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レポート

「青葉シンボルロードのアドボカシー型タクティカル・アーバニズム」プレイスメイキング・アクション第2弾レポート

2016年6月の記事「静岡発 青葉シンボルロードのアドボカシー型タクティカル・アーバニズムとは?」で、長期的な静岡市中心部のまちの構造改編も視野に入れた試行型のパブリックスペース活用の取り組みについて紹介しましたが、今回はその第2弾の取り組みについて紹介します。

まずは簡単に前回のおさらいから。

とてもかいつまんで言うと、ポテンシャルを秘めながらも、「勿体ない」空間となっている青葉シンボルロードのあり方について、静岡市や市民に向けて、アドボカシー(政策提言)を実施し、地元の方々と議論を重ねつつ、2016年1月にプレイスメイキングの考え方に基づいた暫定的な飲食・滞留空間の整備実験(プレイスメイキング・アクション)をタクティカルに行ったことで、何の政策的位置づけがなかった青葉シンボルロードに対し、行政も含め前向きになってきたというのが、前回の話でした。

利用者・主催者・行政間のWIN-WIN-WINの関係構築

1月の実験の好評の声と暖かい時期開催の期待の声を受け、昨年度の実験終了直後から議論を重ねていたちょうどそんな折、静岡放送、静岡新聞社が、青葉シンボルロードでオクトーバーフェストを企画しているという話が舞い込んできました。

第1弾の実験も所管していた市の都市計画課が、

公園をただ単にイベント利用するだけでなく、それとあわせて、市民にパブリックスペースの利用の良さを知ってもらう機会を提供するべき

と考えてくれたおかげで、オクトーバーフェストとプレイスメイキング・アクションの同時開催という基本路線がつくられました。筆者も空間演出のアドバイザーに加わり、主催者、行政と話し合いを続け、オクトーバーフェストの開催を青葉シンボルロードで認め、公園占用料を免除する代わりに、主催者側でプレイスメイキングの考え方に基づく空間づくりを行い、既に市や公社が所有している備品では足りない備品は主催者側で買い足し、イベント後は市へ寄附するというスキームが合意されました。

これによって、誰も損をせず、以下のような利用者・主催者・行政のWIN-WIN-WINの関係を達成しています。

利用者(市民)のWIN ・心地よい空間で飲食を楽しむことができる

・増強された備品ストックを用いて、様々なまちづくりの取り組みが実現可能となる

主催者のWIN ・公園占用料が免除される

・市で所有している椅子・テーブル等を活用できる

・イベント全体のイメージアップを達成できる

行政のWIN ・「まちは劇場」という政策に沿った取り組みを推進できる

・取り組みがより多くの人の目に触れる

・今後のまちづくりで活用可能な備品のストックが増強される

このような調整を経て、オクトーバーフェスト及びプレイスメイキング・アクションは、9月9日(金)~19日(月)の11日間にわたって、静岡市中心部青葉シンボルロードで開催されました。ドイツビールやドイツの郷土料理を食べることができる滞留空間には、人工芝と可動椅子・テーブルの空間、約10mのロング・テーブルの空間、立ったまま軽く飲めるスタンディング・テーブルの空間、ハンモックの空間等、様々な滞留空間のバリエーションを用意しました。

冬の実験に引き続き、地元の飲食店組合やおまちバル実行委員会にも協力いただき、フードのバラエティも確保し、利用者の裾野を広げることができました。

また、可動式の遊具を設置し、親子連れの利用者が気兼ねなく、くつろぐことができるように配慮しています。これによって、様々な世代の方、様々な人数構成の方が、おもい想いの形で利用してくれたのではないかと考えています。

人工芝と木製の可動椅子・テーブルによる飲食空間

人工芝と木製の可動椅子・テーブルによる飲食空間

スタンディング・テーブルで手軽に

スタンディング・テーブルで手軽に

ロング・テーブルでは大人数で

ロング・テーブルでは大人数で

ハンモックでのんびりと

ハンモックでのんびりと

大人気だった子どもの創意工夫で自由に楽しめる可動式遊具(協力:(株)コトブキ)

大人気だった子どもの創意工夫で自由に楽しめる可動式遊具(協力:(株)コトブキ)

集客力のあるオクトーバーフェストと組み合わせて、このような取り組みを行うことで、より多くの人の目に「パブリックスペースは自由に使っていいんだ!」ということ知ってもらうことが、今回の実験の大きな目的であり、それはある程度達成できたのではないかと考えています。

そして、隠れた最大の成果は、今後のまちづくりで自由に活用可能な可動椅子やテーブル等の備品ストックが飛躍的に増えたことです(なんと、椅子約80脚、テーブル約30台!)。

行政としてこういった備品を所有するのは、かなりレアケースだと思いますので、今後の活動が期待されます。

今年の1月と9月の2回の試行的取り組みを通じて、更に利用者、出店者、行政共に青葉シンボルロードの活用のポテンシャルと今後の展開イメージを感じていただけたのではないかと思いますので、せっかくの備品類をうまく活用しながら、恒常的な空間の利活用とそれを支える仕組みづくりへと繋げていければと考えています。

all of Photos by Satoru Tsuchihashi

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