ソト事例
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一本の緑道も周辺環境により異なる使われ方!~自由が丘の緑道を踏破して考える~
「自由が丘」といえば、どんなまちを思い浮かべますか?
スイーツのまち?それとも、おしゃれな雑貨屋さんが集まるまち?
どちらもその通りですが、実は、豊かなソト空間が広がるまちなのです。
その中心となるのが緑道。自由が丘のメインストリートの一つともいえるマリ・クレール通りと一部並行していることもあり、緑道のベンチは、テイクアウトしたスイーツを食べたり、ショッピングの合間に休憩したりする人でいっぱいです。
すっかり自由が丘の顔となった緑道の正式名称は、「九品仏川緑道(くほんぶつがわりょくどう)」。この記事では、九品仏川緑道の歴史を振り返りつつ、実際に歩いて感じた緑道の特徴を紹介します!
九品仏川緑道とは?
九品仏川緑道は、目黒区と世田谷区にまたがる約1.6kmにわたる緑道です。1974(昭和49)年に暗渠化して造られた九品仏川は、「九品仏」と呼ばれる9体の阿弥陀如来像を安置していることで有名な浄真寺(世田谷区)の裏を流れ、自由が丘を通り、緑が丘駅(東急大井町線)付近で呑川に合流します。
あのヤン・ゲール氏が調査をしたことでも有名な九品仏川緑道。それをまとめたダルコ・ラドヴィッチ教授(慶応大学システムデザイン工学科)の著書『In the Search of Urban Quality 都市の質を探して:自由が丘、九品仏川緑道百景』(2014年)については、ソトノバ泉山編集長による書評記事「パブリックライフの評価とアクティビティデザインとは?」に詳しいので、そちらをご覧ください。
九品仏川緑道を歩いてみた!
自由が丘を訪れた人でにぎわっているのは、九品仏川緑道の一部、地図の③から④のあたりです。そして地図をご覧いただくと分かる通り、この緑道は世田谷区と目黒区の区境になっています。区境にあたる部分は、どうなっているのか?自由が丘のにぎわっている部分以外の緑道は、どのような雰囲気なのか?実際に歩いて調べてみました!
ホッと一息、住宅街のなかの休憩所?|①浄真寺付近(緑道最西端)~②東急大井町線の線路
自由が丘方面に向かって、閑静な住宅街の中を緑道が続きます。植栽もありますが、緑道からの見通しがきくようになっています。緑道は基本的に茶色のガードレールで車道とは区切られていますが、ところどころガードレールが途切れ、途中から入ることができるようになっています。この付近の緑道はすでに区境なので、写真左側が目黒区、右側が世田谷区になっています。
この付近は、主に一人用のベンチが置かれています。それもあってか、緑道に座っている人を見ると、みなさん一人で休憩を取っているかスマホを使用していることが多く、二人以上で会話を楽しむという光景は、調査時には見られませんでした。
おしゃべりや読書、多様な緑道の使い方|③東横線高架下~④スターバックス奥沢2丁目店横
のんびり歩くこと約10分。街の様相は、落ち着いた住宅街から、だんだんと活気のある姿へと変わっていきます。東急東横線の高架下(上記の地図中③)をくぐれば、緑道は自由が丘に入っていきます。高架下には素敵な壁画も!
このエリアの緑道はマリ・クレール通りと並行しており、路面は石畳になります。お花屋さんも絵になりますね。取材日は「自由が丘スイーツフェスタ」というイベントが開かれていたこともあり、まちはいつにも増して、人でいっぱいです。
どのベンチにも、人が座っています。おしゃべりをしたり、本を読んだり。そこには、素敵なソトの場がありました!
緑道の両側にベンチが設置され、他人と向き合って座っても気にならないくらいの距離があいています。緑道内を歩く人はおらず、この付近での緑道は、休憩・歓談ができる場としての役割を果たしているようです。
スタートから歩いてきたのでそろそろ座りたいところですが、ベンチは満員御礼。これほどベンチが一列に並んで設置されることも、そしてこれほど多くの人に利用されることもなかなか珍しいのではないでしょうか。
再び一変!みどり豊かな住宅街へ|④スターバックス奥沢2丁目店横~⑤緑が丘駅(緑道最東端)
自由通りを越えて、緑道は続きます。ここから少しずつ商店が減り、住宅街に入っていきます。それまでたくさん設置されていたベンチはなくなり、緑が増えてきました。写真右奥に見えるのが、スターバックスの地域密着型店舗“Neighborhood and Coffee”です。緑道側にはテラス席もあり、みどりを感じながらコーヒーを楽しめます。
さらに、東急大井町線の線路を越えて進むと、緑道は閑静な住宅街に入ります。緑道のスタート地点周辺と比べると緑がうっそうとしており、緑道からの見通しはややききづらい印象です。
さらに緑道は舗装がされていないということもあり、緑道より車道側を歩く人が多い印象を受けました。車道といっても車はあまり通らないので、安全上大きな問題があるとは思いませんが、せっかくの緑道があまり使われていないのはもったいない気もします。
九品仏川緑道の最東端は、このようになっています。緑道は緑が丘駅前まで続きますが、車の通り抜けはできないため、緑が丘駅までの最後のワンブロックは緑道も車道も狭くなっていました。
九品仏川緑道を踏破して
このように、一つの緑道も場所により、大きく雰囲気が変わるということが分かりました。浄真寺付近(①~②)と緑が丘駅付近(④~⑤)の緑道は、周囲が住宅街ということもあり、緑道は歩道としての機能を果たす一方、自由が丘付近(③~④)ではベンチも多く、人々の滞留空間として機能していました。
区境にあたる緑道は誰が管理するの?
ここまで九品仏川緑道の様子をレポートしてきましたが、最後に、区境にあたる緑道をどのように行政が管理しているのかについて種明かしをしましょう。実際に管理を行う、「目黒区都市整備部 みどりと公園課 碑文谷土木公園事務所」と「世田谷区玉川公園管理事務所」に聞いてみました。
九品仏川緑道は、自由通りから西側を世田谷区が、東側を目黒区が管理しているそうです。筆者の歩いているルートだと、④スターバックスまでの緑道が世田谷区で、それ以降が目黒区の管轄ということになります。自由が丘(目黒区)の顔としてにぎわっているマリ・クレール通り付近の緑道は、なんと世田谷区が管理しているのですね。
九品仏川緑道として両区に共通する管理規定等があるわけではないそうですが、必要に応じて情報共有を行っているそうです。
これから梅雨のシーズンに入っていきますが、晴れ間がのぞいた日に自由が丘を訪れてみてはいかがでしょうか。そのときはぜひ、緑道のベンチに座ってみてくださいね。
All photos by Ayako Honzawa