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レポート

静岡発 青葉シンボルロードのアドボカシー型タクティカル・アーバニズムとは?

「上位計画上はあまりスポットライトが当たっていないが、地域の中では重要な場所であるため、地元も何とかしたいと思っている。しかし、土地所有や整備費用、維持管理の問題を考えると整備に踏み切るにはハードルが高く、行政もそこに予算を付けるつもりはないため、整備しようにも整備できない」

こんなケースに、公共空間に携わる専門家、行政職員等であれば、何度かぶち当たったことがあるのではないでしょうか?

今回は、この命題の回答に有効ではないかと考えながら、筆者を含む同世代を中心とした専門家集団(Action for Public Space推進会議+その協力専門家)で、静岡の中心部で取り組んでいるアドボカシー型タクティカル・アーバニズムについて紹介します。

アドボカシー型タクティカル・アーバニズムの用語の定義はここでは割愛しますが、「長期的ビジョンを含む専門家提言をきっかけに、まずは短期的なアクションから公園空間を改善する取り組み」と理解してください。

青葉シンボルロードのポテンシャルとは?

青葉シンボルロードは、静岡市役所と常磐公園を結ぶ、幅員36m、延長約460mの目抜き通りで、昭和15年の静岡大火を受けた大火復興事業により防火帯として築造され、昭和63年~平成3年に中央部に公園を有する現在の形に再整備されました。公園部には、立派なケヤキの大木が列植されており、静岡都心の貴重な緑のオープンスペースとして、市役所前の広場空間を中心にイベントも多数行われています。

ただ、呉服町通りと七間町通りという非常に活力のある商店街の間に位置しているにも関わらず、イベント以外の日常では喫煙所としてしか利用されておらず、何よりも公園の両側の道路によって、沿道との関係が切れてしまっている状況は、まさに「勿体ない」という状態でした。

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地域と専門家との対話によって生まれたアイデア集のアドボカシー

それに対して、我々は地域の住民・事業者・商店街関係者・専門家、行政職員等と共にワークショップを開催し、今の課題や利用のニーズを把握し、その意見を踏まえて、まず専門家チームとしての提言書をまとめました。

提言書では、長期的で壮大な夢を語るのではなく、すぐにでも実行可能なものや短期的に実現することも可能な4つのアイデアを中心にまとめています。そして、平成27年2月に開催された「プレイスメイキング・シンポジウム in 静岡」にて、副市長を含めた静岡市や市民に向け、アドボカシーを行い、「この取り組みを続けていこう!」ということが理解されました。

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アイデア集に基づいたタクティカルなアクション

これを受け、平成27年度には、市及びまちづくり公社と協力しながら、プレイスメイキングの考え方に基づいた暫定的な飲食・滞留空間の整備実験が行われました(平成28年1月15日~31日)。

まずは低予算でできることからということで、可動椅子・テーブルや可動式屋台、芝生、杉材でできたストリートファニチャ等を用いて、簡単な空間づくりと飲食店舗の展開を行いました。

ただ、簡単にやるといって、普通のイベントのように見えてはいけません。「継続的に、この場所を利用したい!」と思ってもらえるような取り組みであることが重要です。

デザイン性の高い可動式屋台やストリートファニチャをレンタルする、人と人との距離感に配慮したレイアウトにする、ガスストーブを配置する等、空間・滞在の質を高める工夫は限られた予算の中で出来る限り取り組みました。

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結果として、屋台で買って、屋外で食べるというだけでなく、可動椅子・テーブルでカードゲームを始める、小上がりで弾き語りをする等、こちらも想定していなかった使い方が起こり始めました。

真冬の寒い時期だったので、いくらストーブがあっても、これらのアクティビティは限定的なところはありましたが、天候の良い日には、1日に200名以上の方に利用していただき、利用者全体の8割超の方から満足したとの評価をいただいています。

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この実験の成功体験を受け、今年度は季節の良い時期に、これまで購入した既存の備品も活用しながら、更なる賑わいづくりの実証実験を行う予定となっています。

今のところ、直接的な空間整備に繋がってはいませんが、何も政策的な位置づけがなかった青葉シンボルロードに対し、市から予算が付くようになったということだけでも大きな進歩ではないかと肯定的に捉えています。

時間はかかるかもしれませんが、暫定利用と評価の積み重ねを経て、最終的には、公園両側の道路空間も歩行者系空間に転換することから、静岡市中心部のまちのあり方を変えていくことにタクティカルに繋げていければと考えています。

all of photos by Satoru Tsuchihashi

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