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「屋上」と言えば名古屋へ!『青空ルネサンス』が描く新しいカルチャーの創造

あなたは屋上という単語を聞いてどんなイメージが浮かびますか?

 そのイメージは日常でしょうか、それとも非日常でしょうか。時間的な流れなど、様々なシチュエーションの屋上が想像できると思います。例えば、これまでにソトノバのホームページでも、屋上をテーマに複数の記事が投稿されています。

ルーフトップバーは、屋上に人を惹きつける大きな魅力を備えており、今回のインタビューでも盛んに話題に出てきました。

アーバンキャンプというプロジェクトでは、屋上の新しい使い方が提案されています。

 しかし、日本において「屋上」という場所で展開されるアクティビティは、私自身を含め一般に認知されているとは言い難い状況です。そんな中、名古屋を中心に、新しい屋上利用のプロジェクト「青空ルネサンス」が始まり、ラジオ出演や新聞でのインタビューを通して注目を集めています。

 本稿では「ROOFTOP URBANISM」というキーワードを掲げ、まちの空に新たな空間を演出する実証実験としてこれまでに3度行った、「青空ルネサンス」について仕掛人へのインタビューと、実際に筆者が体験した実証実験についてレポートします。新型コロナウイルス感染症の発生をきっかけとした「屋外空間」の飲食の需要増加への対応と、普段私たちが面白いと認識してこなかった「未利用地である屋上」を新しいカルチャーづくりの機会と捉え、挑戦しているこの取り組みについて、ご紹介します。

(ソトノバ・スタジオ|ソトノバ・ライタークラスの卒業課題記事です。)


青空ルネサンス』ってなんだろう

「青空ルネサンスは、屋上を利活用して、都市風景を変えていくプロジェクトです。現在は、定期開催型のイベントとして、屋上を貸して頂き、屋上に小さな都市公園を設えて、テイクアウトを食べる場所として提供しています。」(https://camp-fire.jp/projects/view/406688より引用)

屋上で食べる、屋上で語る、屋上で過ごす——『青空ルネサンス』がどんな風景を目指しているのか、この動画にその魅力が詰まっています。

屋上で何すればいいのかわからない」

私自身、屋上のイメージは、

「小学校の屋上で遊んでみたかった」

そのくらいでした。実際に屋上にポジティブなイメージを持っている人はそんなに多くないのではないでしょうか。

『青空ルネサンス』が対象とするのは、まさにそのような人で、

「これまで使ったことがなかったけど屋上って気持ちがいいね」

というネガティブをポジティブに変換することに意義を見出し、新しいカルチャーを生み出すことを、「青空ルネサンス」は実現したいビジョンに掲げています。

知人・友人を中心に共感者を集めることを目的に小さく始めた社会実験1回目、アートやファッションとのコラボに挑戦し、その界隈から人を集めることに成功した2回目、「浴衣と屋上」をテーマに初めてコンセプトを設定し、ラジオ出演や新聞取材などを通して新たな集客に結び付いた3回目。

数度の挑戦を経て、経験知として分かってきたことがあります。それは、このプロジェクトのポイントが、「まちを俯瞰し違う捉え方をする」きっかけであることです。さらに、「屋外空間」での飲食の需要増加への対応と、「未利用地である屋上」のマッチング、周囲の飲食店や近隣住民を巻き込んで、まちを盛り上げようとする仕組みが形成されていく。その仕組みを提供しつつ、いわゆる「シビックプライド」を屋上から生みだそうという取り組みとも捉えられるのです。

屋台の代名詞と言えば博多、のように、「青空ルネサンス」は

「屋上と言えば名古屋」

を目指しています。日本における屋上利用のお手本となるべく、今、新しいカルチャーの創造がここ名古屋の空で始まっているのです。

まちの多様なアクティビティはグランドレベルから」

 昨今のパブリックスペース活用、まちの魅力や人々のアクティビティを増進させる視点としてまちの一階「グランドレベル」を魅力的にしよう、という視点が認知されるようになり、私たちの身近な広場や公園、水辺といったパブリックスペース活用事例が増えてきています。しかし本稿ではそのグランドレベルの視点とは少し趣向を替えて、屋上活用からまちを考える、そんなプロジェクトの紹介記事となります。

仕掛人の想いに触れる

プロジェクトの仕掛人で建築家でもあるrhyme design篠元貴之さんにインタビューし、興味深いキーワードを中心に『青空ルネサンス』の発想が生まれるに至ったきっかけをお聞きしました。

海外の屋上活用事例から新しい視点を学んだ学生時代

篠元さんは学生時代に、自身の見識を広げる目的から、アメリカやドイツで生活し、日常生活から日本とは異なるパブリックスペース活用事例を目の当たりにしてきたそうです。

例えば、アメリカ、シカゴの大リーグ・カブスの球場では、球場周辺の建物の屋上がスタジアムの客席の延長として屋上が使用され、「Wrigley Rooftops(リグレーの屋上)」と呼ばれています。

このように、

「まちを違う捉え方で見せる、そこにあるものをハッキングする」

といった、ある種、新しいハコモノを建てるのではなく、あるモノの新しい使い方を提示するリノベーション的な使い方に大きな影響を受け、

「不利な状況を面白く使うという光景を目の当たりにして、いつか、名古屋でも状況を好転させたい」

そう思うようになったそうです。

今回のインタビューを通して、篠元さんにはいくつか事例を紹介いただきました。パブリックスペース活用の先進的な事例を海外で身をもって体感し、それを日本に導入しようとしているのです。

海外での屋上活用と少し異なる日本の先進事例

篠元さんは帰国後、そして社会人となってからも、前述の紹介記事にもあるようなルーフトップバーに刺激を受けています。

京都のルーフトップバー「in the Moon. 」や「K36」からは、その景観を活かした屋上活用として特に影響を受けたそうです。

「まちを俯瞰するきっかけに」

盆地である京都の屋上のルーフトップバーからは、街並みや周囲の山の稜線を一望できます。このように、

「普段歩くときとは違った新しい視点でまちを捉えられる場所が屋上なのだ」

と認識したそうです。

妄想してみよう:実現に向けたビジョン

ここまで「青空ルネサンス」の着想に至るまでのバックボーンを聞いてきました。

“まちを違う捉え方で見せる、そこにあるものをハッキングする”

“まちを俯瞰するきっかけ”

地元名古屋のまちに物足りなさを感じていた篠元さんは、海外や日本の先進事例に影響を受けつつ上記のような発想を、

“名古屋に新しいカルチャーを創る”

と力強い言葉で言語化していました。

他の大都市と比較すると、名古屋はどこか魅力が足りない、そう言われることがあります。

しかし、モーニング・喫茶といった他には無い独自のカルチャーが定着しており、それが観光要素としても1つの魅力になっています。 当たり前にそこにある、それがカルチャーと呼ぶとするならば、この「青空ルネサンス」を通して屋上を上手く使う土壌が形成されていく様は、実に妄想し甲斐がありませんか。

上記の実現に向けた篠元さんの考える少し先の未来について、屋上初心者の私たちももう少し詳しく妄想してみましょう。

①  屋上の使い方を知る

まずはイベント的な利用でまわりの意識を変えることからのスタートです。既に社会実験的に取り組んできた経験をフィードバックし展開していきます。芝を敷く、イスと机を置く。身近な場所で、小さなプレイスメイキングをしてみてください。

②  屋上というプレイスを非日常から日常的な空間へ変える

意識が変われば行動が変わり、屋上という選択肢が日常生活にスパイスを与えます。まずは自分自身から、屋上利用マスターを目指しましょう。

③  屋上のアクティビティが知名度を獲得し、線となり、面となる。

発信し続けることが大切です。屋上利用マスターはどんどん周りを巻き込んで、屋上利用の沼に引きずり込みましょう。

④  名古屋と言えば屋上、という新しいエリア、カルチャーへ

屋上活用が大衆に認知され、「青空ルネサンス」の描くビジョンが当たり前となり、屋上は誰もが上手く利用できる、日常のプレイスになります。

私は、「カルチャー」は住民の想いからボトムアップで生まれるモノだと考えます。「ファーストペンギン」になれるのは今だけです。このように、まずは小さなアクションから始めて、次第に大きなムーブメントになることをを目指す、そんなビジョンを発信し続けているのです。

篠元さんはこの流れで生まれる屋上を

“第二の地平”

といいます。なるほど、これが正に“ROOFTOP URBANISM”:直訳すると「屋上の都市化」、深読みすると「屋上を通した新たな都市文化生活の創造」なのではないか、と私は受け取りました。

冒頭で「まちの多様なアクティビティはグランドレベルから」という話に触れましたが、第二の地平にも、新しいカルチャーが生まれる機会が眠っており、それを引き出すトリガーとなるのがこの「青空ルネサンス」なのではないでしょうか。

ROOFTOP URBANISMの未来

屋上は使うのが当たり前、という新しいカルチャーが定着し、誰もが当たり前に屋上を利用している。そんな未来を妄想し、本気で実現しようとしている篠元さん。

今回のインタビューで篠元さん熱い想いを聞き、加えて実際に「青空ルネサンス」を体験した筆者は、既に屋上利用の魅力にどっぷりハマっています。屋上と言えば名古屋、私もその未来の実現に向け、今後もアクションを起こしていきたいと思います。私の想いの一部でも、この記事を通して伝わっていれば嬉しいです。

旅先で立ち寄るルーフトップバーでそのまちに思いを馳せるのも良いですが、私たちが日々探し求めている日常の居場所は、もしかしたら身近な屋上にあるのかもしれません。

インタビュー・写真提供:rhyme design 篠元貴之

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