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オープンスペース|空地

【寄稿】集落生活から考える新しい都市生活のつくりかた

本稿では、ウィズコロナ・アフターコロナにおける新しい都市生活について、集落の生活を参考に考えてみようとするものです。疎であり、不特定多数の人が出入りしないなど、感染対策で言われていることをまさに体現しているのではないかと思い、集落を調査することで新しい都市生活を考える多くのヒントが得られるのではないかと感じています。

私は宮城大学の助教として建築を専門にデザインやまちづくりについて実践・研究を行っています。今回は、ウィズコロナ・アフターコロナにおける集落の生活調査から得られた知見をもとに都市生活における「楽しみ」を再構築していく実験を行いましたので、その過程で得られた知見をまとめたいと思います。  集落の生活を知ることで、都市の生活を豊かにしていくきっかけになれば幸いです。

今回は現段階の気づきを紹介します。また私が新しい都市生活の構築に向けて実験したことも紹介することで、新しい都市生活の構築に向けての意見交換が出来ればと思っています。

(本記事は,ウィズコロナ・アフターコロナの都市・パブリックスペース特集 特別寄稿です)


住民の行動が活性化するためのヒント

私は集落と都市を往来しながら場所が持つ意味や価値について考え、それぞれの生活や価値観に応じた場所をつくりだす方法について実践を交えながら研究しています。そして、集落と都市、それぞれが有する豊かさに魅力を感じています。そのなかでも、人が集まるという行為は人間社会の中では欠かせない要素であり、人が集まる場所には様々な魅力を感じていました。

しかし、今回の新型コロナウィルス感染症の拡大は「集まる」ことを抑制し、これまで築いてきた生活や価値観を見つめなおさなければならない状況となりました。東京都では「いのちを守る STAY HOME週間」等の企画を打ち立て、ウチで楽しむことを推奨しました。

こうした流れが全国的に展開されたことで、ウチにいることは安全で、他者と同じ空間にいることが危険で不謹慎な行為であると多くの人に認識させたと思います。とはいえ、ずっとウチの中で生活を完結させることは難しく、抑制された生活は精神的な負担も大きくなります。

また、緊急事態宣言が解除された現在は、ウチにいることを求められている訳では無く、新しい生活様式に応じて出歩くこともできるようになりました。しかし、どのような行動まで了承されているのかは不明確であり、個々の判断に委ねられている部分が大きい状況です。

このような状況では安心感は得られにくく、行動が委縮してしまう方は多いのではないでしょうか。どうすれば安心して、行動できるようになるのでしょうか。1番はワクチンや治療薬が開発され、感染が収束することです。しかし、新型コロナウィルスの次に新しいウィルスが流行しないとも限りません。どうすればこのような状況でも安心して生活することが出来るようになるのか、都市や建築に携わる立場から考えたいと思います。

ウチ≒家?それとも・・・

 みなさんはウチやSTAY HOMEという言葉を聞いて、どのように感じていましたか?おそらくみなさんの多くは家の中にいることを想像していたかと思います。私もそうでした。

しかし、ふと私の中でよぎったのは集落の人たちはウチ、STAY HOME≒集落と感じているのではないかということです。村八分とかよそ者は入れないという話を聞いたことがある人もいると思います。こうした話はイナカの嫌な風習として受け止められている節がありますが、実は集落の秩序を維持するための1つの方法でもあります。現在はそのような集落は少ないと思いますが、そもそもよそ者の出入りが少なく、住民同士の連帯感が強いところでは意外と生活は変わっていないのではないかと考えたわけです。

 そこで私は10年ほど付き合いのある集落の方に連絡し、調査に伺いました。調査の内容は、緊急事態宣言中の生活、緊急事態宣言解除後の生活、STAY HOMEと聞いて考えていた領域、緊急事態宣言中に自然災害等による避難が求められる局面を迎えたらどうするかということです。

結果は、以下の通りです(図1、図2)。

118114184_2359103984396417_2705452807033091560_nアンケート結果①、②

アンケート結果を見ると緊急事態宣言中の地区内の様子は「変わらない」と回答する人が多く、地区内の行動も「変わらない」との回答がおよそ50%を超えている(図1:①‐2、3)。一方、地区外における行動は90%以上が「やや減った」「かなり減った」と回答している(図1:①‐4、5)。

調査から見えた2つのヒント

また緊急事態宣言解除後は地区内、地区外両方の行動は日常に戻りつつあることがわかります。行動地区内の行動が変わらない背景として2つの要因が推察されます。

1つ目は、アンケート結果にもあるようにステイホームに関して地区内との回答が過半数を占め、安心感を有する場所としては地区内との回答が67%となっていること(図2:③‐3,4)。このようにSTAY HOME≒地区(=集落)と捉えている人が多いことが地区内の行動に変化が少なかった要因であると考えられます。

2つ目は、集落≠密という認識が強いということです。筆者がなぜ集落に安心感を有しているのかヒアリングしたところ、「密になることがほとんどない」、「集落は開放感がある」など、今回の感染症拡大予防に対する「3密」には当てはまりにくいという回答を得ました。

また緊急事態宣言中に避難しなければならない状況になったらどうするかというアンケートに対して、「自宅待機」が最も多い回答となっています。これは避難所=密ということを連想してしまうことが背景にあります。とはいえ、地区内の住民だけの避難所であれば避難するという人も多いのは地区住民に対する安心感が高いことの現れと捉えられます。

大沢地区アンケート結果3アンケート結果③

 以上のことから今回のコロナ下における行動・価値観について大きく4つに分類できるのではないかと考えます。①家庭内安心型、②地区内安心型(疎)、③地区内安心型(密)、④地区外安心型です。本集落は②、③に該当する割合が高く、地区という領域には安心感を有しているが、密になるかどうかに境界があることが分かりました。以上のことを踏まえると、疎であり不特定多数の人が出入りしない状況を確保できれば行動の自由度は比較的高くなるということが見えてきました。

安心感が得られる領域をつくる要素とは

 ここで終わってしまえば集落の生活を認識するだけに留まってしまいますが、これをどのように解釈し、都市生活に活かしていくかを考えていきたいと思います。

集落生活調査から得た気づきは、「安心感を得られる領域をどのようにして確保するか」ということです。本集落の住民は地区外で暮らす家族さえも地区内に入れないなど外からウィルスを持ち込ませない、持ち込まないように注意を払っており、立地特性に加えて個々の行動によって地区内の安心感を高めています。

一方、都市生活では、家の周辺でさえも不特定多数の人が出入りすることを抑えることは難しく、職場や馴染みの店など安心感を有する領域に移動するためには、安心感が低い領域を通過することになります。また都市部では自動車などの乗り物を持っていない人も多いために一層点在する場所へとドアtoドアで移動できない点も行動を抑制する要因となっているのかもしれません。

安心領域モデル図集落・都市の安心領域モデル(予想)

現在は安心感を有して行動の自由度を高めるための条件に大きなバラつきが生じているように感じます。

例えば、ウィルス感染拡大中でも気にせずに行動できる人もいれば、ウィルス感染に対する恐れはないが社会的立場や周囲の目が気になって行動できない人、ウィルス感染に対して不安を感じて行動できない人などです。

こうした背景の中でどのように安心感を有することが出来る領域をつくっていくのか、またそれぞれの心理状況に応じた行動を混在させることができるかということについて考えていくことが新しい生活様式時代における場の獲得に繋がると考えています。

新しい生活様式時代における場づくりの試行

 新しい生活様式を踏まえて安心できる場をつくることは非常に難しいと感じます。それはウィルスが目に見えないものであり、私たちは人の距離が近づくことを前提に場づくりをおこなってきたからです。また、何か企画・実行した際に感染者が発生すれば世間からの厳しい眼差しが向けられる中で人が集まる場をつくるということはローリターンハイリスクであるともいえます。しかし、そのような状況の中でも家の外で安心して楽しんだり、くつろいだりすることができる領域を獲得していく努力をしなければ、文化や風土、生業など多くのものを失ってしまいます。

そこで私たちは新しい生活様式の中で安心して楽しむことができる場づくりについて実験を行っていくことにしました。それが「GARAGE PARTY プロジェクト」です。

本プロジェクトは、新しい生活様式の中で実空間における「楽しみ方」を構築していくための実験プロジェクトです。第1弾の実験は、ドライブインシアターと移動式焼き場を併用したアウトドアイベントです。

118307374_590176675194333_3387571020951775298_nドライブインシアターの様子 Photo by バシフォト(板橋充)

本実験の要点は

①不特定多数の人が出入りしない領域を確保する
②安心できる行動を選択できる
③新しい生活様式における楽しみ方の幅を広げる。

の3点です。

①については、会場を工場エリアにすることで歩行者が少ない敷地を選定しました。また来場者は企画者の友人に絞って、少人数としました。

②については、自動車という遮蔽空間の中で楽しむという方法と移動式焼き場を使って自動車から降りて人と距離を簡単に取ることが出来る中で楽しむという方法です。

③については、それぞれの楽しみ方の到達点と改善点を把握するということです。

118471223_3515768141789145_2159331408401125290_n移動式焼き場「七輪車」を使ってBBQしている様子 Photo by バシフォト(板橋充)

当日は参加者を絞ったことが功を奏したのか、参加者同士が交流する様子が見られたのは1つの発見でした。これは参加者が場に安心感を抱いている1つの現れであるため行動を活性化させるという点では成功です。

また、車の中で映画を見るという行為についても安心感が得られ、声を出して笑いながら見ることができたのが新鮮だったという声もありました。しかし、集落と異なるのは人為的に場をつくった場合、つくった人が責任者として感染リスクを下げるために注意しなければならないため、参加した個々人の判断基準を尊重しづらくなるところです。

感染者が発生すれば、その場の安心感は低下してしまうため、感染リスクを下げる工夫をし、安心感を高め、その上で楽しいと思える状況をどのように生み出していくか。

また第三者が見ても安心だと感じてもらえるかということが新しい生活様式時代における場づくりをおこなう上で重要な視点ではありますが、それらを踏まえて都市の中に集落のような安心できる領域をつくりだし、個々の判断基準に基づいた行動がとれる場をつくってみてはどうでしょうか。

118372677_1016095212161471_4390670042519156429_n距離を取ってのBBQ Photo by バシフォト(板橋充)

〇さいごに

 安心して行動できる領域をつくることで行動の自由度を高めていくことと感染リスクを下げることのバランスの取り方が都市においては一層重要になります。まずは、家の次に安心できる領域を構築し、疎な状況でも楽しめる方法を開発していくことが都市生活を再構築していく上での基本となるでしょう。

コロナ以前の生活に戻ろうとするのではなく、新しい生活を獲得していくための実験をしていきましょう。その際には集落の生活にヒントがあるかもしれません。

テキスト:友渕貴之

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