって、50パーセント、半数の人がそういった状況抱えてるといったこともあります。なので、そういった問題と上手くくっつけるというのが良いのではないでしょうか。
特に今のパンデミックという状況で、コミュニティということの大事さに気づいている人が多いと思います。「ご近所関係」といったところですね。高齢者の方が買い物に行けなかったりそういった状況があります。そういったところでネットワークを築くってとこがやはり大事なんだと思っています。
やっぱり難しいというところもあると思います。大事なのはそのご近所を快適にするという事だと思っています。私も日本を旅行したところで気づいたんですけれども、路上で鉢植えが置いてあったりだとか、少し家の前をきれいにするといったところにすごく気付きました。そういったことでやっぱり周りが快適に感じるし、安全に感じる、そういった事を私たちも日本から学ぶことがあるなと思っています。
田村:
ポーチプレイスメイキングについて色々伺いました。そう考えると(ポーチプレイスメイキングと)名前は付いていますけれども、あまり大げさに考えずにいろんなことが気軽にできるんじゃないかなと思っているので、是非ソトノバのページに日本語で情報ありますので、トライして日本ではこんなことがあるよっていうのを出してもらえるといいのかなと思います。
Lucindaさんは、もう一つ「データ」というところを扱っている、という顔もお持ちですね、こちらの方も非常に気になるところなので。どういったところなのか聞いてみたいと思います。
Neighbourlyticsによる場所と地域社会のデータ分析Lucinda:
例えば、交通エンジニアがデザインすると言った時に、ストリートデザインすると言った時に、交通データというのは非常に基本になると思います。ただプレイスメーカーがデザインするって言った時に、「人のデータ」これがないんじゃないかってことに気付きました。
このNeighbourlyticsという団体の活動としてはデータ、パブリックスペースのデータの、社会生活、ソーシャルライフの面であるとか、人間的な面に注目しています。このデジタルデータを使うことで、場のパフォーマンスというものを測っていこうとしています。
これでいろんなところをチェックしています、デジタルな情報で、どういったところにアクセスされているのかをわかるようにしています。
この情報を使うことによって、まちを作る人が、パブリックスペースが、どのような状態であるか、わかるようにするものです。
Lucinda:
このデータでどれだけその場所に人気があるのか、人がいるのか、どんなアクティビティがあるのか、ということが分かるようになるものです。これによってパブリックスペースのデザインができる、といったものです
これが大事なのは、各地というのはそれぞれユニークで、独特なことが起こっていることがあります。そこで色んな情報を知りたいわけですが、サーベイとかインタビューということになると、なかなか十分な情報が得られない、カバーしきれないということがあります。そこでデータを使うことで、言うならばまちの「脈」であるとか、ハートビートというようなところを測っていく、そういったところをイメージしています。
3つのこのデータの種類というのがあります。一つはマップです。場所のデータということで、どんなアクティビティがあるか、イベントがあるのか、それによる変化というものを捉えています。
他には地域の価値ですね。「Local value」これをテーマごとにまとめています。この投稿されている情報をもとに、その地域に関してどういったことが大事か、大事と考えているか、そういったところ理解することができます。
田村:
日本ではこれからなのかな、というところですね。ここでライブで質問が入っているのでぶつけてみたいと思います。データであるとかスマートシティ関係では、最近トロントで Googleが開発していた、Sidewalk Labsのスマートシティ計画がうまくいかなかった、というのが数週間前に出たと思います。このことについては彼女の観点からどう思っているのかを聞いてみたいと思います。質問ですね。
Lucinda:
トロントのGoogleのプロジェクトについてはよく知っていて、いろんなデータが、行動に関する活用とその場所スペースを作るといったことへ活用できるのではないかというところで見ていました。一方でやっぱり今少し極端な例だったかなという印象を持っています。言うならば「まちというのはコンピューターではない」といった風に感じました。
Sidewalk Labsのプロジェクトでは、たくさんのデータに限らず、たくさんのイノベーションのテストがされようとしていました。データというのはあくまでもその一部であったと思います。
田村:
それでは、そろそろお時間が近くなって参りました。最後にここの流れでもう一つ聞いてみたいと思います。「まちはコンピューターじゃない」と言ったことですけれども、Lucindaさんはまちとパブリックスペースをどういった風に考えているのか最後に聞いてみたいと思います。
Lucinda:
いい場所というのは、ひとつ言うならば地元で形作られているというものだと思います。そこでデータができるというところは、それを助けることだと思っています。独自地域、独自の場所というものは人々の行動、人々の行動システムといったところの理解から助けることだと思っています。
データというものは情報として政策意思決定を助けることができると思います。一方で、ローカルといったところも同時に大事になってくると思っています。
田村:
日本でもこういった話題は、大事な話題になってきていると思いますので、これからもLucindaさんの動きなどをフォローしていけると良いなと思いますし、Neighbourlyticsのホームページを見ていただけたら色々わかると思います。
それでは、本日ありがとうございました。Thank you Lucinda !
Lucinda:
Thank youありがとうございます!
Photos by Lucinda Hartley
テキスト: 秋元友里