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浜松の歩道の路上客席で三密を回避!|「まちなかオープンテラス社会実験」現地レポート

今や、世界的に大流行となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、私達の生活に大きな影響を及ぼしています。我が国では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止として、2020年4月7日に緊急事態宣言を感染が著しい都府県に発令、数日後に全都道府県を対象に発令されています。

これに併せ、緊急事態宣言と同時に「三密の回避」「STAY HOME」「ソーシャルディスタンス」など、極力人との接触を避ける言葉が飛び交っています。

そのような言葉と相反する形で営業してきた飲食、物販などのサービス業は、大きな経済的打撃を受けています。

このような中、同年6月5日に国土交通省では新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店等を支援するために、沿道飲食店等の路上利用の占用許可基準を緊急緩和することを公表しました。

これまでソトノバでは、緊急緩和に関する速報まとめページをまとめており、併せて新型コロナウイルス感染症拡大防止とパプリックスペースのあり方について、アンケートアイデアコンペなどに取り組んできています。

静岡県浜松市では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた新しい生活様式の一つとして、「まちなかオープンテラス社会実験」を実施しています。

コロナ時代における歩道空間を使った取り組みに着目し、筆者が訪れた現地の様子や公開インタビューをもとに,筆者が感じたメリットや進める上でのポイントをお伝えします。スピーディーかつ効果的な対応が必要になっている新型コロナウイルス感染症問題に少しでもヒントになれると幸いです。


1.社会実験対象エリアの特性とは

JR浜松駅の北側に位置する当該エリアでは、戦後間もなく発足した浜松市商店界連盟により、多くの商店が建ち並んでいます。また、戦災復興土地区画整理事業により、当該エリアを囲むように広幅員道路が整備されています。

今回は、広幅員道路の沿道に建ち並ぶ商店を対象に社会実験が実施されています。

Microsoft PowerPoint - 朕挰㕒0706㕂床喋é†fi路空éŒfiå‹©æ´»çfl¨ã…Łã…©ã‡¤ã…¤ã…¼7月6日時点で社会実験の対象となっている歩道(浜松市HPより引用)

浜松駅周辺で呑みに行くといえば、このエリアと思う市民の方々は多く、筆者もよくこのエリアでお酒や食事を楽しんでいました。しかし、新型コロナウイルス感染症流行を契機に、人通りが少なくなり、緊急事態宣言が明けた今でも以前までの賑わいには戻っていないと感じます。

2.歩行者道路の一部を店舗のオープンテラスへ

浜松市のまちなかを歩くといつもは見かけないテーブル・椅子が置いてあります。そこには、料理やお酒を楽しむ方々の姿が見られました。

IMG_0701路上で料理とお酒を楽しむ姿 Photo by Takuma OBARA

6月19日から実施されている「まちなかオープンテラス社会実験」では、店の中が三密になる状態を少しでも緩和することを目的として、歩道の一部を飲食や販売など店舗営業として使用している様子が見られました。

2m以上の歩道幅員、点字ブロックを確保した上で、可能な限りの空間を店舗のテラスとして使用していました。

テラスと言ってもウッドデッキのようなものではなく、岡崎市での社会実験の手法と同様に、白線で使用できる空間を決めていました。

IMG_0706歩行できる幅を確保、白線の内側をテラスへ Photo by Takuma OBARA

3.三密状態を緩和!そのほかにもメリットが?

テラスでは、三密(密閉・密室・密接)に当てはまらない状態が確保でき、ソト(屋外)なので換気の必要性もありません。同時に店舗内の密度を少しですが減らすこともできます。

また、屋内喫煙所のような店舗内でも特に密閉になりやすい場所においても、この期間だけ外に設置している様子も見られました。

IMG_0708密閉にならないよう屋外喫煙所として路上を利用 Photo by Takuma OBARA

また一方で、三密を回避する以外に路上を活用するメリットがあると感じました。

入る前にお店の情報が目に入ること

まず、入る前にお店の情報が目に入ることです。テーブルや椅子と一緒にお店のメニューが置いてあることが多く見られました。普段から気になっていたお店の店先にメニューが置いてあるとついつい見てしまいます。

お店にとっても少しでも足を止めて興味を持ってもらう手法としては有効だったのではないでしょうか。

IMG_0709白線の内側でメニューを見ている様子 Photo by Takuma OBARA

まちの雰囲気がより明るく感じる

2つ目に、まちの雰囲気がより明るく感じることです。

歩道を歩いているだけで、社会実験に参加している店舗がすぐわかります。路上にはみ出して営業することで、その店舗で働く店員、流れる音楽、こだわりのある照明、個性的なテーブル・椅子が垣間見れます。

歩いているだけで、店の雰囲気が感じられ、その店の楽しさが溢れていました。

IMG_0703少し大人な雰囲気が路上に溢れ出す Photo by Takuma OBARA IMG_0714居酒屋ならではの楽しげな雰囲気が溢れ出す  Photo by Takuma OBARA

普段ないコミュニケーションが生まれる

3つ目に、普段ないコミュニケーションが生まれることです。

店先での物販や飲食の提供は、普段はない何気ないコミュニケーションが生まれます。

「これ何ですか?」のような、店舗と歩行者のコミュニケーションから、よりその店舗のことを知るきっかけができます。

IMG_0716店舗と歩行者のコミュニケーションが生まれる Photo by Takuma OBARA

4.早期実施に至ったポイントとは?

今回の社会実験は、国の緊急緩和からいち早く実践に移しており、ソトノバではその裏側を知るため公開インタビューを行いました。

IMG_0718オンラインで実施した公開インタビューイベント(「コロナ道路占用許可」浜松・まちなかオープンテラス|ソトノバTABLE#35)

社会実験の道路占用主体である佐々木豊さん(浜松市)より社会実験の概要や実施状況に関するプレゼンテーションがあり、その後に泉山塁威さん(ソトノバ共同代表)よりコロナ道路占用許可の動向やその先のあり方について海外の事例を交えたプレゼンテーションがありました。

プレゼンテーションを終え、桂有生さん(横浜市)、西田司さん(オンデザイン)を交え、社会実験に関するインタビュー・議論を行っていきました。インタビューでは、道路占用許可の進め方やそのバックグラウンドについての質問、実践の魅力や課題についてディスカッションがありました。参加者からの質問も多く、全国的にもこの取り組みが注目されているのがわかります。

アーカイブ動画はソトノバ・コミュニティ会員内で限定公開しています。(ソトノバ・コミュニティへの入会はこちらです。)

IMG_0717佐々木さんによるプレゼンテーション

特にインタビューや質問では、早期実施に至ったプロセスに関する話題が多く、筆者が重要と感じた3つのポイントを紹介します。

①日頃からある地元との強いつながり

「新型コロナウイルスにより、市内の商店が困っていると聞いていた。なんとかしたいという気持ちが強かった。」

浜松市役所の佐々木さんは、そう話します。

浜松市内では、過去にリノベーションスクールの開催やリノベーションまちづくりの一環で取り組んでいた浜松サザンクロスほしの市などを通して、日頃から行政と地元との関わりが強く、このようなSOSを瞬時に聞くことができ、なんとかしたいという気持ちが強くなったと言います。

②早期から庁内でプロジェクトチームを結成

このような気持ちから、5月の中旬に道路管理者を含めたプロジェクトチームをつくり、社会実験の立案を行いました。6月の緊急緩和を受け、より庁内合意がスムーズになったと言います。

今回の社会実験の特徴は、社会実験全般の事務局は市が担い、参加する店舗を該当する歩道に面することを条件に公募しています。

これにより、安全面において明確に参加店舗を線引きし、商店街組合等の加盟の有無に関係なく社会実験に参加できています。

早期から問題意識を持ち、庁内でプロジェクトチームをつくり、市が中心となって進めたことが、早期実施を可能にした秘訣と考えます。

IMG_0715社会実験のスキーム(浜松市佐々木氏のプレゼンテーション資料から引用)

③コロナ道路占用許可の流れ!占用区画は現地で決める!

社会実験を進める上でポイントとなるのが、歩道の占用する範囲を明確に決め、道路使用許可、道路占用許可について、警察と道路管理者と十分に協議し、決定する必要があります。

まず、プロジェクトチーム内でテラス活用の可能性がある歩道幅員が広い道路を抽出し、幅員条件などの最低限のルールを決め、警察協議を行っています。

次に、参加店舗を募集し、使用する場所の大枠の図面を作成し、道路使用許可申請を行っています。

これと同時に、道路管理者と現地で相談しながら道路占用区画を決め、白線を引いていました。警察は、後日現地で安全面の確認を行なっていたそうです。

このように、机上での議論・協議は最低限に留め、具体的な話は現地で決めている印象を受けました。

IMG_0192現地で相談しながら道路占用区画を決める(浜松市より提供)

5.コロナ時代における公共空間活用という切り口

今回の社会実験では、新しい生活様式を実現することを目的とし、切り口として歩道を活用した店舗空間の拡張を実現していました。

今回の社会実験を通して、ソトにある道路・公園・河川などの公共空間は、いずれも三密回避の視点から新しい生活様式の切り口になり得るのではないかと感じました。しかし、公共空間の活用に関して管理者、警察、現場との温度差があるのは否めません。

新型コロナウイルス感染症とは、もはや長期的な視点でうまく付き合っていかなければならず、この温度差を取っ払う必要があると感じています。

今回の緊急緩和を受け、他都市でも少しずつ実践に移している事例が増えてきています。

この緊急緩和が、大きなムーブメントになることを期待し、今後のまちづくりあり方を示す一つのきっかけになることを期待しています。

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